リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

42 / 160
はい、第38話です。

今回は活動報告にて、現在実施中のアンケートとは別件で、一部のユーザーの皆様に少しばかりお願いがあって更新しました。詳しい内容は活動報告をご覧下さいませ。

それでは本編をどうぞ。






戦闘挿入歌:果てなき希望



第38話 戦士の再起

『ミッドチルダ、地上本部の上空です! 施設の被害や負傷者の数、事件の詳細について、未だ管理局側からの発表はありません!』

 

地上本部を襲撃したスカリエッティ一味、戦いに乱入して来た王蛇、野生のモンスターを交えたこの戦いで、機能停止に追い込まれた地上本部。その上空をレポーターを乗せたヘリコプターが飛んでいる。

 

『事件直後、犯人らしき人物からの犯行声明が、ミッドチルダを始め各世界に放送された事から、現在ミッドチルダでは、地上本部に対する住民からの非難の声が相次いでいます!』

 

スカリエッティが行った犯行声明は、ミッドチルダに大きな混乱をもたらす事となった。犯罪者達によって呆気なく守りを突破された挙句、事件の首謀者から管理局を無能扱いするかのような演説が堂々と行われたのだ。そのせいで地上本部に対し、元々薄かった住民達からの信用が更に薄れるような状況に陥っており、ミッドチルダは慌ただしい状況となっていた。

 

「―――何故だ!! 何故こんな事になっているぅ!! あの男に連絡はぁっ!!!」

 

その地上本部にて、首都防衛隊代表―――レジアス・ゲイズは今、怒りの形相で拳を机に振り下ろしていた。彼は苛立った様子で部下に怒鳴り散らす。

 

「が、外線が変えられております……研究所も既に、もぬけの空で……!」

 

「……チィッ!!」

 

どれだけ通信を繋げようとしても、相手側には全く繋がらない。レジアスは更に苛立った様子で拳を叩きつけ、部下の男性がビクッと怯えた様子で震えた。

 

(ここまで充分に重用してきたはずだ、なのに何故今になって……!!)

 

レジアスの言う“あの男”とは他でもない、事件の首謀者であるスカリエッティの事だ。彼は管理局上層部の最高評議会を介してスカリエッティと通じており、彼に依頼して人造魔導師や戦闘機人に関する研究を進めさせていた。ある程度研究を進めさせてから適当なタイミングでそれを摘発・接収し、それらの技術を試験運用という形で実用性を証明していきながら、いずれは自分達の戦力としていくつもりだった……のだが、そうなる前にスカリエッティが彼の意に反して管理局に反旗を翻し、彼の制御下から完全に外れ暴走を始めてしまったのだ。

 

(何もかも最悪だ……!! ジェームズ・ブライアンの件で、我々地上本部の立場がますます悪くなっているこのタイミングでこれとは……まさかあの男(・・・)、こうなる事を予測していたとでもいうのか……!?)

 

レジアスは脳裏に思い浮かべていく。公開意見陳述会が行われる前に、自分達の前に現れた謎の戦士の事を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アンタに警告しに来たのさ。機動六課はまだ、潰される訳にはいかないんでね』

 

『……警告だと?』

 

機動六課への査察を行おうとしていたレジアスとオーリスの前に、アビスラッシャーとアビスハンマーを従えて現れたアビス。彼は右手に持ったアビスセイバーをレジアスの首元に向けたまま、2人に警告を行っていた。

 

『貴様、機動六課の差し金か…!?』

 

『差し金……違うな。俺は別に、あんな奴等と手を結んじゃいない』

 

『ならば何が目的だ……どこの誰かも知らん輩の要求を、我々が素直に呑むと思うか!!』

 

『ま、普通はそう思うわな。だがアンタは、その要求を呑まざるを得なくなるだろう』

 

『何……?』

 

『簡単な話さ。機動六課のやる事に余計な口出しさえしなけりゃ、アンタ等がやろうとしている事まで邪魔するようなマネはしない』

 

『ふざけるな!! そんな下らん要求に、誰が応じるものか!!』

 

『強気だな。流石は首都防衛隊の代表か……だが良いのか? 人質がいる事を忘れちゃいまい』

 

『『グルルルルル……!!』』

 

『ッ……!!』

 

