リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

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第42話、まさかの3日連続更新です。

そういえば龍騎本編で雄一を演じた役者さん、ビルドのスピンオフ『ROGUE』で布袋役として出演してると知って驚きました。

そんな呟きはさておき、本編をどうぞ。

よければ活動報告の短編アンケート、それから感想&評価もプリーズ。



第42話 憎悪

「いやぁ~助かったっス。わざわざ片付けの手伝いまでして貰っちゃって」

 

「いえ。こんなに壊したのは他でもない俺ですから……でも良いんですか? こんな所にいっぱい溜め込んで」

 

「構わんさ。ドクターの事だ、どうせまた何かに再利用する事だってあるだろうからな」

 

研究所(ラボ)のとある廃棄物処理場。ブレードとの戦闘訓練で破壊されたガジェットの残骸をチンクやウェンディ、ディエチやノーヴェ達と一緒に運んでいた雄一は、ブレードに変身した状態で破損したガジェットのパーツを運び終えるところだった。廃棄物処理場には運んで来たガジェットの残骸だけでなく、他にも使われなくなった装置の部品なども大量に放置されており、チンクの言葉を聞いた雄一は「こんな物を一体何に再利用するんだろう」と内心密かに疑問に思っていたりする。

 

「さて、これでひとまず全部運び終えたな……この後はまたいつもの昼食だが、今日はどんなメニューなのか楽しみにさせて貰うぞ、雄一」

 

「ははは……また美味しい物を作りますので、皆さんも楽しみにしてて下さい」

 

「ヒャッホーイ! また雄一兄の料理が食べられるっス!」

 

「雄一さんの作るご飯、どれも美味しいから本当に楽しみ」

 

「……ふん、食えりゃ何だって同じだろ」

 

チンクやウェンディ、ディエチは雄一の手料理を楽しみにしている様子。一方でノーヴェは口ではそう言っているものの、その表情はどこかソワソワしており、雄一の手料理を楽しみにしているのは彼女も同じなようだ。

 

「そうと決まれば雄一兄、早く厨房に向かうっスよ~!」

 

「今日は私達も手伝うから」

 

「うわっとと。2人共、そんなに焦らなくても大丈……ん?」

 

ウェンディとディエチに手を引っ張られ、危うく転びそうになった雄一は思わず苦笑いを浮かべるが……廃棄物処理場から立ち去ろうとした時、彼の目にある物が映り込んだ。それを見た雄一はピタリと足が止まる。

 

「? どうした、雄一」

 

「……これは」

 

たまたま雄一の目に留まった物……それは残骸の山のすぐ近くに放置されていた、古ぼけたグランドピアノ。それは雄一にとって、今も忘れられない物だった。

 

「あぁ、ドゥーエ姉様が昔使っていたピアノか」

 

「ドゥーエ……?」

 

「私達ナンバーズのNo.2、要するに次女にあたる人だ。そのピアノはドゥーエ姉様がある潜入任務をこなす前に練習していた物だが……気になるのか?」

 

「……夢だったんです」

 

「夢?」

 

雄一はウェンディとディエチの手から離れ、グランドピアノの前まで近付いて行く。

 

「昔、俺が見ていた夢……叶えたかったのに、叶えられなかった物」

 

「? どういう事だ」

 

「……右腕を、ある男に傷つけられました。それでピアノを弾けなくなって、もう捨てるしかないはずの夢でした……でも」

 

グランドピアノの鍵盤を開き、雄一は自身の右掌を開いて見つめる。このミッドチルダに来てからというもの、何度開いても、何度閉じても、彼の右手は正常に動いていた。それが余計に、かつての夢に未練を抱かせてしまっていた。

 

「ねぇ~雄一兄~、お腹空いたっスよ~」

 

「お前少し黙ってろ」

 

「……」

 

ブーブー文句を垂れるウェンディの頭をノーヴェが叩く中、雄一はグランドピアノの前に立ち、指先で白鍵を底まで深く押し込む。少し高めの音が鳴ったのを耳で確認した雄一は、そこから両手を鍵盤の上に置き、軽くだが演奏してみる事にした。彼が弾くのは、かつて自分がいた世界で何度も練習していた内の一曲。

 

(! 弾ける……)

 

右手の指が動く。自分の思うままに弾ける。目を見開く雄一だったが、それでも演奏中は口を開かず、目の前のピアノを弾く事に集中する。指先は軽やかに動き、黒鍵も違和感なく音を鳴らす事ができていた。

 

(指が、ちゃんと動く……)

 

長期間放置されていたのもあって、鍵盤は時折おかしな音も鳴らしており、ハッキリ言って演奏としては滅茶苦茶である。しかし、今の雄一にとってそれはさほど重要な事ではない。今の雄一は何よりも……自分の指先でピアノを弾けるという事実に、心の中で歓喜していた。

 

(また……ピアノが弾ける……!)

