リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

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どうも、ここ数日パソコンの接続が悪くて執筆に苦労しているロンギヌスです。おかしい、買い替えてまだ1年も経過してないはずなのに……。

そんな呟きはさておき、第45話をどうぞ。

可能であれば、活動報告のアンケートもお願いしま~す。



第45話 聖王のゆりかご

「海之、トドメはお願い!!」

 

「あぁ!!」

 

≪FINAL VENT≫

 

『『グガァァァァァァァァァッ!?』』

 

ミラーワールド、とあるトンネル内部。電子音と共に飛来したエビルダイバーに飛び乗ったライアは、ファムがウイングスラッシャーで足を引っかけ転倒させたギガゼールとメガゼール目掛けて突撃し、必殺技ハイドベノンで2体を逃がす事なく撃破していた。ギガゼール達の断末魔と共に発生した爆風から2つのエネルギー体が出現し、それぞれエビルダイバーとブランウイングが捕食して飛び去って行く。

 

「ふぅ……夏希、調子はどうだ?」

 

「うん、だいぶ調子は戻って来たかな。右目使えないのがまだ慣れないけど……」

 

この数日間、モンスターとの戦い以外では傷の回復に専念していた2人。今では野生のモンスター程度なら普通に戦えるレベルにまでは回復していたが、特に外傷のない手塚と違い、ベノスネーカーの毒液を浴びた夏希は今もまだ右目が使えない状態である。おかげで今回のギガゼール達との戦闘においても、ファムはライアのサポートを受けながらの戦いになった。

 

「あまり無理はするな。片目を使えないとなれば、それだけで戦いは不利になりやすい」

 

「もぉ、何度も言わなくて大丈夫だってば。本当に心配性だなぁ海之は」

 

ライアから口うるさく言われるファムはウンザリした様子でライドシューターに乗り込もうとしたが、ライドシューターのキャノピーを開いた後も、ファムはその場から動かない。それに気付いたライアは、ライドシューターに乗り込みながら呼びかけた。

 

「どうした?」

 

「あ、ううん。ちょっとね……ゲンヤさんに言われた事、思い出してさ」

 

「……そうか」

 

それは数日前、初めてゲンヤと対話した後の事……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい、2人共。ちょいと待ってくれ』

 

『『?』』

 

はやて達が戦艦アースラの内部の点検に向かって行く中、それに続いて部屋を後にしようとした手塚と夏希を突然ゲンヤが呼び止め、2人を部屋に連れ戻した。何事かと思った手塚と夏希だったが、ゲンヤは軽い口調で笑いながらも、すぐに真剣な表情に切り替わる。

 

『何? ゲンヤさん』

 

『いや、悪いなぁ呼び止めちまって……お前さん達。まだ何か、隠してる事あるんじゃないのか?』

 

『『……ッ!?』』

 

それを聞いた途端、手塚と夏希は一瞬だけその身が硬直する。そんな2人の反応を見て、ゲンヤは「やっぱりな」と小さく笑みを浮かべてみせた。

 

『……どうしてわかった?』

 

『なぁに、オジサンの勘って奴だよ。お前さん達の話を聞いている中でな……お前さん達のする話の内容は、まるで何かを悟られないように上手く言葉を選んでいるかのような。そんな感じがしたのさ』

 

『『ッ……!!』』

 

手塚と夏希はゲンヤに対して、ミラーワールド、仮面ライダー、モンスターについては詳しく話したものの、この時もオーディンや二宮の事は伏せていた。それなのに、たった一度の会話で何故そんな事に気付けるのか。手塚と夏希は自分達が警戒されているのかと思わず身構えかけたが、ゲンヤはそれを手で制する。

 

『あぁいや、そんな身構えなくても良い。俺は別にお前さん達を疑ってる訳じゃない』

 

『え?』

 

『少し気になっただけだよ。他所の世界から来たにも関わらず、この世界の人達すらも守り抜こうとしているお前さん達が、一体何を必死に隠そうとしているのか……な。何を隠してる?』

