今回も引き続き、雄一の過去編をお送りしていきます。
それではどうぞ。
ちなみに活動報告で実施中の短編アンケートですが……
短編①:3
短編②:0
短編③:2
現在は短編①がリードしております。やっぱり皆、オリジナルライダーの活躍がみたいんですねわかります←
投票はまだまだ受け付けておりますので、活動報告にてどうぞ。
ミラーワールド、森林地帯……
『ヴッヴッヴッ!!』
『ヴェエウッ!!』
「くっ……うあぁ!?」
白いヤゴのような怪物―――“シアゴースト”が2体。動きが鈍いように思えてそれなりに軽やかな動きを見せる2体のシアゴーストを相手に、慣れないながらも必死に戦っている戦士がいた。シアゴーストの口から吐き出された細い無数の糸が、捕縛した戦士を振り回して岩壁に叩きつける。
「ッ……はぁ!!」
『ヴェッ!?』
『ヴヴヴ!!』
それでもやられてばかりの彼ではなく、手に持っていた長剣で首に巻きついた糸を切り離し、接近して来た1体のシアゴーストにも長剣の刃先を突き立てて攻撃。残るもう1体のシアゴーストが戦士に向かって飛びかかる。
「はぁ、はぁ……うぉぁぁぁぁぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
斎藤雄一。
またの名を仮面ライダーブレード。
まだライダーになりたての若き青年は、鏡の世界の異形達と戦う日々を送り続けていた。
そうなった経緯は、雄一がガルドサンダーと契約を結んだ日まで遡る……
「―――全く。君も随分と無謀な事をするものだねぇ、雄一君」
「すみません、貴重なカードデッキを……」
「いや、構わないよ。むしろ君が契約して仮面ライダーとなるのは、薄々だが予感はしていたからね」
例の騒動の後。荒れに荒れた培養室内部をナンバーズ一同がガジェット達を駆使して修理している中、雄一はスカリエッティに呼び出されて研究室にやって来ていた。雄一は預けていたはずのカードデッキから契約のカードを引き抜いて勝手に使用した事で厳しく言われるかと覚悟していたが、それに対しスカリエッティは怒りはせず、むしろその表情は楽しそうな表情でニヤニヤ笑っていた。
「いやぁ~それにしても、まさかこんな形で契約状態のカードデッキが手に入るとは……雄一君、少しばかりカードデッキを預からせて貰っても良いかな? 安心したまえ、データを取り終えた後はすぐに返すつもりだ」
「は、はぁ。それは別に構いませんが……」
「それにしても雄一さん、本当によろしかったのですか? あのモンスターと契約してしまって。雄一さんから聞いた話では確か、あのモンスターは雄一さんを―――」
「わかってます」
ウーノが言い切る前に雄一が切り出す。
「正直、今も“アイツ”に対する恐怖心は残ってますし……それでも、あの状況で自分が動かない訳にはいかないって思ったんです」
「ほぉ……それで、自分が戦いから抜け出せなくなるとしてもかい?」
「俺が戦わなくて、誰かが悲しむくらいなら……俺はその誰かの為に戦いたいんです。俺が戦う事で、誰かが涙を流さずに済むのなら」
「なるほど……その誰かというのはもしや、彼女の事を言っているのかな?」
スカリエッティが見据えた方向。その先には、研究室の入り口からこっそり覗き込むように顔を出しているルーテシアの姿があった。
「! ルーテシアちゃん……」
「……あの」
雄一の前までトコトコ歩いて来たルーテシアは、彼の前で突然ペコリと頭を下げる。その突然過ぎる行動には雄一だけでなく、スカリエッティやウーノまでもが目を見開いた。
「お母さん、助けてくれて……ありがとう」
「ルーテシアちゃん……」
「おやおや。知り合ったばかりの頃とは随分態度が変わったねぇ」
初めて出会ったばかりの頃はそれほど関わりを持とうとしていなかったルーテシアが、今ではこうして母親を助けて貰った事で礼を言うほどにまで心を開いた。これまではルーテシアが他人に心を開くところは見た事がなかった為か、スカリエッティが目の前の光景を興味深そうに見ている中、雄一はルーテシアの傍まで近付き、彼女の頭を優しく撫でる。
