今回は聖王のゆりかごの場面になります。ちなみに今回の話で、とある読者がクアットロに対して猛烈な殺意を抱く事になるかもしれません。
詳しい事は……内容を見ればわかると思います。
それでは、第46話をどうぞ。
『『『『『ブブ、ブブブブブブ……!!』』』』』
「!? ガジェットがあんなにも……!!」
上空へ飛び立った巨大な戦艦―――聖王のゆりかごを目指し、エビルダイバーの背中に乗ってなのは・ヴィータと共に飛行していたライア。そんな3人の行く手を阻むかのように、レイドラグーンを模したガジェット(以下レイドラグーンガジェット)が大量に姿を現し、一斉に3人目掛けて光線を発射してきた。
「こんな時に……!!」
「どけ、手塚!! あの程度のポンコツ共、アタシが纏めてぶち抜いたらぁっ!!!」
「手塚さんは、このまま真っ直ぐ飛んで下さい!!」
「ッ……わかった!!」
3人は飛んで来る光線を華麗にかわしながら、ヴィータがグラーフアイゼンで撃ち飛ばした鉄球砲撃―――シュワルベフリーゲン、そしてなのはがレイジングハートを通して発動した集束砲撃魔法―――ディバインバスターによる魔力弾が周囲に拡散し、大量にいるレイドラグーンガジェットを次々と破壊。これにより何とかレイドラグーンガジェットの包囲網に隙間が空き、その隙間をライア達は猛スピードで一気に通過していく。
「……相変わらず、凄まじい殲滅力だな」
「へっ当然だろ。なのはの砲撃魔法は鬼や魔王級だからな」
「にゃ!? ヴィータちゃん、その例えは酷いよ!?」
「その例えはともかく、今は2人の力も頼りにしている。ヴィヴィオと雄一を助け出す為にも……なっ!!」
≪SWING VENT≫
『ブブッ!?』
「2人共、上手く避けろ!!」
「へ? うぉおっ!?」
「みにゃあ!?」
ライアの振るったエビルウィップが1機のレイドラグーンガジェットを捕縛し、勢い良く振り回して周囲のレイドラグーンガジェット達を一斉に破壊し薙ぎ払う。その際にライアの両隣を飛んでいたヴィータとなのはも危うく巻き添えになりかけた為、2人は慌ててそれぞれ上下に移動し、何とか巻き添えにされる事は回避した。その後、2人はライアをジト目で睨みつける。
「……おい手塚。さっきの台詞、そっくりそのまま返してやる」
「……後で覚えてて下さいね」
「それは悪かったな……さて、敵の数も一時的に減った。増援が来る前にここを突破するぞ。あまり長時間エビルダイバーに無理させる訳にもいかない」
2人から睨みつけられても、ライアは仮面の下で涼しい顔をしたままだ。あまりエビルダイバーに長時間現実世界に滞在させる訳にもいかない為、3人は大急ぎで聖王のゆりかごまで飛来していく。
「あら、うるさい小蝿が3匹も飛んで来てるわねぇ♪」
聖王のゆりかご、玉座の間。玉座に拘束されたヴィヴィオが今も苦しそうに泣き叫んでいる中、クアットロは空中に出現させた映像を介してライア・なのは・ヴィータの3人が接近して来ている事を察知していた。クアットロが妖艶な笑みを浮かべて手元のキーボードを操作してガジェット達を操るのに対し、それを隣で見ていたディエチはクアットロと違い、どこか遣る瀬無いような表情を浮かべていた。
「う、ひぐ……痛い……痛いよぉ……パパ、ママァ……ッ!!」
「まぁ、陛下。とっても苦しそうですわねぇ? 可哀想に♪」
「……ね、ねぇクアットロ」
「んん~? 何かしら、ディエチちゃん」
悲痛な表情で涙を流しているヴィヴィオの頬を指で撫で、楽しそうな表情で笑うクアットロ。しかしそんな彼女のキーボードを操作する右手を、ディエチが掴んで制止させる。
「その……ドクターの果たしたい目的ってさ、こんな小さい子を使ってまで、果たさなければならない事なのかな……? 技術者の復讐って言っても、もっと他にやり方が―――」
「あぁ、そういえば伝え忘れてたわね。ドクターが言ってた事、アレ大半はデタラメだから」
「―――え?」