 

『……それは』

 

それ以上先の言葉が出ない。手塚は何て言うべきか頭の中で思考を張り巡らせようとしたが、彼が次の台詞を発する前に、ゲンヤはクルリと背を向けた。

 

『いや、良い。やっぱり聞かないでおくとしよう』

 

『……!?』

 

『へ!? き、聞かなくて良いの!?』

 

『あの八神達が、あそこまで信頼を置いている連中だ。それに、そんな怪我をしてまで俺の娘達まで助けてくれたとあっちゃ、お前さん達を疑う理由もねぇな』

 

『あ……』

 

『でだ。そんなお前さん達が何かを隠してるって事はだ……皆に言いたくても言い出せないような、何か複雑な事情を抱えてるって事なんだろう? 違うか?』

 

『……!』

 

ゲンヤの的中している推測に、手塚と夏希は言葉を失った。この男には一体、どこまで見透かされているというのだろうか。無言になってしまった2人に対し、ゲンヤは途中で足を止めて首だけ振り返らせる。

 

『そんな表情をしてるって事は、俺の予想は当たりのようだな』

 

『……聞かないのか? 力ずくで』

 

『事情があるのなら、無理に聞く訳にもいかねぇだろう? だから俺は、お前さん達がその口で言うまでしばらく待ち続けてやるよ……つってもだ。あんまり抱え込み過ぎると、八神達も心配するだろうからな。無理だけしねぇように頑張りな』

 

そう言って、ゲンヤは手を振りながら部屋を去っていく。そんな彼の後ろ姿に、手塚と夏希はしばらくその場から動かず呆然とする事になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――本当、大人ってズルいよねぇ。あぁいうところで無駄にカッコ良い事するんだからさ」

 

「全くな」

 

そんな数日前の出来事を振り返りながら、ファムはライドシューターに乗り込み、彼女のベルトの両腰にジョイントがしっかり固定される。そのままライドシューターのキャノピーがゆっくり降りていく。

 

「……本当、良い人だよねぇ。スバルとギンガが、あんな良い子に育ったのもわかる気がする」

 

「あぁ」

 

「ゲンヤさんだけじゃない。六課の皆も、私達の為に力になろうとしてくれてる。皆が、私達の事を心から信頼してくれてる……だから」

 

ファムの両手が、ライドシューターのハンドルをしっかり握る。

 

「皆で一緒に……絶対にヴィヴィオを助け出そう。それから……」

 

「……雄一もな。絶対に死なせない」

 

2人の覚悟は既に決まっていた。

 

それは決して、死ぬ事への覚悟ではない。

 

助けるべき命を助け出し、全員でこの戦いに勝つ……その為の強い覚悟だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね、マッハキャリバー……」

 

一方、既にほとんど傷が治りかけていたスバルは、現在シャーリー達の下で自身のデバイスであるマッハキャリバーを修復して貰っているところだった。スカリエッティやナンバーズ、王蛇との戦闘中に暴走した事が原因でマッハキャリバーを破損させてしまった事もあり、スバルはポッドの中で浮かんでいるマッハキャリバーに謝罪していた。

 

≪いえ、それはこちらも同じです。バディ達が傷付いてしまったのも、私の責任です≫

 

「大丈夫よぉ~……後少しで完全に修復が完了するからぁ~……」

 

「……シャーリーさんも、本当にすみません」

 

マッハキャリバー修復の為に徹夜で作業に集中していたシャーリーも、目の下に隈ができるくらいフラフラな状態だ。最初はスバルもシャーリーに少しは休んだ方が良いのではと呼びかけたが、シャーリーからは「いつ出撃になるかわからないし、作業が終わった後に少し眠れば大丈夫」と言われてしまった為に、スバルは自分のせいで彼女にここまで苦労させてしまっている事にとてつもない罪悪感を抱いていた。

 

「スバル、ここにいたのね」

 

「! ギン姉……」

 