「気にしなくて良いよ。俺が勝手にやった事だから……ルーテシアちゃんのお母さんを守れたのなら、他に望む事は何もない」
「んぅ……」
雄一に頭を撫でられ、猫のように目をトロンとさせるルーテシア。しかしいつまでもそうしていては話が一向に進まない為、スカリエッティがゴホンと咳き込んで強引にだが話に割って入った。
「雄一君。今もまだ、君の体の検査は続いているんだ。そこにモンスター退治まで加わるとなれば、これから先はかなりハードな毎日になるだろう。彼女の母親を守りたいのなら、もはや地球に戻る事すらも許されない……それでも君は、このままライダーを続けていくつもりかい?」
「……覚悟はできています」
ルーテシアの母親―――“メガーヌ・アルピーノ”を守っていくには、このミッドチルダでガルドサンダーと契約を維持していくしかない。それにガルドサンダーを除いても、他にモンスターがいるとなれば、今更ルーテシア達を見捨てるような真似もできない。その事を理解した上で雄一は、ライダーとして戦い続けていく意志をスカリエッティに示してみせた。
「ん、よろしい。それならば今日この日、晴れて仮面ライダーとなった雄一君を、我々は改めて歓迎しようじゃないか……おっとそうだ。せっかく仮面ライダーになったんだから、私が何か名前を付けてあげよう。そういう訳で雄一君。早速だがそのカードデッキを使って、実際に仮面ライダーに変身してみてくれ」
「え、今からですか?」
「そう、今すぐにだ。さ、早く! 早く!! 早く!!!」
「鏡はこちらをお使い下さい」
両手をパンパン叩いて急かすスカリエッティは今、マッドサイエンティストがよく見せるような期待の眼差しを雄一に向けている。そんな彼に若干引きそうになる雄一だったが、そこは素直にカードデッキを左手に構え、いつの間にかウーノが用意していた大きな鏡の前に立つ。
(変身か……確か、こうすれば良かったんだっけ)
カードデッキに刻まれた鳥のエンブレムを眺めてから、雄一はカードデッキを鏡に向かって突き出す。それに応じるかのように、鏡に映った銀色のベルトが実体化して鏡から飛び出し、雄一の腰に装着される。
「おぉ! そう、そこから変身だ!!」
「ドクター、子供っぽい」
ウキウキした表情ではしゃぐスカリエッティにルーテシアが小さく小言を言っているのを他所に、雄一は静かに両目を閉じ、右手をゆっくり上げながら鏡を指差すように構えた後……両目をパッと開き、あの言葉を鏡に向けて大きく言い放った。
「……変身!!」
カードデッキをベルトに装填し、雄一は鏡を指差したまま動きを制止させる。すると彼の全身にいくつかの鏡像が重なっていき、彼を赤紫色のボディが特徴的な戦士へと変身させた。彼が指差していた右手をゆっくり下ろしていく中、その一連の光景を見届けていたスカリエッティは興奮した様子ではしゃぎまくっていた。
「素晴らしい……いや実に素晴らしいよ雄一君!! まさかの変身ポーズも披露するだなんて、遊び心も満載で素晴らし過ぎるじゃないか!!!」
「あ……ど、どうも」
「お兄ちゃん、カッコつけた?」
「私にも少し理解しかねます」
「うぐっ」
ハイテンションになったスカリエッティが変身した彼の装甲をペタペタ触りまくる中、変身ポーズについてのロマンは女子にはウケなかったのか、ルーテシアやウーノは微妙な反応だった。特にルーテシアの発言が軽くグサッときたのか雄一が言葉に詰まる一方、スカリエッティは彼が左腰のホルスターに納めている長剣型の召喚機に目を付けた。
「ふむ、君の場合は長剣が武器になっているようだねぇ……よし、決めたぞ」
「え、もう決まったんですか?」
「あぁ。少し安直な名前になってしまうが、むしろシンプルでわかりやすい名前だと思う」
