GWの期間を使って頑張りました。おかげで脳みその疲労がそろそろヤバい←
今回で雄一の過去編は終了です。
それではどうぞ。
挿入歌:果てなき希望(※タイムベント終了後)
「ふむ、なるほどねぇ。雄一君にそんな事が……」
浅倉との戦いが終わって数日後。
「騎士ゼストの話によると、暴走を始めてからの彼はとてつもない戦闘力を発揮したとの事です。何が彼をそこまでさせたのかは未だ原因は判明していませんが」
「暴走か……体内に埋め込んだレリックが、雄一君の感情に反応しているのかもしれないね」
「レリックが、ですか……そんな事が本当にあるんですかぁ?」
「あくまで憶測でしかないが、ちょっとした刺激で何が起こるかわからないのがレリックという代物だ。もしかしたら人間の感情とリンクし、それにより爆発的な魔力を放出したって何らおかしくはないさ……今はそれが、雄一君を苦しめてしまっているようだがね」
「何にせよ、捕縛した男についてはしばらく雄一様とは引き離した方がよろしいでしょう。騎士ゼストやルーテシアお嬢様の話が正しいのであれば、あれほどの暴走を何度も引き起こしかねません」
「まぁ、それは仕方ないね。彼等が捕まえて来た男については、時期を見て勧誘してみようじゃないか。もしあちらもまた暴れるようなら、押さえる役目はトーレが主導となって押さえれば良い」
「そうするしかなさそうですねぇ~……あら? ドクター、チンクから緊急連絡ですわ」
「うん? 繋いでくれ」
何事だろうかと思い、スカリエッティがコーヒーを飲んでいる中で通信が繋がる。
『ドクター、緊急で報告したい事が』
「チンク、何かあったのかい?」
『実は先程、またモンスターが現れたのですが……えぇい、邪魔するなコイツめ!! セイン、何とかしてそいつを押さえ込め!!』
『いや無茶言わないでよチンク姉!? アタシは別に火力特化じゃないから攻撃通らないし……ってまたミサイル撃って来たぁ~!?』
『おい馬鹿、こっちに来るな被弾するだろ!? 後で私が援護してやる、何とか持ち堪えろ!!』
『ひぃぃぃぃぃぃぃこっち来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?』
通信先からはチンクの声だけでなく、セインの悲鳴や謎の爆発音も連続して響き渡っている。これにはウーノやクアットロ、スカリエッティも流石に表情が硬直せざるを得なかった。
「……何やら凄く大変そうな状況だが、本当に大丈夫かい?」
『ゴホン、すみませんドクター……その現れたモンスターの事なのですが。ドクターがお探しになられていた例のモンスターと、外見的特徴が一致していました』
「ブフゥッ!?」
それを聞いた瞬間、スカリエッティは飲んでいたコーヒーを噴き出した。口元やスーツがコーヒーで汚れても全く気にせず、チンクの報告を聞いて歓喜の笑みを浮かべていた。
「本当かい、チンク? 遂に見つかったんだね!?」
『はい。あのロボットのような外見、繰り出す攻撃、例の開発資料に記載されていたモンスターと全ての特徴が一致しているので間違いありません……私とセインのどちらを狙っているのかまではまだ把握できておりませんが』
「よくやってくれたよ2人共!! 例のカードデッキも、こちらで急いで完成させようと思う……もうしばらくの間だけ、そのモンスターを頑張って引きつけておいてくれたまえ!!」
『り、了解しました。それでは……』
チンクとの通信を終えた後、スカリエッティは俯いたままクククと不気味な笑い声を上げ始める。それを見たウーノとクアットロは「また始まった」と言いたげな表情で溜め息をついている。
「ようやくだ、ようやくコレの完成に近付けそうだよ……!! これほどまでに探求心をくすぐられた代物は今まで見た事もなかった……だが、これで私の念願がまた1つ達成できそうだ!! 私は今日という日に感謝しなければならない!! ウーノ、クアットロ、これから忙しくなりそうだ!! 君達も手伝ってくれたまえ!!」