レジアスだけでなく、オーリスもアビスを睨みつけてはいるが、アビスラッシャーとアビスハンマーに力ずくで取り押さえられている状態の為、全く動けずにいる。そんな彼女の首元に、アビスセイバーの刃先が向けられる。

 

『俺の要求が呑めないんだったら……仕方ない、コイツには死んで貰おうか』

 

『ひっ!?』

 

そのまま、アビスセイバーの刃先がオーリス目掛けて突き立てられ―――

 

『やめろぉっ!!!』

 

―――る前にアビスが手を止め、アビスセイバーの刃先がオーリスの眼前ギリギリでピタリと止まる。オーリスにアビスセイバーを向けた状態のまま、アビスはレジアスの方に視線を向ける。

 

『……裏でスカリエッティと結託しているような人間だ。特に反応はないだろうと思っていたが、今のは俺も想定外の反応だったな』

 

『!? 貴様、何故それを……!?』

 

『……アンタが裏で、スカリエッティに違法研究の依頼をしている事は既に把握している』

 

アビスはアビスセイバーを持った右手を引き、レジアスの後ろに回り込む。

 

『ジェームズ・ブライアン少将の一件で、今の地上本部は本局よりも更に立場が悪くなっている状態だ。そこに、アンタが次元犯罪者のスカリエッティと結託しているなんて事まで知られるような事があれば、アンタにとっては非常に面倒な事態になるだろう。アインヘリアルの運用について話し合われる、公開意見陳述会の日が近い今のタイミングだからこそ……な』

 

『ッ……どこまで知っているというのだ……!!』

 

『さぁ、どこまでだろうな? 何にせよ、アンタ等はこのまま計画を進めて貰って構わないんだ。機動六課のやっている事に、余計な口を挟みさえしなけりゃな』

 

『ッ……!!』

 

『あぁそれから、俺がここに来た事は誰にも話すなよ? 俺がアンタ等のやってる事を詳しく知っているという事は……理解できるだろう? 他人に話せばどうなるのか……』

 

『失礼します』

 

その時、何も知らずにレジアスの下まで訪れた部下の局員が1人、彼等のいる部屋に入って来た。

 

『中将、アインヘリアル3号機の最終調整が……って、何だ貴様は!?』

 

『おっと』

 

ズガァンッ!!!

 

『ひぃっ!?』

 

直後、その局員に向かってアビスセイバーが投擲され、その局員の足元に深々と突き刺さる。いきなりの行為に局員が驚いて尻餅をつき、そこにアビスが接近する。

 

『せっかくだ。俺の事を話せば一体どうなるか……その結末を、今ここで見せてやる』

 

『うぐぅ!?』

 

『!? 待て、何をするつもりだ!?』

 

アビスは尻餅をついた局員の首を掴み、部屋の窓ガラスまで無理やり引き摺って行く。レジアスの制止しようとする声も聞かず、アビスは捕まえた局員を窓ガラスの前に押しつけ……

 

『こうするんだよ』

 

『『グルァッ!!』』

 

『う、うわぁ!?』

 

『『!?』』

 

アビスラッシャーとアビスハンマーが、押さえていたオーリスを押し退けてから局員に掴みかかり、窓ガラスからミラーワールドへ彼を連れ去って行ってしまった。それを目の前で目撃したレジアスとオーリスは信じられないような目で窓ガラスに目を向ける。

 

『き、貴様!? 今何を……!?』

 

『見ればわかる』

 

『ひ、ひぃ!? 中将、助けて下さ……う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?』

 

『ッ……!!』

 

窓ガラスに映るのは、2体のモンスターによって無惨に喰い殺されていく局員の姿。その凄惨な光景にレジアスは言葉を失い、オーリスは青ざめた様子で窓ガラスから目を逸らす。

 

『これでわかっただろう? 俺の言っている事が本気だという事が』

 

『貴様……ッ!!』

 

『アンタはただ、アンタが信じる正義の為に動いてくれればそれで良いんだ。余計な事にまで目を向ける必要はない……それから』

 

立ち去る前に、アビスはもう一度だけレジアス達の方に振り返る。

 

『どんな正義を貫こうがアンタ等の勝手だが……精々、飼い犬に手を噛まれないよう気を付ける事だな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――くそぉっ!!!」

 

「ひっ……!?」

 

レジアスは我慢ならなかった。まさにアビスが言っていた通り、躾けていた飼い犬(スカリエッティ)に手を噛まれた事でこうなってしまったのだから。

 