スカリエッティが独自に考えた名称。それは今後も雄一がライダーに変身した際、その姿を示す為に使われ続ける事となる。
「ブレード……今日から君は、仮面ライダーブレードだ。これからはそう呼ばせて貰うよ」
そんな彼等の様子を、入り口の前で密かに盗み聞きをしていた女性―――クアットロは眺めていた。一体何を企んでいるのか、ブレードの姿を見た彼女は小さく笑みを浮かべていた。
(なるほど……あの男、確かに使えそうねぇ♪)
「―――でやあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
『『ヴェウッ!?』』
そして時は現在に至り、現在は仮面ライダーブレードとして、ミラーワールドで野生のモンスターと戦う毎日を送るようになった。ブレードの振り上げたガルドバイザーがシアゴーストを高く打ち上げ、もう1体のシアゴーストも左足で後ろ回し蹴りを放ち2体纏めて退けていく。そして2体が倒れている隙に、ブレードはガルドバイザーの柄部分の装填口を開いてからファイナルベントのカードを装填する。
≪FINAL VENT≫
『シャアッ!!』
『『!? ヴェッヴヴ……ッ!?』』
「はぁぁぁぁぁぁぁ……!!」
電子音と共に現れたガルドサンダーが、2本の尾羽を伸ばしてシアゴースト達を捕縛。そのままガルドサンダーが尾羽で2体のシアゴーストをグルグル回転して振り回す中、ブレードはホルスターにガルドバイザーを納めてから姿勢を低くし、居合いの構えを取ってトドメの体勢に入った。そしてガルドサンダーが投げつけたシアゴースト達がブレードのいる方角へと飛んで行き―――
「―――はぁっ!!!」
『『ヴェェェェェェウッ!?』』
ガルドバイザーを抜いたブレードが、居合い斬りでシアゴースト達の胴体を切断。必殺技―――“バーニングスラッシュ”を受けたシアゴースト達は、上半身と下半身に別れたまま後方へと吹き飛んで爆散し、爆風の中から出て来た2つのエネルギー体をガルドサンダーが素早く捕食して飛び去って行く。
「はぁ……はぁ……」
後方で爆炎が燃え盛る中、ブレードはガルドバイザーを下ろし、自身の右掌を見つめる。彼の手には、シアゴースト達を斬った感触が今も残っていた。
(これが……戦うって事なのか)
あれから既に何日も経過しているはずなのに。こうしてモンスターと戦う事だけでも、自分にとってはあまり感じの良い気分ではなかった。戦っている相手がモンスターだからか、まだ自分のやっている事に対して折り合いを付ける事ができているが、もし相手がモンスターではなく自分と同じライダーだったら……そう考えるだけで彼は気分が悪くなっていく。
(……でも、少しずつ慣れていかなきゃ。戦いに慣れなきゃ……いざという時、あの子のお母さんを守れない)
どれだけ辛くても、今更戦いをやめる事はできない。そう自分に言い聞かせながら、ブレードは足元の水溜まりを介して現実世界へと帰還し、帰還した先でブレードの帰還を待っていたルーテシアが駆け寄って来た。
「おかえり、お兄ちゃん」
「うん。ただいま、ルーテシアちゃん」
ブレードの変身を解いた雄一が、ルーテシアの頭を優しく撫でる。いつからかルーテシアと触れ合う時は、こうして彼女の頭を撫でてあげる事が1つの習慣となっていた。普段は無表情なルーテシアも、彼に頭を撫でられている時だけ多少だが表情が和らいでいる。
「戻っていたのか、雄一」
「! ゼストさん……」
そんな2人の近くの草木から、フードを被った長身の男性―――ゼストが姿を現す。ゼストの姿を見た雄一はルーテシアの頭から手を離し、その事でルーテシアは少しだけ残念そうな表情を浮かべ、このタイミングで姿を現したゼストに内心ちょっとだけ恨みの感情を抱いた……のだが、そんな事はゼストも雄一も知る由がない。
「ゼストさん、レリックはどうでした?」
「既に封印し、回収も終えている。ルーテシアが探している物ではなかったがな」
あれ以降、雄一は