そんな時、スバル達がいる部屋にギンガがやって来た。左腕はまだ三角布で固定されているが、既に他の傷はほぼ治りかけているからか、現在は松葉杖なしで歩いてみせていた。

 

「マッハキャリバー、直りそう?」

 

「うん。後少しで完全に修復するって、シャーリーさんが」

 

「そう……ねぇスバル」

 

「何? ギン姉」

 

「少しね……あなたに頼みたい事があって、ここへ来たの」

 

ギンガは右手を動かし、懐からある物を取り出す。それは待機状態になっている左手用のリボルバーナックルだった。

 

「え? これって……!」

 

「私は左手の事もあるから、次の戦いには参加できそうにないわ……だからスバル。私が普段使ってるこれも、あなたが使って頂戴」

 

「ギン姉……」

 

「……私の分まで、頼むわね」

 

徹夜で睡眠不足になってまで、シャーリー達はマッハキャリバーを修理しようとしてくれている。

 

戦えない自分の分まで、ギンガは母の形見であるリボルバーナックルを自身に託そうとしてくれている。

 

そんな彼女達の為に、今の自分がしてやれる事は何か。

 

それを頭の中で理解したスバルは、真っ直ぐな目でギンガと向き合いながら力強く頷き、ギンガから左手用のリボルバーナックルを受け取った。

 

「わかった……ギン姉の分も、私が戦う!」

 

「任せたわよ」

 

スバルとギンガは右手拳をコツンとぶつけ合い、互いに小さく笑い合った。その後、スバルは修復中のマッハキャリバーが直々に立てた強化プランを受けないかどうか聞かれ、それに応じる事にしたのだった。

 

「マッハキャリバー……また、一緒に走ろう!」

 

≪イエス、マイバディ≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「手塚さん。傷はもう大丈夫なんですか?」

 

「あぁ、俺はもう大丈夫だ」

 

それから更に1日が経過し、機動六課の面々は次の戦いに備えて念入りに準備を進めていく。傷の完治した手塚は腕に巻かれていた包帯を外してから右頬のガーゼを剥がし、いつまでも休んでいられないと言わんばかりに靴を履こうとしている。その様子を見ていたフェイトは、靴を履き終えた手塚の為に彼女が持っていた赤いジャケットを彼に手渡し、手塚はジャケットの袖に腕を通しながらベッドから立ち上がる。

 

「恐らく、次の戦いでスカリエッティ達との決着がつくだろう……もうこれ以上俺達は負けられない。ヴィヴィオも、雄一も、俺達が必ず助け出す……!!」

 

「はい……手塚さん」

 

「何だ?」

 

フェイトは小さく俯きながら、自身の胸に手を置いた。

 

「正直なところ、私は凄く悔しいと思っています。手塚さんも……夏希さんも……ミラーワールドの戦いで何度も傷付いているのに、私達はそんな2人を碌にサポートする事すらできません」

 

「ミラーワールドの中で戦えるのは、ライダーとモンスターだけだ。魔導師のお前達が気に病む事ではない」

 

「それでも! 2人がいつも傷だらけになって帰って来るたびに、私も見ていて凄く苦しいんです。2人のお役に立てない自分が、凄く憎いと感じてしまうんです……手塚さん。どれだけ傷付いたとしても、あなたは戦いをやめるつもりはないんですよね?」

 

「あぁ。契約してる以上、どの道自分からはやめられないがな」

 

「そう言うだろうと思って……私、決めた事があるんです」

 

「?」

 

フェイトは顔を上げて目を開き、手塚と見つめ合う。

 

「手塚さん達がライダーとして、この世界の人達の日常を守っていくんだとしたら……私達は、そんな手塚さん達の日常を守っていきたい」

 

「……!」

 

「戦い終わった手塚さん達が、安心して休めるように……笑顔で、皆の所に帰って来れるように……手塚さん達が帰る為の日常を私達が守っていきたい。私はそう決めました」

 

どれだけ傷付いても、手塚と夏希は戦いをやめる事はできない。それはとてもキツく、とても苦しいはずだ。だからこそフェイトは、いつもミラーワールドへ戦いに向かう手塚の背中を見て、決意したのだ。