「了解しました~♪」
「ドクターのご命令とあらば」
クアットロが甘ったるく軽い口調で、ウーノが落ち着いた口調でそれに応じる中……クアットロは2人に見られない位置で、密かにほくそ笑んでいた。
(オルタナティブの量産化さえしてしまえば、その圧倒的兵力によってミッド全域を瞬く間に掌握できる……配下のオルタナティブには適当に弱いモンスターでも契約させて、トップに立つ私達が強いモンスターと契約してしまえば完璧ね……♪)
「あ、そういえば雄一さんは今どんな様子かしら? 少しだけ覗きに行っちゃおうかしら♪」
場所は変わり、雄一の自室では……
「……」
雄一は今、ベッドの上で体操座りをしたまま、布団に包まって静かな時間を過ごしていた。しかし部屋の中にあった物は荒れに荒れ果ててしまっており、机の上に置かれていたノートやペンなどは床に散らばり、椅子は床に倒れたまま放置され、ナンバーズの面々が持って来たと思われる食事にも一切手をつけていない。この数日間で、雄一の表情はかなりやつれてしまっていた。
(……俺は)
彼の脳裏に思い浮かぶのは、数日前に起きた戦いの一部始終。王蛇となって襲い掛かって来た浅倉。その浅倉が起こした傷害事件で失われた自身の夢。浅倉に対して湧き上がって来た怒り。そして……泣き出しそうなくらい怯えた表情を浮かべるルーテシアの顔。
(俺は……)
『そうやって、何人もの人間を傷つけて来たのか……!!』
『何だそりゃ? お前の事なんか俺が知るかよ』
『オ前ダケハ……絶対ニ許サナイッ!!!』
『駄目、お兄ちゃんっ!!!!!』
(……俺は、今まで何をやってたんだろうな……)
あの戦いで、彼は気付かされた。自分は今まで戦いを望んでないつもりだった。でも実際は違った。自身が夢を失う原因を作った男。その男を前に爆発した怒り。その男に対して自身が向けた憎悪の感情。それら全て……雄一が今までルーテシア達に語った言葉とは、まるで真逆の現実でしかなかった。怒りと憎悪の感情を、心の奥底に爆発寸前まで溜め込んでいただけに過ぎなかったのだ。
(許せなかっただけだったんだ……俺の夢を奪った、奴の事が……)
―――許セナクテ当然ダ
「―――ッ!!」
その時だった。雄一の頭の中に、
「ッ……また、あの声が……!!」
―――憎メ。ソレコソガ、オ前ノスルベキ事ダロウ
「ッ……違う、違うっ!! 俺はそんな事まで望んじゃいない!!!」
どれだけ必死に頭を振っても、声が消える事はない。雄一は苦悶の表情でベッドから転がり落ち、のたうち回りながら必死に頭の中の声を聞くまいとした。
「俺は誰も殺したくない!! 殺したくないんだ……ッ!!」
―――嘘ダ。オ前ノ心ハ、奴ヲ殺シタガッテイル
「違う、そんなのは絶対に違う!!! 俺の頭の中で勝手な事を言うな!!!」
―――ナラバ何故、オ前ハソンナニ苦シンデイル?
―――コノ苦シミハ、オ前ガソレヲ認メテイル何ヨリノ証拠ダロウニ
「黙れぇっ!!!」
雄一の足がお盆に当たり、皿に盛りつけられていた食事が無惨にも床に散らばる。そんな事など全く意識してもいない雄一は、自身の頭を床に打ちつけながら叫び続ける。
「消えろ!! 消えろ!! 俺の中から……俺の中から消えろォッ!!!」
―――無駄ダ、消エル事ハナイ
―――オ前ガ認メナイ限リ、オ前ノ苦シミハ永遠ニ消エヤシナイ
「うるさい……うるさいうるさい、うるさぁぁぁぁぁいッ!!!!!」
何度も頭を打ちつけ、額から少量の血が流れ出る。そんな痛みすらも、今の雄一には関係ない。今はとにかく、この声を掻き消したくて仕方なかった。
―――憎メ、倒セ、捻リ潰セ
「黙れ!! それ以上言うな!!!」
―――ソレガオ前ヲ苦シミカラ解放シテクレル
「ふざけるな!! そんな手に俺は乗らない……!!」
―――一体、何ガ嫌ダト言ウンダ?
