今まで書いてきた話を読み返して思った事が1つ……うん、やっぱり手塚を精神的に凹ませるのは無理だとわかりました。
それ故、気付いたら手塚ではなく雄一の方がメンタルボロボロになってました。アレおかしいなぁ、どうしてこうなった?←
まぁそれはさておき、本編をどうぞ。
よろしければ、活動報告の方もご参照お願いしま~す。
追記:ちなみにこれ以降、しばらく挿入歌は挟みません。という事は、次に挿入歌が挟まれた時は……ね?
つまりはそういう事です。
手塚達が、タイムベントで雄一の過去を知ってから翌日の朝……
「ぐ、ぐぅぅぅぅぅ……!!」
管理局地上本部。部屋で1人、レジアスは机の上で頭を抱えていた。その原因は様々で複雑に絡み合っているが、現在彼を苦悩させている大まかな理由は2つ。1つ目は、管理局の委員会によって、レジアスに対する緊急査問が行われるという通達。そして2つ目は、部下の局員からの報告で判明した、陳述会当日に本部へ攻め込もうとして来た1人のアンノウンの存在。そのアンノウンの正体を……レジアスは知っていた。
『航空魔導師によって、襲撃は阻止されましたが……この男はもしや……!』
『なっ……あ、ぁぁ……ぐ、うぅ……ッ!?』
『中将……? 中将、お気を確かに……中将!!』
そのアンノウン―――ゼスト・グランガイツを、レジアスは知っていた。ゼストの姿を見た途端、彼は心臓発作でも起きたかのように苦しんだ。何故なら、彼にとってゼスト・グランガイツは……
(何故だ、ゼスト……何故お前が……!!)
その受け入れ難い事実は今もなお、レジアスを精神的に苦しめていた。スカリエッティの謀反。自身に対する委員会からの緊急査問。徐々に失われていく住民達からの信用。突然自分達の前に現れたアビスからの警告。それらの苦難が積み重なっているタイミングで、ゼストの存在を知ったのだ。常人ならば、これだけで倒れるような事態に陥っても決して無理のない話と言えるだろう。
(フフフ……弱ってる弱ってる♪)
そんな彼の苦悩する様を覗き見て、その部屋の入り口前にいた秘書の女性―――マリア・ローゼンは静かにほくそ笑んでいた。彼女はレジアスのいる部屋の前から立ち去って行き、周囲の人目がない場所まで移動した後、密かに映像通信を繋げる。映像にはソファに座ったまま缶コーヒーを飲んでいる二宮の姿が映っており、マリアは素顔だけをドゥーエの物に戻した。
「……毎回思うのだけれど、無糖って苦くないのかしら?」
『お前の味覚がお子様なだけだ』
「あなたって本当にズバズバ言うわよね」
お子様呼ばわりされた事にはちょっぴりイラっとなるドゥーエだったが、言い返したところで二宮に言いくるめられるだけだと思い、そこは耐える事にした。そんな彼女の心情など知った事ではない二宮は、缶コーヒーをテーブルに置いてから口元を拭う。
『ところで、レジアス・ゲイズの様子はどうだったよ?』
「騎士ゼストの一件がトドメになったみたい。今も部屋に籠ったまま、頭を抱えて項垂れてるわ」
『だろうなぁ。死んだはずの人間が何故か今も生きていて、しかも敵として自分の前に現れたんだからな……死んだ人間が人造魔導師として蘇った件については、俺も正直半信半疑ではあったが』
「それだけ、ドクターの技術が優れているって事よ」
『誇らしげなようで結構……それより、アインヘリアルの方はどうなっている?』
「仕込みは万全よ」
ドゥーエは胸元から1枚のチップを取り出し、二宮に見せつける。
「1号機から3号機まで順番に、ドクターお手製の悪性プログラムを仕込んでおいたわ。これでアインヘリアルは正常に機能せず、何も抵抗できないまま、私の妹達によっていとも呆気なく破壊される事になる」
『抜かりがないようで何より。これで頼みの綱だったアインヘリアルすらも役立たずとわかり、今度こそ地上本部は成す術がなくなる。そんな混乱の中でレジアス・ゲイズ、それから最高評議会とやらを始末してしまえば、スカリエッティにとっての邪魔者はいなくなり、俺の目的も達成される……って訳だ』
「そうなれば、ドクターの目指す“楽園”がいよいよ現実の物となるわ。それに、まだ出会った事のない妹達ともようやく顔を合わせられる……本当、今から待ち遠しいわ♪」