クアットロの口からアッサリ言い放たれた言葉。それはディエチが言葉を失うには充分過ぎる発言だった。
「ドクターの真の目的は、如何なる勢力でも対抗できない最強の軍団を作り上げる事。このゆりかごも所詮、その為の兵器の1つに過ぎないわ。後はドクターが開発したオルタナティブのカードデッキさえ量産すれば、もう誰も私達に歯向かう者はいなくなる……そこから先はいよいよ、ドクターの天下って訳なのよ♪」
「ッ……そんな、話が違う!? じゃあ、ドクターが言ってた『命を愛する』って言葉は……」
「あぁ、アレ? そりゃ愛してるに決まってるでしょう? 自分が研究に使う為の
「な……!?」
「まぁでも~? どうせ今回の作戦で、この街の人間は1人残らず殺す事には変わりないわよ~? ドクターが作り上げた軍団が最強である事……この街の人間達は皆、その為の礎になるの♪ 決して無駄な死ではないわ~♪」
クアットロは体をクネクネ動かしながら、悪びれもしない態度でアッサリ言ってのけた。そんな彼女が浮かべる恍惚な表情に、ディエチは思わず背筋がゾッとした。
「あぁそれから。実を言うと、今はあのルーテシアお嬢様の事もぶっちゃけ飽きてきてるのよねぇ~。雄一さんの方が素体としての適性が高いし……せっかくだから、これを機にあの子にも見切りを付けようと思うの」
「!? ま、待ってクアットロ!! あの子は自分のお母さんを助けたくて、私達に協力してくれてるんだよ!? それに雄一さんだって、あんな苦しい思いをしながら必死に戦ってるのに……!!」
「そう、それそれ。今後はルーテシアお嬢様じゃなくて、雄一さんに実験を手伝って貰おうと思ってるの。彼も、私に協力してくれてる訳だし?」
クアットロがある方向を指差す。その方向を見たディエチの目には、俯いた状態のままフラフラと雄一が歩いて来る姿があり、彼がその場に膝を突くのを見てディエチはすかさず駆け寄った。
「ッ……ハァ、ハァ……!!」
「!? 雄一さん、どうしたの!? 雄一さん!!」
「教えてあげるわ、ディエチちゃん」
頭を押さえながら苦しそうに呻く雄一。ディエチが彼の体を支えてあげる中、クアットロはキーボードを操作しながら話を続ける。
「雄一さんが右手に着けているリング……それはね、彼の体内にあるレリックと直接リンクする事で、彼の肉体を遠隔操作できるように私がちょこっと細工してみたの。そのおかげで、彼は私の命令に忠実な部下に生まれ変わってくれたわ~♪」
「ッ……酷い、どうしてそんな事を彼に……!!」
「良いじゃない別に。
「!! まさか、ルーテシアちゃんのお母さんも……!?」
「この作戦が終わり次第、ルーテシアお嬢様共々処分する予定よ。何か文句がある?」
「なっ……!!」
あくまで楽しそうな笑みを浮かべるクアットロに、ディエチは小さく歯軋りする。この女はルーテシアも、彼女の母親であるメガーヌも、いずれは始末するつもりでいる。最初から、雄一との約束を守るつもりなど毛頭なかったのだ。
「ねぇ、ディエチちゃん……私個人としては、私とあなたはそれなりに仲良くやっていけると思ってるの。だからこれからも一緒に、私やドクターの下でお仕事してくれるわよね? だってディエチちゃんは、とってもとぉ~っても良い子なんだから♪」
絶句して言葉も出ないディエチの顎をツーっと指でなぞってから、クアットロは更にキーボードを操作する。それと共に、玉座に拘束されていたヴィヴィオの叫び声が更に大きくなっていく。
「!? あ、ぅ……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「痛いですか~陛下~? 大丈夫ですよ~♪ この仕込みさえ終われば、後は楽になれますからねぇ~♪」
「……ッ!!」
ヴィヴィオの泣き叫ぶ声を聞いてもなお、クアットロは楽しそうに笑い続ける。そしてそのすぐ傍には頭を押さえて苦しんでいる雄一の姿。それらを見ている内に……流石のディエチも、遂に見ていられなくなった。
ジャキンッ!!
