リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

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お待たせしました、第34話です。

今朝、おかしな体勢で寝ていたせいで片足が痺れていたのと、寝ぼけた状態で目覚ましを止めようとベッドから降りた為に、バランスを崩して足のつま先がグニャッとなり相当痛い思いをしました。
この前は何故か片腕が痺れてほんの一時的に感覚がなかったし……自分、寝相悪いのかなぁ?

そんな作者の呟きはさておき、本編をどうぞ。

あ、ちなみに活動報告で実施中のアンケートもよろしければご覧下さいませ。



第34話 揺らぐ正義

「答えろ!! 答えてくれ、雄一!!」

 

ライアは目の前にいる自身とそっくりの戦士―――“仮面ライダーブレード”に駆け寄り、彼の両肩を掴むように問い詰める。それに対しブレードは、何の動きも見せずただライアにされるがままだ。

 

「何故だ、何故お前がここにいる……あの時お前は……!!」

 

「……そうだよ。俺はあの時、確かにコイツに喰われて死んだ。死んだはずだった」

 

『シャアァァァァ……!!』

 

ブレードの隣では、ガルドサンダーが唸り声を上げながらライアを睨みつけている。隙あらばいつでもライアに襲い掛かるつもりのようだ。

 

「でも、俺はこうしてミッドチルダにやって来た……ライダーになったのも、この世界にやって来てからだ」

 

「何……!?」

 

ブレードの告げた言葉に、ライアは驚きを隠せなかった。何故なら彼の記憶では、斎藤雄一は契約を拒んだ事でガルドサンダーに喰われ、一度もライダーに変身する事なく死んだはずだからだ。それなのに、何故か雄一はこうしてライダーに変身して自身の前に姿を現したのだ。親友が関わる事態だからか、流石のライアもこの現状に全く理解が追いつけなかった。

 

「……そういう手塚こそ、ライダーになったんだな。俺が遺したカードデッキを使って……」

 

「……あぁ、そうだ。俺はお前の正義を信じて、ライダーとなって戦う道を選んだんだ。ライダー同士の戦いを止める為に……変えられなかった運命を変える為に!」

 

「……そっか。運命を変える為に、か……手塚らしいな」

 

ブレードは仮面の下から僅かに笑みを零した。その口調はどこか嬉しそうで、どこか悲しげな物だった。

 

「安心したよ、手塚。お前がライダーになってからも、そんな優しい人間でいてくれて……親友として、俺はとても誇らしく思う」

 

「何を言ってるんだ……お前の方が、よほど優しい人間だろう! 俺なんかよりもずっと……」

 

「そう言って貰えるだけでも、俺は嬉しいよ……でも」

 

ブレードの仮面が僅かに俯く。

 

「だからこそ……俺は、お前に謝らなくちゃいけない事があるんだ」

 

「……雄一?」

 

俯くブレードに、ライアが仮面の下で眉を顰めた……次の瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズバァァァァァンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ッ!!?」

 

 

 

 

ライアは一瞬、理解が追いつかなかった。

 

 

 

 

何故、そんな大きな音が鳴り響いているのか。

 

 

 

 

何故、自身の胸元がこんなに痛むのか。

 

 

 

 

何故、自分は空を見上げているのか。

 

 

 

 

数秒ほど経過して、ライアはやっと気付いた。

 

 

 

 

ブレードの左手には、ホルスターに納められていたはずの刀剣が逆手で握られていた。

 

 

 

 

自身の体は、地面に背中をつけて倒れていた。

 

 

 

 

そこでライアはやっと気付けたのだ……自分がブレードによって斬りつけられたという事に。

 

 

 

 

「……が、あぁっ……雄一……ッ!?」

 

「……ごめん、手塚……!」

 

地面に倒れたライアを見下ろしながら、ブレードは左手で逆手に持った刀剣型の召喚機―――“鳳凰召刀(ほうおうしょうとう)ガルドバイザー”の柄部分にある翼を開いた後、カードデッキから1枚のカードを引き抜いた。

 