 

誰かの為に戦う2人の為に、2人が生きる日常を守りたい。

 

2人が安心して休めて、笑顔で皆と笑い合える日常を守り抜きたい。

 

それが、フェイトが決めた1つの道だった。

 

「……そうか」

 

「えっと……駄目、ですか……?」

 

手塚がイマイチな反応をしていると思ったのか、フェイトは恐る恐る彼の顔色を伺おうとした。それに対し、手塚は思わずフッと吹き出し、小さくだが彼女の前で笑ってみせた。

 

「いや、その逆だ。感謝する、ハラオウン」

 

「! 手塚さん……」

 

「しかしだ。俺達がそうしていくには、この場に足りない人間達がいる。だからまずは……」

 

「……はい! 助けましょう、絶対に!」

 

手塚の見せた笑顔に、フェイトも釣られるように笑顔を浮かべてみせる。

 

こうして2人は、決戦に臨む理由が1つ増える事となった。それを知っているのは、部屋で語り合っていた手塚とフェイトの2人と……

 

 

 

 

 

 

(どうしよう……すっごく入り辛い空気……!)

 

 

 

 

 

 

部屋の扉の前でこっそり話を聞いている内に、何となく部屋に入り辛くなっていた夏希の3人のみである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから更に数日が経過し……決戦の時は、突然やって来た。

 

 

 

 

 

『やぁ諸君、元気にやっているかい?』

 

「「「「「ッ!!」」」」」

 

あまりに突然だった。アースラ内部に存在する全てのモニターに、通信をハッキングしたスカリエッティの顔がいきなり映り込み、一同は一斉に警戒態勢に入る。

 

「スカリエッティ……!!」

 

『おやおや、そんな怖い顔で睨まないでくれたまえ。せっかく君達にも面白い物をお見せしようと思っているのだから』

 

「面白い物だと……?」

 

『そう、面白い物だよ……旧暦の時代、全てを破壊し、全てを滅ぼすほどの力を持った兵器が、古代ベルカに存在していた事を諸君等はご存じかな?』

 

「何……?」

 

『今からお見せしようじゃないか……これこそが、収まるべき聖王の器を手にし、かつての力を取り戻した最凶最悪の兵器……“聖王のゆりかご”なのだよ……!!』

 

モニターの映像がスカリエッティではなく、別の映像に切り替わる。その映像に映し出されていたのは、森林地帯の地盤が盛り上がり、その下から少しずつ姿を露わにしていく、巨大な戦艦のような兵器だった。

 

「ッ……これは……!!」

 

「アレが、聖王のゆりかご……!?」

 

あまりに巨大な戦艦―――“聖王のゆりかご”が空へ飛び立つ光景に、手塚達は言葉を失う。そんな彼等の反応を楽しむかのように、映像はそのままの状態でスカリエッティの声が聞こえて来た。

 

『どうだい、素晴らしいだろう? これこそ、君達管理局や聖王協会が忌避しながらも求めていた強大にして絶対的な力さ……そして、君達の探し物もここにいるよ』

 

次に映し出されたのが、大きな広間のような場所。その奥に存在する玉座に座らされ、何本ものコードに繋げられ拘束されているヴィヴィオの姿だった。

 

「「ヴィヴィオ!?」」

 

「ヴィヴィオちゃん!!」

 

「ッ……どういう事だスカリエッティ!! あの子に何をした!?」

 

『ゆりかごを動かすには、その鍵となる聖王の存在が不可欠だった。しかし聖王は遥か大昔に滅びている……そこで私は、聖王の遺伝子を持つクローンを生み出し、その体内にレリックを埋め込む事で、代わりの鍵として利用する事にしたのさ。その鍵となるのが、この娘さ』

 

「……ッ!?」

 

「ヴィヴィオちゃんが……聖王の、クローン……!?」

 

『その鍵を使い、我々はゆりかごを起動させる事に成功した。いよいよ始まる……最高の“祭り”が……この私が求め続けてきた、最高の“夢”の始まりだァッ!!!』

 