(まだだ……アインヘリアルの力があれば、まだ対抗はできるはず……!! いつまでも奴等の思い通りになどなってたまるものか……!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――なんて感じで、今頃頭を抱えている真っ最中だろうなぁ。奴さんは」

 

『……で、あなたはまたいつものグータラぶりね』

 

その二宮は今、いつもと変わらない表情でソファに寝転がり、のんびり寛いでいるところだった。そんな彼のグータラぶりには、モニターを通じて見ていたドゥーエも呆れを通り越して突っ込む事すらも諦めたような表情を浮かべている。

 

『せっかくやるんなら、いっそ全世界に放送してしまえば良い……それを私からドクターに伝えさせたのも、これが狙いだった訳かしら?』

 

「そうする事で、住民の信頼は更に失われつつある。おかげで事が上手くいった」

 

本来、スカリエッティの犯行声明を公開するのは管理局に対してのみのはずだった。しかし、そこに二宮が「どうせやるんなら、全世界に公開してしまえば更に展開が盛り上がる」とドゥーエに伝えさせた事から、その目論み通りにスカリエッティは犯行声明を全世界に公開したのだ。

 

『私やドクターにそんな事をさせてまで……あなた、この世界で一体何をするつもり?』

 

「さぁ、何だろうな。そんな大した事じゃないのだけは確かだ……それより」

 

二宮はソファに寝転がったまま、ソファの目の前にある机に置いてあった1枚の写真を手に取る。その写真には仮面ライダーブレードの変身者―――斉藤雄一の顔が写っている。

 

「ドゥーエ、こいつについての情報はあるのか?」

 

『斉藤雄一、仮面ライダーブレード……一応クアットロから話は聞いているけど、それがどうかした?』

 

「オーディンが気になる事を言っていた。手塚海之と戦っている最中、突然口調が変わって攻撃的になり、親友同士であるはずの手塚にすら容赦なく攻撃を加えていた……ってな。その理由を知っておきたい」

 

『あぁ、なるほどね……その理由、ちょっと面白い事になってるみたいなの。気になる?』

 

「面白い事?」

 

『えぇ』

 

親友同士であるはずなのに、何故雄一が突然容赦なく手塚を攻撃したのか。そうなった理由を、二宮はドゥーエを通じて確かめる事にした。その話の中で、二宮は少しだけ驚く表情を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミッドチルダ中央区画、聖王病院……

 

 

 

 

 

 

「―――ッ」

 

昨日の戦いで敗北し、壊滅状態に至った機動六課。負傷した六課のメンバー達はここに収容され、手塚と夏希も同じくここに運び込まれていた。そして院内のとある一室にて、今まで意識を失っていた手塚がようやく目覚め、少しずつだが意識もハッキリ戻り始めていた。

 

「! 手塚さん、目が覚めたんですね! 良かった……!」

 

手塚が目覚めたのを見て、彼が寝ているベッドの布団をかけ直していたフェイトは安堵した表情を浮かべる。フェイトの存在に気付いた手塚は、彼女の手を借りてゆっくり上半身を起こす。

 

「……ハラオウン……ここは……?」

 

「聖王病院です。前にヴィヴィオが運ばれたのと同じ」

 

「……あれから、どうなった……? 皆は……ヴィヴィオは……」

 

「それが……」

 

目覚めたばかりの手塚に、フェイトは一から順番に説明していった。スカリエッティ一味の襲撃で、機動六課が壊滅状態に追い込まれてしまった事。この戦いで多くの負傷者が出てしまい、負傷した六課のメンバー達はこの聖王病院に運び込まれている事。その負傷者の中でも特に、ナカジマ姉妹と夏希の3人がかなりの重傷である事。そしてスカリエッティ一味によって……ヴィヴィオが連れ去られてしまった事を。

 

「……そうか」

 

「スバルは少しずつ回復していってますが、ギンガさんは左手首を失うほどの傷で、現時点でまともな戦線復帰は不可能な状態でした。夏希さんも、王蛇のモンスターによって顔に毒液を浴びてしまったとティアナが……」

 

「!? 浅倉もいたのか……!!」

 

「はい。変身している状態で浴びたからか、右目の失明は辛うじて免れたそうですが……それでも、しばらく右目は使えない状態です。その傷を差し引いたとしても、元々の戦いで受けたダメージも大きいので、とてもじゃありませんが戦線復帰できる状態とは……」