 

そこから約10分ほど、雄一の演奏は続いた。時折おかしな音が鳴って、曲の流れとしては台無しになっているはずなのに、雄一は手を止めなかった。彼の演奏を聞いて、チンクやディエチだけでなく、最初は興味なさそうに聞いていたノーヴェや、先程まで愚痴を言っていたウェンディすらも、今では何も言わずに黙って雄一の演奏を聞き続けている。

 

(懐かしく感じる……夢を追っていた頃を思い出す……!)

 

ブランクがあるはずなのに、雄一の腕は衰えを知らなかった。段々感覚を思い出してきた彼は、演奏も少しずつ力強い物へと変わっていく。自分の弾きたいように弾ける。それが雄一の一番の喜びだった……はずなのに。

 

(ッ……どうして……どうして、こんなにも……胸が痛む……!)

 

彼の演奏に、少しずつ鈍りが見え始める。力強かったはずの演奏は段々勢いが弱まっていき、軽やかに動いていた筈の指先も動きが段々ゆっくりな物になっていく。そして曲を最後まで弾き終える前に、雄一の手が鍵盤から離れ、演奏は呆気なく終わりを迎えてしまった。

 

「……? どうした、雄一。もう終わりか?」

 

「……すみません。これ以上続けると、昼食の時間を過ぎてしまいますので」

 

「あ、そうっスよ!? もうお腹ペコペコで我慢の限界っス!」

 

「最後まで聞いてた癖にそれかよ」

 

演奏が途中で終わった事に疑問を抱いたチンク達に、振り向いた雄一はぎこちない笑顔を浮かべる。そのぎこちない笑顔に秘められていた感情には、チンク達は気付いていないようだ。

 

「……久々だな。自分の思うままに弾けたのは……」

 

「ずっと放置されていたピアノで、ここまで弾けるのは大したものだ……雄一。もしお前さえ良かったら、時々で良いからまた弾いてみてくれないか? ドクターに頼めば、ピアノも新しいのを用意して貰えるかもしれない」

 

「……ありがとうございます、チンクさん」

 

チンクの言葉は、純粋に雄一の演奏の腕前を称賛する物だった。しかし今の雄一には、その称賛の言葉すらも、どこか心の痛む言葉として受け止める事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃんの演奏、私も聞きたかった……」

 

「あ、あはは……ごめんねルーテシアちゃん」

 

「へぇ~、兄ちゃんってピアノも弾けるんだなぁ」

 

それから数日後。この日はいつも通り、雄一・ルーテシア・ゼスト・アギトの4人でレリックの捜索に動き、森林地帯で活動を続けていた。現在ゼストが別行動でこの場に不在である為、雄一達は大きな湖の前にある小さな洞穴の中でゼストの帰りを待ち続けている。今は雄一達の焚いた火がパチパチと音を鳴り、湖で釣った魚を美味しく焼き上げようとしていた。

 

「でも兄ちゃん、元の世界ではピアニスト目指してたんだろ? 何でやめちゃったんだ?」

 

「……昔ね、色々あったんだ」

 

雄一は焚き火に薪を追加し、火力を調整しながら語り出す。

 

「俺には、心から親友と思える男がいた。俺が何度失敗しても……何度挫けそうになっても……彼は変わらず、俺の夢を応援してくれていた」

 

「ほぉ~ん、なら良い奴じゃん!」

 

「彼の応援があったから、俺は諦めず夢を追い続ける事ができたんだ。コンクールで賞を取って、プロの業界からも声をかけて貰って、これからって時だった……でも、それも全て終わってしまった」

 

「どうして……?」

 

「……傷害事件に巻き込まれてさ」

 

また1本、焚き火に薪が補充されていく。

 

「何て事ない、いつも通りの1日だった……たまたま通りかかった先で、傷害事件に巻き込まれて……その時に受けた傷の後遺症が残って、ピアノを弾けなくなってしまった」

 

「ッ……そんな……!」

 

「何だよそれ、酷い話じゃねーか!」

 

「本当に……あの時は凄く悔しかったよ。夢に近付けたと思ったら、一瞬で何もかも終わらされて……その時、ある男が俺の前に現れた。それが……」

 

「……神崎士郎?」

 

「うん。俺にこのカードデッキを渡して、仮面ライダーとして戦うよう促してきた。戦いに勝ち残れば、夢を取り戻す事ができるって……でも、俺は戦おうとは思わなかった」

 

「え、どうしてさ?」

 

自分の夢を取り戻せるかもしれないのに、何故そうしなかったのか。アギトは首を傾げたが、ルーテシアはすぐにその答えがわかった。前にも一度だけ、その答えを聞いた事があったから。

 

「そんな方法で叶えても、自分でそれを認められない……から?」

 

「……覚えてくれてたんだね。その言葉」

 

「だってお兄ちゃん……前に話した時も、凄く辛そうな顔だったから……」

 

「……その通りだよ」

 

