マジで鼻水が止まりません。誰か助けて下さい←
それはともかく、本編をどうぞ。
あ、現在活動報告でちょっとしたアンケートを実施しております。もしよろしければ活動報告の方にもお目を通して貰えると非常にありがたいです。
昔の僕にとって、生きる理由は1つだった。
『お兄ちゃん、苦しい……苦しいよ……!』
『大丈夫だ、小夜……大丈夫だからな……!』
僕達は元々貧乏な家庭だった。
僕達に親はいない……というか、あんな奴等を親とは思いたくもなかった。
僕達の事を生んでおきながら、僕達兄妹に幾度となく暴力を振るって来る奴等を、僕は親と認めたくはなかった。
だから奴等が酒に溺れ、おまけに薬に手を出して勝手に死んでいった時は清々した。
だが……
『小夜、死なないでくれ……頼むから……!』
散々暴力を振るわれ、碌に食事も与えてくれない最低な人でなし共。
奴等のせいで妹―――
小夜だけは絶対に失いたくなかった。
僕にとって、小夜だけが僕が生きる為の希望だったんだ。
それなのに僕には、小夜を入院させられるほどのお金もなかった。
僕は本気で絶望しそうになった。
『妹を救いたければ、俺が力を与えてやる。戦え』
あの男がくれた力は、僕にとって一番の救いだった。
この人智を超えたライダーの力で、ライダー同士の戦いに勝ち残る……病を患った小夜を救うには、もはやそれ以外に何も方法はなかった。
しかし、初めてライダーになったばかりの頃は、モンスター1匹倒すだけでも一苦労だった。
初めて遭遇したライダーにも、実力で敵わず殺されかけた。
『たとえ子供だろうと容赦はしません。この戦いの頂点に立つ為にも……あなたには死んで貰います』
それでも、僕は決して諦める訳にはいかなかった。
不意を突いて、僕は何とか相手のカードデッキを破壊する事に成功した。
『ば、馬鹿な!? 私は、絶対に生き延びて―――』
殺したそのライダーが、裏で不正を働く悪徳刑事である事を、僕はその後に初めて知った。
初めて殺したライダーが悪人だったからだろうか。
最初は吐き気を催すくらい罪悪感に苦しんでいたのが、それ以降はライダーと戦う事に迷いがなくなっていた。
『ふぅん? こんな子供がライダーとは、世も末だねぇ』
どんな黒も白に変えてみせる悪徳弁護士。
『俺の邪魔をするなら、ガキだろうと容赦はしねぇぞ……!』
大企業のトップにして超人的な力を求めていた総帥。
『せっかくのゲームなんだからさ。楽しまなきゃ損でしょ?』
戦いその物をゲームとして楽しんでいたドラ息子。
『他のライダーを潰したいのなら、俺と手を組め。お前もまだ死にたくないんだろう?』
左目に眼帯を着けた胡散臭そうな雰囲気の男。
『邪魔しないでよ。僕は英雄になるんだから』
頭のイカれた英雄気取りな男。
『お前もライダーか……戦えよ、この俺と……!!』
世間を大いに騒がせた凶悪な脱獄犯。
僕が出会ってきたライダーは、どいつもこいつも碌な奴じゃなかった。
自分の欲望の為なら、ライダーとなった人間はどこまでも残酷になれるのだろうか。
……今の自分も、そんな事を言えるような立場ではなかったな。
たとえどれだけ残酷な人間だと思われようとも、僕は妹を救ってみせる。
そう思っていた矢先……僕を悲劇が襲った。
『ごめん、ね……お、兄……ちゃ……』
『嘘だろ? なぁ、目を開けてくれ……小夜……小夜ォッ!!』
限界を迎えた妹が、僕の前で先にこの世を旅立ってしまった。
僕は心の底から絶望した。
僕がどれだけ泣き叫んでも、妹が目覚める事は二度となかった。
『諦めるのはまだ早い。最後の1人になるまで戦い続けろ。そうすれば、お前は妹を生き返らせる事ができる』
あの男は僕にそう言っていた。
今思えば、あの男が言っていたその言葉は、どこか優しさのような物が感じ取れたような気がする。
尤も、この時の僕にそんな事を考えている暇はなかった。
僕は必死に戦い続けた。
自分以外のライダーを倒し、最後の1人になるまで。
僕は必死に戦い続けた。
頭のイカれた英雄気取りだろうが、凶悪な脱獄犯だろうが、僕は迷わず挑んでいった。
それでも、僕は決して戦闘のプロではないし、元から生身での喧嘩が強いという訳でもない。
それ故に僕は、1つのミスを犯してしまった。
複数のライダーが絡む乱戦において……一番目を離してはいけないライダーから、僕は目を離してしまっていたのだ。
≪FINAL VENT≫
『3人仲良く、あの世に行きなよ……!』
ドガガガガガガガガァァァァァァァァンッ!!!