 

「……ッ」

 

そこまで話を聞いて、手塚は右手拳を自身の右膝の上に叩きつける。それにより、昨日の戦いでバズスティンガーに付けられた傷の痛みを感じるも、今の彼にとって、そんな痛みは大した痛みではなかった。

 

「情けない話だ……あれだけ運命を変える為とか言っておきながら……俺達は何もできなかった」

 

「そんな……ヴィヴィオが攫われたのは、手塚さんのせいじゃ―――」

 

「あの子との約束を守れなかった!!!」

 

「ッ……!!」

 

「守ると約束したのに、守ってやれなかった……最悪の未来が見えているとわかっていたのに……俺達は、運命を変えられなかった……ッ!!」

 

右膝に肘を突き、右手で顔を覆う手塚の姿は、誰が見てもわかるくらい悔しそうだった。今までそんな表情を滅多に見せなかった彼がここまで悔しい思いをしているのがわかり、フェイトはそんな彼の左手を優しく握ってから口を開く。

 

「……まだ終わりじゃありません。今、はやて達が次の戦いに備えて既に動き始めています。傷の浅いティアナ達もすぐに復帰しました。だから手塚さんも……」

 

「あぁ、わかっている。ヴィヴィオは必ず助け出す……それに」

 

右手で隠れていた手塚の表情が露わになる。その目には、火が点いていた。

 

「……雄一の事で、少し可能性が見えて来た」

 

「え? 雄一さんって、手塚さんの友人の……」

 

「あぁ。アイツが何故スカリエッティに従っているのか……その理由が少しだけわかった気がする。アイツは……」

 

 

 

 

 

 

『勝たなくチャ、いけなイ……あの子の、為にモ……』

 

 

 

 

 

 

「いつだって変わらない……アイツは今も、誰かの為に苦しんでいたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、他の病室では……

 

 

 

 

 

「……夏希さん」

 

その病室のベッドでは、オルタナティブ・ネオや王蛇の攻撃で負傷した夏希が寝かされていた。ベノスネーカーの毒液による傷が一番酷かった為か、その顔は右半分が包帯で覆われており、傍から見ると何とも痛々しい姿をしている。そんな彼女の姿を、同じく頭に包帯を巻いたスバルが椅子に座って見ている。

 

(私のせいだ……私が暴走したせいで……マッハキャリバーが破損して……夏希さんが、こんな目に遭って……)

 

「私のせいで……夏希さんが……!!」

 

戦闘機人モードとして暴走している間の記憶は彼女にはなかった。しかし後でティアナから話を聞いて、夏希がここまでの重傷を負ったのは自分が暴走したせいなのだとスバルは理解していた。理解すると同時に、夏希に対して罪の意識を感じており、その目元には涙の粒が溜まっていく。

 

「スバル」

 

「! ギン姉……」

 

そんな彼女の後ろから、松葉杖を突きながらギンガが入室する。その左腕は包帯を巻かれ、その上から三角巾で固定されていた。

 

「夏希さん、怪我の方はどうだって?」

 

「……先生からは、右目はギリギリ失明しないで済んだって」

 

「そう。それなら良かった……隣、座るわね」

 

「……うん」

 

近くに置いてあった椅子を移動させ、スバルの隣にギンガが座り込む。それでもスバルは、未だ目覚めない夏希を見ながら暗い表情のままだった。

 

「……ティアナさんから聞いたわ。敵の攻撃からスバルを庇って、夏希さんがここまでの重傷を負った事」

 

「……うん」

 

「……スバル、あなたが私を助けようとして暴走した事もね」

 

「……うん」

 

「……ありがとね」

 

「……え?」

 

ギンガの口から告げられたのは感謝の言葉だった。それを聞いてスバルが顔を上げる。

 

「スバルが暴走してでも助けようとしなかったら、私は奴等に捕まって連れて行かれるところだった。あなたが私を助けようとした気持ちは、私にも伝わったわ」

 

「ギン姉……」

 

「あなたの気持ちは、きっと夏希さんにも伝わってると思う……だから、あなたがいつまでもそんな顔をしていちゃ駄目よ。申し訳ないと思ってるのなら……あなたがこれから何をするべきなのか、まずはそれを考えてみなさい」

 

「……うん、ありがとう。ギン姉」

 