雄一は木の枝を使い、弱まっていた焚き火の火力を再度調整する。焚き火がまた燃え上がり、煙と共に煤が上へと上がっていく。

 

「俺は子供の頃から、暴力があまり好きじゃなかった。誰も傷つけたくないし、誰の命も奪いたくない、ずっとそう思い続けてた。傍から見れば、情けないだけの弱い人間に見えるかもしれない……それでも自分の気持ちに嘘はつけないし、つきたくもない……これが今の俺だ。斎藤雄一という……ただの弱い人間なんだ」

 

「……違う」

 

「え?」

 

焚き火を見ていた雄一は顔を上げる。彼の目に映ったのは、雄一の言葉を必死に否定しようと、首を横に振るルーテシアの顔だった。

 

「……あの時。お兄ちゃんは自分の意志で、ガルドサンダーを止めようとしてくれた。お母さんを守ってくれた。そんなお兄ちゃんが弱い人間だなんて……私は思わない」

 

「ルーテシアちゃん……」

 

「だから、もう一度だけ言うね……お母さんを助けてくれて、ありがとう」

 

「!」

 

普段笑わないルーテシアが、笑顔で雄一に感謝の意を述べた。その思いが胸に響いたのか、雄一も自然と表情が笑顔に変わり、優しく微笑んでみせた。

 

「ありがとう。そう言って貰えると、凄く嬉しいよ」

 

自分の意志は、決して無駄じゃなかったのがわかった。こうして、誰かの笑顔を守る事ができているんだ。そんな風に思える雄一だったが……それでもまだ、心のどこかで違和感は生じていた。

 

(何で……こんなにも……ッ……)

 

その時。

 

「! 旦那が戻って来た!」

 

アギトが指差す方向から、洞穴に入って来る男性の影が見えて来た。それを見た雄一とルーテシアも、やって来たゼストを迎えようとその場から立ち上がったが……雄一は気付いた。

 

(? ゼストさん、じゃない……?)

 

よく見ると、その影のシルエットはゼストの物とは違っていた。ゼストが普段被っているはずのフードがその影にはなく、彼が普段装備しているはずの槍型デバイスも見当たらない。代わりにその手に持っていたのは、細長い鉄パイプらしき物。

 

「……誰?」

 

ルーテシアもアギトも、その影がゼストの物じゃないと気付いたようだ。2人が警戒した様子で構える中、焚き火に近付くと共にその影の正体も明らかになる。

 

「おい……ここはどこだ」

 

最初に放って来た言葉がそれだった。焚き火に照らされたその男は、上半身に蛇柄ジャケットを着ており、履いているズボンはベルト部分にチェーンが繋がれている。何よりも、その男が向けている獣のような鋭い目付きは、見る者を無意識の内に圧倒する。

 

「……誰なの……?」

 

「ッ……!」

 

本能で危険だと察知したのか。ルーテシア達にとっては初めて会う人物だったが、彼女達は無意識の内にいつでも魔法を放てる体勢を取り、目の前の男を睨みつけていた。恐らく雄一も警戒している事だろう。そう思った2人が雄一を横目で見ると……2人の予想とは違う反応を見せている雄一がそこにはいた。

 

「そん、な……どうして……どうしてお前が……ッ!!」

 

「……お兄ちゃん?」

 

雄一は震えていた。その口調も明らかに、目の前の男を知っているかのような感じだった。彼がそんな反応を見せている事に、ルーテシアとアギトは驚きを隠せなかった。

 

「どうして……」

 

雄一の脳裏に浮かび上がる記憶。何て事のない、変わらないはずだった日常。その日常を崩壊させた張本人が、今こうして目の前に立っている。

 

「どうして、お前がここにいるんだ……浅倉威……!!」

 

「……何だ、俺を知ってるのか?」

 

謎の男―――浅倉威は、その鋭い目付きを雄一の方に向ける。しかしその視線はすぐに逸れ、彼の意識は焚き火の中でこんがり焼き上がっている魚へと向いていた。

 

「おぉ……」

 

焼き上がった魚の身を刺し貫いている串を手に取り、浅倉はその魚の身に何の遠慮もなく喰らいついた。いきなり現れては魚を喰らい始める浅倉の行動に、ルーテシアとアギトは今も警戒の姿勢を休めずにいる。そんな彼女達の睨みつける視線に目も暮れず、浅倉はよほど空腹だったのか、1口、2口、3口と魚の身に齧りつき、いくらか腹の中に収めてから串をその辺に放り捨てた。

 

「ちょうど良い……どこかもわからん森の中を何日も歩かされて、ずっとイライラしてたところだ」

 

浅倉は左手に持っていた鉄パイプを持ち上げ、左肩の上に置く。

 

「お前等……俺を楽しませろよ」

 

「……ッ!!」

 

ルーテシアの行動は早かった。彼女が防御魔法を張り巡らせた瞬間、浅倉の振り下ろした鉄パイプが激突し、轟音と共に浅倉の放った一撃を跳ね返す。それと同時に、両手に炎を纏わせていたアギトが浅倉目掛けて勢い良く炎を放射する。