「俺は、お前を倒さなくちゃいけないんだ……ッ!!」

 

≪SWING VENT≫

 

『シャアッ!!』

 

電子音と共にガルドサンダーが尾羽を伸ばし、そこから投影された鏡像がブレードの手元まで移動する。ブレードはガルドバイザーを左腰のホルスターに納めた後、その鏡像を右手で掴み、長い尾羽を模した鞭―――“ガルドウィップ”を地面にバチンと叩きつけた。

 

「ッ……雄一、どういう事だ!? どうしてこんな事を……!!」

 

「俺の望みを叶えるには……こうするしかないんだ!!」

 

「雄……ぐぁっ!?」

 

ブレードの振るったガルドウィップが、ライアの右手に握られていたエビルウィップを叩き落とす。そこからガルドウィップの攻撃が連続でライアのボディに叩きつけられ、ライアを後退させていく。

 

「やめろ、やめるんだ雄一!?」

 

「であぁっ!!」

 

『シャアァッ!!』

 

「ぐっ……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

巻きついたガルドウィップで両腕を封じられ、そこにガルドサンダーの口から放たれた火炎弾が炸裂。吹き飛ばされたライアは建物の柱に叩きつけられ、そこにガルドウィップを放り捨てたブレードがガルドバイザーを抜きながら歩み寄る。

 

「はぁ……はぁ……雄一、何故だ……何故……ッ!!」

 

「手塚……俺の事は、恨んでくれても構わない」

 

「雄……がっ!?」

 

ガルドバイザーの一撃が、ライアのエビルバイザーを弾き飛ばす。そこから更にライアの胸部を踏みつけ、ガルドバイザーを両手で逆手に持ってライアの首元に突きつける。

 

「ぁ、ぐ……雄、一……ッ……!!」

 

「……ごめん」

 

ブレードはガルドバイザーを振り上げ、ライアの首元目掛けて勢い良く振り下ろす。それを見たライアはトドメを刺されると思い、仮面の下で目を閉じて次の痛みを待つ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……が、いつまで経っても次の痛みは来なかった。ライアは仮面の下で閉じていた目を恐る恐る開き、痛みが来ない理由を確かめる。そんな彼の視界に映ったのは……

 

「……ッ……く、ぅ……!」

 

ライアの首元に突き刺さる寸前で、ガルドバイザーを寸止めしているブレードの姿だった。ガルドバイザーを握る彼の両手がプルプル震えており、それ以上ライアの首元に向かって動く事はない。

 

「! 雄一……」

 

「ッ……俺は……!」

 

『シャ?』

 

ブレードはガルドバイザーを引き戻し、自らライアの胸部から足を退ける。そんな彼の行動に困惑したのか、ガルドサンダーは首を傾げた様子でブレードを見ている。

 

「駄目だ……やっぱり……俺、には……!」

 

「ッ……雄一、お前は……」

 

泣いているかのような声。それは確かにブレードの口から発された声だった。それだけで、ライアはほんの僅かにだが希望のように感じ取れた。

 

しかし……

 

「……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「!? ぐはぁっ!?」

 

ブレードは突然雄叫びを上げたかと思えば、ガルドバイザーを振り上げてライアに斬りかかって来た。ライアは寝返りを打つ事でそれを上手く回避して立ち上がるも、立ち上がったところを狙ったのか、まるで燕返しを繰り出すかのように振り下ろしたガルドバイザーを瞬時に振り上げ、ライアの胴体を斜めに斬りつける。

 

「駄目だ……俺は、戦わなくちゃいけないんだ……戦わなければ俺はァ……!!」

 

「ッ……雄一……!?」

 

「手塚ァ……俺はァ……はぁ、はぁ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「ぐっ……!!」

 

ブレードの猛攻は止まらない。我武者羅に振るわれるガルドバイザーの斬撃は、少しずつだが着実にライアの体力を消耗させていき、次第にライアも体力に限界が近付いていく。建物の壁際まで追い込まれ今度こそ窮地に陥ったライアに、ブレードは両手でガルドバイザーを振り下ろそうとしたが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪STRIKE VENT≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドォォォォォンッ!!

