リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

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はいどうも、第30話の更新です。

ちなみに今更の説明になりますが、今作のミラーライダーは【鏡面さえあればどこからでもミラーワールドに出入り可能】という設定にしています。
【入った場所からしか出られない】という制約が存在するのはブランク体のみ、という感じでお願いします。

え、何で急にこんな事を言い出したのかって?

……それは今回の話を最後まで見ればわかると思います。

それではどうぞ。




追記:活動報告にて、ちょっとしたアンケートを開始。もしよろしければ、お目を通して貰えると非常にありがたいです。



第30話 守りたい物

「健吾さん、そんなにたくさん持っちゃって大丈夫なんですか……?」

 

「うん、大丈夫。女の子にこんなたくさん持たせる訳にはいかないしね」

 

手塚達がヴィヴィオを連れて街中を散歩したその日の夜。ラグナの買い出しに付き合っていた健吾は、複数ある買い物袋を両手で上手く運んでいるところだった。言われてやっているのではなく、自分の意志で女子の代わりに荷物運びを引き受けている辺り、どこぞの白い眼帯の青年とは大違いである。

 

「それにしてもラグナちゃん。今日はまた随分と買い込んだね」

 

「今日はタイムセールでしたから! これでまた美味しい料理が作れます!」

 

「はは、それなら僕も手伝おうかな。今日は特に怪我する事もないまま終えられたし」

 

女性はやたら買い込む癖でもあるのか。食材をいっぱい買えてウキウキな様子のラグナに健吾も笑みを零し、彼女と共に少しずつ歩を早めて彼女の家へと向かっていく。

 

(ラグナちゃんが笑ってるところを見ると、いつも思い出すなぁ……アイツ(・・・)の事)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お兄ちゃん、早く早く!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

かつて共に生き抜き、今は二度と出会えないであろう少女の笑顔。それが脳裏に思い浮かんだ健吾は、表情から笑顔が失われていく。

 

「健吾さん?」

 

「! あ、えっと……ごめん、何だっけ?」

 

「もぉ、また人の話を聞いてない!」

 

「ご、ごめんってラグナちゃん!」

 

しかしそれも、ラグナから何度も声をかけられた事ですぐに笑顔に戻る。考え事をしていた健吾はラグナの話が聞こえていなかったようで、可愛らしい表情で怒るラグナに健吾が必死に謝り続ける。するとラグナは小さく溜め息をついた後、今度は彼女の表情から少しずつ笑顔が消えていく。

 

「もぉ、一緒にいる時くらいは私の事ちゃんと見てよ……お願いだから」

 

「……ごめん、ラグナちゃん」

 

ラグナは健吾の腕にピッタリくっつきながら歩を進める。彼女がここまでして健吾と会話をしたがるのには理由があり、それは健吾も既に知っている事だった。

 

「ラグナちゃん。あれから、お兄さんとは……」

 

「全然。どれだけ連絡しても、お兄ちゃんは全く応じてくれない。私の目の事は気にしないでって何度もメールしてるのに……もう無理しなくて良いんだよって、何度もメールに書いたんだけどなぁ」

 

それを聞いて、健吾の視線がラグナの左目に着いている眼帯に向けられる。彼女がどうしてその眼帯を左目に付ける事になってしまったのかも、健吾は彼女から話を聞いていた。

 

「……そっか」

 

ラグナに服の袖を強く掴まれているのを、健吾は感じ取る。それと同時に、ラグナの口から告げられる言葉の一つ一つが、彼の心にもチクチクと突き刺さっていく。

 

「……ラグナちゃん達の事を詳しく知ってる訳じゃないから、僕からはあまり深い事は言えない。でも、お兄さんはまだ生きてるのは確かなんだよね?」

 

「え? うん、そうだけど……」

 

「だったら、いつかお兄さんと仲直りできる日がきっと来るよ。そんな簡単な話じゃないだろうけど……生きている限りは希望があるんじゃないかな。僕はそう思う」

 

「生きている限り希望がある、か……うん、そうだね。ありがとう、健吾さん」

 

「良いさ。そんな大した事言った訳でもないしね」

 

その言葉でラグナの表情に明るさが戻り、それを見て健吾も自然と笑顔が浮かび上がる。2人は明るい笑顔のまま横断歩道を渡ろうとした……その時だった。

 

「……ッ!? 危ない!!」

 

「きゃあっ!?」

 

 

 

 

ズガガガガァンッ!!