スカリエッティの高笑いする声がモニター越しに響き渡る。するとモニターの映像が切り替わり、再度ヴィヴィオの姿が映し出された。

 

『どこ……ママ……パパ……ッ!?』

 

玉座に座らされているヴィヴィオ。その目が突然開き、怯えた表情で悲鳴を上げ始める。

 

『う、うぅ……痛い、痛いよぉっ!! 怖いよぉ!! パパァ……ママァッ!! うぇぇぇぇぇぇぇぇん!!』

 

「ッ……ヴィヴィオ……!!」

 

「……!!」

 

ヴィヴィオの苦しむ姿を見せつけられ、なのはとフェイトは自分達のデバイスを強く握り締め、夏希は思わず目を逸らしそうになる。一方で手塚は目を逸らす事こそしなかったが、その拳は指の爪が深く食い込んでしまうくらい強く握り締められており、その目にはスカリエッティに対する強い怒りが込められていた。

 

『あぁそうだ、1つ言い忘れていたよ。手塚海之君……だったね。君の友人も今、このゆりかごに乗っているよ』

 

「!! 雄一が……!?」

 

『彼もまた、聖王の玉座を守護する鏡の騎士として、ゆりかご内部で待機している。彼は君との再会を待ち望んでいるからねぇ、ぜひとも会ってあげたまえ……ククククク、クハハハハハハハハハハハ!!』

 

そこでスカリエッティからの通信は途切れた。その直後、シャーリーの声がアースラ艦内に響き渡る。

 

『地上本部にて、戦闘機人の反応あり!! アインヘリアルの1号機、2号機が破壊されたとの報告が!!』

 

「!? もう動き出しているのか……!!」

 

『ガジェットも多数反応あり!! クラナガン全域が襲撃を受けています!!』

 

既に戦闘機人達も動き出し、ガジェットも街全体に出没し始めている。こうなってしまえばもう、急いで出撃する他ないだろう。そう判断したはやてから、フォワード分隊に出撃命令が下される。

 

「フォワード分隊、出撃の時や!! ゆりかごだけやない、ガジェットや戦闘機人も現れて、市民の安全を脅かしている……それは絶対に止めなあかん!!」

 

はやての言葉に一同は一斉に頷き、それぞれのメンバーが出撃態勢に入る。そして手塚と夏希もまた、自分達が持つカードデッキを握り締め、フォワード分隊と共に出撃しに向かって行く。

 

「高町、ハラオウン、ゆりかごには誰が向かう?」

 

「私とヴィータが向かいます!! ですから……」

 

「あぁ、俺もそちらに同行する。雄一がゆりかごにいるのであれば、俺か夏希のどちらかは、お前達と一緒に向かわなければならない」

 

「手塚さん……サポート、お願いします」

 

「任せろ」

 

聖王のゆりかごに乗り込むメンバーは、手塚・なのは・ヴィータの3名が決定した。一方で、シグナムやスバル達は街中に現れたガジェットや戦闘機人の対応に向かう事となり、更には管理局本局からも事件の対応に協力するとの連絡が届いている。そんな中、フェイトが向かおうとしていたのは……

 

「スカリエッティ……奴は私が……!!」

 

そう、スカリエッティがいるアジトだ。はやて達の知人である査察官のおかげで、彼の潜んでいるアジトは既に場所を突き止める事ができている。そこでフェイトはスカリエッティの逮捕に向かおうとしていたのだが、スカリエッティはオルタナティブへの変身能力も持っている。彼女1人で挑んでも到底敵わないだろう。そこで……

 

「アタシも行くよ。相手がライダーなら、フェイト1人じゃキツいでしょ?」

 

「夏希さん……」

 

スカリエッティのアジトへ向かうフェイトには、夏希も同行する事になった。本当ならば、まだ右目の使える状態じゃない夏希を無理に同行させたくないフェイトだが、今はそんな事を言っていられる余裕もない。フェイトは夏希と視線を合わせ、コクリと頷いた。