『楽園ねぇ……ま、俺には興味のない話だな』
「もぉ、ロマンのない男ね……あ、そういえば鋭介。この戦いが終わった後、あなたはどうするの?」
『取り敢えず決まっているのは、今後も管理局やスカリエッティの連中から身を隠し続けるという事だけだ。管理局に目を付けられると面倒なのは変わらんだろうし、斎藤雄一みたいにスカリエッティの実験に付き合わされるのも勘弁願いたいからな』
「ふぅん……なら鋭介。ドクターの計画が終わった後も、2人で同じ場所に住んでみない?」
『……何?』
「どうせ他に行く宛てもないんでしょう? あなたの事、ドクターには黙っていてあげるから」
ドゥーエのその提案に、缶コーヒーを飲んでいた二宮の動きがピタリと止まる。
『……前々から思っていたが、お前は一体何を考えている。こんな俺なんぞの為に、お前がそこまでする理由が一体どこにあるんだ?』
「あら、前にも言ったじゃない。今はあなたと行動していたいって。あなたがこれから先、どのような道を歩んでいく事になるのか……それを見届けてみたいの」
『お前……まさかアレ、本気で言っていたのか?』
「え、もしかして今頃気付いたの? あの時、わざわざキスまでしてあげたのに」
『逆に聞くぞドゥーエ……
「ッ……」
映像越しに向けられた二宮の目は変わらず冷めている。しかし冷めた目の中に見える瞳は鋭く、ドゥーエを獲物のように見据えていた。その獰猛な目付きに、ドゥーエは少しだけ圧倒された。
『お前……この1年間で随分変わったな。少し優しくなり過ぎたんじゃないのか? 最初に出会った時は俺の事を殺すつもりでいたのに、あの時のお前は一体どこに行っちまったんだろうな』
「それは……」
『最初は俺の方から脅迫したとはいえ……俺達はあくまで、利害の一致で手を組んでいるだけに過ぎない。そんな事まで忘れた訳じゃあるまい? 他人の事まで考えてる暇があるんなら、自分がこなすべき仕事をこなす事だけに集中するんだな』
「……あなたって本当、どこまでもムカつく男ね」
『俺はお前が普段やってる事にムカついてるがな。お互い様ってところだ』
(あぁ言えばこう言う……)
誰かと心を通わせるつもりなど毛頭ない。利用できる者は利用し、自身に仇名す者は徹底的に沈める。喰われる前に喰らう。二宮鋭介とは常にこういう人間なのだ。この短い会話の中で、ドゥーエはそれを改めて認識させられる事となった。
「はぁ……もう良いわ。私はこれからまた仕事だから、一旦切るわね」
『精々お仕事頑張る事だな。マリア・ローゼンさんよ』
(……コイツ、毎回煽るのだけは無駄に上手いわよね)
普段はドゥーエと本名で呼ぶ癖に、こういう時だけわざとらしく偽名で呼ぶ二宮。その誰から見てもイラつく態度に、ドゥーエは再度イラっとさせられながらも通信を切り、頭を冷静にさせてから二宮に言われた事を脳裏に思い浮かべる。
(……でも、彼の言う通りなのも確かなのよね)
初めて出会ったあの日、ドゥーエは二宮からカードデッキの情報だけ得てから殺すつもりでいたが、逆に二宮の契約モンスター達に殺されかけた。それ以来、全く隙を見せようとしない二宮に隙を作ってやろうとして、自身の女としての魅力を使い何度も彼をたぶらかそうと目論んだが、今のところ全て失敗に終わっている。
「本当、思い出すだけで腹が立ってくるわね……」
プライドを傷つけられた自分は、意地でも彼をその気にさせてやろうと、何度もスキンシップを図った。彼に自分を意識させてやろうと目論んでいた。しかしそうしている内に……気付けば自分の方が、彼の事を少しずつ意識するようになっていた。色仕掛けに動じない彼を振り向かせてやろうと、自分の方が必死になっていた。
「……駄目ね、こんなんじゃ」
自分が何故こうして管理局に潜入しているのか。自分が果たしたい目的は何なのか。二宮と共にいる内に、本来の目的を忘れてしまうところだった。ドゥーエは自身の頬を両手でパンパン叩き、今はとにかく自分がやるべき任務に集中する事にした。
(そうよ、私はナンバーズのドゥーエ……ドクターが目指す理想の為に、私は私の任務をこなすだけ……!)