 

 

 

 

何かに気付いた健吾は荷物を放り、横断歩道を渡ろうとしたラグナを後ろに引き寄せる。その直後、2人が渡ろうとした横断歩道に数発の光弾が飛来し、更には横断歩道だけでなく車が通っている道路まで滅茶苦茶に破壊し始めたのだ。

 

「な、何……!?」

 

「今のは……ッ!!」

 

あちこちから自動車のクラクションが鳴り、通行人達が悲鳴を上げて逃げ惑う中、健吾は光弾が飛んできた方角を睨みつける。彼が睨む先には、信号機の上にしがみ付いている二足歩行のモンスター型ガジェットがいた。

 

(アイツ、地下水路でも見た奴……!!)

 

『ブブ、ブブブブブブ……!』

 

「ッ……ラグナちゃん、逃げるよ!!」

 

「う、うん!!」

 

青いトンボのような姿をしたそのガジェットは複数ある赤い目を点滅させ、信号機の上から再び何発もの光弾を発射し始める。健吾は放り捨てた荷物には目も暮れず、ラグナの手を掴んでその場から逃走を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中央区画市街地にて、例のモンスターらしき姿をしたガジェットの反応を確認!! その数、40機!!」

 

場所は変わり機動六課。こちらでもガジェットの出現を察知し、既に隊長のなのはとフェイト、4人のフォワードメンバー、そして手塚と夏希といった面子がヴァイスの操縦するヘリに乗り込み、ガジェットが出現した街へと移動を開始していた。

 

「嘘でしょ、こんな市街地のド真ん中に……!!」

 

「何で急に人がいる街なんかに……あの狐のライダーの事もあるってのに……!!」

 

「今それを言っても仕方ない。俺達は俺達にできる事をやるまでだ」

 

その時、シャーリーから通信が繋がった。

 

『皆さん、大変です!! 逃げ遅れたと思われる民間人が、ガジェットに襲われています!!』

 

「嘘、大変!?」

 

シャーリーから送られて来た現場の映像。その映像にはガジェットから追われる2人の人物が映っており、それを見た一同は焦り出す。

 

「ヴァイス、もっとスピードを上げ……うわっと!?」

 

「ッ……!!」

 

夏希が声をかける前に、ヴァイスは既にヘリの飛行速度を速め始める。何事かと思った夏希が操縦席を覗き込んでみると、ヴァイスはかなり焦った表情を浮かべていた。

 

「ッ……嘘だろ……何でそんなところにいるんだよ、ラグナ……!!」

 

「ちょ、ヴァイス!? いきなりどうし……ん、ラグナ?」

 

「! それって……」

 

ヴァイスの口から飛び出た名前に、夏希とティアナは聞き覚えがあった。そんな2人の反応を他所に、ヴァイスはヘリの飛行速度を更に上げ、ヘリを市街地まで一気に進行させて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『『『ブブブブブ……!!』』』』』

 

「ッ……くそ、どれだけいるんだ……!!」

 

一方、市街地では青いトンボの姿をした複数のガジェットが暴れ回っており、逃げ遅れた健吾とラグナは路地裏に隠れて上手くやり過ごしていた。しかしこの場から避難するには一度この路地裏から出なければならず、ガジェット達のせいで2人はとても逃げ出せる状況ではなかった。

 

「ど、どうしよう……!!」

 

「ッ……ラグナちゃん、ここに隠れてて!! 僕が良いと言うまで出て来ちゃ駄目だよ!!」

 

「え、健吾さん!?」

 

「変身!!」

 

