リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

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現在、本編の第39話を頑張って執筆中。まだしばしお待ち下さい。

今回はだいぶ前に書き上げていた、ちょっとした番外編を投稿。今回のメインは、本編にて志半ばで散っていったあの少年です。

それではどうぞ。

ついでに、少し前にオリジナルライダー募集に応じて下さったユーザーの皆様。よろしければ活動報告の方もどうぞ。







戦闘挿入歌:果てなき希望



番外編② 罪と覚悟

これは、機動六課が初めてヴィヴィオと出会う前の出来事……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、これなんかどうですか? 健吾さん」

 

「どれどれ……うん、良いと思うよ。ラグナちゃん」

 

この日、とある少年と少女の2人組が、首都クラナガンの雑貨屋にやって来ていた。少年の名前は鈴木健吾。少女の名前はラグナ・グランセニック。この日はラグナが日用品を買い揃える為、健吾が荷物持ちとして買い出しに付き合っていた。

 

「すみません健吾さん。いつも買い出しに付き合って貰っちゃって」

 

「これくらいはどうって事ないさ。それに僕も、ラグナちゃんの力になりたいからね。僕にできる事なら何でもやりたいくらいだ」

 

「ありがとうございます……あ、何これすっごく可愛い~♡ 健吾さん、これどうですか!」

 

「あぁうん、結構変わり身早いんだねラグナちゃん」

 

花柄模様の綺麗なマグカップに目が向いたラグナはすぐさまそちらに向かって行き、彼女の変わり身の早さに健吾は苦笑いしながらも彼女の後を付いて行く。そんな時、健吾の目に1つの小さなマグカップが映り込む。

 

(マグカップか……)

 

健吾が手に取ってみたのは、横に1本の黒いラインが入ったオレンジ色のマグカップだ。一見すると特に変わった特徴のない普通のマグカップのように見えるが……ここで彼は、服のポケットから自身のカードデッキを取り出す。

 

(……何だろう。最近、よくオレンジ色の物に目が行っている気がする)

 

そうなった理由は1つ……健吾が変身しているエクシスもまた、外見がオレンジ色だからだ。エクシスに変身して戦うようになって以来、気付けば彼の身の回りの日用品にもオレンジ色の物が増えてしまっていた。彼が被っている帽子も配色が黒とオレンジの2色である。

 

「本当、いつから僕はこうなったんだろうな……」

 

「え、何か言いましたか?」

 

「いや、何でもないよ。何か買いたい物はあった?」

 

「はい。せっかくだから、このマグカップも買おうと思って……健吾さんも何か買いますか?」

 

「う~ん……いや、僕は特に良いかな。今のところ欲しい物はないし」

 

「えぇ~。別に遠慮しなくても良いのに……」

 

「ははは、取り敢えず、会計済ませに行こうか」

 

オレンジ色の物に目が引かれると言っても、別にそれが絶対欲しいという訳でもない。そう自分に言い聞かせた健吾は、手に持っていたオレンジ色のマグカップを商品棚に戻した後、ラグナと共に会計を済ませるべくレジの方まで向かおうとした……その時。

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

「「……!」」

 

2人の耳に聞こえて来た金切り音。健吾とラグナは表情が一変し、周囲をキョロキョロ見渡す。

 

「健吾さん……!」

 

「ごめんラグナちゃん、僕ちょっと行って来る……!」

 

健吾は買い揃えた日用品が入った紙袋をラグナに預け、人のいない場所まで急いで駆け出していく。彼の後ろ姿を心配そうに見ていたラグナは、先程まで健吾が手に取って眺めていたオレンジ色のマグカップの方をチラリと見据える。

 

(健吾さん、さっきこれを見てたよね……よし)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

「~♪」

 

雑貨屋からそう遠くない位置にある、小さなゴミ捨て場。1人の女性が音楽プレーヤーで曲を聴きながら、ゴミ捨て場の目の前を通り過ぎようとしていた。しかし音楽を聴いていた彼女はそちらに意識が向いていた為、先程から聞こえて来ている金切り音には全く気付いていない。

 

そして……

 

『―――グルァッ!!』

 

「え? な、何……きゃあっ!?」

 

ゴミ捨て場に置かれていた、等身大サイズの割れた鏡。そこから飛び出して来た2つの大きな鋏が、捕らえた女性をそのまま鏡の中に引き摺り込んでしまう。そこへ健吾が駆けつけた頃には、既にその場には女性が持っていたカバンしか残されていなかった。

 

(ッ……間に合わなかったか……!!)

