リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

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はいどうも、第32話の更新です。

あまりに明る過ぎるアマゾンズ予告やら、幻夢の社長ズの『仮面ライダーゲンムズ ザ・プレジデンツ』やら、何やら東映がエイプリルフールネタで暴走しておりますが、こちらはいつも通り本編を進めて行こうと思いますw

それではどうぞ。今回もメチャクチャ長いです。

あ、ついでに活動報告のアンケートも良ければどうぞ。














さて、準備は整いました。

ここから少しずつ、物語を加速させていきたいと思います。

※スカさんの台詞でちょっぴり書き忘れていた事があったので加筆しました。



第32話 オルタナティブ・ネオ

「……そっか。お兄さんがそんな事を」

 

「うん……」

 

曇りに曇った天候の翌日。機動六課本部隊舎の中庭のベンチでは、健吾とラグナの2人が座って話をしていた。2人の近くには健吾の監視役として、狼形態のザフィーラが伏せをした状態で待機している。

 

「私、知らなかった。あの事件の事……お兄ちゃんが、あそこまで思い詰めてたなんて……」

 

「……ラグナちゃん。お兄さんと、仲直りしたいとは思ってるんだよね?」

 

「うん……でも、どうすれば良いんだろう……今まではずっと、お兄ちゃんと連絡が付かなかったから。顔さえ合わせられれば何とかなると思ってた……でも違った。私がお兄ちゃんを許そうとしてるせいで、お兄ちゃんは逆に自分の事を許せなくなっちゃってたんだ。ねぇ、健吾さん……私達、一体どうすれば良いんだろう……?」

 

「……」

 

健吾は答えられなかった。無理して笑顔を保とうとしながら告げるラグナの表情を見て、言おうと思った言葉が出なくなってしまった。

 

(自分が許せない、か……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はぁ……はぁ……お兄、ちゃん……』

 

『小夜、無理に喋らなくて良い。大丈夫だ、お前の病気は僕が何とかしてみせるから』

 

健吾の脳裏に浮かび上がるのは、かつて妹の小夜がまだ生きていた頃の事。ライダー同士の戦いで傷付いた健吾は自分で傷の手当てを行い、その様子をベッドに寝ながら見ていた小夜は心配そうな表情を浮かべていた。

 

『お兄ちゃ、ん……その傷……』

 

『気にするな。転んで怪我しただけだ』

 

『……無理、してるんだよね……?』

 

自身の足に包帯を巻いていた健吾の手がピタリと止まる。小夜は苦しそうな表情を浮かべながらも、自力でベッドから体を起こす。

 

『ッ……小夜、寝てなきゃ駄目じゃないか!』

 

『大丈、夫……これくらいなら、何とか……げほ、ごほ!』

 

『あぁほら、そんな無理するから! 病人は大人しく横に―――』

 

『お兄ちゃん!!』

 

小夜の叫ぶ声には流石に驚いたのか、小夜をベッドに寝かせようとした健吾の手が思わず引っ込んだ。小夜は何度か咳き込んだ後、弱々しくもしっかりと健吾の目をしっかり見据えていた。

 

『もうやめて……! お兄ちゃん……ライダーになってから、ずっと、無理しかしてない……! お兄ちゃんが傷付くたびに、私が私を許せなくなる……! お兄ちゃんに、そうさせてしまってるのは……他でもない、この私だから……!』

 

『ッ……違う、小夜のせいじゃない!! これは僕の意志でやってるんだ、お前が気にするような事じゃ―――』

 

『家族が心配なのは、お兄ちゃんだけじゃないんだよ!?』

 

『ッ!!』

 

小夜が健吾の両手を掴み、強く握り締める。

 

『お兄ちゃん、お願い……これ以上、私の為に無理しないで……お兄ちゃんの身に何かあったら……私は……!』

 

『小夜……』

 

この時も健吾は、小夜の言葉に何も言い返せなかった。健吾にとって小夜がたった1人の家族なら、小夜にとっても健吾はたった1人の家族なのだ。そんな当たり前の事実を真正面から突きつけられ、健吾は小夜をベッドに寝かせつけた後もずっと、小夜の告げた言葉が頭の中から消えて離れなかった。

 

『……それでも……僕は……』

 

それでも、自分は既にライダーを1人殺してしまっている。彼はもう引き返せない領域まで来てしまっているのだ。その事実と小夜の言葉で板挟みにされ、健吾はベランダの柵に拳を叩きつける。

 

『ッ……ごめん、小夜……僕はもう……止まれないんだ……!』

 

 

 

 

 

 

その数日後だった。

 

 

 

 

 

 

小夜の病状が突然悪化し、彼女がこの世を旅立つ事になってしまったのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――確かに、難しい事だよね」

 

そんな自身の過去を思い浮かべながら、ベンチに背を付けた健吾はゆっくり口を開いた。

 

「でもラグナちゃん。ラグナちゃんにとって、お兄さんが大事な家族なのは変わらないんだよね?」

 

「……うん」

 

「なら、その思いだけは絶対に忘れてはいけない」

 

「え?」

 

俯きかけていたラグナが顔を上げる。そんな彼女に目を向け、健吾は少年らしい優しげな笑顔を浮かべる。

 

「お兄さんが自分の事を許せないのは、ラグナちゃんの事が本当に大切だからだよ。君がお兄さんの事を思っているのと同じようにね。だからこうして思いが擦れ違っちゃってるんだろうけど……それでも、仲直りできる可能性は決して0%じゃないと思う。少なくとも、2人はまだ生きてるんだから」