「そう……」
「なかなか見つからねぇよなぁ~、ルールーが探してるレリック」
残念ながら、今回もルーテシアが目的としているレリックではなかったようだ。ルーテシアが残念そうに俯いている中、雄一の顔のすぐ横に、妖精のように体が小さい赤髪の少女―――アギトがフラフラと飛来し、アギトは雄一の左肩に座ってグーっと体を伸ばす。
「アギトちゃんもお疲れ様」
「お~、あんがとな~兄ちゃ~ん」
雄一が指先でアギトの頭を優しく撫でると、アギトもルーテシアと同じく気持ち良さそうに目を細める。そんなアギトが羨ましいのか、ルーテシアは少しだけ頬を膨らませてアギトを睨んでおり、それに気付いたゼストは少しだけ穏やかな表情を浮かべる。
(他人にあまり関わろうとしないルーテシアに、警戒心の強いアギト……そんな2人が、まさかここまで懐く事になるとはな……)
スカリエッティに同調する訳ではないが、ルーテシアとアギトがここまで他人に心を開いているのは彼から見ても非常に珍しいのか、彼も雄一に対して少なからず興味を示していた。そして何日も共に行動している内に、何度か雄一の持つ優しさに触れている為か、ゼストもまた、いつからか雄一の事を信頼するようになっていた……だからこそゼストは、雄一の現状に少なからず憂いの感情も抱いていた。
「雄一……今もまだ、
「……はい」
「……お前がルーテシアの母―――メガーヌの為に協力している事は俺も話に聞いている。だが、あまり奴等を信用し過ぎるな。何を企んでいるのかわからん連中だぞ」
「そうだぞ兄ちゃん! あの変態マッド野郎やナンバーズなんかに関わってたら、命がいくつあっても足りないかもしれないんだぞ!」
雄一やルーテシアと違い、ゼストとアギトはスカリエッティの事を深くは信用していない。それどころか彼等が雄一に対して行った
「……大丈夫です。今の段階ではまだ、俺の体も命に関わるほどの物ではないらしいですから。自分の体の事は、自分でよくわかっていますから」
「だが……」
「心配してくれてありがとうございます……でも、本当に大丈夫ですから。俺が死んだら、ルーテシアちゃんのお母さんを守れませんし」
雄一はあくまで、笑顔を崩さないままそう告げる。そうしてまで心配させまいとする雄一の姿に、ゼスト達はそれ以上何も言えなくなり、ルーテシアが両手で雄一の手を掴む。
「お兄ちゃん。あまり、無理はしないで……」
「……うん。ありがとね、ルーテシアちゃん」
ルーテシアが言っても、雄一の意志が変わる事はない。しかし3人は知らなかった。雄一が自分の意志を曲げようとしないのには、契約によってガルドサンダーの動きを封じてルーテシアの母親―――“メガーヌ・アルピーノ”を守る為だけではなく、別の理由も存在していた事を。
(そうだ、俺が戦いをやめる訳にはいかない。スカリエッティさん達に協力しなければ―――)
『少し、よろしいですか~?』
『……クアットロさん?』
それは雄一が、とある実験を受ける先日の出来事。夜遅くまで部屋でミッド語の勉強をしていた雄一の下に、クアットロがいつもの甘ったるい口調と雰囲気でユラリと近付いて来ていた。
『どうかしたんですか?』
『実は少しばかり、雄一さんに用がありまして。例の実験、そろそろ受けて貰う事になりそうなんです♪』
『! ……そうですか』
クアットロの言う実験……それは人造魔導師素体としての適性が高い雄一の体内に、レリックを埋め込む事で彼を人工的に魔導師として改造する実験だった。いつかこの日が来る事を覚悟していた雄一は、不安そうながらも真剣な目付きでクアットロと目を合わせる。
『……わかりました。その実験、受けさせて下さい』
『そうこなくては♪ あ、ここから先はまた別の話になるんですけど~』
『?』
クアットロは部屋の外に誰もいないのを確認してから、首を傾げている雄一の耳元で告げる。
『雄一さんさえよろしければ……あなたにも今後、私達の計画に協力して貰えると嬉しいですわ♪』