 

「喰らいやがれぇっ!!!」

 

「ッ……うぉ!?」

 

本能で回避したのか、ギリギリ炎を避けた浅倉は鉄パイプを落としながらも洞穴の外へと飛び出し、その後を追うようにルーテシアとアギトも外へと飛び出す。湖の前まで移動した浅倉は、目の前で戦闘態勢に入っているルーテシアとアギトを見てニヤリと笑う。

 

「妙な力を持ってるな……面白い」

 

その時、浅倉がいる後方の湖の水面がグニャリと歪み……

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

『―――シャアァァァァァァァァァッ!!』

 

「「!?」」

 

水面から飛び出したコブラのような怪物―――ベノスネーカーが牙を剥き、ルーテシアとアギトに向かって飛びかかるように襲い掛かって来た。突っ込んで来るベノスネーカーの突進をルーテシア達が左右にかわす一方、浅倉はズボンのポケットから取り出した紫色のカードデッキを、湖の水面へと突き出していた。その光景に、洞穴から出て来た雄一は驚愕する。

 

「!? そんな、まさか……」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ……変身ッ!!」

 

ゆらりと変身ポーズを取った浅倉は、カードデッキをベルトに装填。その全身に鏡像が重なり、コブラの特徴を持つ戦士―――仮面ライダー王蛇への変身を完了した。それを見たルーテシア達も驚愕する。

 

「んな!? ルールー、あれって……!!」

 

「ッ……お兄ちゃんの他にも、仮面ライダーが……!?」

 

「あぁ~……」

 

王蛇は首を回してゴキゴキ鳴らし、腕を軽くしならせる。そして振り返った彼はどこからかベノバイザーを取り出し、1枚のカードを装填口へと挿し込んだ。

 

「この際、誰だって構わない……」

 

≪SWORD VENT≫

 

「戦え……俺と戦えぇっ!!!」

 

「ッ……くぅ!?」

 

「ルールー!!」

 

「ルーテシアちゃん!!」

 

ベノサーベルを召喚した王蛇は跳躍し、一気に距離を詰めてからルーテシア目掛けて振り下ろす。ルーテシアは先程と同じように防御魔法で防ごうとするも、ベノサーベルの一撃は先程の鉄パイプの一撃よりも強力で、防御魔法で出現させた魔法陣が簡単に破壊されてしまう。それでも何とか攻撃をかわしたルーテシアに王蛇が追撃を仕掛けようと襲い掛かる中、洞穴から飛び出した雄一は湖の水面にカードデッキを向け、ベルトが出現したのを確認してから即座にカードデッキを装填する。

 

「変身!!」

 

変身ポーズも取らないまま雄一はすぐにブレードに変身し、王蛇の追撃を受けようとしていたルーテシアを庇うように割って入り、振り下ろされて来たベノサーベルをガルドバイザーで防御。ブレードと王蛇が掴み合いの体勢になる。

 

「ほぉ、お前もライダーか……面白くなってきた……!!」

 

「ッ……お前、何で俺達に戦いを挑む!? 俺達が戦う理由なんてないはずだ!!」

 

「理由だと? 下らん……ライダーだから戦う、理由はそれで充分だろぉ!!」

 

「がっ……ぐぁあ!?」

 

ガルドバイザーを無理やり上に押し上げ、がら空きになったブレードの腹部に王蛇の膝蹴りが炸裂。怯んだブレードにベノサーベルを鈍器のように何度も叩きつけ、鋭い先端を突き立ててブレードを岩壁まで追い込んでいく。しかしやられてばかりのブレードではなく、王蛇が接近して来る前に1枚のカードを装填する。

 

≪ADVENT≫

 

『シャアァァァァァッ!!』

 

「ん、ぬぉ……!!」

 

水面から飛び出して来たガルドサンダーが猛スピードで飛来し、ブレードに襲い掛かろうとした王蛇に真横から突進を仕掛け転倒させる。しかし王蛇はすぐに立ち上がり、ガルドサンダーを見て鬱陶しそうな口調で次のカードを引き抜いた。

 

「鬱陶しいなぁ……お前はコイツとでも遊んでろ」

 

≪ADVENT≫

 

『キュルルルル……!!』

 

『シャガァ!?』

 

同じく水面から飛び出して来たエビルダイバーが、空中を飛行していたガルドサンダーと激突。激突されたガルドサンダーが地面に落ちるのを見て、ブレードは驚いた様子で王蛇と向き合う。

 

「!? まさか、お前も複数のモンスターを……!!」

 

「さぁ、続けようぜ……!!」

 

「お兄ちゃ……ッ!?」

 

「ルールー危ない!!」

 

『シャアァッ!!』

 