 

「まだ生きてる、から……?」

 

「うん。お兄さんがどんな事を言っていたとしても、君が諦める事だけは絶対にしちゃ駄目だよ。もし君の方から諦めてしまったら、今度こそ2人は擦れ違ったままで終わってしまうだろうから」

 

「健吾さん……そっか。うん、そうだよね! ありがとう、健吾さん!」

 

「どういたしまして」

 

ラグナの表情に笑顔が戻り、それに釣られるように健吾の笑顔もよりにこやかになる。するとラグナはベンチから立ち上がり、グーっと背伸びをする。

 

「そうと決まれば、早速お兄ちゃんの所に行ってくるよ! 健吾さん、本当にありがとう!」

 

「気にしなくて良いさ。途中で転ばないようにねぇ~!」

 

ラグナは健吾に手を振ってから、ヴァイスを探しに向かうべく走って行く。その様子を健吾が笑顔で手を振りながら見送る中、2人の会話を聞いていたザフィーラが健吾の傍まで近付いて来た。

 

「主からは生意気な子供だと聞いていたが……随分優しい所があるじゃないか」

 

「? ……あぁ、そっか。犬だけど喋るんだっけ」

 

「犬ではない、狼だ」

 

健吾からも犬と勘違いされ、ザフィーラは若干落ち込んだような口調で訂正する。そんな彼を他所に、健吾は駐機場まで走って行くラグナの後ろ姿を見ながら考え事をし始めていた。

 

(ラグナちゃんには僕がいるから大丈夫、か……それは違うよ、ラグナちゃんのお兄さん。僕とラグナちゃんがどれだけ仲良くなれたとしても……僕はあくまで余所者なんだ)

 

これまで、ラグナと共に過ごしてきた時間。一緒に美味しい夕食を食べ、一緒に買い物を楽しんで、一緒に時間を過ごして来た今までの時間は、健吾にとっても充実した時間だった。充実していたからこそ……そんな時間を過ごし続ける事を健吾の心が決して許そうとしなかった。自分がラグナの隣にいるせいで、ヴァイスがラグナの思いに振り向こうとしないのなら……。

 

「何を考えている、鈴木」

 

無言で考え事をしている健吾に気付いたザフィーラが、真剣な口調で問いかける。

 

「……どうしたの?」

 

「どうしたの、ではない。その顔……覚悟を決めた人間の表情をしているぞ」

 

「……何の事かな」

 

「俺はお前を知らんから偉そうな事は言えんが、少なくともこれだけは言える……早まる事はするなよ」

 

「言われなくてもそのつもりさ」

 

「どこへ行く?」

 

「少しトイレにね」

 

ザフィーラは健吾に怪訝そうな目を向けるが、ベンチから立ち上がった健吾は表情を変えずにそう返し、本部隊舎の男性用トイレに向かうべく歩き出す。彼が空を見上げてみると、空は黒い雲に覆われており、雷の音がゴロゴロと鳴り始めていた。

 

「……雨、降りそうだなぁ」

 

「……」

 

この日の悪天候が、何か悪い出来事が起こりそうな事を予期している気がする。健吾の呟きを聞いていたザフィーラは、そんな気がしてならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そっか。お前が言ってもヴァイスは聞かないか」

 

「本当どうしたら良いんだろうね。2人共、せっかく近い距離にいるのに……」

 

本部隊舎の通路。手塚は隣を歩いている夏希から、ヴァイスとラグナの現状を聞いているところだった。手塚の背中には遊び疲れてスヤスヤ眠っているヴィヴィオがおぶられており、そんな手塚に事情を話しつつ夏希は項垂れながら歩いている。

 

「お前が言っても駄目なら、これ以上できる事は何もない。大人しく2人が和解するのを待つしかないだろうな」

 

「それだと、いつまで経ってもラグナちゃんが可哀想だよ! なのにヴァイスの奴、何が何でもラグナちゃんと顔合わせようとしないんだから……むしろ思い切ってラグナちゃんの前に突き出してやろうか……!」

 

「逆効果になりそうだからやめろ……俺からすれば、気になるのは鈴木健吾の方だな」

 

「健吾が?」

 

「あぁ。アイツと話をしてみて感じた事がある……アイツの目は、何か覚悟を決めたような目をしていた。俺はそれがどうしても気になって仕方ない。鈴木健吾からも、目を離さない方が良いかもしれないな」

 

「? 何それ、どういう……あ」

 

「ん?」

 

「ん……げっ」

 

その時、手塚と夏希は歩こうとしている先からヴァイスがやって来た事に気付く。ヴァイスは夏希を見て厄介そうな表情を浮かべたが……その直後、夏希の行動は早かった。

 

「うおりゃあっ!!」

 

「んな……ぐほぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「……夏希、人の話をちゃんと聞いていたのか?」

 

逆効果になりそうだからやめろと言ったはずなんだが。そんな手塚の冷静な突っ込みが入り切る前に、駆け出した夏希はヴァイスに向かって飛び蹴りを放ち、逃げようとしたヴァイスの背中に容赦なく炸裂させていた。そして倒れたヴァイスの背中に夏希が馬乗りになって捕縛しにかかる。

 

「もうイライラする!! ヴァイス、こうなったら意地でもラグナちゃんの前に突き出すからね!!」

 

「えぇい、離せ!? 余計なお世話だってのがわかんねぇかなアンタ!?」

 