「―――なんて感じで、今は目の前の事に集中してくれると助かるんだが」
なお、そんな彼女の思考は既に、二宮によって完璧に読まれてしまっていた。
(それにしてもドゥーエの奴、『一緒に住まないか』なんて言い出すとは……本当にめんどくさい事を考える)
呑み終えたコーヒーの缶をテーブルに置いた後、ソファに深く座り込んだ二宮は溜め息をつきながら、自身がいる部屋を見渡す。これまで自分達が一緒に過ごしてきたこの空間が、彼女の思考を変えたのか。そんな事を考えながら二宮は……ドゥーエとは違う結末を脳裏に思い浮かべていた。
「悪いがドゥーエ……お前が望んでいる結末と、俺の考えてる結末は違う」
二宮は懐からある物を取り出した物……それは自身が使っているのとは違う、未契約状態のカードデッキ。黒一色で統一されているそのカードデッキを見つめていた二宮の背後に、オーディンが窓ガラスに映り込むようにその姿を現し、二宮は振り返る事なく声をかける。
「今度は一体何の用だ? オーディン」
『昨夜、お前が言っていた事について改めて確認をしておきたくてな……本気なのか? 今後もスカリエッティをまだ生かす、というのは』
「……少しばかり事情が変わってな。この戦いが終わった後の事も考えると、スカリエッティはまだ殺す訳にはいかなくなった。もちろん、奴のカードデッキと契約モンスターはどちらも処分するがな」
『利用するのならまだしも、利用しないのに生かすというのか? お前らしくもない……それに奴を生かすというのであれば、殺す事よりもよほど困難になるぞ? その辺りはどうするつもりなんだ』
「手塚や霧島……それから六課の連中に任せてしまえば良い。奴等にはサバイブのカードも渡したんだ。人を殺す事を良しとしないアイツ等なら、上手い事スカリエッティを生かしたまま捕らえてくれるだろうさ。万が一死なせてしまった場合は、それはそれで別のプランも考えはするが」
『そこまでして……お前は何を企んでいる?』
「お前が言ったんじゃないか。使える手駒を増やしたいんだろうって……その手駒を確実に手に入れるには、こうする他ないって事だ」
二宮は振り返らないまま、未契約状態のカードデッキをオーディンに見せつける。それを見たオーディンは、彼が何を企んでいるのかを理解した。
『……なるほど、そういう事か。ならば、お前が始末するべき相手も決まってくるな』
「あぁ……あの眼鏡の女、クアットロっつったか? アイツは間違いなく邪魔だ、確実に始末する。それから……」
『浅倉、だな?』
「……だが困った事に、奴等を始末するのも簡単じゃないからなぁ。さてどうするべきか」
『問題ない。その為に私はここへ来たのだからな』
「?」
オーディンの言葉に眉を顰めた二宮が振り返った時だった。オーディンは自身のカードデッキから引き抜いた1枚のカードを投げつけ、二宮は驚きつつもそのカードを右手で上手くキャッチする。そしてキャッチしたカードの絵柄を見て、彼は右目を見開いた。
「! これは……」
『そのカードなら問題はあるまい。何故ならそれは……
オーディンは二宮が手に取ったカードを指差しながら言い放つ。二宮が見据えているカードの絵柄は……
『もしもの時は任せたぞ、二宮』
金色の不死鳥が、キラキラと煌めていていた。
場所は変わり、機動六課の面々は……
「八神、ここは……?」
「手塚さんと夏希ちゃんは初めてやったな。ここに来るのは」
手塚と夏希を連れて、はやて達はとある巨大な巡航船の内部を移動していた。それはなのはやフェイト、はやて達にとっては非常に懐かしい場所でもあった。
「戦艦アースラ……私達の新しい“翼”や!」
戦艦アースラ。かつてなのは達がまだ子供だった頃、フェイトとクロノの母親―――リンディ・ハラオウンが艦長を務めていた次元航空船であり、現在は老朽化や損傷の蓄積が激しい事から廃艦処分になる予定だった。しかし機動六課の本部がスカリエッティ一味の襲撃で壊滅状態に陥った事と、機動六課の今後の目的がレリック捜査からスカリエッティの捜索・逮捕に変わっていくのが目に見えていた事もあり、それならば移動のできる本拠地があった方が良いというはやての判断で、このアースラを一時的に機動六課の本部として利用する事にしたのだ。これについてはクロノも、既に賛成の意志を示してくれたらしい。