建物の窓ガラスにカードデッキを向け、ベルトが装着されたのを確認した健吾は、ラグナを路地裏に隠れさせてから外へ飛び出し、走りながら変身ポーズを取りカードデッキをベルトに装填。エクシスの姿に変身し、前方に立ち塞がっているガジェットをマグニバイザーで殴りつけた。

 

「来いよ……全部纏めて倒してやる!!」

 

『『『『『ブブブブブブ……!!』』』』』

 

エクシスの存在に気付いたトンボ型ガジェット達が、複数の赤い目から一斉に光弾を発射。エクシスは飛んで来る光弾をマグニバイザーで上手く弾き返しながら、1機のガジェットを踏みつけて大きく跳躍し、着地と同時に引き抜いたカードをマグニバイザーに装填する。

 

≪ADVENT≫

 

「ッ……来い、お前達!!」

 

『『グガァウ!!』』

 

エクシスが呼ぶ声に応じるように、近くのカーブミラーからマグニレェーヴとマグニルナールが飛び出し、それぞれ尻尾の刀剣を構えてガジェット達に襲い掛かり始めた。2体が両手から放つ光弾でガジェットを引き寄せ、引き寄せられたガジェットが2体の振り回す刀剣で次々と破壊されていく。

 

『ブブブ……!!』

 

「ッ……今度は空か!!」

 

しかしガジェット軍団もやられてばかりではない。青いトンボ型のガジェットが数機、上空を飛びながらエクシス達に向かって光弾を放ち、地面に着弾した光弾が地面を破壊しエクシスの動きを阻害しようとする。

 

「ウザいんだよ……トンボ共がぁ!!」

 

≪SWORD VENT≫

 

エクシスはマグニバイザーにカードを装填し、召喚したマグニブレードを掴んですぐに投擲。ブーメランのように飛んだマグニブレードが上空のガジェットを順番に破壊していくが、それでも上空にいるガジェット達からの攻撃は止む気配がない。

 

「くそ、コイツ等どこまでも……ぐぁっ!?」

 

『ブブブブ……!!』

 

上空のガジェットに気を取られたのか、真後ろからトンボ型ガジェットが振り下ろしてきた槍の一撃がエクシスの背中に炸裂。思わぬダメージにエクシスが怯み、そこに畳みかけるように他のガジェット達もエクシスに次々と槍を突き立てて来た。

 

「健吾さん……!!」

 

「ッ……うあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

路地裏から隠れ見ているラグナが心配そうな表情を浮かべる中、エクシスは雄叫びを上げると共にガジェットの振り下ろして来た槍を掴み、そのまま振り回して周囲のガジェット達を薙ぎ払っていく。エクシスは奪った槍をその場に放り捨てる。

 

『ブブブ……ブッ!!』

 

「!? くっ……がぁあっ!?」

 

攻撃の手は未だ止まず、上空のガジェット達が再び光弾を放ちエクシスを狙い撃つ。飛んで来る光弾の内、1発がエクシスの腹部に命中してしまい、そこへ更に地上のトンボ型ガジェットが容赦なく槍を突き立てる。

 

「ッ……この……!!」

 

『ブブブブ……!!』

 

それでもエクシスは決して倒れない。腹部の痛みを必死に耐えながら、エクシスは目の前にいるガジェットをマグニバイザーで殴りつけ、倒れたところを力強く踏みつけて破壊。ガジェットが突き立てる槍を掴み、脇に挟んでから奪い取りガジェットを蹴り倒す。

 

(僕が守らなきゃ……せめて、ラグナちゃんだけでも……僕が……ッ……!!)