『『『な……ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』』』
あの悪徳弁護士が繰り出す技は、その場にいる者達を纏めて吹き飛ばしてしまうほどの力があった。
あの英雄気取りも、脱獄犯も、そして僕も、奴の繰り出した爆撃で纏めて吹き飛ばされてしまった。
『ッ……まだだ……僕は、まだ……!!』
それでも、僕は必死に戦おうとした。
自分がどれだけ傷付いてでも、この戦いに勝ち残らなければならなかった。
そんな無茶を繰り返した結果……僕は破滅を迎える事となった。
『お前に恨みはないが、沈んで貰うぞ』
≪FINAL VENT≫
『!? ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?』
完全に不意打ちだった。
あの眼帯の男に後ろから攻撃を受け、僕は瀕死の重傷を負ってしまった。
辛うじて逃げ延びるくらいの力はあったものの……その時点で、僕には生き続ける力は残っていなかった。
『小夜……ごめん、な……こんな……駄目な、お兄ちゃん……で……ッ……』
こうして僕は、妹の後を追うように死んだ。
死んだはずだったのに……次に目を覚ました時、僕は見た事のない世界にやって来ていた。
『……? こ、こ……は……』
『あ、あの!? 大丈夫ですか!?』
傷付き倒れていた僕を拾い、手当てしてくれた少女がいた。
その少女から話を聞いて、僕は地球とは違う世界にやって来た事を知った。
他に行く宛てがなかった僕は、その少女が住んでいる家に一緒に暮らす事になった。
その少女―――ラグナ・グランセニックも、幼い頃に両親を失っていた。
彼女には、親代わりとして世話をしてくれた兄がいると聞いた。
でもその兄は、ある事件に関わって以来、ラグナちゃんとは距離を置くようになったらしい。
彼女が巻き込まれたという立て籠もり事件……狙撃手である兄……そしてラグナちゃんの失明した左目……それだけで何があったのかは容易に想像がついた。
正直、話を聞いた時は心が痛くなった。
孤独に生きている彼女の為に、僕は救って貰った恩を返したかった。
彼女がお出かけをする時は、僕が一緒に付き合ってあげた。
彼女が料理を多く作り過ぎちゃった時は、僕は残さず食べてあげた。
彼女が1人で眠れなかった時は、彼女が眠れるまで僕が傍にいてあげた。
彼女が楽しそうに笑っている時は、僕が一緒に笑ってあげた。
ラグナちゃんと一緒に過ごした最初の数日間は、僕にとっても楽しいと思える時間だった。
でも運命は……僕が楽しく過ごす事を許さなかった。
キィィィィィン……キィィィィィン……
『シャア!!』
『ッ……危ない!!』
『きゃっ!?』
あの鏡の世界から、モンスターがラグナちゃんを狙って襲って来た。
そこで僕は理解したんだ……この世界に来てもなお、僕の手元にカードデッキが存在していた意味を。
違う世界に来てもなお……僕は戦いから離れる事を許されなかった。
『あの子に……ラグナちゃんに近付くなっ!!』
僕は再び戦う決意をした。
ラグナちゃんの平穏を守る為に、僕は再びこの手を血に染める事を決めた。
『鈴木健吾、仮面ライダーエクシス……お前の力を貸して貰いたい。無論、高額の報酬も約束しよう』
その戦いの中で、僕はあの金色のライダーに出会った。
奴に雇われ、僕は資金を稼ぐ為にモンスターと戦う事になった。
稼いだ資金は全て、ラグナちゃんに渡すつもりでいた。
再びライダーとして戦うようになってから、僕は気付いてしまったからだ。
かつて僕がライダーとして戦い続けて来た理由を。
ラグナちゃんの隣にいるべきは、本当は僕じゃない事を。
この手を血に染めて来た自分は、彼女の隣にいるべきじゃない。