『計画……?』
『そう。私達は時空管理局上層部の最高評議会、そして地上本部首都防衛隊代表のレジアス・ゲイズ中将の依頼を受けた事で、戦闘機人や人造魔導師についての研究・実験を行っている……ここまでは前にウーノ姉様から教わりましたね?』
『は、はい』
『よろしい♪ ですがドクターは、管理局なんかの言う通りに動いている現状に不満を抱いてますの。そういう訳で今、ドクターは管理局に反旗を翻す為の計画に向けて準備を整えている真っ最中! その計画にはぜひとも、雄一さんの手もお借りしたい訳です♪』
『反旗を翻すって……ち、ちょっと待って下さい! それってテロになるんじゃ……』
『まぁ、世間から見ればそう思われるでしょうねぇ』
『な……何を言ってるんですか!! そんな事をすれば大勢の犠牲者が出ますよ!! そんな事をする為に俺はあなた達と一緒にいる訳じゃない!!』
『あら、予想通りの反応ですねぇ。でも良いんですか~?』
『何がですか!!』
『あの子……ルーテシアお嬢様のお母様が死ぬ事になっても、まだそんな事が言えるのかしら~?』
『!?』
その一言で、雄一の表情が一瞬にして固まった。それを見たクアットロはニヤリと黒い笑みを浮かべ、眼鏡をクイッと上げてから彼の耳元で囁き続ける。
『勘違いしないで頂戴。あなたがこうして
『!? やめろ、あの子のお母さんは関係ない!!』
振り返った雄一がクアットロに掴みかかるが、クアットロは一切動じなかった。それどころか、彼が焦っているのを見て更に追い詰めていく。
『関係ないはずがないでしょ~う? あなたはルーテシアお嬢様と随分仲良しになってるみたいだけど……もしメガーヌ・アルピーノが死ねば、あの子は相当悲しむ事になるわよ? それでも良いのかしら』
『……く、ぅ……!!』
『もし彼女を今後も生かし続けたいのであれば……わかっているわね? 自分が今後、どうしていくべきなのか』
メガーヌを人質の取り、雄一を自分達の計画に無理やり協力させる。そんな卑劣な手段に出たクアットロがほくそ笑んでいる中、雄一はクアットロの肩から手を離し、悔しそうな表情でその場に膝を突く。今の雄一には、クアットロの企みを阻止する方法は存在しなかった。
(あ~らら、案外楽勝だったわ。優し過ぎるというのも考え物ねぇ)
クアットロは内心腹黒い事を考えながら、膝を突いている雄一の後ろに再び回り込み、彼の耳元で甘ったるく、かつ不穏な口調で問いかけていく。
『斎藤雄一……いや、仮面ライダーブレード。あの子の為に、身を削る覚悟はおありかしら?』
『ッ……!!』
この次に雄一がクアットロに対して返した言葉……それもまた、クアットロにとって想定通りの返事だったのは言うまでもない事だろう。
「―――ちゃん、兄ちゃんよぉっ!!」
「! え、あ、あれ……どうしたの? アギトちゃん」
雄一の耳に、アギトの呼びかける声が大きく響き渡った。それによりアギトに何度も呼びかけられている事にやっと気付いた雄一は、思わずキョトンとした表情でアギトの方を見る。
「どうしたの、じゃねーだろ! 何度も呼びかけてんのに無視すんなよなぁ!」
「あ、ごめんアギトちゃん」
「もう良いって! ほら、さっさと帰ろうぜ。ゼストの旦那やルールーも向こうで待ってんぞ!」
アギトが飛んで行く先では、ゼストとルーテシアも雄一が追いついて来るのを待っていた。それに気付いた雄一は慌てて彼等の下まで走って行くが……今もまだ、脳裏にはクアットロに告げられた言葉が鮮明に浮かび上がり続けていた。
『もし彼女を今後も生かし続けたいのであれば……わかっているわね? 自分が今後、どうしていくべきなのか』
「ッ……」
誰かを傷つけたくないし、そんな計画には協力などしたくもない。しかし協力しなければ、メガーヌが殺される事になる。どうすれば良いのかわからず、雄一は1人苦悩し続けていた。
(一体、どうすれば良いんだ……どうすれば……!)
