執筆にだいぶ時間がかかりましたが、ようやく第33話の更新です。
……さて、ようやくここまで辿り着けました。
先に言っておきますと、自分は今作の執筆を開始する際、まず最初に決めている事が1つありました。
それは、“あのキャラ”を絶対に登場させる事。
それは湯村でも、二宮でも、ましてや浅倉でもない。
それは手塚海之を語るのに、一番欠かせない人物。
さぁ皆さん、大変お待たせしました。
そろそろ、手塚の表情を本格的に曇らせたいと思います。
それではどうぞ。
「ッ……夏希、本当に大丈夫なのか……!!」
「アタシなら大丈夫だって……ッ……それより早く、健吾の後を追わなきゃ……!!」
土砂降りの雨が降り注ぐミラーワールド。オルタナティブ・ネオとの戦闘で受けたダメージが未だ残っているライアとファムであったが、それでも全く走れないというほどのダメージでもなかった。2人は先に撤退したエクシスを見つけ出すべく、水溜まりの上を駆け抜け水飛沫を上げていく。
「健吾の奴、もう戻った後かな……!!」
「わからん、とにかく急いでアイツを見つけ……ッ!?」
「あいた!? ちょっと海之、急に止まったら危、な……」
ラグナ達の家へ向かう為の橋の上。走っていたライアは何かを見つけて途中で立ち止まり、その後ろを走っていたファムが急に止まれずライアにぶつかる。急に立ち止まった事を怒ろうとするファムだったが……ライアが見ている先にある物を見て、その怒りも一瞬で消え去った。
「……海之、これって……」
「……アイツのカードデッキだ」
2人が見下ろす地面に落ちていたのは、粉々に砕け散ったエクシスのカードデッキ。こんなミラーワールドの中で破損したカードデッキ……たったそれだけの事で、2人はエクシスの結末を容易に察してしまった。
「ッ……」
「……そんな……健吾の奴……」
ライアが顔を逸らしながら立ち尽くす中、ファムはその場に膝を突き、カードデッキの破片に手を伸ばす。そんな2人の様子を、離れた位置からアビスが隠れて眺める。
(あのガキは死んだか……俺が手を下すまでもなかったようだな……)
エクシスの死を確認したアビスが立ち去っていく間も、ライアとファムはその場から1歩も動けない。そんな2人の心情を表すかのように、無情な雨はミラーワールド全体に降り続けるのだった。
『『グゥゥゥゥゥゥ……!!』』
一方、同じミラーワールド内のとある鉄塔。その鉄塔の上には、マグニレェーヴとマグニルナールの2体がクラナガンの町全体を見下ろしていた。
『『……グラァッ!!』』
今までは契約によってエクシスに付き従って来たマグニレェーヴ達。エクシスが死んだ今、契約が切れて野良モンスターに戻った2体は、次の獲物を求めて鉄塔から飛び降り、雨の降るミラーワールド内を疾走していく。
「今日の訓練はここまで! 皆、お疲れ様!」
「「「「はい、ありがとうございます!!」」」」
「おう、ドリンク持って来てやったぞ」
「はい、これでしっかり水分補給してね」
数日後。今もまだ悪天候が続く中、機動六課では変わらずフォワードメンバー達の訓練が行われていた。この日の訓練が終わり、なのはが労いの言葉を投げかけ、フォワードメンバー達が大きな声で返事を返し、ヴィータとフェイトがそんな4人に水分補給用のドリンクを渡していく。ここまでは普段と変わらない1日だった……のだが。
「あの、フェイト隊長……手塚さんと夏希さんは……」
「……うん。私から2人に呼びかけてみたんだけど……」
「今日も訓練場には来なかったよ……まぁ、無理もねぇ話だよな」
この数日間、手塚と夏希は一度も訓練場に顔を見せてはいなかった。今までは2人の内どちらかが訓練を見物している事が多かったのだが、この日はどちらも姿を見せていない。それが既に数日ほど続いている。
「2人共、やっぱり健吾君の事で……」