「……あらぁ~?」
キーボードを操作する手が止まり、クアットロが視線を向ける。彼女が見据える先では、自分に向かって固有武装である砲台―――イノーメスカノンを向けているディエチの姿があった。
「……ディエチちゃ~ん。これは一体、どういうつもりかしら?」
「ごめん、クアットロ……けどもう、見てられないんだ……その子も、雄一さんも、これ以上苦しんでいるところは見たくない……!!」
「ふぅ~ん……?」
クアットロは口元こそ笑っているものの、その目は非常に冷たかった。
「そんな事を言ってるけれどディエチちゃ~ん? あなただって、最初は陛下が乗っているヘリを自分で撃墜しようとしてたじゃな~い。今更そんな善人ぶったって、あなたの罪が消える訳じゃないわよ~?」
「……許される立場じゃない事くらい、自分が一番よくわかってる。だから、私はどうなっても構わない……でも、その子と雄一さんは違う!! その2人にまで、
「ディエチちゃん……」
「でないと、私はあなたを撃つ……!!」
ディエチの心に迷いはなかった。彼女が向けているイノーメスカノンの砲身は少しもブレる事なくクアットロに向けられており、その指はいつでも引き鉄を引ける状態だった。そんなディエチの姿を目の当たりにし、クアットロはその場で俯きながら溜め息をつく。
「……なるほどねぇ。あなたの言いたい事はよくわかったわ」
クアットロはかけていた眼鏡を外し、足下に捨てた後……右足でグシャリと眼鏡を踏み砕く。
「ディエチちゃん。あなたって本当に―――」
「どうしようもないくらい、つまらな過ぎる子ね」
バキィッ!!
「―――ッ!?」
クアットロが指を鳴らした直後。いきなり横から誰かに殴られたディエチは、クアットロに意識を向けていたのもあって対応できず地面に薙ぎ倒される。起き上がろうとしたディエチの目に映ったのは……先程まで苦しそうに呻いていたはずの雄一が、無言のままディエチを見下ろしている姿だった。
「雄一、さん……?」
「……変身」
彼女達がいるゆりかごは、ほとんどのフロアの壁や天井に鏡が設置されている。その為、既にベルトを装着していた雄一は変身ポーズを取る事なく、カードデッキをベルトに装填しブレードの姿へと変身してみせた。そして彼は倒れているディエチの下まで歩み寄って行き……
「……フンッ!!」
「がはっ!?」
ディエチの腹部を強く踏みつけた後、彼女の首を右手で掴んで無理やり立ち上がらせた。そのまま右手だけで難なくディエチの体を持ち上げ、ディエチは呼吸ができず苦しそうに呻く。
「全く、裏切るつもりなら仕方ないわね……雄一さ~ん♪ 私達を裏切ろうとしている、そのお馬鹿なディエチちゃんにお仕置きしてあげて下さ~♪」
「……了、解」
「あぐ、ぅ……雄、一……さ……ぐっ!?」
ブレードに投げ飛ばされたディエチが地面を転がり、ブレードはホルスターに納められていたガルドバイザーを右手で引き抜きながら彼女に近付いて行く。そして彼女目掛けて、容赦なくガルドバイザーを振り下ろそうとした。
「ッ……やめて、雄一さん……!!」
「倒ス……邪魔者ハ全テ……俺ガ倒スゥッ!!!」
「くっ!?」
ディエチは素早く床を転がり、振り下ろされたガルドバイザーを回避する事に成功。立ち上がったディエチは自身のイノーメスカノンを構え直し、その砲身をブレードに向ける。
「雄一さん、目を覚まして!! そんな奴の言う事を聞いたら駄目!!」
「潰ス……オ前モ、コノ手デ……!!」
ディエチの叫ぶ言葉にも、ブレードは反応するどころかガルドバイザーを両手で構えて迫って来る。もはや呼びかけても無駄だと悟ったディエチは、イノーメスカノンにエネルギーを充填していく。
(ごめん、雄一さん……少しだけ我慢して……!!)
イノーメスカノンの照準がブレードに合わせられる。エネルギーの充填も完了し、ディエチはブレード目掛けて威力の加減された砲弾を放とうとした。
「IS……ヘヴィバレル!!」
しかし……
「ハァッ!!!」
ズバァンッ!!