ギンガの言葉を受けて、スバルは目元の涙を拭ってから笑顔を見せる。それを見てギンガも微笑む中……

 

「な~んだ。せっかくアタシが何か良い事言って励まそうと思ってたのに」

 

「「……へ?」」

 

突然聞こえて来た台詞。それは一体どこから聞こえて来た物なのか。スバルとギンガがもしやと思い見てみると、意識を失っていたはずの夏希は既に目覚めており、2人の事をニヤニヤ笑みを浮かべながら見ていた。

 

「な、夏希さん!? いつ目覚めたんですか……!?」

 

「あぁうん、実は結構前から起きてた」

 

「じゃあもっと早く言って下さいよ!? なんか凄い恥ずかしいじゃないですか!!」

 

「あっはっは~、聞いたよ聞いたよ? ギンガも結構カッコいい台詞吐けるんだねぇ~♪」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 本当にやめて下さい恥ずかしい!!」

 

「すみません、病院ではお静かにお願いします」

 

「「「あ、すみません」」」

 

今の会話が全部聞かれていたとわかり、恥ずかしさのあまり赤くなった顔を右手で隠すギンガ。そんな彼女の反応を見て楽しむ夏希だったが、たまたま病室の前を通りかかったナースに注意され、3人はすぐ静かになる。

 

「……夏希さん」

 

「ん?」

 

それから数秒後、最初にスバルが口を開いた。

 

「……あの時はすみませんでした。私のせいで、夏希さんが……」

 

「はいストップ。そこから先は言わなくて良いよ、全部ギンガが代わりに言ってくれたから」

 

「でも……」

 

「でもも何もない。アンタ達が無事なだけでも、アタシは充分だよ……だからこれでこの話は終わり。わかった?」

 

「……はい」

 

夏希の言葉を聞いて、スバルは小さくも力強く頷いた。彼女が元気を取り戻したのを見て、夏希とギンガは笑顔を浮かべるのだった。

 

その時……

 

 

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

 

 

「「「―――ッ!?」」」

 

またしても聞こえて来た、モンスターの接近を知らせる金切り音。それを聞いた3人は表情が一変し、すぐに病室の窓ガラスを見据える。

 

「そんな、こんな時に……!?」

 

「あぁもう、本当に空気読まないなぁモンスターは……!!」

 

夏希はベッドから起き上がり、壁のハンガーにかけられているコートのポケットからカードデッキを取り出す。しかしそんな彼女を、スバルとギンガがすかさず止めにかかる。

 

「ちょ、夏希さん!? 駄目ですよそんな体で!!」

 

「そうですよ!! ただでさえ右目が使えない状態なのに……!!」

 

「……ごめん、2人共。アタシが戦わなかったらブランウイングが不満だろうし、モンスターを放っといたら他の誰かが犠牲になるから……結局は行くしかないんだ」

 

「夏希さん……」

 

「大丈夫。どうせ海之も今頃モンスターを倒しに向かおうとしてるだろうし、アタシ1人じゃないから」

 

戦わなければ誰かが死ぬ。戦わない事は契約モンスターが決して許さない。それがライダーの宿命なのだ。それを今この場で改めて思い知らされた2人は、夏希が窓ガラスの前で変身しようとしているのを、強く止めてやる事ができなかった。

 

「ッ……ブランウイング……また、アタシに力を貸して……!!」

 

『ピィィィィィィィ……!!』

 

戦いを催促するかのように、ブランウイングが窓ガラスに映り込む。それを見た夏希は小さく笑ってから、まだ痛む体を無理に動かし、カードデッキを窓ガラスに突き出した。

 

「変身……ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、それは手塚の方も同じだった。

 

「手塚さん……!!」

 

「……あぁ」

 

金切り音は手塚とフェイトの耳にも聞こえていた。手塚は痛む体を引き摺るように動かしながら、ベッドから立ち上がり病室の窓ガラスの前まで移動していく。そんな彼の後ろ姿をフェイトは心配そうな表情で見ていた。

 

(本当は引き止めたい。無理やりにでも安静にさせたい……けど)

 

フェイトは手塚を止めようとはしなかった。初めて手塚と出会ったあの日から、彼女は知っていたからだ。ここで無理に引き止めたところで、手塚は決して止まらないという事を。人間を守る戦う……そんな手塚の、仮面ライダーとしての覚悟は揺るがない事を。

 

「手塚さん」

 