「……一番辛いのはラグナちゃんだと思う。あの時も、健吾君の事で物凄く荒れてたから。今はいくらか落ち着いてはいるみたいなんだけど……」
「……エグいもんだよな、ライダーの戦いって。人が死んだってのに遺体も残らない……こんなにも、人が死んだっていう実感が湧かない戦いがあったなんてな」
「そんな戦いを、手塚さんと夏希さんは生き延びてきたんですよね……」
ティアナが零した言葉で、その場にいる全員の表情が沈む。本当なら自分達で何か声をかけてやりたいが、彼女達はミラーワールドで何があったのかを見ていない。戦いの当事者ではない彼女達では、2人にかけてやれる言葉がどうしても見つかりそうになかった。
「―――ジェイル・スカリエッティもライダーに、ねぇ」
一方、部隊長室。はやてとシグナムは今、深刻そうな表情で机に置かれている絵を眺めていた。その絵は手塚が簡潔ながらも描いてみせたオルタナティブ・ネオの姿で、その隣には王蛇の姿まで簡潔に描かれている。相変わらず手塚の書く絵はクオリティが高いようだが……そんな事は今は特に重要ではない。
「スカリエッティが変身していたというこの姿は、他のライダーとは少し姿が違うようですね……」
「せやなぁ……けど、そこは特に重要やあらへんね。問題は本人も含め、スカリエッティ側が2人のライダーを戦力として保有してるという事やな。これは手塚さんと夏希ちゃんだけじゃ流石にキツいかもなぁ」
「しかし、我々ではミラーワールドには一切干渉できません。あのインペラーとエクシスのカードデッキも、破損しているのが原因で解析が上手く進んでいないようで」
「歯痒いもんやなぁ……2人はあんなに傷付いてまで必死に戦ってるというのに、私達はそんな2人を援護しに行く事すらできへん……何か、2人の力になれるような事があればええんやけど……」
溜め息の音だけが部屋に響く。この2人もまた、手塚と夏希の戦いを碌に手助けしてやれない事をとても歯痒く感じているようだった。
食堂、とあるテーブル席では……
「……」
「……」
手塚は腕を組んだまま、夏希はテーブルに顔を突っ伏したまま、全く動こうとしていなかった。そんな暗過ぎる2人に話しかけられる勇気を持つ者はおらず、2人が注文したであろうコーヒーも既に冷めかけている。
「コーヒー、冷めちまってんぜ」
「「……!」」
そんな2人に、低い声で話しかける者がいた。2人が視線を向けると、そこにはいつものように注文した昼食をお盆に乗せているヴァイスの姿があった。
「ここ、座って良いか?」
「……あぁ」
「……ん」
テーブル席の椅子はちょうど3つあり、残る1つの椅子にヴァイスが座り込む。ヴァイスも同じく無言で昼食を食べ始める中、最初に手塚が小さい声だが口を開いた。
「……ラグナちゃんはどうしてる?」
「……今はだいぶ落ち着いてるぜ。ザフィーラの旦那と一緒に、昼寝中のヴィヴィオちゃんを見てくれてる」
「……そうか」
それ以上の会話は続かない。再び無言になる手塚を見て、ヴァイスは進めていた箸を止めて口を開く。
「……手塚の旦那が言っていた事」
「「?」」
「……本当に救いが必要だったのは、健吾の方だって。その言葉の意味が、今ならわかる気がするよ」
「……そうか」
「……完全に俺のせいだよな。ラグナには健吾がいる……なんて言っちまったせいで、アイツは……」
「ッ……違う、ヴァイスのせいじゃないって! 健吾が死んだのは―――」
「自分達のせいだって。そう言いたいんだろ?」
「……!」
頭を上げて否定しようとする夏希を、ヴァイスが手で制する。
「……俺は何にもわかっちゃいなかった。ラグナの気持ちも、健吾の気持ちも……俺がどっちの気持ちも理解しようとしなかったせいで、こんな事になっちまったんだ……だから、アンタ達の責任じゃない」
「ヴァイス……」
「初めて見た気がするよ。俺のミスショットで目が潰れちまっても、全く俺を恨もうとしなかったラグナが……あんなに取り乱してるところなんてな―――」