「知るか!! 無理して意地張ろうとしてんのが見てて逆に腹立つんだよ!! こうなったら無理やりにでも仲直りさせてやる!! 言う事聞かなきゃアンタの口と鼻の穴にタバスコぶち込んでやる!!」

 

「いや何だよそれ!? 急に拷問染みて来たな!?」

 

「何ておぞましい拷問だ……ん」

 

もはや言ってる事がメチャクチャな夏希に手塚が呆れた様子で呟くが、その際に彼はこちらに近付いて来ている人物の存在に気付き、そちらに視線を向ける。

 

「……夏希、突き出す必要はなさそうだぞ」

 

「え? 何で……あっ」

 

「ッ!? ラグナ……」

 

「……お兄ちゃん」

 

3人の向いた先には、ヴァイスを探しにやって来たラグナの姿があった。それに気付いた夏希はすぐにヴァイスの背中から退き、ヴァイスもすぐに立ち上がって服の汚れを払う。

 

「……何の用だよ」

 

「お兄ちゃん……もう、家に戻って来ないつもりなの?」

 

「……俺には、お前と一緒にいる資格なんてねぇよ。俺はお前の目を潰しちまったんだぞ?」

 

「私の目なら心配はいらない」

 

ラグナは左目の眼帯を取り、左目の瞼を開いてみせる。

 

「ほら、もう左目もほとんど治りかけてるの。まだ薄暗くしか見えないけど……あと半年もすれば、完全に治って見えるようになるってお医者さんが」

 

「ラグナ……」

 

「お兄ちゃん……私ね、昔のお兄ちゃんが好きだったんだ。百発百中の腕前を持つ狙撃手のお兄ちゃんが……そんなお兄ちゃんがカッコ良いって思えたから、私はお兄ちゃんの事を応援してきた」

 

「ラグナ、俺は……!」

 

「もう良いんだよ、お兄ちゃん……謝らなきゃいけないのは、むしろ私の方。あの時、私が人質になんかなっていなければ……」

 

「!? 違う、お前のせいじゃない!! 俺が狙撃に集中できなかったせいでお前を―――」

 

「お兄ちゃんにそんな思いをさせてしまってるのは、他でもない私だから!! ……私は、お兄ちゃんがそうなった原因である自分が憎い……自分で自分の事が許せないって思ってる……!」

 

「ラグナ……」

 

「お願い……昔のお兄ちゃんに戻って。立ち止まっちゃって歩けないんなら……今度は2人で、一緒に前に進もう?」

 

「……何でだ。何でお前がそこまで……」

 

「当たり前だよ」

 

ラグナがヴァイスに抱き着く。驚いたヴァイスは後ろに下がりかけるも、何とかラグナを受け止める。

 

「だって私達……家族なんだよ……? これから先も、ずっと……」

 

「ッ……ラグナ……俺は……」

 

家族だから。そんな当たり前の事実が効いたのか、ヴァイスはラグナを引き剥がす事ができない。むしろラグナの事を両手で強く抱き締めるほどだった。そんな兄妹の様子を、手塚と夏希は少し離れた位置からただ静かに見守り続ける。

 

しかし、そんな時間はここまでだった。

 

「み、皆さん!! 大変ですぅ~!!」

 

相変わらずミニサイズな姿のリインが、慌ただしい様子で手塚達の下まで飛んで来た。

 

「リイン、どうした?」

 

「た、大変なんです!!」

 

リインが放った一言は、その場にいた手塚達を驚愕させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「健吾君が、突然いなくなっちゃったんですぅ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまない、完全に俺の失態だ……!」

 

「ザフィーラ、何があったんや?」

 

「実は……」

 

それは数分前の出来事だ。健吾が隊舎の男性用トイレに向かい、ザフィーラも監視役として同行したのだが、その際に健吾は洋式トイレの個室に入っていた。最初は健吾が入っている個室トイレの前で待機していたザフィーラだったが、突如「変身」の掛け声が聞こえて来た事にザフィーラは驚愕。急いで個室トイレの扉を抉じ開けた時には既に、エクシスに変身した健吾は洋式トイレの水面を利用してミラーワールドに突入してしまっていたのだ。

 

「嘘でしょ……!? 周りにモンスターの反応なんて感じないのに、何で急に……!?」

 

「ッ……健吾さん、どうして……!」

 

「ザフィーラ。アイツが姿を消す前に、何か言っていなかったか?」

 

「……そういえば、トイレに入る前にこんな事を言っていた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そうだ……アレ(・・)だけは、きちんと済ませておかなきゃ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……アレ(・・)って、何?」

 

「どういう事や? さっぱりわからへん……」

 

夏希や六課の面々はどういう事なのかわからず、ウーンと考え込む事しかできない……が、手塚だけは何となくだが気付き始めていた。

 

(まさか……!)