ドクン……ドクン……
雄一の苦悩に呼応しているのか。彼が右手首に装着しているリング……そのリングに付いている赤い宝玉は、数回だけ点滅した後、その点滅もすぐに収まるのだった。
そんな彼の抱えている苦悩を他所に、
「雄一、奴の動きは私達で押さえる!!」
「トドメは任せるっスよ!!」
「キッチリ仕留めねぇと承知しねぇぞ!!」
「わ、わかった!!」
≪FINAL VENT≫
『ヴェヴゥッ!?』
ミラーワールドから現実世界に獲物を求めていたシアゴースト。それをチンクやウェンディ、ノーヴェ達と共に追い詰め、最後はブレードがシアゴーストにトドメを刺して戦闘を終了させる。ミラーワールドではなく現実世界での戦闘だった為か、この時の戦闘データはガジェットを介してスカリエッティに記録され、それによって後にシアゴーストやその進化系であるトンボ型の怪物―――“レイドラグーン”を模したガジェットが開発される事となる。
「ルーテシアちゃん、どうだった?」
「……ううん。これも、探していたのとは違う」
「そっか……他にも、色々探してみよっか」
「うん」
またある時は、ルーテシアやガリューと共にレリックの捜索を行い、メガーヌを目覚めさせるのに必要だという専用のレリックを探し続ける。ハズレのレリックを掴むたびにルーテシアが落ち込むも、雄一が励ます為に頭を撫でれば、それだけでルーテシアはすぐ元気になり、レリックの捜索を再開する。
「どうだい、雄一君? 体の具合は」
「……はい、特に問題はないです」
またある時は、例の実験でルーテシアと同じ人造魔導師になった事から、スカリエッティの下で検査を受けて異常がないかどうかを定期的にチェックをされる。ウーノとクアットロがキーボードを操作し、スカリエッティが複数あるモニターの画面を見ている中、雄一は身動き1つ取る事なく、検査が終わるまで大人しくしている。
(フフフ……♪)
そんな検査の裏で、クアットロが時折怪しげな笑みを浮かべていた事には、スカリエッティ達すら気付いてはいなかった。
『キシャアッ!!』
『グルアァァァァァッ!!』
「ッ……コイツ等もガルドサンダーと同じ系統か!!」
「我々が押さえる!! その間に残りの2枚を使って契約しろ!!」
「は、はい!!」
またある時は、ナンバーズを狙ってミラーワールドから襲い掛かって来た、ガルドサンダーと同じ2体の鳳凰型の怪物―――“ガルドミラージュ”と“ガルドストーム””と対峙。トーレやチンク達が2体を引きつけている間に、カードデッキの中に入っていた残る2枚の契約カードを使ってブレードが契約を完了し、合計で3体もの鳳凰型モンスターを従えさせる事に成功した。
(これでモンスターが3体か……大変だけど、頑張らなきゃ)
『シャアァァァァァァ……!!』
『キシャアァァァァァ……!!』
『グルアァァァァァァ……!!』
ただし、3体ものモンスターと契約してしまっている事から、餌の確保の為に更に苦労を強いられる羽目になってしまった訳なのだが。
『キシャシャシャシャシャ!!!』
「く、コイツ……!!」
またある時は、髑髏のような背中を持った巨大グモの怪物―――“ディスパイダー”とミラーワールドで遭遇し、かなりの苦戦を強いられる事もあった。ブレードがガルドウィップを使って動きを封じようとしても、かなりの巨体を誇るディスパイダーを上手く取り押さえる事ができず、逆にディスパイダーは長い前足を使ってブレードになかなか反撃をさせてくれない。そして苦戦が続く内に少しずつタイムリミットが迫ってきていたのか、ブレードの右手がほんの僅かにだが粒子化を始めていた。
「マズい、早く倒して戻らないと……!!」
『シャッ!!』
「な……ぐ、がっ!?」
その時、ディスパイダーの口から伸びた糸がブレードの首元に巻きつき、それどころか彼の手足にも複数の糸が巻きついた。そのままディスパイダーはブレードを自分の傍まで引っ張っていき、ブレードを捕食しようと口元の牙をカチカチ鳴らす。
「ぐ……離、せ……ッ!!」
『キシャアァァァァァ……!!』
ブレードも必死に抵抗するが、やはりディスパイダーの方が引っ張る力が強く、おまけに両腕にも糸が巻きついているせいで左腰のガルドバイザーを引き抜く事すらできない。何もできずに引っ張られ続け、ディスパイダーの顔がすぐそこまで迫りつつあった。
(ッ……駄目だ……このままじゃ、喰われ、て―――)
『お兄ちゃん。あまり、無理はしないで……』
(―――いや、駄目だ!!)