『じゃあ、健吾君は……!!』
『……すまない』
『……ッ!!』
手塚と夏希がミラーワールドから帰還した後。2人が持ち帰って来たカードデッキの破片を見て、フェイト達も健吾の末路を察する事になり、特にラグナに至ってはその場に膝を突くほどだった。ラグナはその場に俯き、拳を強く握り締める。
『……どうして』
ラグナがボソリと呟く。
『どうして、健吾さんが死ななきゃいけないの……どうして……健吾さんが何をしたって言うの……?』
『……』
『ねぇ、どうして……どうしてなのよ……ねぇ……ッ……!!』
『……ラグナ?』
『何でなの……何で……ッ……何で!! 何で健吾さんが死ななきゃいけないの!! ねぇ、何でよっ!!!』
『!? ラグナちゃん、落ち着いて!!』
『どうして!! ねぇ、何で!! どうして健吾さんがぁ!!!』
『ラグナッ!!!』
ラグナが少しずつ声を荒げ、それと共に拳を何度も床に叩きつけ始める。それを見て慌てて制止しようとするなのは達だが、それでもラグナは聞こうとせず、ヴァイスが無理やり彼女を抱き締める事でようやく制止させる。
『何でなの、健吾さん……どうして……ッ……』
『ッ……ラグナ……!!』
『何、で……ッ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!』
『『『『ッ……』』』』
とうとう我慢できなくなったラグナは、ヴァイスに抱き締められながら泣き始めた。そんなラグナをヴァイスは力強く抱き締めてやり、それを見た手塚達は只々悲痛な表情を浮かべる事しかできなかった。
「―――本当、何やってんだろうなぁ。俺は」
コーヒーを口にしてから、再びヴァイスが口を開く。その口元は笑っていたが、目が笑っていない事は手塚と夏希が見ても明らかだ。
「俺も健吾も、ラグナにとってはどっちも大事だったんだ。そんな簡単な事に気付いてやれなかった自分が、マジで嫌になる」
「ッ……ヴァイス、それは……」
ヴァイスの悲しげな笑みを見て、夏希が言葉に詰まる。ヴァイスは持っていた箸を皿の上に置く。
「あぁ、本当に嫌になるぜ。ラグナが今も落ち込んでるってのに、兄貴として妹にかけてやるべき言葉が何にも思いつかねぇんだ……手塚の旦那、夏希の姐さん……俺は一体、どうすりゃ良いんだろうなぁ……?」
その言葉を最後に、会話が途切れて3人は再び無言になる。そんな話をしている内に、3人が注文したコーヒーは今度こそ完全に冷め切ってしまっていた。
クラナガン、とある高層ビルの屋上。
「……あそこか」
「うん」
そこにはゼストとルーテシアが立っていた。2人は屋上から、管理局の公開意見陳述会が行われる事になっている施設を眺めている。
「明日、あそこで意見陳述会が行われる。その時が、ドクターの作戦が始まる合図……」
「奴の目的には興味はない。俺は俺の目的を果たすまでだ……ところで、“彼”はどうした?」
「お兄ちゃんは今、ミラーワールドに向かってる。機動六課に会いたい人がいるって」
「……そうか」
ゼストは懐からある物を取り出す。それは鳥のエンブレムが刻まれた、赤紫色のカードデッキ。
「不憫な物だな。アイツのような優しい男が、何故こんな事を……スカリエッティに利用されるであろう事は承知の上だろうに」
「……たぶん、私の為にやってくれてるんだと思う。だから……」
「スカリエッティの作戦に参加する事を決めた、か……無理をしおってからに」
「……目的のレリックは私が見つけ出す。一刻も早く、お兄ちゃんを安心させてあげたいから……」
「……それがお前の覚悟か、ルーテシア」
「うん……」
キィィィィィン……キィィィィィン……
2人の耳に、あの金切り音が響き渡る。それと共に……
『―――シャアッ!!』
1体のモンスターが、六課本部まで接近しようとしていた。
キィィィィィン……キィィィィィン……
「「……!」」