―――憎メバ、全テガ楽にナルトイウノニ
「やめろォッ!! 何も語りかけるな……頼むから……ッ!!」
―――語リカケルナモ何モ、サッキカラソウヤッテイルノハ他デモナイ……オ前自身ダロウ?
「黙れ……!!」
―――オ前自身ガ、一番ヨクワカッテイル筈ダ
「黙れっ!!」
―――今、コウシテオ前ニ語リカケテイルノハ……
「黙れ黙れ黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」
「―――お兄ちゃん!!!」
「ッ!? あ、ぁ……」
名前を呼ぶ声がした。その事に気付いた雄一の視界には、彼の事を心配そうに見つめているルーテシアの悲しそうな表情があった。
「お兄ちゃん、落ち着いて……大丈夫だから……!!」
「はぁ、はぁ……ルー、テシア……ちゃん……」
この日の昼食を持って来たのだろう。ルーテシアの傍には、新しい食事を乗せた盆が置かれていた。彼女に名前を呼ばれた雄一はようやく頭が落ち着いてきたのが原因か、先程まで聞こえていたはずの
「お兄ちゃん、もしかしてまた……?」
「はぁ、はぁ……ッ」
雄一は何も言わず、ただ頷く事で肯定の意志を示す。ルーテシアはそんな彼を両手で自身の傍に抱き寄せ、彼の頭を優しく撫でる。今まで自分が雄一に撫でて貰っていた時のように。
「大丈夫……お兄ちゃんは優しい人だから……そんな声に、負けちゃ駄目……!」
「ッ……俺、は……!!」
ルーテシアに抱き締められ、雄一は彼女の温もりを感じていた。彼の心は、彼女に安らぎを求めていた。しかし雄一の中の理性がそれを許そうとしなかった。
「……違う……違うんだ」
「え……?」
ルーテシアの両肩に触れ、自身の体を彼女から引き離してから彼は告げた。
「本当は……本当はわかってるんだ……
「ッ……それって……」
「ずっと、認めたくないと思ってた……でも、認めるしかないんだ……だって
「
「……!?」
この数日間、謎の幻聴に悩まされ、ずっと苦しみ続けていた雄一。そんな彼が、ルーテシアの前で初めて明かした本音。それはルーテシアにとっても衝撃的な一言だった。
「俺はただ、知らないフリをしていただけだった……本当は悔しくて仕方なかった……!! 夢を捨てると決めたあの日からずっと……俺の夢を奪った浅倉威が、憎くて憎くて仕方なかったんだ……!!!」
「ッ……そんな……」
「俺は戦いたくなった……!! 暴力が嫌いなのは本当だったから……ずっと、心の中に溜め込んでいた……でもそれだけだった……ッ!! 俺の中の憎しみは、あの日からずっと消えてなかったんだ!! 浅倉が俺の事を覚えてないとわかった瞬間、俺はこの手で……この手で俺はァッ!!!」
「お兄ちゃん!!」
再度、雄一の頭がルーテシアに抱き寄せられた。
「お兄ちゃん、もう良いんだよ。それ以上は言わないで」
「ルーテシア、ちゃん……?」
「お兄ちゃん……ずっと、1人で抱え込んでたんだね。1人で苦しんで、辛かったんだね」
「……何で……? 何で、そんな事を俺に……」
「ずっと、お兄ちゃんに甘えてたから。甘えてたせいで、お兄ちゃんの溜め込んでいた物が何なのか、今まで知らないままでいたから……気付いてあげられなくて、ごめんなさい」
「ッ……ルー、テシ……!!」
「もう、1人で抱え込まないで。お兄ちゃんには……私が付いてるから。私が一緒に背負い込むから」
「……ッ!!」
救いが必要だったのは、ルーテシアだけではなかった。雄一にもまた、誰かの救いが必要だった。それを初めて理解させられ、その上でルーテシアは雄一の分まで一緒に背負い込もうとしてくれている。そんな彼女のひたむきな思いが、雄一にとっては何よりもの救いだった。
その時から、雄一は心に決めていた。
こんな自分の事を、彼女は想ってくれている。
そんな彼女の為なら、自分はどれだけ傷付いても構わない。
彼女の笑顔の為に、この身を削ってでも戦おう。
戦って、戦って、戦い抜いて。
彼女の望みを、叶えさせてみせよう……と。
『グルァッ!?』
「ッ……お前は俺が倒す!!」
≪FINAL VENT≫
それ以降も、雄一は仮面ライダーブレードとして戦い続けた。ある日も、またある日も、ひたすらに、我武者羅にモンスターと戦い続けた。そして今も、野生のギガゼールと戦い追い詰めているところだった。
『ショオォォォォォォォォォォォォッ!!!』
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
『グゥ……グルアァァァァァァァァァッ!?』
ギガゼールの胴体を一閃したブレードが、爆風を背に地面へと着地する。いつもと変わらない、普段通りの1日で終わるはずだった……しかし。
ドクン……
「ッ……またか、くそ……!!」
―――戦エ
―――潰セ
―――殲滅シロ!!