 

「健吾さんっ!!!」

 

『ブブブッ!!』

 

「!? くっ―――」

 

ラグナの叫ぶ声に振り返ったエクシスの頭上からは、ガジェットが飛びかかりながら槍を振り下ろそうとして来ている。防御が間に合わないと判断したエクシスが覚悟して目を瞑ったその時……

 

 

 

 

 

 

≪≪ADVENT≫≫

 

 

 

 

 

 

「「はぁっ!!!」」

 

「!?」

 

高速で飛んで来たエビルダイバーとブランウイングの2体が、エクシスに飛びかかろうとしていたガジェットに体当たりを仕掛けて大きく吹き飛ばした。エクシスが驚く中、どこからか駆けつけたライアとファムが同時に飛び蹴りを放ち、エクシスを攻撃しようとしていたガジェット達を蹴り飛ばす。更にはスバルやエリオ達も駆けつけ、ガジェット達と応戦し始めた。

 

「アンタ達は……!」

 

「ヤッホー♪ 昼間はどうも……っと!!」

 

「突然過ぎる状況ですみませんが、私達が援護します!!」

 

エクシスに背後から襲い掛かろうとしたガジェットがブランバイザーで一突きされ、離れた位置からティアナがクロスミラージュでガジェット達を正確に狙い撃つ。また、上空にいるガジェット達はなのはとフェイトの2人が対応しており、1機ずつ順番に撃墜していく。

 

「ッ……余計な事を……」

 

「アンタにとっては余計なお世話だろうけど……さっ!! コイツ等に暴れられると困るのは、アタシ達も同じだから!!」

 

「文句を言う暇があるなら、コイツ等を倒す事に集中しろ。君も犠牲者は出したくないんだろう?」

 

「……!」

 

≪UNITE VENT≫

 

『『グガァァァァァァァァァァッ!!!』』

 

ファムとライアの言葉を受け、エクシスは再び構え直してからカードをマグニバイザーに装填。ガジェットと応戦していたマグニレェーヴとマグニルナールが高く吠え、2体は一体化してマグニウルペースの姿になる。

 

「うぇえ!? 何あれデカッ!?」

 

「ちょ、スバル!? 前見なさい前!!」

 

「え……うわっと!?」

 

マグニウルペースの威圧感ある巨体に驚いたスバルに、1機のガジェットが飛びかかる。しかしスバルを攻撃する直前で、遅れて合流したギンガがガジェットを殴って吹き飛ばした。

 

「ギン姉!」

 

「もう、余所見をしない!! 一気に片付けるわよ!!」

 

「うん!! どりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

両足に装備したローラースケートが回転し、ナカジマ姉妹は猛スピードで駆け回りガジェット達を片っ端から殴り壊していく。ティアナの射撃、エリオの槍術、キャロを乗せたフリードリヒが繰り出す火炎放射、更にはエビルダイバーやブランウイング、マグニウルペースなどの契約モンスター達がガジェットを破壊していき、上空を飛んでいたガジェットもなのはとフェイトによって殲滅されようとしていた。

 

≪FINAL VENT≫

 

「全員、左右に避けて!!」

 

『ピィィィィィィィィィィッ!!』

 

ブランバイザーにファイナルベントのカードが装填され、それを見た地上の六課一同やエクシスは一斉に左右に回避。ブランウイングが突風を起こし、残るガジェット達を纏めてファムのいる方向へと吹き飛ばし、ファムが順番に斬り裂いていく。そして最後の1機が破壊され、あっという間にガジェット軍団は全滅させられる事となった。

 

「ふぅ、一件落着♪ アンタも危ないところだったね」

 

「ッ……アンタ達、どうして僕なんかを……」

 

「この世界ではライダーバトルは行われていない。ならば俺達が敵対する理由もない……そうだろう?」

 

「……おかしな人達だな」

 

エクシスは呆れたような口調でライアとファムに背を向けるが、立ち去る前に一度立ち止まり、振り返らずに小さく呟く。

 

「……一応、礼は言っておくよ。ありがとう」

 

「!」

 

「へぇ、お礼はちゃんと言えるんだぁ」

 

「……僕はもう行くよ」

 

ファムの言葉をスルーし、エクシスは今度こそ歩を進めていく。その先からは、先程まで路地裏に隠れていたラグナが駆け寄って来た。

 

「健吾さん!」

 

笑顔で手を振りながら駆け寄って来るラグナに、エクシスも仮面の下で笑顔になりながら手を振り返す……が、離れた位置から見ていたライアは気付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走っているラグナのすぐ近くに倒れていたガジェットが、突然ムクリと起き上がったところを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!? 危ない!!」

 

「え―――」

 

「ッ……ラグナちゃんっ!!!」

 

『ブブッ!!』

 

 

 

 

ズガァンッ!!!