「なるほど。これだけ広いのなら、代わりの本部として使うのに最適か」
「うわぁ、すっごく広い! アタシ、こんなデカい戦艦に乗ったの初めてだよ……っとと!?」
「うわっと! 夏希さん、大丈夫?」
「あ、あはは。ごめんなのは……まだちょっと歩きにくくてさ」
現時点で、手塚と夏希は歩ける程度には回復していた。しかし顔の右半分に毒液を浴びてしまった夏希はまだ右目が包帯で開けない状態である為、普通に歩くだけでもだいぶ苦労しているようで、今もこうして危うく転びかけてはなのはに支えて貰っているのが現状だった。
「夏希さん、やっぱりまだ無理して歩かない方が……」
「大丈夫だって。別に戦えないって訳でもないんだしさ。それに……アタシ達がこうしている間にも、ヴィヴィオがスカリエッティ達に何をされているのか全くわからないんだ。いつまでもベッドの上で、呑気に寝てる訳にもいかないだろ……?」
夏希の言葉に、なのはやフェイト、手塚も黙り込む。守らなければならなかったはずなのに守れなかった。その少女が今、スカリエッティ一味の下で非道な実験を受けているかもしれないと思うと、手塚達はいても立ってもいられない心情だった。
「でも、2人もあまり無理はしないで下さい。2人の身に何かあったとしたら……それこそ、ヴィヴィオが悲しむ事になりますから」
「それに、助けなきゃいけないのはヴィヴィオちゃんだけやあらへんのやろ? 手塚さん」
「……あぁ」
救わなければならないのはヴィヴィオだけではない。斎藤雄一。スカリエッティ一味に利用されている彼も、絶対に助け出さなければならない。それがわかり切っている事だからこそ……昨夜、手塚が占った未来が夏希は不安で仕方なかった。
『俺か雄一、どちらかが死ぬ……!!』
(変えなくちゃ……そんな運命は絶対に……!)
そんな事を思いながらも夏希はなのはの手を借りながら、はやて達の後に続いて行く。そして通路を進んだ先で、はやて達はとある人物と対面した。
「ナカジマ三佐!」
「おぉ、来たか八神」
白髪の男性局員がはやて達を見て手を振り、はやてとなのは、フェイトも即座に敬礼を返す。しかし初対面である手塚と夏希は、目の前の男性局員が何者なのかをまだ知らなかった。
「誰……?」
「こちら、ゲンヤ・ナカジマ三佐。陸上警備部隊第108部隊の部隊長で、私にとって師匠みたいな御方や」
「よせ八神。師匠なんて肩書きは堅苦しくて仕方ねぇ」
「ゲンヤ・ナカジマって……もしかして、スバルとギンガのお父さん?」
「おぅ、正解だ。八神や娘達から話には聞いているぞ。お前さん達だな? 仮面ライダーってのは」
白髪の男性局員―――“ゲンヤ・ナカジマ”はにこやかに笑ってから、まず最初に手塚の方を見る。手塚も落ち着いた口調でゲンヤに自己紹介をする事にした。
「仮面ライダーライア、手塚海之です。表向きは異世界渡航者として、裏では外部協力者をしています」
「おぅ、よろしくな」
手塚と握手を交わした後、ゲンヤは次に夏希の方を見る。視線が合った夏希はまだ少し目上の人間と接する事に慣れていないのか、若干ぎこちない口調ながらも手塚のように自己紹介を行う。
「え、えっと……白鳥夏希、です。よろしく……」
「はは、そんな無理して丁寧にしなくても構わんさ……っと」
ぎこちない様子の夏希に、ゲンヤは少しだけ笑ってから彼女とも握手を交わす。しかし夏希の顔の右半分を覆っている包帯を見て、ゲンヤが浮かべる笑みに申し訳なさが入り混じる。
「その顔の傷……そっか、お前さんだな。スバルとギンガを助けてくれたのは」
「へ? あ、えっと……」
「すまねぇなぁ。娘達の為に、そんな傷を負う事になっちまって。この場を借りて礼を言わせてくれ」
ゲンヤは夏希の手を両手で優しく掴み、頭を深く下げる。
「娘達を守ってくれた事、心から感謝する……ありがとう」
「え、あ……い、いや! その、アタシは別に気にしてないっていうか、あっと、その……!」
誠意の込められた感謝はされ慣れていないのか、夏希は慌てた表情でゲンヤに顔を上げさせる。そんな彼女の様子を見て、なのはやフェイトは微笑ましく見守っており、はやてはニヤニヤ笑みを浮かべ、手塚も静かながらその口元に優しい笑みを浮かべるのだった。