 

「うあぁっ!?」

 

『!? シャアァッ!?』

 

「!?」

 

その直後、どこからか飛んで来た水流弾がブレードに命中し、更に2発目の水流弾がガルドサンダーにまで命中し彼等を転倒させる。そこから更に大量の水流弾が飛び、建物に次々と着弾して大量の瓦礫がブレード達を閉じ込めるかのように崩れ落ちていく。

 

(さっさと来い)

 

「!! お前は……ぐっ!?」

 

『ッ……シャア!!』

 

ブレード達が瓦礫に覆われる中、そこへすかさず駆けつけたアビスはライアの首元を掴み、そのまま近くの建物まで一気に跳躍。そしてガルドサンダーが自身の炎で周囲の瓦礫を打ち払うも、瓦礫を押し退ける頃には既に、ライアの姿はその場から消えてしまっている後だった。

 

「ッ……手塚……」

 

『シャァァァァァァ……!!』

 

ライアの姿がない事を確認したブレードは、その場にガルドバイザーを落とし、雨に濡れた地面に座り込む。ガルドサンダーは獲物がいなくなった事に憤慨した様子で唸り声を上げているようだが、今のブレードはその事に意識は向いていなかった。

 

「手塚……俺は……」

 

自分は彼にトドメを刺せなかった。果たしたい目的を果たせなかった。それなのに……その口調はどこか、彼が逃げた事に対して安堵しているかのようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なるほど。これは使えそうだな……』

 

 

 

 

 

その一部始終をオーディンが密かに見届けていた事を、ブレードは知る由もない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ぐっ!?」

 

「たく、世話の焼ける奴め」

 

一方、アビスによって強制離脱させられたライアはと言うと、ミラーワールドのとある路地裏までやって来て地面に放り出されているところだった。アビスは面倒臭そうな口調で愚痴を零し、ライアはブレードとの戦闘で受けたダメージに耐えながらも何とか立ち上がる。

 

「たまたま新しいライダーを見つけて、少し様子を窺ってみたらコレだもんなぁ……お前、何故本気で奴と戦おうとしなかった?」

 

「ッ……お前こそ、何故俺を助けた……俺達は敵同士だぞ……!」

 

「……質問に質問で返すなよ」

 

アビスは小さく溜め息をつき、路地裏の段差にゆっくり座り込む。

 

「前にも言っただろう? お前等はまだ、こっちの計画に必要だとな。あんな碌にトドメも刺せない甘ちゃんに追い詰められているようじゃ困るんだよ」

 

「……意図が全く掴めんな……お前は六課とスカリエッティ、一体どっちの味方なんだ?」

 

「どちらでもない。俺はあくまで俺の為に動いているだけさ……それから、お前に1つ教えといてやろう」

 

あくまで計画については白を切るつもりでいるアビス。そんな彼の意図が掴めないライアだったが、アビスは右手で人差し指を立てながらライアに忠告する。

 

「雄一……と言ったか? あのライダーは既にスカリエッティと接触している。恐らく、スカリエッティが従えていたライダーの1人だろうな」

 

「な……!?」

 

ここでアビスの口から明かされた、スカリエッティと雄一の繋がり。あの雄一がスカリエッティに従って動いているという事実に、驚きを隠せないライアはアビスに掴みかかる。

 

「何故だ、何故アイツはスカリエッティに従っている!? アイツはあんな奴に従うような人間じゃない!!」

 

「いちいち質問の多い奴だな。そんな事まで俺が知る訳ないだろう……何にせよ。お前が奴と戦えないんなら、俺が代わりに奴を始末するしかないだろうな」

 

「ふざけるな!! そんな事は……ッ!?」

 

掴みかかっていたライアの腹部に、アビスの拳がドスンと入る。ライアは腹部を押さえて蹲り、アビスはそんな彼を見下ろしながら告げる。

 