 

 

 

 

その事にはエクシスも気付いたのか、素早くラグナを抱き寄せ自身の背を盾にする。その瞬間、ガジェットの振り下ろした槍の穂がエクシスの後頭部を強打し、火花が飛び散った。

 

「がっ……!?」

 

「あ、ぁ……健吾さぁん!!!」

 

「ッ……ナカジマ!!」

 

「「はい!!」」

 

ラグナを庇ったエクシスはその場に膝を突く中、追撃を仕掛けようとしたガジェットをライアがエビルウィップで捕縛し、引き寄せたところをナカジマ姉妹が殴り粉々に破壊。今度こそガジェットは全滅が確認されたが、後頭部に受けた一撃のダメージが大きかったのか、倒れたエクシスは変身が解けて健吾の姿に戻り、意識を失ってしまった。

 

「健吾さん、しっかりして下さい!! 健吾さん!!」

 

「ッ……ハラオウン、シャマルに連絡を!!」

 

「わ、わかりました!!」

 

変身を解いた手塚の指示でヘリが少しずつ地上に降下していき、フェイトが通信でシャマルを呼ぶ中、手塚達は急いで倒れた健吾の下まで駆け寄って行く。手塚が自身のシャツを脱いでビリビリ引き裂き、負傷している健吾の腹部に巻きつけて応急処置を行う中、なのは達は健吾の顔を見て驚愕の表情を示す。

 

「こんな若い子供が、仮面ライダーに……?」

 

「見た感じ、高校生くらいかな。たぶんアタシともそんなに歳は離れてないと思う……それにしても」

 

同じく変身を解いた夏希は、手塚の応急処置を受けている健吾を心配そうに見ているラグナに目を向ける。

 

 

 

 

『ラグナがあんな目に遭っちまったのは、俺の責任だ。そう思うたびに、どうしてもラグナと接する事ができないんだよ』

 

 

 

 

「……こんな状況になっちゃった訳だけど。そこんとこ、今はどう思ってるんだろうねぇ」

 

「え?」

 

その言葉になのはが首を傾げるのを他所に、夏希は降下し始めているヘリを見上げる。

 

「……ッ」

 

そんな夏希の言葉は聞こえているのか否か。地上の様子を映像で見ていたヴァイスは、複雑そうな表情でラグナを見据え、操縦桿を握る力が無意識の内に強まっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてこの時……

 

 

 

 

『―――ブ、ブ……ゥ……』

 

 

 

 

1機のガジェットが、破壊されてもなお複数の赤い目を点滅させていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スカリエッティの研究所(ラボ)、モニター室……

 

 

 

 

 

 

「―――“聖王の器”を逃がしたあの狐のライダーが、まさかあんな若い少年だったとは。これは実に面白い事になってきたねぇ、ククククク……」

 

「ドクター、動かないで下さい」

 

彼等の戦いは一部始終、ガジェットを通じてスカリエッティに見られてしまっていた。スカリエッティはフフフと笑みを浮かべる中、ウーノは彼の散髪をしている最中で、その近くではクアットロもスカリエッティと同じように面白そうな表情でモニターを眺めている。

 

「適当にガジェットを出撃させた結果、まさかこんな簡単に見つかるなんて。本当にラッキーでしたわね♪」

 

「うん、実にラッキーな状況だよクアットロ。オルタナティブのカードデッキも調整は既に完了済み。もうじき私もあんな風に戦えるのかと思うと……あぁ、本当にワクワクが止まらなくて仕方がない!!!」

 

「ドクター、動かないで下さい」

 

興奮のあまり思わずガタンと立ち上がるスカリエッティだったが、ウーノによってすぐにまた座らされ、散髪が再開される。それでもスカリエッティはワクワク気分が収まりそうにはない。

 

「クアットロ。ドゥーエから何か連絡はあったかい?」

 