フェイトが手塚の隣に立ち、彼に差し出した物……それはライアのカードデッキ。

 

「……必ず、無事に戻って来て下さい。死んだら承知しませんから」

 

「……そうか。それなら、尚更死ぬ訳にはいかないな」

 

手塚はフッと笑みを浮かべ、フェイトから受け取ったカードデッキを窓ガラスに突き出す。出現したベルトが腰に装着され、手塚は変身ポーズを取りカードデッキを装填する。

 

「変身……!!」

 

手塚はライアに変身し、窓ガラスからミラーワールドに飛び込んでいく。彼が飛び込んで行った窓ガラスを、フェイトは1人静かに見つめる。

 

(私達では、彼等の戦いを手伝えない……)

 

どれだけ傷付いたとしても、手塚はこうしてモンスターを倒しに向かう。別室の夏希も、今頃同じように戦いに向かっている事だろう。

 

(それなら……私達が、あの2人の為にしてやれる事は……!)

 

フェイトは目の前の窓ガラスに触れる。そんな彼女の目にもまた、強く明るい火が灯ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――ジュルルルル!!』

 

「ぐっ……!!」

 

「夏希!!」

 

≪SWING VENT≫

 

ミラーワールド、自動車道のすぐ下にある川原。一足先に到着していたファムがクラゲ型の怪物―――“ブロバジェル”と戦闘を繰り広げていたが、ブロバジェルが振り回す両腕の爪がファムを薙ぎ倒し、倒れたところに乗りかかろうとしていた。そこへ駆けつけたライアはエビルウィップを召喚し、遠距離からエビルウィップを振るいブロバジェルの顔面を狙うように攻撃する。

 

『ジュル!? ジュルルルルッ!!』

 

「!? ぐぁっ!!」

 

攻撃されたブロバジェルは怒った様子で両腕の爪をクロスさせる。するとブロバジェルの体中にある球状の電極が点滅し、それと共に爪に纏われた電気がライア目掛けて放たれ、ライアの胴体に命中し大きく吹き飛ばした。

 

「海之!! コイツ……!!」

 

『ジュルルル……!!』

 

その隙にファムが起き上がり、ブロバジェルの背中にブランバイザーを突き立てて攻撃する。しかしブロバジェルはすぐに振り返ってブランバイザーを爪で弾き、ファムがすかさず右足で繰り出した蹴りも左脇に挟み込むようにして防御。彼女の右足を捕らえたまま、体中の電極を点滅させ始めた。

 

「あ、ヤバ―――」

 

『ジュルゥッ!!』

 

バチバチバチバチバチバチバチバチ!!

 

「あばばばばばばばばばばばばばばば!!?」

 

「!? 夏希っ!!」

 

電気の溜まった爪がファムの右足に叩きつけられ、ファムの全身が感電させられた。ファムは全身が痺れるあまりブランバイザーを地面に落としてしまい、そこにブロバジェルが容赦なく攻撃を仕掛けていく。それを見たライアはすぐ助けに向かおうとしたが、走り出そうとした直後に体の傷が痛み、その場に膝を突いてしまう。

 

(くそ、こんな時に……ッ!!)

 

「し、しびれ、びれぇ……ッ……!!」

 

『ジュルルルルル!!』

 

ライアはその場に膝を突き、ファムは痺れて倒れたまま動けない。万事休すかと思われたその時……

 

 

 

 

≪STRIKE VENT≫

 

 

 

 

『!? ジュルァアッ!?』

 

「「……!?」」

 

ファムに向かって爪を振り下ろそうとしたブロバジェルの顔面に、どこからか飛んで来た強力な水流弾が炸裂。ブロバジェルが転倒するのを見て、ライアとファムは水流弾が飛んで来た方角に振り向き、その先にアビスクローを構えたアビスが立っているのを発見した。

 

「お前……!?」

 

「随分苦戦しているようだな。まぁ、無理のない話か」

 

≪UNITE VENT≫

 

『ギャオォォォォォォォォォォォンッ!!!』

 

『!? ジュ、ジュルルル……ッ!?』

 

アビスクローを放り捨て、アビスは次のカードをアビスバイザーに装填。それにより川の中から飛び出して来たアビソドンは両目を左右に突き出し、弾丸を連射してブロバジェルを一方的に攻撃していく。そんな一方的な蹂躙を眺めながら、アビスは膝を突いているライアの隣まで移動する。

 