 

「……ヴァイス、ラグナちゃん。お前達の家はどこにある?」

 

「え? あ、えっと、ここからならそう遠くはないですけど……」

 

「よし、ハラオウン!! 車を出してくれ!! 急いでヴァイス達の家まで向かう!!」

 

「へ!?」

 

「ど、どういう事や手塚さん!! もしかして何かわかったん!?」

 

「あくまで推測だが……もしかしたらアイツは今、ヴァイス達の家に向かっているかもしれない……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな手塚の予想は、まさに的中していた。

 

「……」

 

グランセニック家の自宅。そのリビングルームまで帰って来た健吾は、椅子に座ったまま無言で部屋全体を見渡していた。

 

(……ここで過ごした時間は、どれくらいだったかな……)

 

初めてラグナに助けられてから現在まで。その期間は決して長くはなかったが、健吾にとっては非常に濃密で充実した時間だった。

 

「短い期間だったのに、懐かしく感じるな……」

 

台所の棚から、健吾はある物を取り出す。それはまるでエクシスの色を彷彿とさせる、オレンジ色のマグカップ。

 

(こんな自分の為に、ラグナちゃんが買ってくれたんだよね……凄く嬉しかったなぁ)

 

マグカップをテーブルに置き、椅子に座った健吾は静かに目を閉じる。目を閉じて思い浮かぶのは、ここでラグナと共に過ごして来た時間。

 

 

 

 

一緒に買い物に行った時の事。

 

 

 

 

一緒に料理をした時の事。

 

 

 

 

寝付けないラグナが眠れるまで傍にいてあげた時の事。

 

 

 

 

2人で楽しく笑い合った時の事。

 

 

 

 

(……うん、どれも凄く楽しい時間だった)

 

そう思える時間だったからこそ、同時に思う事もあった。これからもラグナと共に過ごしたいと思っている自分が今も心の中にいる……しかし、一緒に過ごしてはいけないと思っている自分もいた。

 

(やっぱり僕は、あそこにいるべきじゃない……)

 

ラグナの隣にいるべきなのは自分じゃない。ラグナが一緒に生きるべきなのは……

 

「……よし」

 

健吾は腹部の痛みに耐えながらも椅子から立ち上がり、自身の頬を両手でパンと叩いた。懐から取り出した封筒をテーブルに置かれたマグカップの隣に置いた後、健吾は部屋の窓の前に移動してからクルリと振り返った。

 

「短い期間だったけど……お世話になりました」

 

ペコリと頭を下げた後、健吾は振り返り窓ガラスと向き合う。そこには……

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

『『グルルルルル……!!』』

 

……窓ガラスを通じて、健吾を睨みつけているアビスラッシャーとアビスハンマーの姿があった。そんな2体に威嚇されようとも、健吾は怯まない。

 

「……言われなくても、こっちから向かってやるよ」

 

自分にはやらなければならない事がある。ラグナの為にも、絶対に倒しておかなければならない敵がいる。そう自分に言い聞かせ、健吾は窓ガラスにエクシスのカードデッキを突き出した。

 

「……変身!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――来たか」

 

ミラーワールド。とある高層ビルの屋上にライドシューターで駆けつけたエクシスは、ライドシューターの屋根が開いた先に待ち構えている宿敵―――アビスの姿を視界に捉えた。

 

「悪かったな、わざわざ来て貰って。少しばかりお前に用があってな」

 

「……僕もアンタに……いや、お前に用があってここへ来た」

 

ライドシューターから降りたエクシスは、アビスと正面から対峙する。その右手は既に、カードデッキからカードを引き抜こうとしていた。

 

「僕には果たしたい目的がある……その為に、お前と戦いに来たんだ」

 

「ほぉ、奇遇だな……俺も同じ目的で、お前をここに呼んだんだ」

 

≪≪UNITE VENT≫≫

 

『グガァァァァァァァァウッ!!』

 

『ギャオォォォォォォォンッ!!』

 

電子音と共に出現する、マグニウルペースとアビソドン。2体の巨大モンスターが互いを睨みつける中、エクシスとアビスも戦闘態勢に入ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――健吾さん!!」

 

数分後。フェイトが運転する車で駆けつけた手塚達は急いでグランセニック家の自宅に入り込んだが、部屋に健吾の姿はなかった。一同は部屋全体を探し回る。

 

「ねぇ、そっちはいた!?」

 

「駄目です、こっちの部屋にもいません!!」

 

「くそ、一体どこに……ん?」

 

手塚達があちこちの部屋を見て回っている中、ヴァイスはテーブルの上に置かれている封筒とマグカップの存在に気付いた。

 

「ラグナ! これが……」

 

「! これ、私が健吾さんに買ったマグカップ……それに……」

 

封筒を開けてみると、そこにはあの札束が入っている。それだけでラグナとヴァイス、そしてそれを見た手塚はすぐに察する事ができた。これは健吾が置いていった物なのだと。

 

「……夏希、ミラーワールドから探しに向かうぞ!!」

 

「へ!? ちょ、どういう事なの海之!!」

 

「これがここに置かれてるという事は……アイツはもう、ここには戻らないつもりだ!!」

 

「!? おい、どういう事だよそれ!? 何でアイツがそんな―――」

 

ヴァイスに問い詰められ、手塚はこの場にいる全員にわかるように言い放った。

 

「俺達が、もっと早く気付いてやるべきだったんだ!! 本当に救いが必要だったのは他でもない……アイツ自身だという事を!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」

 

『『グガァァァァァァァァァァァァッ!!』』

 

ミラーワールド、高層ビル屋上。エクシスとアビスは互いの左腕に装備したバイザーで叩きつけるように攻撃を繰り出し、マグニウルペースとアビソドンはエネルギー弾を放射して相殺し合うなど激戦を繰り広げていた。エクシスが振り上げたマグニバイザーの刀剣をアビスバイザーで防御し、アビスはエクシスの首元を掴む。

 

「ぐっ!?」

 

「俺達の計画において、お前は特に重要という訳でもないんでな。悪いが、ここで始末させて貰うぞ」

 

「ッ……何が目的だ……お前はこの世界で、何をしようとしている……!!」

 

「そんな大した目的じゃないさ。それを果たすのに、かなり手間はかかっちまうがな」

 

「が……うあぁっ!?」

 