「黙れ……!!
ルーテシアの笑顔を守ると決めたあの後も、
「ははは……これが……これが、本当の俺なのか……ッ!!」
その声の意味は既に理解していた。理解していて、それでもまだ頭の中に響き渡る。渇いた笑いしか出て来ない雄一が歩き去る中、彼の右腕に装着していたリングはまた数回ほど点滅していた。
それから、また数日ほどが経過する。あれから、彼の苦難がなくなる日は一度もなかった。心が折れてしまいそうになった事は、それまでに何度もあった。
キィィィィィン……キィィィィィン……
「! この音……」
この日とて、それは例外じゃなかった。どれだけ休みたいと思っても。どんなに限界だと思っても。ライダーとしての宿命は彼を決して逃がさず、彼をどこまでも過酷な戦いへと縛り付け続けていた。
『シャアァァァァァ……!!』
『キシャア~……!!』
『グルァァァァァァァァ……ッ!!』
「いやだ……また、俺に戦えと言うのか……!!」
水溜まりに映り込んだガルドサンダー、ガルドミラージュ、ガルドストームの3体が、雄一に餌を強請り、彼に戦いを強いる。そのたびに雄一は何度も頭を抱えた。諦めてしまいたいと、死にたいと思った回数も、既に数え切れないくらいほどだった。しかしそんなネガティブな思考に至るたびに……かつてルーテシアが見せた笑顔が、彼の頭の中に浮かび上がっていた。
「ッ……駄目だ……俺は死ねない……俺は、戦わなくちゃいけないんだ……!! 彼女の為にも……!!」
「待て、雄一」
そんな彼の重荷に気付いたのは、ルーテシアだけではなかったらしい。ある時は、モンスターとの戦いを終えた後の雄一を、ゼストが後ろから呼び止める事だってあった。
「あ、ゼストさん……どうかしましたか?」
「! お前……」
振り返った雄一の顔は、酷くやつれていた。まるで死んでいるかのように、その目は光を失いかけていた。この長い時間でこれほどまでに変わり果ててしまった彼の姿は、流石のゼストも見ていられなかった。
「聞いたぞ。あれから休みもせず、毎日戦いに出ていると……それ以上無理をすれば体を壊すぞ」
「……大丈夫ですよ。休むべきタイミングでちゃんと休んでますし、スカリエッティさんの検査でも特に異常はなしだって―――」
「奴の言葉など信用するな」
雄一の言葉を、ゼストは敢えて厳しい口調で遮った。
「お前は今、奴等に都合の良い奴隷として利用されているだけだ。お前はここに長くい過ぎた。いつまでも奴等と関わっていたら、いつかお前は―――」
「それでも!!」
しかし今度は、雄一の大声がゼストの言葉を遮った。流石のゼストも、雄一が見せたこの態度には面食らった。
「それでも……俺は戦うしかないんです。俺にはもう、後戻りできるような道はないから」
「雄一……」
「……心配してくれてありがとうございます。でも、俺は本当に大丈夫ですから」
雄一はニコリと笑い、後ろを向いてゼストの下から去って行く。ゼストはただ、立ち去っていく雄一の後ろ姿を見届ける事しかできなかった。