だからある程度の資金を稼いだ後は、彼女の傍から離れる事を既に決めていた。
この世界に妹はいない。
だからせめて、ラグナちゃんの平穏だけでもこの手で守ろうと思った。
かつてライダーを殺した自分に、そんな資格はないかもしれない……いや、確実にないだろう。
それでも僕には、敢えてそうするしか道はなかった。
そしてある時、僕以外にもこの世界にやって来ているライダーの存在を知った。
そのライダーの中には……かつて自分を殺した、あの鮫のライダーもいた。
僕は倒さなければならないと思った。
僕を殺した事だって、恨みがないと言えば嘘になる。
でも今は、奴と戦おうと思った理由が別にある。
奴がこの世界にいる以上、ラグナちゃんにまで被害が及んでしまう危険性がある。
奴は目的の為なら手段を選ばない。
奴はその気になれば、平気でラグナちゃんを人質にでも取ろうとするだろう。
そんな事は絶対にさせない。
せめて奴だけでも倒さなければ、彼女の平穏は守れない。
この手がどれだけ血に染まろうとも……彼女の平穏だけは、絶対に守らなければならない。
『健吾さん……!』
そう、彼女だけでも……僕は守り通したい。
『健吾さん、助けて……ッ!!』
彼女が死ぬような事があってはいけない。
『や、やめろ……!!』
そう、それだけは絶対にあってはいけないんだ。
『やめろ!! ラグナちゃんに手を出すな!!』
彼女にまで死なれてしまったら、僕は……
『俺の言う事を聞けないようなら……このガキには沈んで貰うまでだ』
やめろ……
『い、いや!! 健吾さぁん!!』
やめろ……!!
『さぁ、とっとと沈め』
やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!
「―――ッ!!」
少年―――鈴木健吾が目を覚ましたのは、そんな夢を見た直後だった。
「はぁ、はぁ……」
白い布団がかけられたベッド。自身が着ている病衣。ベッドの周囲にあるカーテン。それらを見て、ベッドから体を起き上がらせた健吾は、自分が今いる場所が病室らしき場所だと把握した。窓からは満月が見える辺り、まだ時間帯は夜である事がわかる。
「僕は……」
「あぁ、良かった。目を覚ましたのね」
カーテンを開け、シャマルが健吾の前に姿を見せる。
「……ここは?」
「機動六課本部隊舎の医務室よ。あなた、自分が意識を失う前の事は覚えてる?」
「……はい」
シャマルからそう問われ、健吾はあの戦いで傷を受けた時の事を思い出した。ガジェットに襲われかけたラグナを助ける為に、自らを盾にして傷を負った事を。
「!! 彼女は、彼女は今どこに!?」
「お、落ち着いて!! ラグナちゃんの事でしょ? 大丈夫、彼女は無事よ。今は別の部屋で休ませてるわ」
「……良かった」
それを聞いて健吾は安堵した様子で枕に頭を乗せる。するとそこに、医務室の扉を開けてはやて達隊長陣、そして手塚の4人が顔を見せにやって来た。
「お、無事に起きたみたいで何よりやで」
「……誰?」
「機動六課部隊長の八神はやて、よろしゅうな」
「……どうも」
「ザフィーラや手塚さん達から話は聞いとるで。ヴィヴィオちゃんの事、助けてくれてたんやってな」
(……あの子の事か)
「鈴木健吾君、で良いんだよね? ヴィヴィオを助けようとしてくれた事、感謝します」
「本当にありがとう」
なのはとフェイトが頭を下げて感謝の意を述べる。まさか会って早々感謝されるとは思っていなかったのか、健吾は少しだけ照れ臭そうな表情を見せる。
「……あの変な機械が邪魔だったから潰しに行っただけだよ。あの子はたまたま助かっただけだ」
「そんな照れなくてええんやで~? そこは素直に受け取るもんや」
「余計なお世話だよ」
「はやてちゃん、話題ズレていってるわよ」