 

健吾は歯軋りしながら鏡を睨みつけ、服のポケットから取り出したカードデッキを鏡に突き出す。出現したベルトが腰に装着されるのを確認し、健吾は右手でサムズダウンのポーズを取ってからカードデッキを装填する。

 

「変身!」

 

カードデッキを装填し、健吾はその全身に鏡像が重なっていき仮面ライダーエクシスに変身。彼は左腕に装着されたマグニバイザーの刀剣に触れながら鏡の中に飛び込み、ミラーワールド内のゴミ捨て場付近に到着する。

 

(どこだ……そう遠くはないはずだが……)

 

『グルァァァァァァッ!!』

 

「な……ぐぁっ!?」

 

エクシスが振り返った瞬間、振り下ろされて来た大きな鋏がエクシスの胸部を攻撃し、そのまま薙ぎ払うようにエクシスを吹き飛ばした。吹き飛ばされたエクシスは地面を転がってからもすぐに立ち上がり、現れたモンスターを視界に入れるが……

 

「!! コイツは……!?」

 

『グゥゥゥゥゥゥゥ……!!』

 

 

 

 

メタリックオレンジのカラーリングをしたボディ。

 

 

 

 

両腕の大きな鋏。

 

 

 

 

背中の頑丈な甲羅。

 

 

 

 

緑色の鋭い目。

 

 

 

 

蟹のような特徴を持ったそのモンスターに、エクシスは見覚えがあった。

 

 

 

 

「ッ……あの刑事のモンスターか!!」

 

『グゥゥゥゥゥゥ……グルァァァァァァァァァァッ!!』

 

「チィ……!!」

 

カニの特徴を持った怪物―――“ボルキャンサー”は獣のように高く吠えながら、両腕の鋏を振り上げてエクシスに襲い掛かる。エクシスは跳躍してからボルキャンサーの頭を踏みつけ、踏み台にする事で大きく距離を離してから地面に着地し、1枚のカードをマグニバイザーに装填する。

 

≪SWORD VENT≫

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

『グルァァァァァァァァァッ!!』

 

召喚されたマグニブレードを右手に構え、エクシスはボルキャンサーに向かって走り出す。それを迎撃しようとボルキャンサーが鋏を振るい、互いの攻撃が擦れ違い様に炸裂する中、健吾は脳裏に思い浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

初めて自分以外のライダーと戦い、初めて自分以外のライダーを殺めた時の事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――おや、見てしまったようですね』

 

『ッ……アンタ、一体何を……!!』

 

かつて健吾がいた世界。たまたま路地裏を通りかかった際に、健吾は見てしまった。スーツの上に黒いコートを着た1人の男性が、ボルキャンサーに一般人を襲わせて捕食させている光景を。一般人がモンスターに襲われたにも関わらず、その様子を平然とした表情で見ているその男性に、健吾は驚きを隠せない様子で問い詰める。

 

『まさかアンタ、一般人をモンスターの餌に……!?』

 

『……ほぉ。そんな言い方をするという事は、君もライダーですか?』

 

黒いコートの男性―――“須藤雅史(すどうまさし)”は、懐から蟹のエンブレムが刻まれたカードデッキを取り出す。

 

『驚きましたね。まさか君のような子供が、ライダー同士の戦いに参加していたとは』

 

『……質問に答えろ。アンタ、何故一般人を襲わせたんだ? ライダー同士ならともかく、関係のない民間人まで巻き込む必要があるのか?』

 

『何を言い出すのかと思えば……理由は至って単純です。ライダー同士の戦いに勝ち残るには、契約しているモンスターに餌を与え、強くする必要がある。その為にモンスターに餌を与えるのは当然でしょう?』

 

『餌って……それなら、倒したモンスターの魂を与えれば済むはずだ!! なのに何でこんな事を……!!』

 

『考えが甘いですね』

 

健吾の言葉を遮った須藤は、彼の方へと1歩ずつ歩みを進めていき、健吾は思わず少しだけ後ずさりする。

 