ディスパイダーの牙が触れる寸前のかなりギリギリなところで、ブレードが両足で踏ん張りそれ以上引っ張られるのを阻止。そして右腕の糸を引き千切るべく、力ずくで糸を引っ張り始める。
ドクン……
(俺は死ねない……あの子のお母さんを、守る為にも……こんなところで……ッ!!)
ドクン……
「お前みたイナ怪物如キが……コノ俺の……!!」
ドクン……
「―――俺ノ邪魔ヲスルナァァァァァァァァッ!!!!!」
ズバァァァァァァァァァンッ!!!
『!? ギシャアァァァァtァァッ!!?』
右腕の糸を引き千切ったその瞬間、自由になった右手で引き抜いたガルドバイザーの斬撃がディスパイダーの顔面に直撃。捕食しようとした獲物が思わぬ反撃をしてきた事でディスパイダーが怯む中、ガルドバイザーで残る糸も全て切り裂いたブレードは両手でガルドバイザーを大きく振り上げ、ディスパイダーの顔面に叩きつけるように何度も攻撃してからその背中に飛び乗り、同じように何度も背中を攻撃し続ける。
「消エロォ……潰レロォォォォォォォォォォッ!!!」
≪AX VENT≫
『ギシャシャアァァァァァァァ!!?』
更には召喚したガルドアックスを背中目掛けて振り下ろし、ガルドアックスの刃が背中に食い込んだ痛みでディスパイダーが悲痛な鳴き声を上げる。その苦しみで暴れる巨体から振り下ろされるブレードだったが、地面を転がる事ですぐに立ち上がり、ガルドバイザーにファイナルベントのカードを装填する。
≪FINAL VENT≫
『シャアッ!!』
『キシャアッ!!』
『グルアァァァァァァッ!!』
ブレードの背後にガルドサンダー・ガルドミラージュ・ガルドストームの3体が出現。3体は一ヵ所に集まって一体化していき、巨大な鳳凰型の怪物―――ガルドブレイザーへの融合を果たす。
『ショアァァァァァァァァァァァァァァッ!!!』
「ハァ、ハァ……終ワリダァ……!!」
ブレードが構えたガルドバイザーの刀身に、首だけ振り向かせたガルドブレイザーが灼熱の炎を噴きつける。それにより巨大な炎の剣が完成し、ブレードを乗せたガルドブレイザーはディスパイダー目掛けて猛スピードで飛行しながら突っ込んでいく。ディスパイダーも負けじと口から何本もの糸を吐き出し、ガルドブレイザーの接近を阻止しようとしたが……
「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!」
『ッ……ギシャアァァァァァァァァァァァァッ!!?』
灼熱の剣を前に、そんな抵抗は無意味だった。擦れ違い様に振るわれた炎の刀身がディスパイダーの全身を丸ごと焼き尽くし、全身を焼かれたディスパイダーは呆気なく爆死。ブレードが地面に着地した後、出現したエネルギー体をガルドブレイザーが捕食し、どこかに飛び去って行った後も……ブレードは着地した体勢のまましばらく動こうとしなかった。
「ッ……ハァ……ハァ……」
右手の粒子化が、少しずつ全身に広まり始めている。そんな状況にも関わらず、ブレードは先程までの自分の言動に違和感を感じ始めていた。
「……俺ガ……」
胸の鼓動が、少しずつ収まっていく感じがした。
「今のは……俺が言ったのか……?」
この時の彼は、まだ気付いてはいなかった。
レリックを埋め込まれた自身の体に、少しずつ異変が起き始めていた事に。
その事に雄一が気付いたのは……彼がスカリエッティの
それは同時に……“あの男”が、このミッドチルダに降り立った後の話でもあった。
「どこだここは……イライラする……!!」
運命の歯車が、狂い始めようとしていた。
To be continued……
リリカル龍騎StrikerS!
雄一「久々だな。自分の思うままに弾けたのは……」
ゼスト「何者だ!!」
浅倉「誰だって構わない……俺と戦えぇっ!!!」
アギト「ルールー危ない!!」
戦わなければ生き残れない!
雄一「消えろ……ッ……俺の中から消えろォッ!!!!!」