 

「力を貸して下さい、夏希さん……!」

 

「OK、一緒に行くよ!」

 

 

 

 

 

 

 

それから数分も経たない内に、アースラ艦内の出撃用ハッチの内部に一同が集結する。艦内の警報が今も鳴り響いている中、なのはとヴィータはスバル達の方へと視線を向ける。

 

「今回の任務は、今までで一番ハードな戦いになると思う」

 

「それに、今回はアタシもなのはもお前達を助けに行く事はできねぇ。お前達のピンチは、お前達で切り抜けるしかない」

 

その言葉に、緊張したスバル達は表情がより引き締まり、肩にも大きな力が入る。そんなスバル達を見たなのはは苦笑いを浮かべ、すぐに表情を引き締める。

 

「でも皆。ちょっと目を瞑って、今までの訓練を思い出して」

 

「「「「?」」」」

 

スバル達は一瞬困惑するも、なのはの指示通りに目を閉じ、今まで自分達が受けてきた訓練の内容を1つずつ思い出していく。

 

「ずっと繰り返してきた基礎スキル。磨きに磨いたそれぞれの得意技。痛い思いをした防御練習。全身筋肉痛になりながらも繰り返したフォーメーション……いつもボロボロになるまで繰り返した、私達との模擬戦」

 

「「「「うぅ……ッ」」」」

 

「いやいや、トラウマ掘り起こしてどうするのさ」

 

なのはとヴィータに散々扱かれてきた思い出も一緒に蘇ってきたのか。スバル達は目を閉じながらも嫌そうな表情で呻き声を上げており、思わず夏希も突っ込みを入れる。そのやり取りになのはがクスっと笑い、スバル達に目を開けるよう指示を出した。

 

「まぁ私が言うのも何だけど、キツかったよね?」

 

「「「「あ、あははは……」」」」

 

「それでも4人共、よく付いて来れたな」

 

「「「「……え?」」」」

 

ヴィータから告げられた言葉が予想外だったのか、スバル達は思わず自分達の耳を疑った。それに続くようになのはも声をかける。

 

「うん。4人共、とても強くなった―――」

 

「「「「わぁ……!」」」」

 

「―――とはまだちょっと言えないけど」

 

「「「「あぅ……」」」」

 

「そこ上げて落とすの!?」

 

「夏希、お前もいちいち突っ込むな」

 

一度上げて落とされ、がっくりするスバル達。しかしその後、なのはは表情を切り替えて真剣な目付きでスバル達と向き合った。

 

「でも皆には、どんな状況でも、誰が相手でも、絶対に負けないように今まで頑張って教えてきた。守るべき物を守れる力……救うべき者を救える力……絶望的な状況にも立ち向かって行ける力……ここまで頑張ってきた皆には、それがしっかり身に付いている。夢を見て、憧れて、必死に積み上げてきた時間……どんなに辛くても止めなかった努力の時間は、絶対に自分を裏切らない」

 

「「「「……!」」」」

 

「それだけは、忘れないでね」

 

「キツい状況だからこそ、ビシッと決められるのがストライカーだ」

 

「「「「……はい!!」」」」

 

なのはとヴィータが右手を突き出し、何かを掴み取るように拳を強く握り締める。それに対してスバル達が敬礼しながら力強く返事を返した後、いよいよなのはの口から出動命令が下される。

 

「それじゃあ……フォワード分隊、出動!!」

 

「「「「了解ッ!!!」」」」

 

スバル達は同時に駆け出してヘリへと乗り込んでいき、彼女達を乗せたヘリ、そしてシグナムとリインが出撃し街中へと飛び去って行く。その様子をしばらく見届けてから、アースラは次の降下ポイントまで移動を開始する。

 

「さて、これからすぐにアタシ等も出動だ。手塚、白鳥、覚悟はできてんだろーな?」

 

「もはや今更な質問だな」

 

「アタシも海之も、過去に一度死んでる身だしね……まぁ、二度も死ぬつもりはないけどさ!」

 