エクシスを蹴りつけ、離れたアビスはアビスバイザーによる水のエネルギー弾でエクシスを狙い撃ちにする。攻撃を受けたエクシスが膝を突く中、アビスは次のカードをアビスバイザーに装填する。

 

≪SWORD VENT≫

 

「手塚海之、霧島美穂……六課に味方してるアイツ等は計画の要だ。殺す訳にはいかない……が、お前は違う。俺の事を知っているお前が六課と接触した以上、生かしておく訳にはいかない」

 

「……お前なんかに、倒される僕じゃない!!」

 

≪SWORD VENT≫

 

同じくソードベントのカードを装填し、マグニブレードを召喚したエクシスはアビスに斬りかかり、アビスもそれをアビスセイバーで防御。2人の長剣が激しく切り結び合う中、マグニウルペースは口元から放つ光弾をアビソドンに命中させ、磁力でアビソドンを強制的に自身の目の前まで引き寄せていた。

 

『グガァウッ!!』

 

『ギャオ!?』

 

引き寄せられたところを9本の尻尾で集中的に攻撃されるアビソドンだが、やられてばかりではない。アビソドンはその頭部からアーミーナイフ状のノコギリを伸ばし、マグニウルペースの顔面に叩きつけてマグニウルペースから強引に離脱。ノコギリを伸ばした状態のまま、両目を突き出してエネルギー弾を連射しマグニウルペースを高層ビルから突き落としてしまった。

 

『グガァァァァァァァッ!?』

 

「な……!?」

 

「接近戦と銃撃戦、両方同時にできないとは言ってないぞ」

 

「く……!!」

 

エクシスのマグニブレードを押して弾いた後、アビスは敢えてアビスセイバーをエクシス目掛けて投擲し、エクシスがそれを弾くと同時にアビスが疾走。エクシスが振るうマグニブレードをかわし、擦れ違い様に後ろへキックを放ちエクシスを蹴り飛ばした。

 

「ッ……が、あぁぁぁっ!?」

 

「! ほぉ……」

 

アビスのキックは偶然、エクシスの横腹に命中していた。それによりエクシスが予想していた以上に痛がっているのを見たアビスは、彼が腹部を負傷している事を一目で見抜いてしまい、即座に次のカードを装填する。

 

「手負いの状態でここに来るとは、舐められたものだな」

 

≪STRIKE VENT≫

 

「ッ……がぁ!?」

 

アビスの右手にアビスクローが装着される。起き上がったエクシスは右手でカードデッキからカードを引き抜こうとしたが、アビスバイザーから放たれる水のエネルギー弾がエクシスの右手に命中。エクシスに次のカードを引き抜かせないまま、アビスクローから強力な水流弾が発射される。

 

「沈め……はぁっ!!」

 

「う……ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

水のエネルギー弾を集中的に浴びていたのもあって、マグニバイザーによる防御態勢も取れなかったエクシスはその身に水流弾を受け、吹き飛ばされた勢いで高層ビルから地上へと落下。そんな彼をアビスは屋上から冷たく見下ろすのだった。

 

「少し飛ばし過ぎたか……ちゃんと、この手でトドメ刺さなきゃな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――あぐっ!?」

 

高層ビルから落下したエクシスは、背中から地面に叩きつけられてしまった。おまけに水流弾による一撃が腹部に命中したのもあって、エクシスは上手く立ち上がる事ができない。

 

「ッ……まだだ……!!」

 

それでも、自分は死ぬ訳にはいかない。エクシスは痛みを耐えながらも、マグニブレードを杖替わりにする事で辛うじて立ち上がる事ができた。

 

「こんなところで、僕は……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやおや、驚きだ。まさかこんな所でお会いする事になろうとはねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ッ!!」

 

その時だった。声のした方向にエクシスが振り返ると、その先からは彼も見た事のない謎の黒い戦士が、ゆっくり歩きながらその姿を現した。

 

「浅倉を探しにミラーワールドをお散歩してみたら、こんな所で“聖王の器”を逃がした仮面ライダーと遭遇する事になるとは……これは非常に嬉しい誤算だ」

 

「!? お前は……」

 

 

 

 

黒い仮面と黒いボディ。

 

 

 

 

仮面の額部分にある金色のVマーク。

 

 

 

 

ボディの側面にある金色のライン。

 

 

 

 

両肩にあるパイプのような金色の装甲。

 

 

 

 

右腕に装備された銀色のガントレットらしき召喚機。

 

 

 

 

そして腰に装着しているベルトと黒いカードデッキ。

 

 

 

 

 

 

 

それは仮面ライダーのような姿をしていたが、その特徴はエクシスが知る仮面ライダーとは違っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「お前、誰だ……!? その姿は一体……!!」

 

「あぁ、これかい? かつて君達がいた世界で、ある人物が開発したとされる疑似的なライダーシステムさ。開発者はこのシステムの事をオルタナティブと呼んでいたらしい」

 

「オルタナティブ……?」

 

「尤も、これは私が独自に改良を加えた最新型だ。この姿……そうだなぁ。オルタナティブ・ネオ、とでも名付けようかな? よし決めた、今からその名前で呼んでくれたまえ」

 

現れた謎の黒い戦士―――“オルタナティブ・ネオ”はそう言い放った後、ベルトに装填されている黒いカードデッキから1枚のカードを左手で引き抜く。そのカードも、通常のアドベントカードとは絵柄が違っていた。

 

「せっかくこうして対面できたんだ。このオルタナティブ・ネオの実戦データも取りたい事だし……少し、私と遊んでくれないかな?」

 