「そんな事はさせないってか? ならお前はどうするつもりだ。スカリエッティに従っている以上、いずれまた奴と戦う事になるんだぞ。碌に戦おうともしなかったお前が、どうやって奴を止めるつもりだ?」

 

「ッ……!!」

 

「奴は俺がこの手で沈める。戦う気がないなら失せろ……フンッ!!」

 

「ぐ……がぁっ!?」

 

アビスは蹲っていたライアを無理やり立ち上がらせ、彼を宙に放ってから思いきり真上に蹴り飛ばす。蹴り飛ばされたライアはそのまま上空まで飛ばされ……

 

「え……うわっと!?」

 

偶然その真上を飛んでいたブランウイングによって、タイミング良く回収される事になった。ファムは突然ライアが真下から飛んで来た事に驚きの声を上げる。

 

「ちょ、海之!! 何で急に真下から!?」

 

「!! 奴は……!?」

 

ファムの言葉も無視し、ライアはすぐに真下を見下ろす。彼が見据える先では、既にアビスは路地裏から姿を消してしまっていた。

 

「ッ……!!」

 

「ね、ねぇ海之、何があったの……?」

 

困惑した様子のファムが問いかけても、ライアは何も答えない。その拳がギリリと握り締められる中、彼の脳裏ではアビスの言葉がひたすら繰り返されていた。

 

 

 

 

 

 

『碌に戦おうともしなかったお前が、どうやって奴を止めるつもりだ?』

 

 

 

 

 

 

「……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

怒りとも悲しみとも、どちらとも取れるようなライアの叫び声。その叫び声はただ虚しくミラーワールドの街に響き渡り、無情な雨の音に掻き消されるばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――さて」

 

その後、オンボロのアパートに帰還したアビスは変身を解除し、二宮の姿に戻ってソファに座り込む。彼の後ろの窓ガラスにはオーディンの姿が映り込むが、もはや二宮は面倒に思ったのか、振り返ろうともしなかった。

 

『良いのか? あんな事を言ってしまって』

 

「……ドゥーエが言っていた通りなら、あの雄一とやらが次に現れるのは明日の陳述会の真っ最中だろう。次に奴が現れた時、手塚は俺より先に奴を何とかしようと動く……そうなりゃ結局は戦いになるだけさ。目的を果たす為の時間稼ぎには充分だろ」

 

『なるほど……手塚海之を焚きつける為に、敢えてあんな言い方をした訳か』

 

「それよりオーディン。お前はどこで何をしてやがった? こっちは人手が足りなくて苦労してるってのに」

 

『人手を減らそうと考えたのはお前だろうに……何、少し拾い物をしていてな』

 

「拾い物だと?」

 

『あぁ。詳細はいずれ話そう……明日は計画を進めるのに重要な日となる。今の内に体を休めておけ』

 

「言われずともそのつもりだ……全く、面倒ったらありゃしない」

 

オーディンが姿を消した後、二宮は疲れた様子でソファに寝転がる。そんな時、玄関の方から扉の開く音が彼の耳に聞こえ、仕事帰りのドゥーエが入って来た。

 

「ただいま~……あら鋭介。相変わらずグータラしてるわね」

 

「放っとけ……ドゥーエ、そっちの仕事はどうだ?」

 

「レジアス中将は今も大人しくしてくれているわ。おかげで六課の臨時査察の件も、問題なく解決しそうよ」

 

「そうか……なら、後は明日になるのを待つだけだな」

 

「本当に良いの? 中将を始末するんなら、早いところ始末した方が良いんじゃない?」

 

「それはまだだ。地上本部が開発中の兵器とやらも完成してないようだからな」

 

「……あぁ、アレの事ね」

 

二宮の言葉にドゥーエは納得したような表情を浮かべ、モニターを出現させて1つの画像を映し出す。そこには地上本部が開発しようとしている、三連装砲を思わせる兵器の設計データが記されていた。

 

「アインヘリアル……地上本部が地上防衛用に開発中の巨大魔力攻撃兵器。明日の陳述会で、これの運用許可を出すかどうかで議論が行われるのよね」

 