「ッ……雄一……お前は一体、どこまで苦しむつもりなんだ……!!」
「なぁルールー、何とかならないのかよ? あの兄ちゃんの事」
「……わかってるよ、アギト」
アギトもまた、雄一が心身共に疲弊しつつある事には既に気付いていた。しかし今の自分が雄一にしてやれる事は何もないのも事実である為に、何もしてやれない悔しさをアギトは存分に味わっている。そしてそれは、ルーテシアも同じだった。
「お兄ちゃんは、私のお母さんの為に戦ってる……だから、お母さんを目覚めさせる為のレリックは、私が自力で見つけてみせる」
「で、でもよぉ、そんな簡単に見つかるのかよ? 今までだって、見つけたレリックはハズレばっかで……」
「それでも、やるしかない。お兄ちゃんが、私の為に苦労しているというのなら……これ以上、お兄ちゃんに無茶はさせられない……!!」
そんなルーテシアが見上げる先には、今もカプセルの中で培養液に浸かっている母親―――メガーヌの姿。今もなお眠り続ける彼女の姿を見ながら、ルーテシアは拳を力強く握り締める。
「私、やってみせるから……見ててね、お母さん」
それから更に日にちは経過し、雄一がミッドチルダに転生して約1年になったある日。
遂に、運命の時はやって来た。
「ッ……そんな……」
ある時、スカリエッティ達がガジェットを介して発見したという仮面ライダー達の姿を、雄一はモニターで直に見せつけられていた。そのモニターに映っていたのは……かつての親友が、仮面ライダーライアとしてガジェットと激しい戦いを繰り広げている姿だった。
「嘘だ……どうして彼が……!!」
「おや、彼とは知り合いだったのかい? 雄一君」
「……彼は……」
雄一は素直に語った。仮面ライダーライア―――手塚海之は、かつて自分がいた世界での親友である事。そして彼がライダーになっていたのは、自分でも想定外な事態であるという事。それらをスカリエッティに明かし……その上で彼は、自身の決めた覚悟と改めて向き合っていた。
「戦えるのかい? 雄一君、彼はかつての親友だったのだろう?」
「……それでも、覚悟は決まっています。それに……」
「それに、何だい?」
「……いえ、何でもありません」
それ以上先は、スカリエッティの前では言わなかった。スカリエッティが不思議そうに首を傾げる中、雄一はもう一度モニターの映像を見据える。映像に映っている手塚は、彼によって破壊されたガジェットの残骸を強く睨みつけていた。
(手塚……お前なら、俺を……)
それからしばらくした後……雄一と手塚は再会した。
このミッドチルダに来てからも、手塚は何も変わっていなかった。
今でも自分の事を、親友として思ってくれていた。
それが雄一に、ある1つの希望を与えていた。
だからこそ雄一は、彼に願う事にした。
彼なら、破滅に向かおうとしている自身の望みを、叶えてくれるだろうと信じていたから。
「手塚……お前なら、俺を……!」
俺を、止めてくれるかもしれないから……!