「……ッ!?」
ディエチが繰り出した砲撃を、ブレードはガルドバイザーを縦に振り下ろすだけでいとも簡単に砲弾を真っ二つに切り裂いてみせた。切り裂かれた砲撃はブレードの背後の壁に命中し、爆発音と共にブレードがすかさずその場から駆け出す。
(そんな、たった一振りで……!?)
「倒ス……俺ノ邪魔ヲスルナァッ!!」
「くぅ……!!」
ブレードが振り下ろして来たガルドバイザーを、ディエチはイノーメスカノンの砲身で防御する。しかしその力量差は凄まじく、ブレードがディエチを力ずくで後退させていく。その戦いを見ていたクアットロはと言うと、退屈そうな表情で眺めていた。
「ふぅん、思ったより抵抗するのね……なら、ちょっと雄一さんをお手伝いしましょうか♪」
クアットロは自身が羽織っているマントの下からある物を取り出す。それはスカリエッティが所持していた物と全く同じ……オルタナティブ仕様の黒いカードデッキだった。クアットロはそれを壁に設置されている鏡に向け、彼女の腰にベルトが装着される。
「フフフ……変・身♡」
クアットロはカードデッキに軽くキスしてから、自身の腰に装着されたベルトに装填。すると彼女の全身にも鏡像が重なっていき、彼女の姿をスカリエッティの物と同じオルタナティブの姿へと変身させた。ブレードのガルドバイザーを何とか押し退けたディエチも、クアットロが変身したのを見て驚愕する。
「!? クアットロ、その姿は……!!」
「あぁこれ? ドクターが量産に成功した、オルタナティブの2つ目のカードデッキよ♪ 前の戦いでドクターが戦闘データを集めてくれたおかげで、開発はかなりスムーズに進んだみたい♪」
「ッ……けど、あのモンスターはまだ1体しか見つかってないはず!! どうやってモンスターと契約を……!!」
「心配ご無用♪ サイコローグの代わりに、別のモンスターと契約したから♪」
クアットロ……否、“オルタナティブ”は余裕な態度を見せつつ、カードデッキから引き抜いた1枚のカードを右腕のスラッシュバイザーに読み込ませる。
「今ここで見せてあ・げ・る♪」
【ADVENT】
『『グラァァァァァァァウッ!!』』
「ッ!?」
オルタナティブの背後にある鏡から、2体のモンスターが同時に飛び出して来た。その突進を回避したディエチは、その襲って来たモンスター達に見覚えがあった。
「コイツ等、あの狐のライダーの……!!」
『『グガルルルル……!!』』
飛び出して来たモンスター……マグニレェーヴとマグニルナールは、ディエチを獲物と見なしているのか獰猛な唸り声を上げている。何故この2体が現れたのか。それはオルタナティブがご丁寧に説明してくれた。
「あら、覚えてたのね。そう、この子達はあの狐のライダー君がかつて契約していたモンスター達よ♪ 前に一度だけ浅倉に襲い掛かっていたみたいだけど、せっかくだからこの子達を利用する事にしたわ。あのガキには感謝しなくちゃねぇ~♪」
「? ガキって……まさか、あの狐のライダーも……!」
「お察しの通り、とっくに死んでるわ。死因までは知らないけど、今こうしてこの子達が私に付き従っているのが何よりの証拠よ♪」
「ッ……そんな……!!」
自分の知らないところで、また別のライダーが犠牲になっていた事を初めて知る事になったディエチ。彼女が拳を強く握り締める中、オルタナティブはマグニレェーヴ達に指で合図を送る。
「ほらほら、マグニちゃん達~♪ そのお馬鹿な裏切り者を、美味しく食べちゃいなさ~い♪」
『『グガァァァァァァァッ!!』』
「!? くぅ……!!」
マグニレェーヴとマグニルナールが同時に刀剣で斬りかかり、ディエチは頭を下げてギリギリ攻撃をかわす。しかし振り返ったマグニレェーヴが右手から光弾を放ち、それがディエチの背中に命中すると同時にマグニルナールが磁力を操り、彼女の体を自身の傍へと引き寄せてしまう。