「奴さんの事だ。どうせお得意の演説やらで、力ずくでも運用許可を獲得するだろうよ……むしろそうなってくれた方が俺にとっても都合が良い。どうせ、お前も兵器のデータはスカリエッティに流すんだろう?」

 

「あらあら……また何か、悪い事を企んでそうな顔をしてるわよ? 鋭介」

 

モニターを消し、ドゥーエはニコニコ笑みを浮かべながらソファに寝転がる二宮の顔を見下ろす。そんな彼女のニヤけ顔は完全にスルーしつつ、二宮は机に置かれていた本を手に取って開く。

 

「地上の犯罪を減らす……世界の平和を守る……大いに結構な思想だ。そんなご立派な思想を抱きながら、奴さんには存分に絶望して貰うとしよう……地上本部が如何に無能なのか、それを思い知って貰う事でな」

 

「中将の信念すらも利用するなんて……あなたって本当、悪い男ね」

 

「……そう言ってる割には、お前も楽しそうな顔をしてるじゃないか。悪い女め」

 

「さぁ、何の事だか……♪」

 

ドゥーエが浮かべる不敵な笑みに、二宮はフンと軽く鼻を鳴らしてから開いた本を顔の上に乗せる。そのまま彼は静かに眠りに落ち、明日に備えて英気を養っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、機動六課では……

 

 

 

 

 

「……」

 

あの後、ミラーワールドから帰還した手塚は夏希の呼びかけも無視し、男性寮の部屋に1人籠り切っていた。部屋の電気も点けないまま、椅子に座り込んで動かない彼は一瞬だけ部屋の窓を見据える。夜になっても雨は未だ止んでおらず、窓は雨水に打たれ濡れ続けている。

 

「……雄一……」

 

 

 

 

 

 

『俺は、お前を倒さなくちゃいけないんだ……ッ!!』

 

 

 

 

 

 

『駄目だ……できない……やっぱり、俺には……!』

 

 

 

 

 

 

「……ッ!!」

 

ライダーにならなかったはずの雄一が、何故ライダーになったのか。戦いを嫌っていたはずの彼が、何故自分に戦いを挑んで来たのか。死んだはずの親友が関わっているのもあって苛立ちが収まらず、手塚は机に置かれていたコップを手で払い、床に落ちたコップから水が零れ床を濡らしていく。

 

(何故だ、雄一……何がお前をそこまでさせている……!?)

 

 

 

 

 

 

『奴は俺がこの手で沈める。戦う気がないなら失せろ』

 

 

 

 

 

 

(……駄目だ、そんな事はさせない……!!)

 

何にせよ、このままでは二宮が雄一を始末しに動こうとするだろう。それだけは絶対にさせない。雄一があんな行動に出た真意を確かめる為にも、それだけは絶対に阻止しなければならない。しかしそうなれば……自分はまた雄一と戦う事になる。

 

「ッ……どうすれば良いんだ……俺は……!!」

 

生前の雄一は、死ぬその時までライダーの戦いを拒んで死んでいった。自分が死ぬとわかっていても、優しい彼は戦わない道を選んだ。そんな雄一だったからこそ、手塚はそんな彼の正義を信じ続けられた……なのに今、その雄一がライダーとなって戦いを挑んで来た事で、彼の信じる正義は揺らぎかけてしまっていた。

 

「雄一……!!」

 

 

 

 

コンコンコンッ

 

 

 

 

「手塚さん?」

 

「……!」

 

そんな時だ。部屋の扉をノックする音が鳴り、扉を開けてジャージ姿のフェイトがヒョコッと顔を覗き込ませて来た。手塚は一瞬だけチラリとフェイトの方を見るが、すぐに机の方に視線を戻す。

 

「……何か用か?」

 

「夏希さんから話を聞きました……手塚さんが今、何か思い詰めている事を」

 

部屋の電気を点けたフェイトは、床に落ちているコップと水に濡れている床を見てそう告げる。それでも手塚は視線をフェイトに向けようとはしない。

 