『いつ、どこでライダーと出くわすかわからない以上、少しでも多くの餌を与えた方が効率的でしょう? そんな事もわからないんですね』

 

『な……!?』

 

顔色1つ変えずに言い切る須藤の冷酷さに、嫌悪感を隠せない健吾は表情を歪める。そんな彼が戦う決断をしたのは、次に須藤が言い放った言葉だった。

 

『そういえばこの辺りで、親に虐待されていた兄妹がいると聞きましたが……もしや、君がそうですか?』

 

『!? アンタ、何でそれを……!!』

 

『情報を聞きつけたのですよ。親が死んでいて、親戚との関わりもない……そんな兄妹ならば、行方不明と見せかけて遠慮なく餌にできると思いましてね。おまけにその兄がライダーだというのなら、それはそれで都合が良い』

 

『ッ……ふざけるな!!』

 

健吾が須藤の胸倉に掴みかかる。

 

『小夜に手を出してみろ、その時はアンタを……!!』

 

『その時は……どうするんです?』

 

答えは決まっていた。小夜の為にも、この男だけは生かしておく訳にはいかない。健吾は須藤の胸倉から手を離した後、服のポケットからカードデッキを取り出し、須藤も改めて自身のカードデッキを見せつけた。

 

『やはり、あなたも私と同じライダーですね……良いでしょう。ならば1対1で』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グルァア!!』

 

「く、かたっ……ぐぁあ!?」

 

ミラーワールドでの戦い。エクシスの振り下ろしたマグニブレードは、ボルキャンサーが背中の甲羅で受け止める事でガード。そこから振り回される鋏でマグニブレードを弾かれ、エクシスはボルキャンサーの攻撃で再度怯まされる。

 

「ッ……このぉ!!」

 

『グルゥ!?』

 

倒れたエクシスにボルキャンサーが襲い掛かろうとするも、エクシスは倒れた状態からからすかさず足を引っかけボルキャンサーを転倒させる。ボルキャンサーが倒れた隙に立ち上がったエクシスは次のカードを引き抜き、マグニバイザーに装填する。

 

≪ADVENT≫

 

「手伝ってくれ!!」

 

『『グラァァァァァウッ!!』』

 

『グガァッ!?』

 

召喚されたマグニレェーヴとマグニルナールが飛び出し、それぞれが構えた尻尾の刀剣でボルキャンサーを左右から攻撃。左右から挟まれたボルキャンサーが翻弄されている隙に、先程弾かれたマグニブレードを拾い上げたエクシスは再び駆け出していく。

 

(あまり時間はかけられない……ラグナちゃんの所に戻る前に、コイツだけはこの場で倒す!!)

 

エクシスは危惧していた。かつて戦った時も垣間見た……元契約者すらも見境なく捕食する、ボルキャンサーの飽くなき貪欲性を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪STRIKE VENT≫

 

『フンッ!!』

 

『ぐっ……うあぁっ!?』

 

かつて須藤雅史―――“仮面ライダーシザース”に挑んだ戦い。シザースは右腕に装備した大型の鋏―――“シザースピンチ”で器用にエクシスのマグニブレードを受け流し、的確にエクシスの隙を突いて反撃していた。更にはシザースと行動を共にしているボルキャンサーも、シザースに意識が向いているエクシスに背後から攻撃を仕掛け、エクシスに反撃の隙を与えようとしない。

 

『どうしました? その程度ですか?』

 

『ッ……強い……!!』

 

この時の健吾はまだ知らなかったが、須藤は腐っても刑事である。警察官として訓練を受けている為、どのようにして戦えば良いのかを須藤は既に理解しており、このライダー同士の戦いでもその適応力は非常に高かった。彼はライダーが持つスペックではなく、須藤自身が持つ技量によってエクシスを圧倒しているのだ。

 

『あぁ、やはりライダー同士の戦いは興味深い。これこそ私が求めていた快感です……君もそう思いませんか?』

 

『何が快感だよ……こんな戦い、面白くも何ともない……!!』

 

『そう言っていられるのも今の内です。あなたも戦っている内に、段々癖になってくるはずですよ……尤も、あなたはこの場で終わりですがね!!』

 

『!? しまっ―――』

 

『グルァ!!』

 

『ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』

 