「しまっ―――」
『グガァ!!』
「うあぁっ!?」
そこへマグニルナールの回し蹴りが決まり、ディエチを大きく吹き飛ばす。彼女の叩きつけられた壁が大きく歪んだ直後、今度はガルドバイザーを構えたブレードが接近し、その刃先をディエチの左腕に突き立てた。
「デアァッ!!!」
「!? ぐ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
ガルドバイザーの刃がディエチの左腕に刺さり、そのまま壁に縫い付けるように刺し貫く。その刀身がズブズブと奥まで刺し込まれていくたびにディエチが苦痛の悲鳴を上げ、その様子をオルタナティブは楽しそうに嘲笑う。
「アッハハハハハハハハハハハハ!! 無様よねぇ~ディエチちゃ~ん? 裏切るような真似さえしなきゃ、そんな痛い目に遭わなくて済んだのにねぇ♪」
「ぐ、うぅぅ……クアットロォ……ッ!!」
「あん、そんな怖い目で睨みつけちゃイヤンイヤン♡ 雄一さ~ん、トドメ刺しちゃって下さ~い♪」
「了解ィ……!!」
ブレードはガルドバイザーを引き抜いてから、ディエチの頭を掴みその眼前にガルドバイザーを向ける。その刃先から赤い血が垂れていく中、刺し貫かれたディエチの左腕も傷口からケーブルらしき物が見え隠れしており、それがバチバチと音を鳴らしている。
(ッ……このままじゃ、殺される……だったら……!!)
右手にはまだイノーメスカノンが握られている。ディエチはその砲身をブレードの足元に向け、少しだけエネルギーを充填してから迷わずその引き鉄を引いた。
「!? グゥッ!!」
『『グギャウ!?』』
「!? 何ですって……!!」
足元に放たれた砲撃で爆発が起こり、周囲を黒い煙が覆っていく。至近距離での爆発でブレードが怯まされ、マグニレェーヴ達も思わず後退し、オルタナティブも驚いて周囲を見渡してみると、その直後にすぐ2回目の爆発音が鳴り響き、オルタナティブはすぐにその方向へと振り向いた。
「! 別のフロアに逃げたのね……」
黒い煙が晴れていく中、オルタナティブが見据える先には、ディエチが放った砲撃で破壊されたと思われる大きなが穴が壁に出来上がっていた。それを見たオルタナティブは興ざめした様子で首を振った。
「全く、無駄に時間を消費してしまったじゃない……まぁ良いわ。後はゆりかご内に配置させた玩具達が、勝手にあの裏切り者を始末してくれるでしょ」
彼女がそう言うと、マグニレェーヴとマグニルナールはすぐさま鏡を介してミラーワールドに帰還し、ブレードもガルドバイザーを下ろして構えを解く。そしてオルタナティブに変身したままのクアットロは、いつも通りの妖艶な口調でブレードに呼びかける。
「雄一さ~ん♪ そろそろあの小蝿共が侵入して来る頃だろうから、あなたも配置に付いて下さ~い♪」
「……了、解」
先程まで獰猛な口調だったにも関わらず、クアットロの命令を受けた途端に大人しくなるブレード。彼がフラフラとゾンビのように揺れながら玉座の間を去って行く間も、玉座では今もなおヴィヴィオが苦しそうに呻き続ける事しかできずにいた。
「痛いよ……怖いよ……助けて……パパァ、ママァ……!!」
「ッ……はぁ……はぁ……!!」
一方、壁を破壊して何とか別のフロアへ逃走する事に成功したディエチ。ブレードやマグニレェーヴ達に与えられたダメージでボロボロになった彼女は、近くの壁に背をつけてからイノーメスカノンを床に落とし、刺し貫かれた左腕の傷口を右手で押さえつける。
(駄目だ……私1人じゃ……あの女を止められない……!!)