ブレードと王蛇の戦いに加勢しようとするルーテシアだが、ベノスネーカーが吐きかけて来る毒液のせいで上手く加勢に向かえない。アギトが火炎弾を放ってベノスネーカーを怯ませている一方で、ブレードと王蛇はそれぞれ次のカードを装填しようとしていた。

 

≪≪SWING VENT≫≫

 

「「はぁっ!!」」

 

ガルドウィップとエビルウィップの一撃がぶつかり合う。そこから2人は何度も鞭を振り回し、ブレードの伸ばしたガルドウィップが王蛇に巻きついて捕縛した……かのように見えたが、ガルドウィップは王蛇ではなく、王蛇が左手に持っていたベノサーベルに巻きついていた。

 

「フンッ!!」

 

「!? しま……があぁっ!?」

 

敢えてベノサーベルを囮に使った王蛇はベノサーベルを手離し、ブレードの右手にエビルウィップを叩きつけてガルドウィップを叩き落とす。そこから更にエビルウィップをブレードの胴体に巻きつけて捕縛し、両腕ごと胴体に巻きつけられたブレードはそのまま勢い良く振り回され、容赦なく地面へと叩きつけられる。しかもその1回では終わらず、王蛇はエビルウィップを何度も振り回してブレードを地面や岩壁に連続で叩きつけ、近くの大木をへし折る勢いでブレードを力強く叩きつけた。

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「!? お兄ちゃん!!」

 

へし折られた大木が地面に倒れて轟音を立てる中、何度もあちこちに叩きつけられたブレードはそのダメージで地面に倒れたまま動けない。そこにベノサーベルを拾った王蛇がゆっくり歩いて迫って来る。

 

「そうだ、この感じだぁ……やっぱりライダーの戦いはこうでなくちゃなぁ……!!」

 

「ッ……お前……そうやって、何人もの人間を傷つけて来たのか……!!」

 

「……何?」

 

ガルドバイザーを地面に突き立てて体を起こそうとするブレードだったが、力が入らないのか上手く立ち上がれない。それでも何とか膝を突いた体勢になり、目の前の王蛇を仮面の下で鋭く睨みつける。

 

「今でもずっと、忘れられない……お前に傷つけられた時の事を……お前に夢を潰された、あの日の事を……俺は今でも……!!」

 

浅倉が起こした傷害事件。傷つけられた右腕の痛み。夢を失った事への絶望感。雄一は今でも忘れていなかった。自身から夢を奪った張本人に、傷つけられた者の痛みを訴えたかった。

 

しかし、そんな雄一の思いは……浅倉が次に放った一言で崩れ去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だそりゃ? お前の事なんか俺が知るかよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……な、に……?」

 

「ハッ!!」

 

「がはっ!?」

 

王蛇の蹴りが入り、ブレードが地面に倒れる。そこに王蛇が何度もベノサーベルを叩きつけ、更に右足で力強く胸部装甲を踏みつける。

 

「俺はなぁ、戦えれば良いんだよ……それだけで充分なくらいにな」

 

「ぐ、が……ぁ……ッ!!」

 

「……オラァ!!!」

 

かつて自分が起こした傷害事件の事も、彼は覚えてすらいなかった。踏みつけられている胸部から王蛇の右足を両手で退かそうとするブレードだが、その失意から両手に力が入らない。そこに王蛇がベノサーベルを何の躊躇もなく振り下ろそうとしたが……

 

「させん!!」

 

「ん!? ぐぉ……ッ!!」

 

ベノサーベルを振り上げた瞬間、王蛇の胸部に槍型デバイスの一撃が炸裂。王蛇が大きく後退し、ブレードを庇うようにゼストが戦闘に介入して来た。

 

「ゼス、ト……さ、ん……!!」

 

「大丈夫か、雄一?」

 

「……おい、邪魔するなよ。せっかくイライラが消えるかと思ってたのによぉ……!!」

 

「ッ……ぬぅん!!」

 

槍型デバイスとベノサーベルを打ちつけ合い、ゼストと王蛇は鍔迫り合いの状態になる。そこから槍型デバイスでベノサーベルを力ずくで下に下げさせ、その姿勢を保ちながら王蛇を睨みつける。

 

「貴様、何者だ!! 雄一と同じライダーのようだが、何故彼等を攻撃する……!!」

 

「全く、どいつもこいつも……何か理由を付ければそれで納得したがる!!」

 

「ぐっ!?」

 

「ゼストの旦那!!」

 

王蛇の右肘がゼストの腹部に打ち込まれ、怯んだゼストにベノサーベルで再度殴りかかる。膝を突きかけるゼストだったが、そこに飛んで来たアギトがゼストの右肩に止まる。

 

「アギト、行くぞ……!!」

 

「了解だ!!」

 

アギトがゼストの体内に入り込み、ゼストの髪の色が茶色から金色に変化する。それを見た王蛇は楽しそうな口調で首をゴキゴキ鳴らす。

 

「何だ? 面白そうだな……!!」

 

「騎士ゼスト、参る……!!」

 