「そうか。スカリエッティの野郎から、既に話は聞いているか……」
その後、はやて達とゲンヤはアースラ内の小さな部屋まで移動し、そこでゲンヤから様々な話を聞く事になった。まずはスカリエッティの捜索・逮捕の為に、本局次元航行部隊も対策協力に合意してくれそうな事。その次にゲンヤの口から語られたのは……スバルとギンガの出生と、2人の母親にしてゲンヤの妻―――“クイント・ナカジマ”についての話だった。
「あの2人は元々、クイントが捜査中に保護した子達なんだ。たまたま遺伝子資質が同じだったのと、クイント自身が当時、子供に恵まれていなかったのもあってな。俺達夫婦で引き取って育てる事にしたのさ……だが」
「……奥さんに、何かあったの?」
夏希の問いかけに、ゲンヤは無言で頷いた。
「2人が物心つく前に、クイントはとある事件を捜査する中で死んだ。本当なら、クイントが死ぬ事になったその事件について、詳しく捜査を進めていくつもりだったんだが……」
ゲンヤは生前にクイントとしていた約束で、娘達を育てていく時間を優先する事にした。そのせいでクイントが死亡した事件について告発できるほどの確証には至れなかったそうだが、ゲンヤ自身はその事に対して後悔を抱いてはいないようだ……それでも本音では、スバルとギンガの2人には局員になって欲しくなかったようだが。
「ゲンヤさんはさ……2人を止めなかった事、後悔してるの?」
「どうだろうなぁ。俺個人としては、2人には戦いとは無縁の人生を送って欲しかったとは思ってるさ……だがアイツ等は、自分の目指したい夢や目標を見つけて、自分の足で前に進んで行っている。いつまでもガキのままでいる訳じゃないって事だろうなぁ。感慨深く思っている自分もいる」
「ふぅん……良いお父さんしてるじゃん♪」
「ンッン!」
夏希がニヤニヤ笑みを浮かべながら告げた言葉が照れ臭く感じたのか、ゲンヤはわざとらしく咳き込み、多少強引にだが手塚と夏希にも話を振っていく。
「お前さん達はどうだよ。スバルとギンガの正体を知って、お前さん達はどんな風に感じた?」
スバルとギンガが戦闘機人のオリジナル「タイプゼロ」である事。その体の仕組みが普通の人間とは異なる事。それを聞いた手塚と夏希がどんな風に感じたのか、ゲンヤは問いかけてみたくなった。それに対し、手塚と夏希が返した答えは……
「「どうもしない」」
「……ほぉ?」
どちらも、既にハッキリしている物だった。
「2人共、夢や目標を目指して頑張っているのだろう? それはまさに人間がやる事だ。そんな事にまで、俺達からわざわざ指摘するような事は何もない」
「スバルもギンガも、誰かの為に笑ったり、泣いたり、怒ったりしてる。ある意味、アタシ達よりもよっぽど人間らしいと思う……それでも人間じゃないなんて馬鹿にするような奴がいるんなら、アタシがそいつをこの手で思いっきりぶん殴ってやるよ」
「……随分とアッサリ言ってのけるな」
「人としての心を失えば、その人間は醜い怪物となる。だがあの2人には、誰かの為に戦えて、誰かの為に笑顔になれる心がある。その優しい心がある限りは、周りが何と言おうとも人間だ……違うか?」
(! 手塚さん……)
2人が六課に滞在するようになってから、まだ1年も経過していない。それでも2人は知っていた。六課の面々と接する中で、たくさん見て来た。だからこそ、2人の答えはそれだけで充分だった。
「……そうか」
この2人に対しては、そんな問答は初めから不要だったのかもしれない。2人から返された答えに、ゲンヤは嬉しそうな笑みを浮かべる。
「ありがとな。お前さん達の話が聞けて良かった。色々大変なようだが、もし力になれそうな事があればいつでも言ってくれ」
「……その事なんだが」
ここで、手塚が話を切り出した。
「ゲンヤさんだけじゃない。八神、ハラオウン、高町、それから六課の皆にも……俺から頼みたい事がある」
「ん、何や?」
「……俺は1つ占いをしてみた。これから先の未来を」
「ッ……!」
それを聞いた夏希は、不安そうな表情で手塚の方に顔を振り向かせる。手塚も夏希と視線を合わせ、コクリと頷いてから話を続けていく。