ヴィヴィオも、雄一も、自分が助け出そうと決意したはずなのに。仮面ライダーの力を前に圧倒され、今ではこうして逃げ出す事しかできずにいる。ディエチはそんな自分の無力さを情けなく感じていたが……それと同時に、このゆりかごに接近して来ているという者達の存在を思い出した。
「……そうだ……あの人達なら……!!」
このゆりかごに突入しようとしているライア・なのは・ヴィータの3人。彼等なら、クアットロの陰謀を阻止できるかもしれない。クアットロに自由を奪われている、ヴィヴィオと雄一の2人を助け出せるかもしれない。そう考えついたディエチは、すぐにその場から移動しようとしたが……そんな彼女の前に、数体のガジェット達がブゥンと音を立てて姿を現した。
「ッ……コイツ等……!!」
ディエチがイノーメスカノンを構えるのに対し、ガジェット達は一斉にその形状を変形させていく。1機は今まで大量に量産されてきたレイドラグーンガジェットだが、残りのガジェットはそれぞれ違うモンスターの姿に変形してみせた。
『ブブ、ブッブッブッブッブ……!!』
『グルァァァァァァァ……!!』
『キシャシャア……!!』
『フフ、フフフフフフ……!!』
『グゲゲゲゲ……!!』
レイドラグーンガジェット。ギガゼールガジェット。ソロスパイダーガジェット。デッドリマーガジェット。ゲルニュートガジェット。5体のモンスター型ガジェットがディエチの行く手を阻むべく立ち塞がり、ディエチは左腕の痛みに耐えながらもイノーメスカノンを構える。
「邪魔だ……どけ!!」
イノーメスカノンから発射された砲撃を、ガジェット達は左右に飛んで一斉に回避。そのままガジェット達は裏切り者を始末するべく、ディエチ目掛けて襲い掛かった。
ドゴォォォォォォォォォンッ!!!
「よっし、何とか突入できた!!」
「ッ……ここは……!!」
一方、ライア・なのは・ヴィータの3人はガジェットの包囲網を潜り抜け、ゆりかごの壁を破壊し何とか内部のフロアに突入する事に成功していた。3人が突入したそのフロアは全体的に真っ暗で、壁や天井にはいくつもの大きな鏡が設置されていた。
「うげ、ここもAMFで守られてやがるな……!」
「それに、鏡がこんなにいっぱい……どうして……?」
「……スカリエッティの言葉が正しいとすれば、恐らく雄一が乗っているからだろう。ライダーは鏡がなければ戦闘はおろか、変身すらできないからな……エビルダイバー、一旦戻れ!」
『キュルルルル……!!』
時間ギリギリまで現実世界にいた為、エビルダイバーもボディが僅かに粒子化を始めている。それに気付いたライアの指示でエビルダイバーは壁の鏡からミラーワールドに帰還し、そんなエビルダイバーと入れ替わるように大量のガジェットが3人の左右から迫り来ようとしていた。
「ここにもたくさん……!!」
「面倒な……どうする?」
「こんなデカい戦艦でも、どっかに動力部となる部屋があるはずだ。アタシはそれを叩きに行く……お前等は先に行ってヴィヴィオと、それから雄一とやらを助け出して来い!」
「待て、1人で向かうつもりか……!? AMFで戦いにくいはずじゃ……」
「心配すんな。アタシやシグナムはなぁ、いちいち対策なんかしなくたってストレートにぶっ叩くだけで充分戦えるんだ。おめーはアタシの心配なんかしてないで、さっさと自分のやるべき事やって来い」
「ヴィータ……」
『『『『『ヴヴヴヴヴヴ……!!』』』』』
そんな話をしている間にも、ガジェット達は一斉にモンスターの姿に変形し戦闘態勢に入って行く。それを見たライア達もすぐに迎撃態勢に入る。
「良いから行けってんだ!! これで何も救えなかったら、アタシがテメーをぶん殴ってやるからな!!」
「……すまない、任せた!!」
「行きましょう、手塚さん!! ヴィータちゃん、そっちはお願い!!」
「おう、任せとけぇ!! うおりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ヴィータは果敢にガジェット達に挑んで行き、勢い良く振り回したグラーフアイゼンでガジェットを片っ端から破壊し始めた。その間にライアとなのはも通行の邪魔になるガジェットだけを破壊し、ヴィータと二手に分かれる形で通路の先へと進んでいく。