王蛇のベノサーベルと、ゼストの槍型デバイスが正面から激突する。2人が激しい戦闘を繰り広げる一方、何とかベノスネーカーの猛攻を退ける事ができたルーテシアは、地面に倒れたまま動かないブレードの傍まで急いで駆け寄って行く。

 

「お兄ちゃん、大丈夫……!?」

 

「はぁ……はぁ……アイ、ツ……」

 

「起きれる? 私の手を掴んで……ッ!?」

 

ルーテシアの手を借りて、何とか抱き起こして貰うブレード……だったが、体を地面から起こした途端に突然ルーテシアの手を振り払い、地面に落ちていたガルドバイザーを拾い上げ、ゼストと王蛇のいる方角までフラフラ向かって行く。

 

「はぁ……はぁ……知らない、だと……あれだけの事を、しておきながら……」

 

「……お、お兄ちゃん……?」

 

恐る恐る呼びかけるルーテシアの声も聞こえていないのか、ブレードは右手に握っているガルドバイザーをダランと下げたまま、フラフラ体を揺らしながら歩き続ける。その口調も、どこか様子がおかしかった。

 

 

 

 

 

 

(俺は……奴に傷つけられた事で、俺の夢を失った……)

 

 

 

 

 

 

―――い

 

 

 

 

 

 

(俺だケじゃない……奴ノせいで、人生を狂わされタ人がたくさんいル……)

 

 

 

 

 

 

―――ない

 

 

 

 

 

 

(そレナのに……自分が傷ツケた人の事ヲ、忘レタだと……?)

 

 

 

 

 

 

―――さナイ

 

 

 

 

 

 

(ダッタら俺は……俺達ハ……!)

 

 

 

 

 

 

―――許サナい

 

 

 

 

 

 

(俺ノ夢ハ……ドウシテ……!!)

 

 

 

 

 

 

―――許サナイ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(―――ドウシテ俺ノ夢ハ、失ワレナキャイケナカッタンダ!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ドクン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから先の記憶を、雄一は持っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に彼が見た光景は……彼のよく知る少女が、恐怖で怯えているかのような顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラァッ!!!」

 

「ぐはっ!?」

 

一方で、王蛇とゼストの熾烈な戦いはまだ続いていた。王蛇のベノサーベルが槍型デバイスを高く打ち上げ、王蛇の蹴り上げた右足がゼストを岩壁に叩きつける。そこに突き立てられたベノサーベルをかわしたゼストは、上から落ちて来た槍型デバイスをキャッチし、王蛇の背後から回り込んで背中を斬りつけようとしたが……

 

≪ADVENT≫

 

『グォォォォォォォォッ!!』

 

「!? ぐぁ……!!」

 

王蛇に斬りかかろうとしたゼストを、真横から物凄い勢いで突進して来たメタルゲラスが突き飛ばす。メタルゲラスがそのままどこかに走り去って行く中、体勢を崩されたゼストの頭部目掛けて王蛇がベノサーベルを振り下ろそうとしたが、その直前でゼストの槍型デバイスから音声が鳴り響く。

 

≪Fulldrive start≫

 

「ッ!?」

 

ゼストの姿が消える。すぐに彼がどこにいるのか探し出そうと周囲を見渡す王蛇だったが……そんな彼の体はとてつもない衝撃と共に、ゼストが振り回した槍型デバイスの一撃で大きく吹き飛ばされた。

 

「―――ハァア!!!」

 

「な……おぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

ドガァァァァァァァァァン!!!

 

吹き飛ばされた王蛇が木々を薙ぎ倒し、岩壁に激突し土煙が舞い上がる。強烈な一撃で王蛇を吹き飛ばす事に成功したゼストはと言うと、アギトとのユニゾンが中断されてからその場に膝を突き、ゼストの体内から出て来たアギトも辛そうな表情でゆっくり地面に落ちていく。

 

「ゼストの旦那……大丈夫……?」

 

「はぁ……はぁ……あぁ、まだ何とか……ぐ、がはっ!!」

 

「!? 旦那!!」

 

ゼストの口から、ほんの僅かに血が吐き出される。元々ゼストはアギトとのユニゾンの相性が良くなく、その上で敢えて技の出力を可能な限り最大限まで上げたのだ。当然その負担はかなりの物で、アギトが心配そうな表情で見ているが、ゼストはまだ自分が戦っている敵への警戒を解こうとはしなかった。

 

(可能な限り、大きな一撃は与えた……奴はどうだ……?)