「……俺の事なら心配はいらない」

 

「嘘ですよね」

 

手塚が言い切った直後、フェイトからそんな言葉が飛び出す。フェイトは溜め息をついて手塚の隣の椅子に座り込む。

 

「いい加減、付き合いがそれほど長くない私でもわかりますよ。夕食も食べずに真っ暗な部屋に籠って……今の手塚さんは明らかにいつもの手塚さんじゃありません」

 

「……何でそう思う?」

 

「私も、昔は1人で抱え込む事が何度もありましたから。何となくでもわかっちゃうんです」

 

「……そうか」

 

そうスッパリ言い切るフェイトに、手塚は少しだけ呆気に取られた後、小さくだが笑みを零す。これは何を言っても誤魔化せないだろう。そう判断した手塚は、フェイトに自身の思いを吐露する事にした。

 

 

 

 

モンスターとの戦闘中、かつて雄一を喰い殺したモンスターが現れた事。

 

 

 

 

そのモンスターを追った先で、ライダーに変身した雄一と出会った事。

 

 

 

 

その雄一が、自身に攻撃を仕掛けて来た事。

 

 

 

 

トドメを刺されそうになった瞬間、雄一がトドメを躊躇した事。

 

 

 

 

手塚はミラーワールドであった出来事を、一通りフェイトに伝えてみせた。もちろん、二宮の事は今もまだ話す事はできない為、所々内容を省略している部分もあるにはある。それでもフェイトは何も言わず、手塚の話を最後まで真剣に聞き続けていた。

 

「……俺は雄一の信じる正義を信じて、これまで戦い続けて来れた。雄一は俺にとって誇れる親友だったんだ……ハラオウン。俺は一体どうすれば良い……?」

 

普段の手塚からは到底考えられないような、とても弱々しい言葉だった。エクシスという若いライダーの死と対面して間もないタイミングで、かつて自身が救えなかった親友と対立する羽目になったのだから、それは無理からぬ事だろう。そう思ったのか否か、フェイトはゆっくり口を開いた。

 

「……信じて、あげるべきだと思います」

 

「……ハラオウン?」

 

フェイトの言葉に、頭を抱えて俯いていた手塚が顔を上げる。

 

「……手塚さんは雄一さんの事、自分が誇れるくらい優しい人だと思ってるんですよね? それなら迷わず、雄一さんの事を心から信じてあげるべきなんじゃないですか? 話を聞いてみた感じ、私はそう思います」

 

「だが……」

 

「それに、そんな優しい人が戦う道を選んだんだとしたら……少なくとも、それは自分の為ではありません。誰かの為に戦おうと思って、戦う道を選んだんじゃないでしょうか?」

 

「……!」

 

「手塚さん、あなたが迷っていては駄目です。どんな事情であれ、雄一さんが自分の叶えたい望みの為にあなたと戦おうとしているんだとしたら……あなたもそんな雄一さんの事を信じて、真正面から雄一さんと向き合うべきなんじゃないですか? どうするべきかわからないのなら……答えが見つからないのなら……ただ迷い続けるより、今はそうするべきだと私は思います」

 

「……向き合う、か」

 

手塚は改めてフェイトと視線を合わせる。その時一瞬だけ、フェイトとある青年(・・・・)の姿が重なって見えていた。

 

(……あぁ、そうだったな)

 

ここ数日で色々あり過ぎて、先程までの自分は気が動転してしまっていた。冷静に考えてみれば確かにフェイトの言う通りだ。今更何を迷う必要があったのだろう。手塚はポケットから取り出したコインを指で弾き、キャッチすると同時に静かに目を閉じる。

 

「……感謝する、ハラオウン」

 

「え?」

 

手塚はゆっくり目を開き、再度フェイトと向き合う。

 

「自分がするべき事は何なのか……それを再確認する事ができた。君のおかげだ」

 

「い、いえ! 私も雄一さんの事を詳しく知っている訳じゃないので、あまり偉そうな事は言えませんし……」

 