それから数十分後。たまたま隊舎の通路を歩いていた手塚と夏希は、モンスターの接近を知らせる金切り音を耳にした。2人はすぐさま駆け出し、窓ガラスの前に立ちカードデッキを突き出す……が、夏希はカードデッキを突き出したまま動きが固まりかける。
「ッ……」
「夏希、大丈夫か?」
「……うん、大丈夫」
どんな悲劇が起きた後だとしても。どれだけ元気がなかったとしても。モンスターが現れた以上、自分達が戦わなければならない。そう自分に言い聞かせ、2人は変身ポーズを取りカードデッキをベルトに装填した。
「「変身ッ!!」」
ミラーワールド、とある工場跡地の施設……
『―――ブルァァァァァァァァッ!!!』
「「ッ!?」」
ライドシューターでミラーワールドに到着したばかりのライアとファムに向かって、イノシシの顔を模した大きな盾をボディに装備した青色の怪物―――“シールドボーダー”が、強烈な体当たりを仕掛けて来た。2人が急いでライドシューターから降りた直後、シールドボーダーの体当たりがライドシューターを勢い良く薙ぎ倒し、振り返ったシールドボーダーは2人に向かって再び体当たりを繰り出した。
「避けろ!!」
「ちょ、危なっ!!」
『ブルルルル……ブルアァッ!!』
「「うぁあっ!?」」
2人は左右に回避するが、シールドボーダーは即座に振り返ると同時に、そのボディに装備していた盾を取り外して振り回し、同時に薙ぎ払われた2人は積まれている木箱やドラム缶の中まで突き飛ばされる。
「ッ……コイツ、どんだけ馬鹿力だよ……!!」
「夏希、コイツの動きを抑えられないか……!?」
「やってみる……!!」
≪GUARD VENT≫
『!? ブルゥ……!?』
ファムがウイングシールドを召喚した瞬間、施設内に無数の白い羽根が広がり始めた。それによって2人の姿を見失ってしまったシールドボーダーは周囲をキョロキョロ見渡すが、そんなシールドボーダーの足元にファムのウイングスラッシャーが叩きつけられる。
「はぁ!!」
『ブルァッ!?』
足を引っかけられるように攻撃され、シールドボーダーは大きく回転しながら地面に転倒。その際に盾を手離してしまい、その隙を見逃さなかったライアがどこからかエビルウィップを巻きつけ、防御面が疎かになったシールドボーダーの動きを封じる事に成功する。
『ブ、ブルゥ!?』
「よし、捕らえた……夏希!!」
「OK、トドメはアタシが―――」
ズドドドドオォンッ!!!
「「ッ!?」」
その直後だ。突如ライア達の周囲を覆うように、いくつもの火炎弾が降り注ぐように飛来し、ライアとファムは吹き飛ばされてしまった。
「ッ……何だ!?」
「アタシにもわからな……うわたた!?」
『ブルウゥ!?』
これはシールドボーダーにとっても想定外の事態らしく、ライア、ファム、シールドボーダーは次々と飛んで来る火炎弾に怯まされ続ける。その時……
『シャアァッ!!』
「な……ぐぅ!?」
突如、どこからか長い尾羽のような物が伸び、ライアの首に巻きついて来た。首に巻きついた尾羽で苦しむライアが振り向いた先には、積まれたドラム缶の上から尾羽を伸ばしている赤いモンスターを発見する。
「ッ……アイツ、は……!!」
その赤いモンスターに、ライアは見覚えがあった。
何故ならそのモンスターは……
『たとえ、この指が動くようになるとしても……人と戦うなんていやだ』
『シャアッ!!』
『雄一!? 雄一!! 雄一ィッ!!! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』
「ッ……!!」
≪COPY VENT≫
「……うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
その瞬間、ライアの動きが変わった。コピーベントでウイングスラッシャーをコピーしたライアは、自身の首に巻きついている尾羽を切断。切断した尾羽を地面に放り捨てたライアはウイングスラッシャーを構えたまま、その赤い鳥類の怪物―――“ガルドサンダー”に向かって突撃した。