 

土煙が少しずつ晴れていく。その中から出て来たのは……多少のダメージは受けながらも、まだ歩くぐらいの余力が残っている王蛇の姿だった。

 

「ハ、ハハハハハ……今のは効いたぞ……!!」

 

「ッ……くそ……!!」

 

中身は普通の人間なはずなのに、ライダーに変身しているだけでここまで違ってくるのか。悔しげに歯軋りするゼストの前に立った王蛇は、少しフラつきながらもベノサーベルを高く振り上げ、ゼストにトドメを刺そうとした。

 

「消えろ、そろそろ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤメロォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ッ!?」

 

王蛇の胸部装甲から火花が上がり、その体が後ろへと吹き飛ばされる。驚いたゼストが見上げると、彼の視線の先ではガルドバイザーの刀身がギラリと光っており、王蛇を吹き飛ばしたのはブレードがガルドバイザーを突き立てたからだと理解した。

 

「雄一……!!」

 

「オォォォォォォォォォォォォッ!!!」

 

「!? 兄ちゃん……?」

 

「ッ……ぐぉあ!?」

 

膝を突いて血を吐いているゼストにも、地面に落ちたまま動けないアギトにも声をかける事なく、ブレードはガルドバイザーを両手で握りながら王蛇に向かって突撃。振り下ろされたガルドバイザーが王蛇の胸部装甲を何度も斬りつけ、横に振るわれた一撃が王蛇を大木に激突させる。

 

「何だ、さっきの続きがしたいのか……!!」

 

≪STRIKE VENT≫

 

大木を背に立ち上がった王蛇は仮面の下で笑みを浮かべながら、ベノバイザーに次のカードを装填。先程の攻撃で落としたベノサーベルの代わりとして、彼はメタルホーンを召喚しようと考えた……が。

 

「デヤァッ!!!」

 

バキィィィィィンッ!!!

 

「なっ!?」

 

ブレードが振り上げたガルドバイザーの一撃は、王蛇の右手に収まろうとしていたメタルホーンを別方向に弾き飛ばしてしまった。流石の王蛇もこれには驚きを隠せないが、そんな彼に反撃の隙を与えないブレードは何度も王蛇をガルドバイザーで斬りつけてから、フラフラになっている王蛇を容赦なく蹴り飛ばした。

 

「ガァァァァァァァァァァッ!!!」

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

蹴り飛ばされたのが決定打になったのか、王蛇は何度も地面を転がった後にその全身が鏡のように割れ、その姿を浅倉の姿へと戻す。王蛇の変身が解除された事を確認したゼストとアギトは、ブレードのとてつもない戦闘力を前に少なからず戦慄していた。

 

「す、すげぇ……」

 

「アレが、雄一の実力なのか……!」

 

「ッ……ゼスト、アギト、大丈夫……!?」

 

そこに少し遅れて駆けつけて来たルーテシアが、ゼストとアギトの傍まで駆け寄って行く。その一方、ブレードに敗れた浅倉はダメージが大きかった為か、地面に倒れたまま苦しそうに呻いていた。

 

「はぁ、はぁ……ハ、ハハハハハハ……久しぶりだなぁ、この感じは……!!」

 

「……」

 

それに対しブレードは、ガルドバイザーを左手で逆手に構えたまま変身も解かずに、倒れている浅倉の方へと歩いて行く。そして浅倉の前に立った後、彼の胸倉を右手で掴んで無理やり立ち上がらせてから……

 

 

 

 

「―――ハァッ!!」

 

 

 

 

バキィッ!!

 

「が……ッ!?」

 

「「「!?」」」

 

なんと、そのまま右手で薙ぎ払うように浅倉の顔面を殴りつけた。殴られた浅倉が再び地面に倒れる中、ブレードの行った事にはゼスト達も驚愕する。

 

「雄一、何を!?」

 

「お、おい、それ以上やったら死んじまうぞ!?」

 

「……許サナイ」

 

「ぐ、ぉ……!!」

 

「オ前ダケハ……絶対ニ許サナイッ!!!」

 

「がっ!?」

 

ゼスト達の呼びかける声も無視し、ブレードは再び浅倉の胸倉を掴んでを立ち上がらせ、その腹部に左足で膝蹴りを炸裂させる。そこから更にガルドバイザーの柄部分で何度も浅倉を殴りつけるブレードのその様は、普段の彼をよく知るゼスト達にとって、とても信じられない光景だった。

 

「やめろ雄一!! もう充分だろう!?」

 

「潰ス……コイツダケハ、俺ガ潰スッ!!」

 

「ぐ、がぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

倒れている浅倉の腹部を右足で踏みつけ、グリグリと力を強めるたびに浅倉の断末魔が上がる。もはや浅倉を痛めつける事に何の躊躇もしていないブレードは彼を蹴り転がし、地面を何度も転がった浅倉は流石にダメージが響いたのか、とうとう意識を失い動かなくなってしまう。

 

「潰ス……オ前ダケハ絶対ニ……!!」

 

それでもまだ追撃の手を止めようとしないブレード。そんなあまりに暴力的過ぎる姿には、ルーテシアやアギトだけでなくゼストも少なからず恐怖心を抱いていた。

 

「な、何だよアレ……あんなの、いつもの雄一兄ちゃんじゃねぇよ……!!」

 

「ッ……!!」

 