【SWORD VENT】

 

「ッ……!!」

 

オルタナティブ・ネオはそのカードを右腕のガントレット型召喚機―――“スラッシュバイザー”にスラッシュして読み込ませ、女性の声を思わせる電子音を鳴らす。すると読み込ませたカードが青い炎に燃えて消滅し、代わりにオルタナティブ・ネオの左手には黒い長剣―――“スラッシュダガー”が出現する。それを見たエクシスはマグニブレードを構えて跳躍し、迷わず斬りかかった。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

「おっと、躊躇なしか。ルーキー相手にも容赦がないねぇ」

 

振り下ろされて来たマグニブレードを、オルタナティブ・ネオはスラッシュダガーを振り上げて難なく防御。そのままマグニブレードを地面に叩きつけるように押しつけ、マグニブレードの刀身を足で踏みつける事でエクシスの手から離させ、下から振り上げるようにしてエクシスのボディをスラッシュダガーで斬りつける。

 

「がはっ!?」

 

「ふむ、威力は上々。お次はこれだ……フッ!!」

 

「!? 何……ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

オルタナティブ・ネオがスラッシュダガーを振り下ろした瞬間、スラッシュダガーの刀身から青い炎が斬撃として噴出され、エクシスの装甲を容赦なく焼き尽くす。接近戦と遠距離戦の両方を可能とするスラッシュダガーでの攻撃を受け、エクシスは溜まらず悲鳴を上げる。

 

「む? 出力が高いとはいえ、思ってた以上に苦しんでるねぇ……もしや、既に満身創痍の状態だったかな?」

 

「く……お前ぇ……ッ……!!」

 

「だとしたら残念だ。せっかく“聖王の器”を逃がしたライダーと出会えたというのに、肝心のターゲットがこんなボロボロでは碌な実戦データも取れやしない……さっさと始末するに限るかな?」

 

「舐めるなぁ!!!」

 

≪FINAL VENT≫

 

『グガァァァァァァァァァァァッ!!!』

 

「ん? おぉ!」

 

エクシスは倒れた状態ながらも、カードをマグニバイザーに装填しファイナルベントを発動。どこからか駆けつけて来たマグニウルペースがオルタナティブ・ネオの真上を通過してエクシスの背後に立ち、マグニウルペースを見たオルタナティブ・ネオは歓喜の笑い声を上げる。

 

「ハハハハハ!! ガジェットの映像で見ているとはいえ、こうして実物を見るとやはり素晴らしい!! あぁそうとも、そうこなくては面白くないじゃないか!!」

 

「黙れ!! そのうるさい口を閉じろ……!!」

 

『グラァァァァァァァァッ!!』

 

「おっと危ない」

 

マグニウルペースが9本の尻尾から青い火炎弾を複数放ち、オルタナティブ・ネオはそれらを転がって回避。体勢を立て直した彼はスラッシュダガーを地面に刺した後、カードデッキから次のカードを引き抜いてスラッシュバイザーに読み込ませた。

 

【ACCEL VENT】

 

「―――ハッ!!」

 

「!? 消え……う、が、ぐわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

『グギャアゥッ!!?』

 

オルタナティブ・ネオがスラッシュダガーを地面から引き抜いた直後。彼の姿が一瞬消えたかと思えば、目に見えぬスピードでエクシスを連続で斬りつけ、マグニウルペースの放つ光弾をも回避してからマグニウルペースを真下から斬りつけて宙に打ち上げた後、スラッシュダガーをバットのように振るいその巨体を遠くへ吹っ飛ばしてしまった。ここまでの時間は10秒もかかっていない。

 

「ッ……そんな……!!」

 

「君達の戦闘スタイルは既に把握しているよ。君のモンスターは標的に光弾を当てる事で、その標的に極性を与え、磁力で自在に引き寄せたり引き離したりする事が可能になる……ならば最初から、その光弾に当たらなければどうという事はないという話さ」

 

「ぐはっ!?」

 

起き上がろうとしたところをオルタナティブ・ネオに蹴り転がされ、エクシスは大の字で地面に倒れる。既にその体はダメージが溜まり過ぎており、エクシスはまともに立ち上がる事もできない。

 

「はぁ、はぁ……ッ……!!」

 

「う~ん……残念ながら、君は本当にここまでのようだね。仕方ない、大人しく死んでくれたまえ」

 

オルタナティブ・ネオはエクシスの胸部を踏みつけ、その首元にスラッシュダガーを突きつける。両手で構えたオルタナティブ・ネオはそのままスラッシュダガーを突き立てようとしたが……

 

 

 

 

 

 

≪ADVENT≫

 

 

 

 

 

 

『キュルルルルル……!!』

 

「ん……ぬぉっ!?」

 

飛んで来たエビルダイバーの突進を受けた事で、それは失敗に終わった。吹き飛ばされたオルタナティブ・ネオが上手く地面に着地する中、エクシスの傍にはライアとファムが駆けつけて来た。

 

「健吾、大丈夫!?」

 

「ッ……アンタ達……どうして……」

 

「説明は後だ!! お前は今すぐ撤退しろ!!」

 

「ほほぉ、君達か。まさかそちらから出向いて来てくれるとは、研究者の身としては嬉しい限りだよ……!」

 

「研究者? ……お前、まさか!!」

 

「おや、気付いてくれたかな? そうとも、私はジェイル・スカリエッティ。君達と協力関係にある機動六課が捜索している次元犯罪者……その張本人がこの私さ!!」

 