マグニレェーヴ達を召喚しようとするエクシスだったが、シザースの左腕に装備されている鋏型の召喚機―――“甲召鋏(こうしょうばさみ)シザースバイザー”でカードを叩き落とされ、ボルキャンサーの鋏がエクシスに強烈な一撃を命中させる。一方的に滅多打ちにされたエクシスは地面に倒れてしまい、まともに動けなくなったところをシザースが右足で踏みつける。

 

『私の勝ちですね』

 

『ぐ、ぅ……ッ!!』

 

『たとえ子供だろうと容赦はしません。この戦いの頂点に立つ為にも……あなたには死んで貰います。あなたの妹さんも、私が強くなる為の糧にして差し上げましょう』

 

シザースは右腕のシザースピンチをゆっくり振り上げ、そのまま振り下ろそうとした……が。

 

『……あぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』

 

ズガァッ!!

 

『ぐっ!?』

 

エクシスは即座に突き立てたマグニブレードを、シザースの腹部に命中させ後退させる。その隙に起き上がったエクシスはカードを引き抜き、マグニバイザーに装填した。

 

≪FINAL VENT≫

 

『……ほぉ、ではこちらも』

 

≪FINAL VENT≫

 

『ッ……はぁ!!』

 

『グラァァァァァァァッ!!』

 

開いたシザースバイザーの装填口にもカードが挿し込まれ、装填口を閉じて装填。シザースの背後にボルキャンサーが回り込む中、エクシスはその場から後ろに宙返りするように跳躍し、後方から現れたマグニウルペースが跳躍しているエクシスに光弾を命中させる。

 

『フッ!!』

 

『グルアァッ!!』

 

一方で、シザースもその場から跳躍し、ボルキャンサーが両腕の鋏でシザースを高く打ち上げる。そのまま空中に跳んだシザースが丸まって迎撃態勢に入る中、マグニウルペースの咆哮と共にエクシスもライダーキックの構えに入りシザースと正面から激突する。

 

『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

ズドォォォォォォォォォォォンッ!!!

 

エクシスの必殺技―――グラビティスマッシュと、シザースの必殺技―――“シザースアタック”が空中で激突し、大爆発が発生。そして爆風の中からエクシスが地面に落下し、シザースもまた地面に着地する。

 

『残念でしたね。これで1人、ライダーは脱落です』

 

『ッ……はぁ、はぁ……!!』

 

エクシスが満身創痍なのに対し、シザースはピンピンした様子で彼を見下ろす。万事休すかと思われた……その時だった。

 

 

 

 

ガシャンッバキバキバキィン!!

 

 

 

 

『―――ッ!?』

 

カードデッキの砕け落ちる音が鳴り響く。それはエクシスの……ではなく、シザースの物だった。

 

『な、何……!?』

 

『……!?』

 

先程エクシスが突き立てたマグニブレードの一撃は、シザースのベルトに装填されているカードデッキに命中していた。その後にファイナルベント同士がぶつかり合った際、その衝撃でカードデッキが限界に達し、粉々に破損してしまったのである。

 

『グゥゥゥゥゥゥゥ……!!』

 

『!?』

 

その時、先程までシザースに忠実に従っていたはずのボルキャンサーが、唸り声を上げながらシザースを背後から睨みつけ始めた。その事に気付いたシザースは、仮面の下で表情が青ざめていく。

 

『ば、馬鹿な!? 契約が……私は、絶対に生き延びて―――』

 

『グルァァァァァァァァァァァッ!!!』

 

『が、あぁっ!?』

 

ボルキャンサーは抱き着くようにシザースを捕らえ、シザースを捕食し始めた。その最中にシザースの変身が解除されるも、ボルキャンサーは構わず須藤を頭から捕食していく。

 

『あが、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?』

 

『……ッ!!』

 

ボルキャンサーの咀嚼音。須藤の断末魔。あまりに凄惨過ぎる光景から逃げ出すかのように、エクシスはマグニブレードを杖代わりにその場からフラフラと立ち去っていく。

 

 

 

 

 

 

 

こうして、戦いはシザースの自滅に終わり、健吾は自身の目的に1歩近付いた。

 

 

 

 

 

 

 

しかしその勝利は、決して喜べるような勝利ではなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――でやぁっ!!」

 

『グガゥ!?』

 