「はい♪ ドゥーエ姉様は地上本部の内部情報を完璧に把握し、既に襲撃ルートを確保しておりますわ。あぁ、流石のドゥーエ姉様ですわ♪」

 

「うんうん。今のところ、私達の計画に抜かりはないようで何よりだ」

 

スカリエッティとクアットロは満面の笑みでドゥーエの仕事ぶりを称賛している……が、スカリエッティ達はまだ知らなかった。そのドゥーエが今、彼等がまだ見ぬ仮面ライダーと密かに共謀して動いているという事を。

 

「ドクター、散髪はこれで完了です」

 

「うむ、ありがとう……さて。散髪も終えた事だし、そろそろ初陣と行こうか」

 

「あら、もう向かうんですの?」

 

「当然だとも。あんな戦いを見せられたとなれば、私も指を咥えて見てる訳にはいかないさ」

 

そう言って、スカリエッティは既に調整を終えている黒いカードデッキを取り出す。それを見たスカリエッティとクアットロが口角を吊り上げて笑っていた……その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビーッ!!

 

 

 

 

ビーッ!!

 

 

 

 

ビーッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「!?」」」

 

突如、研究所(ラボ)全体に緊急事態を知らせる警報が鳴り響き始めた。これにはウーノやクアットロだけでなく、スカリエッティも困惑の表情を浮かべる。

 

「何事だ……?」

 

その直後。

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

『シャアァァァァァァァッ!!』

 

「え……きゃあっ!?」

 

「「!?」」

 

散髪の為に用意されていた等身大の鏡から、突如ベノスネーカーが飛び出して来た。いきなり過ぎる事態に驚いたクアットロは、ベノスネーカーの尻尾で一方的に張り倒され、その際に彼女の懐から飛び出た紫色のカードデッキが床に落ちる。

 

『シャッ!!』

 

「!? 何……!!」

 

「浅倉様のカードデッキが……!?」

 

スカリエッティ達が拾う前に、ベノスネーカーは床に落ちた紫色のカードデッキをパクリと咥えて器用に拾い上げ、すぐに鏡の中へとUターンしていく。その数秒後、トーレから映像通信が繋がった。

 

『ドクター、無事ですか……!?』

 

「トーレ、何があったんだい?」

 

『ッ……ドクター、申し訳ありません……!!』

 

よく見ると、トーレは額からほんの僅かに血を流していた。何事かと思ったスカリエッティが問いかけると、トーレは衝撃の一言を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『浅倉が……独房から脱走しました!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警報が鳴る数分前……

 

 

 

 

 

 

 

「浅倉の旦那~、ご飯ですよ~っと」

 

赤髪の少女―――ウェンディに食事を持ち運ばせながら、トーレは浅倉が閉じ込められている地下の独房までやって来ていた。2人が牢屋を覗き込んでみると、浅倉は壁に背を付けたまま静かに座り込んでいた。鉄格子には赤い血が付着しており、よく見ると浅倉の額からも血が僅かに流れている。

 

「うわ、鉄格子にめっちゃ血が付いてる……どんだけ頭突きしてたんスか」

 

「……お前等か。イライラし過ぎて、俺はどうにかなってしまいそうだ……」

 

「それだけ吠える元気があれば充分だろう。食事を持って来てやったから食え。尤も、まだそこから出す事はできんがな」

 

「という訳で、隙間を縫って直接受け止めて下さいっス。ほら、めちゃくちゃ美味いっスよ~♪」

 

ウェンディはお盆に乗せた食事の中から、クリームシチューに漬けたパンを鉄格子の隙間から差し出す。それを見た浅倉は無言で立ち上がり、ウェンディが差し出したパンに直接齧りついた。

 

「うわ、ワイルドっスね」

 

「……んん」

 

パンを一口齧った浅倉は、少し機嫌が良くなったのか、もう一度ウェンディが差し出しているパンに齧りつく。それを見てウェンディが笑顔になる中、トーレはそんな浅倉の様子を睨みつけていた。

 

(ずっと牢屋に入れっぱなしだったとはいえ、やけに大人しい……何か妙だな)