「おぉ、あかんあかん」
シャマルに指摘され、はやてはコホンと咳き込んでから話題を切り替える。
「鈴木健吾君。あなたには少し聞きたい事があります」
はやてが取り出したのは、エクシスのカードデッキと……少し厚みのある封筒。それを見た健吾は血相を変える。
「それは……!!」
「ごめんね。あなたが眠っている間に、ちょっと持ち物検査をさせて貰ったの」
「それから……間違っても、モンスターの力を借りて取り返そうとするのだけはやめてくれ。部屋が荒らされてしまうからな」
「ッ!?」
健吾が振り向いた先では、医務室の窓ガラスから飛び出そうとするマグニレェーヴ達がエビルダイバーに妨害されている姿が映し出されていた。それを見た健吾はチッと舌打ちするが、手塚は構わず続ける。
「同じライダーとして、カードデッキについてはとやかく言うつもりはない……だが、ヴァイスの妹に話を聞いてみたところ、彼女が君と会ったのはつい最近で、しかも彼女はこのお金の事は何も知らないと言っていた。この世界に来てまだ日が浅いはずの君が、これほどの大金を一体どうやって手に入れた?」
「……」
「答えて貰えないかな? もし盗みなどで手に入れたお金だったとしたら、流石の私達も見て見ぬフリをする訳にはいかないから」
「……アンタ達と話す事なんてないよ」
「事情が事情なのは私達も充分に理解しとる。せやから、話して貰えると嬉しいんやけどなぁ~♪」
「……信用できないね、おばさん」
一瞬、その場の空気が凍りついた。なのは達が恐る恐る振り向く中、おばさん呼ばわりされたはやては変わらず笑顔を浮かべていたが……その目はどう見ても笑ってはいなかった。
「……まだ私おばさんちゃうでぇ~? まだまだピッチピチな19歳の美少女やでぇ~?」
「自分で美少女とか痛いねおばさん」
「よぉしその喧嘩買ったるでぇっ!!!」
「ちょ、はやてちゃん落ち着いて!?」
「駄目駄目駄目駄目!? お願い、一旦冷静になって!!」
「……狐と狸かお前達は」
はやてが鬼の形相なのに対し、健吾はツンとした素っ気ない態度である。なのはとフェイトがはやてを必死に押さえている中、健吾とはやての背後にそれぞれ狐と狸のオーラが見えた手塚は、呆れた様子ではやての手からカードデッキと封筒を奪い取る。
「あ、ちょ!?」
「……このお金をどうやって手に入れたのか。君が話したくないのなら、無理して話さなくても構わない」
「!」
手塚はカードデッキと封筒を、健吾に直接手渡した。
「……何のつもりかな?」
「君がヴァイスの妹を守った時の事や、ヴィヴィオを助けようとしてくれた事……それらを考えた結果、君は根っからの悪人ではないだろうと俺は思っている。君が手に入れたこの金も、ヴァイスの妹の為にとかそういう理由なんじゃないか?」
「……」
「君がどのような目的でお金を稼ごうと、俺にそれを咎める資格はない……だが、間違っても人の道を踏み外すような事だけは絶対にするな。汚い手段で稼いだお金を貰ったところで、ヴァイスの妹がそれを素直に喜ぶとは到底思えないからな」
「……!」
それについては健吾も思うところはあるのだろう。手塚の言葉に、健吾は目を逸らしたまま無言を貫き続ける。
「俺と一緒に戦っているライダーも、この世界に来たばかりの頃はスリを働いてお金を稼いでいた。だが六課に保護された後はスリをやめて、この世界の人々を守る為にモンスターと戦っている。もし君があの子の為に戦っているんだとしたら……君も俺達と一緒にモンスターと戦って欲しい」
「……僕があの子の為に戦っているとか、何でそうだと言い切れるのさ?」
「占ったからな。俺の占いは当たる」
「……何が占いだよ、アホらしい」
「ふっ……よく言われる」