「スカリエッティ!? アンタが……!?」

 

「ッ……逃げろ、早く!! ここは俺が足止めする!!」

 

≪SWING VENT≫

 

「おっと!」

 

ライアは召喚したエビルウィップを即座に振り回し、オルタナティブ・ネオはそれをスラッシュダガーで斬りつけ切断する。

 

「手荒だねぇ。もっと新人には優しくしてくれたまえよ」

 

「悪いが、遠慮できる相手ではないと判断させて貰ったまでだ……!!」

 

「はは、手厳しいじゃないか!!」

 

ライアとオルタナティブ・ネオが対峙する一方、ファムは倒れているエクシスを起き上がらせ、彼に肩を貸してこの場から撤退しようとする。

 

「健吾、しっかりして!! 歩ける!?」

 

「ッ……何で来たんだ……僕なんか、放っといてくれれば……!」

 

「馬鹿な事言うなよ!? アンタはここで死んじゃいけない!! アンタが死んだら、ラグナちゃんがどれだけ悲しい思いをすると思ってるんだ!!」

 

しかし、そうはさせてくれないのがスカリエッティという男だ。ライアを押し退けたオルタナティブ・ネオはファムとエクシスの姿を見据えた後、スラッシュバイザーにカードをスラッシュし読み込ませた。

 

「おっと、そちらのお嬢さんは残って貰おうか」

 

【ADVENT】

 

『グオォォォォォォォォォッ!!』

 

「!? きゃあっ!?」

 

「ぐっ!?」

 

電子音と共に、どこからかコオロギとロボットが組み合わさったような怪物―――“サイコローグ”が出現。飛びかかって来たサイコローグに激突したファムとエクシスは転倒し、サイコローグは倒れているファムの方に伸し掛かるように襲い掛かって来た。

 

「夏希!!」

 

『グォォォォォォ……!!』

 

「く、邪魔だよコイツ……健吾、アンタだけでも逃げろ!! 早く!!」

 

「ッ……!!」

 

エクシスがフラフラながらも何とか自力で歩いて撤退していく中、ファムは自身を組み伏せているサイコローグの腹部を蹴りつけ、サイコローグが倒れた隙に起き上がってライアと並び立つ。一方でオルタナティブ・ネオの隣にもサイコローグが並び立ち、2対2の状態に持ち込まれる。

 

「ふむ……良い、実に面白い状況だ……!!」

 

【SHOOT VENT】

 

次のカードが読み込まれ、スラッシュダガーを地面に刺したオルタナティブ・ネオの左腕にはサイコローグの頭部を模したミサイル砲―――“クラッシュボマー”が出現。それと共にサイコローグも複数の目がある顔を両手で覆い、それぞれ同時に複数の小型ミサイルを発射する。

 

「さぁ、ぜひとも私を楽しませてくれたまえ!!!」

 

『グゴォォォォォォォォォォォッ!!!』

 

「ッ……ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

複数の小型ミサイルが地面に着弾し、ライアとファムが吹き飛ばされてしまう。吹き飛んだ2人に更なる追撃を仕掛けるべく、オルタナティブ・ネオはその場から素早く駆け出そうとしたが……ここで彼は気付いた。

 

「……む?」

 

オルタナティブ・ネオの右腕が、僅かに粒子化を始めていた。それを見たオルタナティブ・ネオは残念そうな口調で呟く。

 

「やれやれ。私の技術を以てしても、やはり制限時間を引き延ばす事は不可能か……」

 

「ぐっ……!!」

 

「げほ、ごほ……!!」

 

「まぁ良い、これでも貴重な実戦データだ。続きはまたの機会にするとしよう。次に会う時を楽しみにしているよ、仮面ライダー諸君……ククククク、クハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

オルタナティブ・ネオは倒れているライアとファムに背を向け、高笑いしながらサイコローグと共にその場を後にしていく……そんな彼等の様子を、近くの建物の物陰からアビスはしっかり窺っていた。

 

(危ない危ない。あのガキを追いかけてみれば、危うくスカリエッティと鉢合わせするところだった訳か……早いところ、あのガキを仕留めに向かわないとな……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……ッ……!」

 

一方、オルタナティブ・ネオの襲撃から逃れる事に成功したエクシスは、ボロボロの状態ながらもマグニブレードを杖替わりに何とか自力で移動していた。幸い、その周囲に野良モンスターの気配はしていない。

 

(ッ……あの2人……何で、こんな……僕の為に……)

 

正直なところ、あの2人があそこまでして自分を助けに入った事が今でも信じられなかった。元いた世界で遭遇したライダーが碌でもない奴ばかりだったせいで、彼はあの2人の事も心から信用する事はできずにいる。しかしそんな彼でも、1つだけ信用できる点が存在していた。

 

(……ラグナ、ちゃん……)

 

それは、ラグナを悲しませる訳にはいかない事だった。自身を助ける際にファムが言い放った言葉は、心から信用し切れていない彼でも少しだけ嬉しく感じた。今の自分がやっている事は無謀な行為だと、自分で理解しているはずなのに。

 

(……そっか……やっぱり僕は……ラグナちゃんの、傍にいたかったんだ……)

 

こうしてボロボロになる事で、改めて気付く事ができた。やっぱり自分は、ラグナと一緒に生きたかったんだという事を。陰ながら彼女を守って行こうと決意したはずなのに、自分がそれを願っているという事を。その感情が恩人に対する思いなのか、それとも異性に対する思いなのか……それは彼自身にもわからなかった。

 