 

「あ、そうだ。浅倉の旦那、水も飲むっスか?」

 

「……あぁ、貰おうか」

 

ウェンディは水の入ったペットボトルの蓋を開け、鉄格子の間から浅倉に少しずつ飲ませていく。浅倉も特に暴れる事なく水を少しずつ口の中に含んでいくが……

 

「……ん、ぶはぁっ!!」

 

「うひゃあ!?」

 

飲んでいる途中で咽たのだろうか。浅倉は口に含んでいた水を勢い良く噴き出して床にぶちまけ、驚いたウェンディが素早く飛び退いた。

 

「ちょ、浅倉の旦那!? 大丈夫っスか!?」

 

「全く。何をしているんだお前達、は……」

 

呆れた様子で見ていたトーレは気付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咽て俯いていると思われた浅倉が、ニヤリと小さく笑みを浮かべていた事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

「―――ッ!? ウェンディ、下がれ!!」

 

『シャアァァァァァァァッ!!』

 

「え、ふぎゃっ!?」

 

「ウェン……ぐぅ!?」

 

トーレがウェンディを下がらせようとした直後、床にぶちまけられた水にできた鏡面からベノスネーカーが素早く飛び出し、長い尻尾による一撃でウェンディを薙ぎ倒した。そのままベノスネーカーの尻尾がトーレに巻きついて彼女の動きを封じる中、ベノスネーカーは頭部に付いている複数の刃で鉄格子を破壊し、破壊された牢屋からは浅倉が笑いながらゆっくり出て来た。

 

「ッ……浅倉、貴様……!!」

 

「ハハハハハハ!! 自惚れてるのはお前達の方だったな……フンッ!!」

 

「がっ!?」

 

浅倉はトーレの髪を掴んでから彼女の額に頭突きをかました後、ベノスネーカーは縛り上げていたトーレをその場に放り捨て、今度は浅倉の胴体に尻尾を巻きつけた。

 

「!? 待て、浅倉っ!!」

 

「ハハハハハハハハ!!」

 

トーレが捕まえようとするも時既に遅し。ベノスネーカーは浅倉の胴体に尻尾を巻きつけたまま、床の水を通じてミラーワールドに戻って行き、それに引っ張られるように浅倉もミラーワールドに突入して行ってしまった。モンスターが獲物と見なした人間をミラーワールドに引き摺り込む時の習性を利用したのだ。

 

「ッ……くそ、やられた……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……

 

 

 

 

「あぁ~……やっと脱け出せた……」

 

ミラーワールド。床の水面を通じて、悔しそうにしているトーレを浅倉が嘲笑うように見ていた。そう、彼は初めから脱走するチャンスをずっと窺い続けていた。大人しくしているように見せていたのも、もはやイライラして暴れる元気すらないように思わせる為の演技でしかなかったのだ。

 

『シャアッ』

 

そしてクアットロからカードデッキを回収して来たベノスネーカーが、口に咥えていたカードデッキを浅倉の手元に放り出す。それを左手でキャッチした浅倉は更に狂気的な笑みを浮かべ、カードデッキを目の前に突き出してベルトを出現させる。

 

「ハハハハハァ……変身ッ!!」

 

変身ポーズを取った浅倉はカードデッキをベルトに装填し、仮面ライダー王蛇の姿に変身。王蛇は首を回した後、ベノスネーカーが破壊した独房の通路から外へと飛び出して行く。

 

「せっかくの楽しい“祭り”だ……これ以上、待ち切れるかよぉ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、浅倉威―――仮面ライダー王蛇はスカリエッティの研究所(ラボ)から脱走。最凶最悪の戦士が今、再びミッドチルダに解き放たれてしまったのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




リリカル龍騎StrikerS!


健吾「アンタ達と話す事なんてないよ」

はやて「話して貰えると嬉しいんやけどなぁ~♪」

手塚「狐と狸かお前達は」

ヴァイス「ラグナ……俺は……ッ!!」

二宮「もう沈めるしかなさそうだな、あのガキは……」


戦わなければ生き残れない!
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