「それでも、俺がそれに気付く事ができたのは君の言葉があったからだ。本当に感謝している」

 

「あ、あぅ……そう言われると何だか恥ずかしいです」

 

手塚から笑顔で堂々と感謝の意を告げられ、流石のフェイトも照れた様子で顔を赤くし視線を逸らす。そんな時、部屋の扉がゆっくり開いた。

 

「ん……パパ……」

 

「「ヴィヴィオ?」」

 

「夜遅くに済まない」

 

部屋に入って来たのはヴィヴィオと、ヴィヴィオの付き添いで同行していたザフィーラだった。ウサギのぬいぐるみを右手に抱えたまま、眠たそうなのを必死に我慢した様子で目元を擦っている。

 

「ヴィヴィオ、今日はなのはママの所で寝るんじゃ……?」

 

「んん……パパ、元気なさそうだったから……今日はパパと一緒に寝てあげてって、ママが……」

 

「! なのは……」

 

「……どうやら、気を遣わせてしまったようだな」

 

「高町だけではない。白鳥も、お前が部屋に籠りっきりで出て来ないのを心配していたぞ。明日、忘れない内に礼を言っておけ」

 

「……あぁ、すまない」

 

ザフィーラのその言葉で、手塚はフェイトだけでなく、なのはや夏希達にも色々と気を遣わせてしまっている事を改めて認識した。手塚が申し訳なさそうな表情でザフィーラに謝罪する中、ヴィヴィオはトコトコ歩いて手塚の足元まで近付いて来た。

 

「パパ、元気ないの……?」

 

「ヴィヴィオ……」

 

「……パパ、来て」

 

ヴィヴィオは手塚の服の袖を引っ張り、それに引っ張られるように手塚はベッドの傍まで移動させられる。そして手塚をベッドに座らせた後、ヴィヴィオもベッドの上に移動し、その小さな手で手塚の頭を優しく撫で始めた。

 

「パパ、元気になぁれ……!」

 

「……!」

 

そんなヴィヴィオの行動を見て、手塚はこんな小さな子供にまで心配をかけた事を強く恥じる。同時に、今はその純粋な優しさが何よりも嬉しく感じていた。

 

「……ありがとう、ヴィヴィオ。おかげで元気が出た」

 

「パパ、元気になった?」

 

「あぁ」

 

「……じゃあ、一緒に寝よう!」

 

手塚が笑顔になったのを見て、ヴィヴィオもニパッと笑顔を浮かべてベッドに座り込む。そんな2人を微笑ましい様子で見守っていたフェイトは、2人の邪魔にならないよう静かに部屋から出ようとしたが……そんな彼女の手を、ヴィヴィオがガッチリ掴み取った。

 

「フェイトお姉ちゃんも、一緒に寝よ!」

 

「……え?」

 

その一言は予想外だったのか、フェイトはポカンとした表情でヴィヴィオの表情を見る。ヴィヴィオは変わらずニコニコ笑顔を浮かべているが……フェイトは内心全くニコニコできる状態ではなかった。

 

(え? それって、私も手塚さんと同じベッドで一緒に寝るって事? いやいやいやいやいやいやいやいやお願いちょっと待って!! 私と手塚さんって別にそんな仲という訳でもないのにそれは色々マズいって!? いやでもヴィヴィオにこんな期待の眼差しを向けられたんじゃ拒否する訳にもいかないし、それに手塚さんは誠実な人だから別に私が考えているような事態にはならないだろうから……あれ、そんな事を考えている私が実は一番破廉恥な事を考えちゃってる? 何考えてるの私ったら駄目だよそんな事考えちゃ!! いや、でもそんな事を考えちゃうって事は心のどこかでそんな展開を望んでる自分もいるって事? あれ、そもそも何でこんな事考え始める事になっちゃったんだっけ? あぁもう何か訳わかんなくなってきちゃった取り敢えず煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散……!!)