「……は、はは……本当に、馬鹿だなぁ……僕は……ッ……!」

 

あれだけ覚悟を決めたはずなのに。自身の体はこうして、ラグナ達の家まで向かおうとしている。そんな自分が馬鹿に思えてきたが……それでも、ラグナの下に帰ろうとする足を止められない。仮面の下では渇いた笑みが小さく零れ出る。

 

(後少し、だ……後、少し……で……)

 

ラグナ達の家まで、だいぶ近付いて来た。これで帰れる。またラグナと顔を合わせる事ができる。この時点では、彼はそう思っていた。

 

そう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぉ、初めて見るライダーだなぁ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の前に、死神(・・)が現れるまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!? お前、は……ッ……ぐ、ぅ……!!」

 

「何だ、もう死にかけか? つまらんな」

 

現れた死神―――王蛇は不満そうな表情を仮面の下で浮かべ、エクシスはフラフラながらもマグニブレードを両手で構えようとする。しかし、なかなかライダーに対面できずイライラが溜まっていた王蛇は、そんな彼が回復するのを待ってあげるつもりなど毛頭なかった。

 

「……消えろ」

 

≪FINAL VENT≫

 

鳴り響く電子音。それはライダーに対する、事実上の死刑宣告だった。

 

「ッ……はぁ……はぁ……」

 

絶望的な状況だった。それでもエクシスは、構えたマグニブレードを下ろそうとはしなかった。

 

「それでも……僕、は……僕は……ッ!!」

 

「ハァッ!!」

 

『シャアァァァァァァァァッ!!!』

 

ベノスネーカーが吐いた毒の激流に乗り、王蛇が飛来する。そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラァァァァァァァァァァッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズガガガガアァンッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王蛇の無慈悲な連続蹴りが、エクシスのその身を大きく吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピシィッ!!

 

「ッ!?」

 

現実世界。ラグナ達の家で待機していたフェイト達は、テーブルに置かれていたオレンジ色のマグカップに突如大きな罅が生えたのを見て驚愕していた。

 

「マグカップが……!」

 

「な、何で急に罅が……」

 

「……いや」

 

その罅割れたマグカップを見て、ラグナはワナワナと頭を震わせる。ミラーワールドで健吾の身に何かがあったんじゃないかと。そう思わずにはいられなかった彼女は、窓ガラスに縋りつく事しかできなかった。

 

「お、おい、ラグナ!?」

 

「駄目……死なないで……健吾さぁんっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピシャアッゴロゴロゴロゴロ!!

 

 

 

 

雷の音が響き渡る。雨がポツポツと降り注ぎ始めたミラーワールドでは、橋の上に俯せの状態で倒れている健吾の姿があった。彼のすぐ傍には、粉々に破損したエクシスのカードデッキが散らばっている。

 

(……もう……無理そう、か……)

 

動かない体は、痛みどころか感覚すらなかった。仮にまだ動けたとしても、カードデッキが破損した状態でミラーワールドから出る事は不可能。既に死ぬ事が確定している彼の脳裏に、2人の人物が浮かび上がっていく。

 

 

 

 

(小夜……)

 

 

 

 

かつて自分が救えなかった実の妹。

 

 

 

 

(ラグナ、ちゃん……)

 

 

 

 

この世界で出会った、命を救ってくれた恩人。

 

 

 

 

(……僕、は……もう……ここまで、だ……)

 

 

 

 

見てみると、自身の右手が粒子となり始めている。それはいずれ全身に広がり、やがて消滅するだろう。もはや何の感覚もしていない彼は、それが他人事のように見えていた。

 

 

 

 

(ごめん、ね……それから…………あり、が……と……)

 

 

 

 

瞼が静かに閉ざされていく。

 

 

 

 

何も聞こえなくなる最後まで。彼の耳にはただ、雨の音だけがうるさく響き渡っていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……また、代わりのライダーを探さねばな』

 

離れた位置から、その一部始終を見届けていたオーディン。彼は面倒臭がっているかのような口調で呟いた後、その場から一瞬でその姿を消すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴木健吾/仮面ライダーエクシス……死亡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから時間は経ち、深夜のミラーワールド……

 

 

 

 

 

『シャアッ!!』

 

『キシャアァ!!』

 

『グルァ!!』

 

土砂降りの雨が降り注ぐオフィス街。とある建物の上から街を見渡しているモンスター達の姿を、雷が明るく照らしてみせた。

 

 

 

 

赤いボディに長い尾羽を持つ個体。

 

 

 

 

緑色のボディに円盤状の武器を持つ個体。

 

 

 

 

頭部の羽根飾りにトマホークのような武器を持つ個体。

 

 

 

 

鳥類を彷彿とさせる3体のモンスター。そのモンスター達を率いるかのように現れた戦士もまた、雷によってその姿を明るく照らされる。

 

「……」

 

 

 

 

赤紫色のボディ。

 

 

 

 

尖がった形状の後頭部。

 

 

 

 

左腰に納めた刀剣型の召喚機。

 

 

 

 

鳥のエンブレムが刻まれたカードデッキ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その戦士はどこか、ライアを彷彿とさせる姿をしていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




リリカル龍騎StrikerS!


ゼスト「あのような優しい男が、何故こんな事を……」

夏希「海之、どうしたんだよ一体!?」

手塚「離せ!! アイツは俺がぁっ!!!」

???『シャアッ!!』

オーディン『手塚海之、これがお前の試練だ……!』


戦わなければ生き残れない!






手塚「どうして……どうしてお前が……!?」





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