「どういう風の吹き回しだ、二宮……!!」

 

「まぁ待て。俺を信用できないのはわかるが、今はこっちが先だ」

 

≪FINAL VENT≫

 

『グギャオォォォォォォォォッ!!!』

 

「……フッ!!」

 

電子音が鳴り響く中、アビソドンは頭部に鋭利なノコギリを出現させて大きく咆哮を上げる。その一方、アビスはどこからか飛来したアビスセイバーを右手でキャッチし、一瞬にしてブロバジェルの目の前まで接近する。

 

『!? ジュ、ジュル、ジュ……ジュアァッ!?』

 

アビスは目に見えない速度で動き、ブロバジェルを四方八方からアビスセイバーで斬りつけていく。いくら電流を駆使するブロバジェルと言えど、両腕の爪で獲物を捕らえられないのでは対処の仕様がなかった。

 

「ハァッ!!」

 

『ジュアァッ!?』

 

そして何度も全身を斬りつけられた後、アビスは振り返るような動きから右足で蹴りを繰り出し、ブロバジェルをアビソドンがいる方向へと勢い良く蹴り飛ばす。それに対し、アビソドンもブロバジェルが飛んで来るタイミングに合わせて……

 

『ギャオォォォォォォォォンッ!!!』

 

『ジュアァァァァァァァッ!!?』

 

吹き飛んで来たブロバジェルを、頭部の長いノコギリで一刀両断する。アビスのもう1つの必殺技―――“アビススライサー”で真っ二つにされたブロバジェルはアビソドンの後方に飛んで行ってから爆発し、爆炎の中から出現したエネルギー体をアビソドンが捕食しようとしたが……

 

≪ADVENT≫

 

『キュルルルル……!!』

 

『ギャオ!?』

 

「!? 何……!!」

 

アビソドンが喰らう前に、どこからか飛んで来たエビルダイバーが先にエネルギー体を捕食してしまった。それを見たアビスは振り返り、膝を突きながらもカードを装填していたライアを睨みつける。

 

「お前……!」

 

「あの時の仕返しだ。文句がある訳じゃあるまい」

 

「……言ってくれるな」

 

かつて自身がやった餌の横取りを、今度は自分がライアにやり返される形となった。その事でアビスは小さく舌打ちするも、それ以上ライアに文句を言う様子はなく、ライアとファムをそれぞれ順番に見据える。

 

「ちょっと戦っただけでこのザマか……こんなにもボロボロなんじゃ、先が思いやられるな」

 

「……俺の質問に答えろ、二宮」

 

ライアはフラフラな状態でありながらも何とか立ち上がり、まだ痺れが抜けていないファムを起こしながらアビスに問いかける。

 

「お前はさっき、『今はこっちが先だ(・・・・・・・・)』と言ったな。それはつまり、他に用事があって俺達の前に現れたという事だろう……違うか?」

 

「……あぁそうだ。少しばかり、お前達を手助けしてやろうと思ってな」

 

「ッ……手助けだって……? アタシ達が、アンタなんか信用できると思うか……!!」

 

「だろうな……だが、今はそんな事を言ってられる状況じゃないってのも確かなはずだ。何せ、向こうはスカリエッティと斉藤雄一がライダーで、おまけに浅倉もいつどこでまた遭遇するかわからん状況だ。戦力的に見れば、お前達の方が圧倒的に負けていると言っても過言ではない……そこで」

 

アビスは持っていたアビスセイバーを地面に刺した後、カードデッキから2枚のカードを引き抜く。

 

「俺は今、奴等に対抗できる術を持っている。お前達が望むのなら、力を与えてやる」

 

「!? それは……!!」

 

アビスが2人に見せつけてきた、2枚のアドベントカード。その絵柄を見て、ライアは驚愕した。何故ならそのカードは……

 

 

 

 

 

 

「お前は見覚えあるだろう? 手塚海之。こいつは―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれの絵柄に【赤と青に煌めく金色の翼】が描かれていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「城戸真司と秋山蓮……あの2人も使っていた、“サバイブ”の力だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




リリカル龍騎StrikerS!


二宮「話を受けるか受けないか、それはお前達の自由だ」

手塚「お前達は一体、どこまで知っている……?」

オーディン『語り明かそう。斉藤雄一が、この世界で何をしていたのか……』

≪TIME VENT≫


戦わなければ生き残れない!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。