 

「……どうした、ハラオウン?」

 

「はわぅ!? な、何でもありません!! 大丈夫、何でもありませんから!!」

 

「?」

 

もはや思考が訳のわからない状態に陥り、顔を赤くしたまま首をブンブン振り回すフェイト。そんな彼女の様子に手塚が首を傾げるのを他所に、ヴィヴィオはフェイトの手を握ったまま悲しげな表情を浮かべる。

 

「……寝ないの……?」

 

「うっ……」

 

ヴィヴィオにそんな表情をされてしまっては、断ろうにも断れるはずがない。その結果……

 

「……枕持って来るから、ちょっと待っててね」

 

最終的にはフェイトの方が折れ、ヴィヴィオは歓喜の笑顔を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

なお、途中から蚊帳の外となっていたザフィーラは、部屋の外で静かに伏せをして既に就寝していたのはここだけの話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨が降り注ぐクラナガン……

 

 

 

 

 

「……」

 

機動六課の本部隊舎を眺めながら、ビルの屋上で雨に打たれ続けているブレード。そんな彼の後ろから、魔法陣を通じて転移して来たルーテシアとゼストの2人がやって来た。

 

「雄一」

 

「! ゼストさん、ルーテシアちゃん……」

 

2人の存在に気付いて振り向いたブレードは、ベルトからカードデッキを引き抜き変身を解除する。変身を解いたそこに立っていたのは、一見爽やかそうな雰囲気を醸し出している、黒いスーツを身に纏った茶髪の青年―――“斉藤雄一(さいとうゆういち)”だった。雨で髪型が崩れる中、雄一は2人に対してにこやかな笑顔を浮かべるが……その顔つきは、少しやつれているようにも見えた。

 

「お兄ちゃん……友達には会えた?」

 

「うん、おかげ様で。ルーテシアちゃんは探し物見つかった?」

 

「ううん、まだ……」

 

「……そっか。じゃあ、またこれから一緒に探そうか」

 

「……うん」

 

雨に打たれている事など全く気にせず、雄一はルーテシアの頭を優しく撫でる。頭を撫でられているルーテシアも目を細め、雄一に甘えるかのように自ら身を寄せていく。そんな中、ゼストは雄一に問いかける。

 

「本当に大丈夫なのか? 明日は激しい戦いになるぞ」

 

「……俺の事なら大丈夫です。いずれ、こうなる事はわかっていましたから」

 

「だが、あそこにはお前の友人がいるのだろう? それなのに―――」

 

「良いんです」

 

ゼストの言葉が雄一に遮られる。

 

「俺は、良いんです……大丈夫ですから」

 

雄一はあくまで笑顔を浮かべたまま、決して表情を崩そうとしない。彼が明らかに無理しているという事は、ゼストから見ても明らかだった。

 

(何故だ、雄一……何故お前はそんな笑顔でいられる? お前にとっては、モンスターと戦う事すら苦痛だったはずだというのに……)

 

そんな事を思うゼストの表情は、頭に被っているフードのせいで雄一には見えなかった。その時、ルーテシアは雄一のスーツの袖をクイクイ引っ張った。

 

「帰ろう、お兄ちゃん。雨に打たれてたら、風邪引いちゃう……」

 

「……そうだね。帰ろうか、ルーテシアちゃん、ゼストさん」

 

「うん」

 

「……あぁ」

 

3人は一ヵ所に集まり、3人の足元に巨大な魔法陣が出現する。転移の準備が整われた中、雄一はもう一度六課の部隊者の方へと静かに振り返る。

 

(手塚……俺は信じてるからな……俺にはもう、あまり時間はない……)

 

雄一が拳を強く握り締めた時、彼の右手首に着いているリングの赤い宝玉部分が一瞬だけ点滅する。そして彼を含めた3人は魔法陣で転移し、一瞬でその場から姿を消すのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




リリカル龍騎StrikerS!


手塚「公開意見陳述会、か……」

はやて「何事もなければええんやけどなぁ」

ティアナ「ガジェット!? どこからこんな数が!?」

雄一「手塚……お前なら、俺を……!」

浅倉「聞こえるぞぉ、祭囃子が……!!」


戦わなければ生き残れない!
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