それこそが雄一の……かつての親友へと向けた、一番の願いだった。
『さて、昔話の時間はここまでだ』
そして時は、現在へと至る。
「「―――ッ!?」」
時の鐘が鳴る音。それで手塚と夏希が気付いた時には、彼等のいる場所はホテル・アグスタの屋上だった。
「……ここは」
「戻って、来たの……?」
『これで理解できただろう?』
周囲を見渡す手塚と夏希に、金色の羽根と共に再び姿を現したオーディンが問いかける。彼の近くでは、既に二宮がベンチに座って疲れた様子で頭を掻いている。
『これがあの男の……斉藤雄一の真実だ。あの男は優しかったのではない。湧き上がる怒りを抑え、心の奥底に押し込んでいただけだったのだ。少なくとも、お前が信じていたような聖人とは違う』
「……」
手塚は何も言わない。その事で、共に雄一の過去を知った夏希は不安そうな表情で手塚を見ていた。
『奴の過去を見て、お前は果たしてどう思った。驚いたか? 失望したか? まぁ、どちらでも大して変わらん事か』
「……そうだな」
ゆっくり口を開いた手塚は、オーディンに対して静かに言い放った。
「お前の言う通り、俺は確かに失望している」
『やはりそうか……無理のない事だろう。今まで自分が信じ続けてきた男が、あのような―――』
「違う。雄一に対してじゃない」
『―――何?』
「「?」」
手塚が言葉を遮ってまで言い放った言葉に、オーディンは疑問を抱いた。同じく話を聞いていた夏希と二宮も、手塚の言葉に首を傾げる。
「俺が失望したのは……アイツの過去を、アイツが今まで抱えてきた思いを、今まで何も知らずにいた……さっきまでの俺自身に対してだ」
『……ほぉ』
「オーディン、お前には感謝している。お前のおかげで、俺は自分のやるべき事を再確認する事ができた」
『何だ? それは』
「……運命を変える事だ」
何の迷いもなく、手塚は堂々と言い切ってみせた。
「俺はかつて、滅び行くアイツの運命を変えられなかった……ならばもう一度、俺は変えられなかった運命を変える為に戦う。それが俺の……アイツから願いを託された、今の俺がやるべき事だ」
「海之……!」
手塚の決めた覚悟。その真意がわかった事で、夏希は彼に
『フフフ……なるほど、それがお前の覚悟か。良いだろう、認めようじゃないか……お前のその覚悟を』
「……フン」
オーディンが素直に認めたのに対し、二宮は特に興味がないかのような表情で鼻を鳴らす。
『安心したよ。雄一の過去を知ったお前が、どのような決断を下すか確認しようと考えていたが……どうやら最初から、その必要はなかったようだな』
「……何にせよ、これでまた1つ準備は整ったって訳だ。後は時が来るまで、お前等には傷の回復に専念して貰うとしよう」
「な、待てよ! それじゃ奴等に捕まってるヴィヴィオが……」
「安心しろ。聖王の器を手に入れても、奴等はすぐには動かない。奴等が次の計画に入るには、色々と準備が必要のようだからな」
「準備だと……?」
『そうだ。奴等が次に動くまで、まだいくらか時間はある。その時間を使って、お前達はできる限り傷を回復させておけ。次に奴等が動き出したその時が……決戦の始まりだ』
「「ッ……!!」」
『では、お前達の健闘を祈っている……』
オーディンは二宮を連れて、金色の羽根が舞うと共に一瞬で姿を消す。その場には手塚と夏希の2人だけが残されていた。
「……全く、随分デカく言ったもんだね。海之」
「これが俺の意志だ。だが、これは俺1人で果たす事はできないだろう……だからこそ、仲間の協力が必要になる」
「うわぁ、こんなに堂々とした仲間頼りは初めて見た気がする」
「……力を貸してくれ、夏希。お前の力も必要だ」
「はぁ、全く……良いよ。アタシも海之やフェイト達に、救って貰った身だしね」
手塚と夏希は小さく笑い合ってから、互いの拳をコツンとぶつけ合う。そして手塚は久々に1枚のコインをポケットから取り出し、指で弾き上げてからキャッチし、静かに目を閉じてみせた……その時。
「―――ッ!?」
手塚の目が、閉じてから数秒しか経たない内にすぐに大きく見開かれた。その表情は、夏希から見てもわかるくらい深刻である事を示していた。
「そんな……!!」
「な、何? どうしたんだよ海之?」
「……占いで、これから先の未来が見えた……次の戦いで」
「俺か雄一……どちらかが死ぬ……!!」
それはとても、残酷な運命だった。
To be continued……
リリカル龍騎StrikerS!
はやて「戦艦アースラ……私達の新しい“翼”や!」
???「娘達を守ってくれた事、感謝する」
手塚「俺は運命を変える。力を貸して欲しい」
オーディン『もしもの時は任せたぞ、二宮』
戦わなければ生き残れない!