かつてシザースが滅んだ後は、傷を回復してから日を改めて撃破に成功した。そのボルキャンサーが今、このミッドチルダで再びエクシスの前に現れたのだ。ラグナの平穏を守る為にも、シザースのせいで貪欲化しているこのモンスターだけは、この場で確実に倒しておかなければならない。

 

『『グラゥ!!』』

 

『グガァァァァァァッ!?』

 

マグニレェーヴとマグニルナールが発射した光弾を受け、ボルキャンサーは磁力によって引き寄せられたり引き離されたりを繰り返した後、壁に叩きつけられる。その間にエクシスはトドメの体勢に入る。

 

「終わりだ……!!」

 

≪FINAL VENT≫

 

『グガァァァァァァァァウッ!!』

 

『グルゥゥゥゥ……グガ!?』

 

電子音と共にマグニレェーヴ達が融合し、マグニウルペースに変化。エクシスが跳躍する中、壁に叩きつけられていたボルキャンサーは、怒り狂ったように鋏を振り上げて駆け出そうとしたが、マグニウルペースの放った光弾がその身に命中し、磁力でボルキャンサーの体が引き寄せられていき……

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

『グルァァァァァァァァァァァァッ!!?』

 

飛来したエクシスのグラビティスマッシュが、磁力で引き寄せられたボルキャンサーのボディに炸裂する。そのままボルキャンサーが壁に叩きつけられて爆発する中、エクシスは宙返りして地面に着地し、爆風の中から現れたエネルギー体を捕食したマグニウルペースがどこかに走り去って行く。

 

「はぁ……はぁ……」

 

爆炎の燃え盛る地面を、息の荒いエクシスが見つめる。彼の脳裏には、かつて須藤に言われた言葉が浮かび上がっていた。

 

 

 

 

 

 

『やはり、あなたも私と同じライダー(・・・・・・・・)ですね』

 

 

 

 

 

 

(ッ……僕は……)

 

自分はライダーをこの手で死に追いやった。人を殺す事を快感だとは思っていないつもりだった。それでも須藤から言われたその言葉は、今も健吾の心に重くのしかかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――あ、健吾さん!」

 

その後、ミラーワールドから帰還した健吾はラグナがいる雑貨屋へと戻り、彼の姿を見たラグナは安堵した表情で健吾の下へと駆け寄って来た。

 

「お待たせ、ラグナちゃん。モンスターは僕が倒したよ」

 

「あぁ、良かった……健吾さんの身に何かあったらどうしようかと」

 

「大げさだよ。そこまで僕は弱くないさ」

 

「大げさ? 無傷で帰って来る事より、怪我した状態で戻って来る事が多いのはどこの誰ですか?」

 

「ぐっ……それを言われると弱いなぁ」

 

実際その通りなのだから健吾は言い返せない。図星な健吾が言葉に詰まるのを見て、ラグナはジト目だったのが純粋な笑顔に変わり、健吾と手を繋ぐ。

 

「本当……無事で良かったです。健吾さん」

 

「……うん、ただいま」

 

ラグナに釣られて健吾も笑顔になり、彼女から紙袋を受け取って2人一緒に帰路を進んでいく。その途中、持っていた紙袋の中に見覚えのない箱が入っている事に気付き、健吾はその箱を取り出す。

 

「あれ? これって……」

 

「あ、気付きました? 開けてみて下さい」

 

「?」

 

ラグナがニコニコ笑っているのを見て疑問に思った健吾は、一度紙袋を置いてから箱を開けて中身を確認し、驚いた表情を浮かべる。その箱に入っていたのは……先程健吾が目を付けていた、あのオレンジ色のマグカップだった。

 

「! ラグナちゃん、これって……?」

 

「健吾さん、さっきそれをジーっと見てましたよね。私が気付いてないとでも思いました?」

 

「……よく見てるんだなぁ」

 

どうやら、ラグナには既に気付かれていたようだ。健吾はまたしても苦笑いを浮かべる。

 

「健吾さん、この世界に来てからもずっとモンスターと戦っていますから。そんな健吾さんの為なら、これくらいの我儘はいくらでも聞きますよ。もっと私に我儘を言って下さい」

 

「……そっか。ありがとう、ラグナちゃん」

 

ラグナの心遣いが、健吾にとってはとても嬉しかった。健吾が礼を言うと、ラグナも嬉しそうににこやかな笑顔を浮かべる。その笑顔が一瞬だけ、健吾には妹の小夜と重なって見えていた。