「ッ……海之!?」
『シャアッ!!』
ライアの雄叫びにファムが驚く中、ガルドサンダーはドラム缶の上から飛び立ち、その圧倒的な飛行能力でライアを翻弄し始めた。ライアが走る後ろに次々と火炎弾が飛来し、施設内はどんどん炎に包まれていく。
「海之、急にどうし……ッ!?」
『ブルゥッ!?』
地面に着弾した火炎弾の爆発で、ファムとシールドボーダーは全く身動きが取れない。その一方でライアはドラム缶を利用して高く跳躍し、天井に近いところまで飛行しているガルドサンダーにウイングスラッシャーの一撃を叩き込んだ。
「はぁっ!!!」
『シャッ!?』
撃墜されたガルドサンダーが地面に落下した後、着地したライアはすぐさま駆け出す。起き上がろうとしたガルドサンダーに向かって何度もウイングスラッシャーを叩きつけるその姿は、今までライアがやって来た戦い方とは明らかにどこか違っていた。
『ッ……シャアァ!!』
「ぐぁっ!?」
何とかウイングスラッシャーを掴み、ガルドサンダーがライアの腹部を蹴りつけウイングスラッシャーを力ずくで奪い取る。そのままウイングスラッシャーが地面に投げ捨てられる中、ライアは再びエビルウィップを構えてからガルドサンダーに攻撃しようとしたが、そんな彼をファムが制止しようと掴みかかった。
「海之、どうしたんだよ一体!? アンタらしくないよ、そんな戦い方!!」
「離せ!! アイツは俺がぁっ!!!」
「ッ……海之……!?」
『シャァァァァァァッ!!』
「うわぁっ!?」
ファムの制止すら無理やり振り払い、ライアはエビルウィップでガルドサンダーに攻撃を仕掛ける。その攻撃を飛んで回避したガルドサンダーは口から火炎放射を放ち、回避できなかったファムがその身に浴びてしまう。そんな彼女に一切目も暮れず、ライアはエビルバイザーにファイナルベントのカードを装填する。
≪FINAL VENT≫
『キュルルルルル……!!』
「……はぁっ!!!」
『シャァァァァァァ……シャアッ!!』
電子音と共にエビルダイバーが飛来し、その背に飛び乗ったライアはガルドサンダー目掛けて突撃。しかしガルドサンダーは真上に高く飛び上がり、ライアのハイドベノンを回避して施設の天井を破壊。そのまま施設の外まで飛んで逃げて行ってしまった。
「待てぇ!!!」
「海之!? ちょっと待てってば……海之ッ!!!」
『ブルルルルァ!!』
「ッ……あぁもう、邪魔だよお前!!」
ライアはエビルダイバーに乗ったまま、逃げたガルドサンダーを追って施設の外へ飛び出していく。その後を追おうとしたファムだったが、そこへシールドボーダーが再び体当たりを仕掛け、ライアを追いかけようとしたファムの動きを妨害してしまうのだった。
『―――シャアッ』
逃走したガルドサンダーはその後、工場跡地から少し離れた位置にある巨大アリーナの近くまで来てからようやく地面に着地。そこへエビルダイバーに乗ったライアも飛来し、地面に降り立ったライアは再びガルドサンダーと正面から対峙する。
「倒す……お前だけは絶対に……ッ!!」
『シャァァァァァァ……!!』
ライアとガルドサンダー。
雨が降り注ぐ中、少し距離の離れた1人と1体が姿勢を低くして構え、再び戦いを繰り広げようとした……その時。
「悪いけど、少し待ってくれないか?」
「―――!?」
1人のライダーが、ライアとガルドサンダーの間にシュタッと着地してみせた。そのライダーの姿に、ライアは驚愕する。
「ッ……お前は……!?」
赤紫色のボディ。
尖がった形状の後頭部。
左腰に納めた刀剣型の召喚機。
鳥のエンブレムが刻まれたカードデッキ。
ライアを彷彿とさせる姿をしたそのライダーに、ライアは仮面の下で驚きを隠せなかった。
「お前は、一体……」
「……こうしてまた会えるなんて、思ってもみなかった」