「!? 待て、行くなルーテシア!!」

 

その時、何か意を決したような表情を浮かべたルーテシアはゼストの制止の声も聞かず、浅倉をいたぶっているブレードの下まで走り出す。ブレードは意識を失っている浅倉の顔に、ガルドバイザーの刃先を向けようとしている。

 

「殺シテヤル……今、コノ場デェ……!!」

 

ブレードの両手がガルドバイザーを力強く握る。そしてブレードがガルドバイザーを高く振り上げ、浅倉にトドメを刺そうとしたその瞬間……

 

「駄目、お兄ちゃんっ!!!!!」

 

浅倉の前に割って入ったルーテシアが、両手を広げてから大声で叫んだ。そしてガルドバイザーが彼女の頭部目掛けて振り下ろされ、ルーテシアはギュッと目を瞑る―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

―――が、いつまで経っても斬られる痛みはない。恐る恐るルーテシアが目を開けると、ルーテシアの頭部に当たるギリギリのところで、ガルドバイザーはピタリと制止していた。

 

「……お兄、ちゃん……?」

 

「ッ……ルーテ、シア……チャン……!!」

 

ガルドバイザーがカタカタ震えている。変身を解いていない為、ブレードの仮面の下の表情はわからない。しかしそんな彼の口は確かに、目の前にいるルーテシアの名前を呼んでいた。

 

「……グッ……ガ、アァァァァァァァ……!?」

 

「!? お兄ちゃん!!」

 

ガルドバイザーを落としたブレードは両手で頭を抱えながら後退し、その場に膝を突くと同時に変身が解けて雄一の姿へと戻る。そこへルーテシアが急いで駆け寄り、頭を抱えている雄一の顔を覗き込む。

 

「お兄ちゃん、大丈夫? 私の事、わかる?」

 

「ッ……はぁ、はぁ……ルーテシア、ちゃん……」

 

汗だくになり、必死に息を整えようとする雄一だったが、その目は確かにルーテシアを認識していた。雄一が正気に戻れた事でルーテシアは安堵の表情を浮かべるが、雄一の意識は目の前の彼女にではなく、先程まで自身が攻撃していた浅倉の方に向いていた。

 

「……俺が……ッ」

 

彼が見据える先では、散々痛めつけられてボロボロになった浅倉が倒れている。そして先程意識が戻った際に彼が見た、ルーテシアの恐怖に怯えた表情……それだけで、自分が今まで何をしていたのかを察してしまった。

 

「はぁ……はぁ……俺が……俺がやったのか……!?」

 

「お兄ちゃん……?」

 

「ッ……ぐ、あぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「!? お兄ちゃん!?」

 

その時、頭を押さえた雄一が地面に倒れ込んで苦しみ始めた。何事かとルーテシアが呼びかけるも、雄一は何かに怯えたような口調で苦しみながら悲鳴を上げ続ける。

 

「お兄ちゃん、どうしたの……!? お兄ちゃん!!」

 

「雄一!!」

 

「雄一兄ちゃん!!」

 

「はぁ、はぁ……違う、こんなのは違う……ッ!!」

 

ルーテシアだけでなくゼストやアギトも駆け寄る中、雄一は何かを呟きながらも必死に頭を押さえ続ける。その目には、何かに対する恐怖の感情があった。

 

「違う……違うんだ……!!」

 

 

 

 

 

 

―――消セ

 

 

 

 

 

 

「やめろ、うるさい……!!」

 

 

 

 

 

 

―――殺セ!

 

 

 

 

 

 

「嫌だ……そんなのは嫌だ……!!」

 

 

 

 

 

 

―――潰セ!!

 

 

 

 

 

 

「違う……そんなのは俺じゃない!! 俺じゃないんだぁっ!!!」

 

「雄一、一体どうしたんだ!? 雄一!!」

 

「しっかりしてくれ、雄一兄ちゃん!!」

 

頭を押さえながら、何度も頭を地面に打ちつけようとする雄一。そんな彼をゼスト達は力ずくでやめさせようとするが、それでも雄一は大声で叫び続ける。

 

「うるさい……俺は誰も殺さない……!! 黙ってくれ……!!」

 

 

 

 

 

 

―――倒セ、ソノ手デ全テヲ捻リ潰セェッ!!!

 

 

 

 

 

 

「うるさぁい!! 黙れ黙れ黙れぇっ!!! 消えろ……ッ……俺の中から消えろォッ!!! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

頭を抱え、苦しむ雄一の叫び声。止むを得ないと判断したゼストが手刀で気絶させるまで、それはしばらく森の中全体に響き渡り続けるのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




リリカル龍騎StrikerS!


雄一「これが……本当の俺なのか……ッ!!」

ゼスト「お前は一体、どこまで苦しむつもりなんだ……!!」

ルーテシア「これ以上、お兄ちゃんに無茶はさせられない……!!」


戦わなければ生き残れない!





雄一「手塚……お前なら、俺を……!」




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