 

(本当に優しいなぁ、ラグナちゃんは)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やはりライダー同士の戦いは興味深い。これこそ私が求めていた快感です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あなたも戦っている内に、段々癖になってくるはずですよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……だからこそ)

 

ラグナの笑顔を見て、健吾は嬉しさと同時に……改めて、自分の罪を認識させられていた。

 

(彼女の隣にいるべきは、僕じゃない……)

 

彼女には兄がいる。彼女が本当の笑顔になれるとしたら、その隣にいるのはラグナの兄であって、決して自分ではないだろう。

 

(僕は人殺しだ……僕なんかが、いつまでも彼女の傍にいてはいけない)

 

彼は決めていた。彼女への恩返しが終わった時は、彼女の傍から離れる事を。そんな決意を固めた健吾は、手に持っていたオレンジ色のマグカップを静かに見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『鈴木健吾……仮面ライダーエクシスだな? ぜひとも、君を雇わせて貰いたい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

健吾の前に、オーディンが姿を現したのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……健吾さん」

 

グランセニック家の自宅。ラグナは部屋の電気も点けずに、椅子に座って机の上に置いている物を静かに見つめていた。彼女が見つめていたのは……縦に大きく罅割れた、オレンジ色のマグカップ。

 

「……健吾さん」

 

ラグナにとって、健吾と共に過ごした期間はとても楽しい時間だった。

 

その中に兄が混ざれば、どれだけ楽しさが増していた事だろうか。

 

しかし、その願いは二度と叶う事はない。

 

それを理解するまでに、かなりの時間がかかった。

 

それを受け入れるまでの間、兄や六課の人達にたくさん迷惑をかけてしまった。

 

ラグナにとってはそれくらい、健吾の死はとてつもなく重い現実だった。

 

「……健吾さんの、馬鹿」

 

今は現実を受け入れたのかと聞かれると、それも嘘になるだろう。現にラグナの目からは、涙の粒がゆっくり流れ落ちようとしているのだから。それでも彼女は……健吾からかけて貰った言葉を、今も忘れてはいなかった。

 

 

 

 

 

 

『お兄さんがどんな事を言っていたとしても、君が諦める事だけは絶対にしちゃ駄目だよ』

 

 

 

 

 

 

『少なくとも、2人はまだ生きてるんだから』

 

 

 

 

 

 

「……ッ」

 

ラグナは涙を拭った後、罅割れたマグカップを大事そうに両手で持って棚に戻す。そして何か意を決したような表情を見せた。

 

「健吾さん……私、前に進みます。だから、見ていて下さい」

 

彼女が見据える棚には、2つのマグカップが並べられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラグナが自分用に購入した、花柄模様のマグカップ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

健吾の為にラグナが購入した、罅割れたオレンジ色のマグカップ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2つのマグカップはまるで、恋人同士で手を繋いでいるかのようにも見えていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……?

 




はい、という訳で健吾とラグナの話でした。

今回の内容は簡潔に言うと【ラグナに拾って貰って彼女の為に戦っていた健吾が、かつて自身が殺害したライダーの元契約モンスターと戦う事で自身の罪を再認識し、それがラグナの傍からいずれ離れる事を決断する切っ掛けになった】というシンプルなお話です。
ボルキャンサーはその為だけに登場させました。残念ながら、蟹刑事はミッドチルダには来ておりません←

健吾は自分が犯した罪をかなり重く受け止めています。しかし重く受け止め過ぎたが為に、彼は自分1人だけで戦っていく決断をしてしまい、そのせいで手塚達や機動六課の皆と手を取り合う未来を選べませんでした。その結果、彼は今作の3大悪役(浅倉・二宮・スカリエッティ)によって葬られる結果となってしまいました。
そんな健吾の結末は、夏希にとっても決して他人事とは言えないでしょう。もし2人の立場が逆だったとしたら、彼女もまた、健吾と似たような結末を迎えていたかもしれないのですから。運命とは複雑な物なのです。

そしてラストシーン、ラグナはどこへ向かおうとしているのか……?

それでは、今後も『リリカル龍騎StrikerS 運命を変えた戦士』の物語をお楽しみ頂けると幸いです。
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