ライアと似た姿をしたそのライダーは、着地した地面から静かに立ち上がった後……衝撃の一言を放った。
「
「…………え」
たった一言。
その一言を聞いた瞬間……ライアは察してしまった。
目の前に立っている、そのライダーの正体を。
『ブルルルルァッ!!!』
「ッ……あぁもう、ウザいんだよパワー馬鹿!!」
『ブルァ!?』
一方、燃え盛る工場跡地の施設内で今もまだ戦闘が続いていたファムは、何度も繰り返すように体当たりを仕掛けて来るシールドボーダーに痺れを切らしている様子だった。突っ込んで来たシールドボーダーの足を上手くブランバイザーの刀身で引っ掛け、シールドボーダーが転倒している隙に、ファムはすかさずブランバイザーにファイナルベントのカードを装填した。
≪FINAL VENT≫
『ピィィィィィィィィィッ!!』
『!? ブルァアッ!?』
施設の壁が破壊され、飛来したブランウイングがシールドボーダー目掛けて突風を発生させる。周囲の炎すらも消し飛ばすほどの突風にシールドボーダーは溜まらず吹き飛ばされ、吹き飛ぶ先で待ち構えていたファムはウイングスラッシャーを大きく振り下ろし……
「はぁっ!!!」
『ブルァァァァァァァァァァァァッ!!?』
シールドボーダーのボディが真っ二つに両断された。先程の攻防で盾を落としてしまっていたシールドボーダーはその一撃を防げず爆散し、爆炎の中から出現したエネルギー体をブランウイングが捕食する中、ファムはすぐにブランウイングの背中に飛び乗った。
「ごめんブランウイング、海之達を探してくれ!!」
『ピィィィィィィィィィッ!!』
そんなファムの頼み事を引き受けたのか、ブランウイングは彼女を背に乗せたままライア達が飛んで行った方角へと移動を開始する。そしてブランウイングが飛行する中で、ファムは先程のライアの行動について疑問を抱き始めていた。
(さっきの海之、何か様子が変だった……あの赤いモンスターと、何か関係があるのかな……?)
場所は戻り、巨大アリーナ付近……
「……そんな……」
現在、ライアは目の前に立っているライダーの存在が信じられずにいた。
「嘘だ……お前は、確かにあの時……」
「嘘じゃないさ。
「ッ……!!」
(! あのライダーは……)
ガルドサンダーを付き従える謎のライダー、それと対峙するライア。そんな彼等の様子を、モンスターの反応を察知してたまたまこの場所までやって来たアビスが、隠れて静かに窺っている。そんな事など知る由もないライアは、首をワナワナと震わせる。
「ッ……嘘だ……」
ライアはどうしても否定したかった。
そんな事はあり得ない。
目の前に立っているライダーの正体が、“彼”であるはずがないと。
だが、そんなライアの思いは一瞬で崩れ去った。
そのライダーが発した声。
その声は、自分がよく知る人物の声をしていた。
「どうして……どうしてお前が……!?」
そのライダーが発した声。
その声は、こんな場所にいるはずがない人物の声をしていた。
「どうして……どうして、お前がここにいるんだ……!!」
ライアはとても信じられなかった。
その声を発する人物が、仮面ライダーとして姿を見せた事が。
「なぁ……答えてくれ……」
「―――雄一ィッ!!!!!」
その様子を、オーディンもアビスと同じように高所から眺めていた。
『手塚海之、これがお前の試練だ……!』
手塚海之……またの名を、仮面ライダーライア。
斉藤雄一……またの名を、仮面ライダーブレード。
2人の戦士が今……残酷な運命によって、振り回されようとしていた。
To be continued……
リリカル龍騎StrikerS!
手塚「やめろ、やめるんだ雄一!?」
雄一「俺は、お前を倒さなくちゃいけないんだ……ッ!!」
二宮「戦う気がないなら失せろ……!!」
オーディン『なるほど。これは使えそうだな』
ヴィヴィオ「パパ、元気になぁれ……!」
戦わなければ生き残れない!