「その占いで見えたのは……俺と雄一の、どちらかが死ぬ未来だった」
「「「ッ!?」」」
その発言は、はやて達3人の表情をすぐさま一変させる。しかし彼女達から驚愕の目を向けられても、手塚は全く動じなかった。
「雄一……確か、お前さんの友人だった男か?」
「あぁ。昔の俺なら、この身に代えてでも雄一の命を救おうとしていただろう……だが、今は違う」
手塚はコインを指で弾き、そしてキャッチする。
「俺はもう、二度と戦いで死ぬつもりはない。もちろん、雄一も助け出すつもりだ」
「……変えられるというのか? お前さんはその未来を」
「あぁ。だがそれは、俺1人の力では到底無理だろう。元いた世界でもそうだった……だからこそ、仲間の力が必要になる」
「「「……!」」」
手塚の言おうとしている事がわかったのか、はやて達も真剣な表情で手塚を見据える。そして手塚も、そんな彼女達の前で伝える事にした。残酷な運命を変える為に。
「俺は運命を変える……その為にも、力を貸して欲しい」
その言葉に、返事をする者はいなかった……というより、わざわざ口で返す必要もなかった。
はやて達は皆、その意志を心で受け止めていた。
それは彼女達の手塚を真っ直ぐ見つめる目が、ハッキリ証明してみせていた。
場所は変わり、とある真っ暗な場所……
「はぁ……はぁ……ッ……!!」
壁に手をつき、雄一は頭を抱えながら苦しそうに呻いていた。その顔は汗だくになっており、今にも倒れてしまいそうなくらいだった。
(くそ、また声が……!!)
―――倒セ!
―――潰セ!!
―――目ニ映ル物、全テヲ破壊セヨ!!!
「ッ……黙れ……俺は……!!」
雄一もまた、手塚や夏希と同じようにモンスターと戦っていた。その戦いでも、レリックの副作用で彼は暴走を引き起こしてしまった。その時からずっと、こうして憎悪の感情が幻聴となって雄一を苦しめていた。
「あらあら、随分と苦しそうですねぇ~?」
「ッ……クアットロ、さん……!!」
そんな雄一の前に、クアットロが甘ったるい口調で近付いて来た。雄一が苦しそうにしているにも関わらず、クアットロは呑気に笑みを浮かべている。
「クアットロさん……あの、娘は……?」
「あぁ、
「そう、ですか……ッ……なら、メガーヌ……さん、は……!」
「ご安心下さいませ。そちらもドクターが面倒を見て下さってますわ♪ だから雄一さんは安心して―――」
「私の操り人形にでもなっていなさい」
ドクン……ドクン……
「―――!? ぐ、が……ぁ、あぁぁぁ……ッ!?」
その直後だった。リングの宝玉部分が強く点滅し始め、それと同時に雄一は頭を押さえてその場に倒れ、苦しそうにのたうち回り始めた。クアットロはそんな彼を見下ろしながら、宙に出現したキーボードのような物を両手で操作していく。
「あなたの装着しているリングに、私が少し手を加えておきましたわ。後は私が命令するだけで、あなたは私に忠実な操り人形となる」
「あ、がぁ……ッ……な、に……を……!!」
「幻聴が聞こえてお辛いでしょう? でも私の人形になってしまえば、そんな苦しみからも解放されますわ♪ だから大人しく眠っていなさい……私が壊れるまで使ってあげるから」
「ッ……ぅ、あぁ……がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
頭の痛みが少しずつ悪化していき、雄一の悲鳴が響き渡る。クアットロはそんな彼を見下ろしながら、ウフフと下卑た笑みを浮かべる。
(ッ……手、塚……早く……俺、ヲ……止、メ……テ……)
雄一の目の前が真っ暗になる。その瞬間から、手塚の意識はそこで完全に途切れてしまうのだった……
そして、機動六課の壊滅からおよそ1週間後……
「さぁ、いよいよ目覚めるぞ……聖王のゆりかごが……!!」
スカリエッティの計画も、いよいよ最終局面を迎えようとしていた。
To be continued……
リリカル龍騎StrikerS!
夏希「アレが、聖王のゆりかご……!?」
スカリエッティ「いよいよ始まる……最高の“祭り”が……!!」
手塚「ヴィヴィオも、雄一も、必ず助け出す……!!」
二宮「さて、まずはゴミ掃除から始めるか」
戦わなければ生き残れない!