アホらしいと言われようが涼しい顔で流す手塚に、健吾は未だ警戒しているかのような目を向ける。その時、医務室の扉が開いてまた誰かが入って来た。
「ママ、パパ……」
「あれ、どうしたのヴィヴィオ?」
「……!」
入って来たのはヴィヴィオだった。その後ろからはスバルも姿を見せる。
「夜分遅くに失礼します。ヴィヴィオが何やら、部屋の中の様子が気になったみたいで……」
スバルが付き添う中でお手洗いを済ませた後、部屋へ戻る際に通りかかった医務室からなのは達の声が聞こえた事から、ヴィヴィオはそれが気になって医務室に入って来たらしい。ヴィヴィオが今も眠たそうな表情で目元をゴシゴシ擦っている中、ヴィヴィオの姿を見た健吾は表情が強張り、ヴィヴィオもそんな健吾の姿に気付いた。
「ッ……君は……」
「? お兄ちゃん、誰……?」
「ヴィヴィオ。このお兄さんはね、ヴィヴィオの事を助けてくれた狐のお兄ちゃんなの」
「! 狐の、お兄ちゃん……?」
「ッ……」
おい、頼むから余計な事を言わないでくれ。ヴィヴィオにそんな説明をしたフェイトを、健吾は少しキツめの表情で睨みつけようとしたが、そうしようとする前にヴィヴィオが健吾の前までとことこ近付いて来た。
「狐のお兄ちゃん……」
「……何かな」
健吾は敢えてヴィヴィオと視線を合わせようとしなかった。健吾に目を逸らされたヴィヴィオは一瞬だけ泣き出しそうな表情になるも、それを必死に我慢し、健吾に対してペコッと頭を下げた。
「ヴィヴィオの事……助けて、ありがとう!」
「……!?」
ヴィヴィオが告げたのは、自身を助けてくれた彼に対する感謝の言葉だった。まさか本人からも直々にお礼を言われるとは思っていなかったのか、健吾は呆気に取られた表情でヴィヴィオの方を見据えた。
「……昼間、ヴィヴィオが君の姿を見た時から、ずっと君にお礼を言おうと思っていたんだそうだ」
「だから私達で、お礼を言う練習に付き合ったの。あなたがヴィヴィオの事をどう思っているのか私達にはわからないけど、ヴィヴィオちゃんがあなたに感謝している事だけは確かだから」
「……」
手塚とシャマルの説明を聞いて、健吾はもう一度ヴィヴィオに視線を向ける。頭を上げたヴィヴィオはニンマリと嬉しそうな笑顔を浮かべており、その笑顔を向けられた健吾は再び照れ臭そうに視線を逸らす。そんな様子をなのは達が暖かい目で見守る中、手塚はまた違う事を考え始めていた。
(さて。ヴィヴィオは無事にお礼を言う事ができたが……問題はもう1人の方だな)
現在この場にいない人物。その人物がいるであろう方角を、手塚は窓ガラスを介して眺めるのだった。
その不在の人物がいる、機動六課の駐機場…
「―――やっぱり、こんな所にいた」
「……姐さん」
その人物―――ヴァイスは今、駐機場にて自身が操縦するヘリの整備を行っていた。そんな彼を後ろから、夏希がヘリのボディに肘を突きながら呆れた様子で見据えていた。
「……何か用か? 俺は今忙しいんだが」
「こんな夜遅くまで働いてる奴がいるんだから、そりゃ心配して声はかけようとするでしょ」
「……」
ヴァイスは無言でヘリの整備を続け、その反応を予測していた夏希は溜め息をついてからヴァイスの隣まで移動してからヘリに背中を付ける。
「アンタの妹さん……ラグナちゃんは今日だけ、特別に女子寮に一泊する事になったよ」
「……そうかい」
「アンタ、一度もラグナちゃんと目線合わせようとしなかったでしょ」
ヴァイスの手がピタリと止まるが、夏希は続ける。
「ラグナちゃんから改めて話を聞いたんだけどさ。あの子、アンタの事を全く恨んでない感じだったよ。それどころかアンタと話をしたがってた」
「……」
「それなのに、アンタがあの子から距離を離そうとしてどうするのさ。アンタはさ、あの子と仲直りしたいって思わないの?」