「……あぁそうかい!」

 

今更、2人の覚悟が変わる事はない。それを確認したヴィータがニヤリと笑う。そして出動態勢に入った隊長陣と手塚達もハッチに並ぶ中、通信でカリムの声が聞こえて来た。

 

『これより、各隊長及び副隊長全ての能力限定を完全解除。はやて、シグナム、ヴィータ、なのはさん、フェイトさん……それから手塚さんと夏希さん……どうか、お願いします』

 

「「「「「「……了解!!」」」」」」

 

映像は映されていないが、カリムの言葉から彼女の真剣さは伝わってきた。そんなカリムに返事を返した後、はやて達はそれぞれのデバイスを取り出し、手塚と夏希も予めハッチに用意して貰っていた鏡にそれぞれのカードデッキを突き出し、出現したベルトを腰に装着する。

 

「手塚さん」

 

「!」

 

手塚の隣に立っていたフェイトが声をかけた。手塚とフェイトの視線が合い、フェイトは右手拳をスッと手塚の前に突き出した。

 

「ヴィヴィオの事……お願いします」

 

「……あぁ、任せろ」

 

手塚も同じく右手を突き出し、2人は拳をコツンとぶつけ合う。そしてはやて達はデバイスを掲げ、手塚と夏希はカードデッキを構えて変身ポーズに入る中、カリムが通信越しに大きく叫んだ。

 

『リミット・リリース!!』

 

その直後、はやて達の全身から膨大な魔力が湧き上がって来た。それを近くにいた手塚達も肌で感じつつ、6人は一斉に叫んだ。

 

「「「「セーット・アーップ!!!」」」」

 

「「変身ッ!!!」」

 

はやて達の全身にバリアジャケットが纏われて行き、手塚と夏希はそれぞれライアとファムに変身。6人の出撃準備も整った事で、いよいよ彼等も出動する事になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――そうか、始まったか」

 

『えぇ。あなたも急いで来て頂戴』

 

そしてオンボロのアパート。ドゥーエからの通信で、いよいよ戦いが始まった事を知った二宮もまた、行動を開始しようとしていた。

 

「ルートは完璧に覚えた。ひとまずそちらに合流する」

 

『早く来なさいよ? じゃないと先に獲物を奪っちゃうかも』

 

「……あまり派手に動き過ぎるなよ?」

 

ドゥーエとの通信が切れた後、二宮は小さく溜め息をついてから……その手に持っていた赤いオイルタンクを足元に放り捨てる。二宮のいる部屋は今、床全体にガソリンが撒き散らされていた。

 

(計画通りに行くのなら……もう、ここに戻って来る事もないだろう)

 

こちらも準備は整った。二宮は自身のカードデッキを窓ガラスに突き出し、出現したベルトが腰に装着されるのを確認してから変身ポーズを取り、カードデッキを装填する。

 

「変身」

 

いくつもの鏡像が重なり、二宮はアビスの姿に変身。そして彼はテーブルの上に置いていた1つのライターを右手で掴み取り、ライターの火を点ける。

 

「大して思い入れがある訳じゃないが……せめて、俺の手で燃やしてやるよ」

 

アビスがライターを放り投げ、床に落ちると同時にガソリンで火が一瞬で広がっていく。そして激しく燃え上がる炎をバックに、アビスは窓ガラスを介してミラーワールドに突入し、燃え上がる部屋を後にする。

 

「さて……まずはゴミ掃除から始めるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動六課。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スカリエッティ一味。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後に『JS事件』と呼ばれる事になる戦いの裏で、二宮の暗躍も始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




リリカル龍騎StrikerS!


手塚「ガジェットがあんなにも……!!」

ヴィータ「どけ、アタシが纏めてぶち抜いたらぁっ!!!」

クアットロ「これは一体、どういうつもりかしら?」

雄一「倒ス……邪魔者ハ全テ……!!」

ディエチ「雄一さん、目を覚まして!!」


戦わなければ生き残れない!
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