「……俺にそんな資格はねぇよ。健吾……つったっけ? 聞いた話じゃ、そいつが俺の代わりにラグナを守ってくれてたんだってな。兄としちゃ非常に頼もしい限りだぜ。アイツがラグナの傍にいてくれるんなら、ラグナだって俺がいなくても寂しい思いは―――」
「あぁもう、いい加減にしなよ!!」
夏希がヘリをバンと叩き、ヴァイスに向かって言い放つ。
「アンタがいつまでもそんなんでどうすんのさ!! あの子はアンタと仲直りしたがってるんだよ!? なのにアンタがあの子の気持ちを無視してたら、あの子が報われないままだろ!!」
「ッ……お前に何がわかる!!」
ここで初めて、ヴァイスが声を荒げた。
「お前は!! 自分の家族を……自分で傷付けてしまった事が一度でもあんのかよ!!」
「な……!?」
「お前の家族の事は俺も聞いてるさ!! だからお前が、俺達の事を想って言ってくれてるんだって事もこっちは充分わかってる!! それでも……」
ヴァイスはヘリに自身の頭をゴンとぶつけ、拳を強く握り締める。
「それでも……今でも許せないんだよ……!! ラグナは俺の事を恨もうとしない……それでも、俺がアイツの目を潰しちまったのは事実だ……!! いっその事、恨んでくれた方が俺としてはまだ良かったんだ……!!」
「……ッ!?」
「自分で傷付けちまったのに恨まれない……自分で傷付けちまった家族と、どうやって接すれば良いのかも全くわからねぇ……どちらにもなれねぇのが今の俺なんだ……!! なぁ、俺は……俺は一体どうれば良い……?」
「ヴァイス……」
ヴァイスがここまで思い詰めていたと知り、夏希は言葉を返せなかった。また、それをこの場で聞いていたのは夏希だけではなかった。
「……ッ」
2人の会話は、ラグナも隠れて密かに聞いてしまっていた。彼女は悲しげな表情のまま、1人静かに駐機場を後にしていく。その事にヴァイスと夏希は気付かない。
「ラグナ……俺は……ッ……俺はどうすれば良いんだ……!!」
場所は変わり、ドゥーエ達のいるアパートでは……
「浅倉威が脱走した……?」
『そういう事だから。もし浅倉様らしき人物を見かけたら、こっちに連絡を頂戴』
「えぇ、わかったわ。それじゃお休みなさい……鋭介、もう出て来て良いわよ~」
ウーノとの映像通信を切った後、ドゥーエは台所の方に声をかける。台所からは、二宮がめんどくさそうな表情でポリポリ頭を掻きながら姿を現した。
「浅倉の奴が脱走とはな……スカリエッティの野郎、もっと注意深く奴を監視しろってんだ」
「どうするの? ますます外出し辛くなっちゃった訳だけど」
「おまけにオーディンから聞いた話じゃ、あのエクシスのガキも機動六課の連中に保護されて連行されちまったらしいからなぁ……たく、どうしてこんなにも面倒事が積み重なるかね」
「あらあら。だとしたらマズいんじゃない? そのエクシスって子、あなたの事を知ってるんでしょう? あの子の口からあなたの存在が六課に知られちゃったら一大事よ?」
「あぁ、本当にマズい状況だ。本来ならそうする予定じゃなかったんだが……こうなった以上は仕方ない」
二宮はテーブルの上に置いているコップを手に取り、水を飲み干してからテーブルに置く。
「もう沈めるしかなさそうだな、あのガキは……」
獰猛な鮫は、再び獲物に狙いを定めようとしていた。
To be continued……
リリカル龍騎StrikerS!
健吾「やっぱり僕は、あそこにいるべきじゃない……」
スカリエッティ「この姿……オルタナティブ・ネオ、とでも名付けようかな?」
手塚「逃げろ、早く!!」
夏希「アンタはここで死んじゃいけない!!」
戦わなければ生き残れない!
健吾「それでも……僕は……!」
ラグナ「駄目……健吾さぁんっ!!!」