「高町、ヴィヴィオ達の居場所を何とか掴めないか……!!」
「今やってます!! この先に反応が……え?」
「? どうした」
レイジングハートからサーチャーを飛ばし、通路の先に敵の反応がないか確認するなのは。しかしサーチャーに反応した人物に対し、なのはは何かに驚く反応を見せた。
「この奥に進んだ先……戦闘機人が1人、何かに囲まれてる……!?」
「何……?」
『キシャシャシャシャアッ!!』
「ッ……はぁっ!!」
2人が進もうとしている先の通路。ソロスパイダーガジェットが口から飛ばす無数の針をかわし、ディエチはボロボロながらも砲撃を繰り返しガジェット達と交戦していた。しかし既に満身創痍なのか、彼女が繰り出す砲撃は上手く照準が定まらず、ガジェット達にはほとんどかわされてしまっている。
「く……左腕の傷が……!!」
『グゲゲェッ!!』
「!? しまった……ッ!!」
そして遂には、ゲルニュートガジェットが飛ばした巨大手裏剣でイノーメスカノンを弾き落とされてしまう。そこへ飛びかかって来たソロスパイダーガジェットの振り下ろす鉤爪を前転でかわすディエチだったが、既に回り込んでいたギガゼールガジェットがディエチの腹部にパンチを叩き込み、怯んだ彼女の顔面目掛けて爪を振るった。
『グルァッ!!』
「ぐっ!?」
ギガゼールガジェットの爪で斬りつけられ、ディエチの右頬から赤い血が流れ落ちる。それでもディエチは決して諦めず、ギガゼールガジェットを蹴りつけてから距離を取り、その場から逃げ出そうとした。しかし……
『フフフッ!!』
ダァン!!
「あっ!?」
デッドリマーガジェットの拳銃から放たれた光線が、ディエチの右足を容赦なく貫いた。その痛みでディエチが床に倒れ、その背中をレイドラグーンガジェットが力強く踏みつける。
『ヴヴ、ヴヴヴヴヴ……!!』
「ぐ……こ、のぉ……ッ!!」
何とか抜け出そうとするが、レイドラグーンガジェットの踏みつける力が強くてとても抜け出せない。そして周囲既に他のガジェット達が取り囲んでおり、完全にディエチの逃げ道をなくしてしまっていた。
(駄目だ……結局、私1人じゃ何も……!)
ゆりかごに突入して来ているであろう六課の面々に、クアットロの企み、それからヴィヴィオと雄一の今の状況を知らせる事。それすらも達成できないまま、ここでガジェット達に殺されてしまうのか。
「ッ……嫌だ……まだ……まだ死にたくない……!!」
助けたい人達がいるのに。自分の力では、その人達を助けられない。その悔しさからディエチが涙を流す中、彼女の背中を踏みつけているレイドラグーンガジェットは槍の穂先をディエチの頭に向け、高く掲げてから一気に振り下ろそうとする。
「誰か……助けて……ッ!!」
その時……
ズドドドドォンッ!!
『ブブゥッ!?』
『グガァ!?』
『キシャアァァァァァァッ!?』
「……え?」
槍がディエチの頭を貫こうとした瞬間、レイドラグーンガジェットを始め、ガジェット達が次々と魔力弾で吹き飛ばされた。その音を聞いたディエチが頭を上げると、その先からはライアとなのはの2人が大急ぎで駆けつけようとしていた。
「手塚さん、彼女の保護を!!」
「任せろ!!」
『フフフ……フフッ!?』
すかさず拳銃で狙い撃とうとするデッドリマーガジェットだったが、その動きを読んでいたなのはが指先から放った魔力弾で拳銃を撃ち落とし、他のガジェット達にも攻撃を仕掛けていく。その間にライアが倒れているディエチの傍まで駆けつけ、彼女を優しく抱き起こした。
「手塚、海之……?」
「どうした、ここで何があった?」
ライアがディエチを保護する中、なのはが砲撃魔法で次々とガジェット達を破壊していき、残るソロスパイダーガジェットも口から伸ばしたワイヤーを呆気なく打ち破られ破壊されてしまった。ガジェットを破壊し終えたなのはも、すぐにディエチの傍まで駆け寄って行く。
「酷い、こんなに傷が……!!」
「ッ……良かった……あなた達が、来るのを待ってた……!!」
「待ってた? それはどういう―――」
「お願い……あの2人を助けて……!!」
ディエチは全身の痛みに耐えながら、ライアの左腕に掴みかかって懇願する。突然の懇願に、ライアとなのはは困惑を隠せない。
「あの女は……クアットロは、この街の人間達を……1人残らず、殺すつもりでいるんだ……!! 聖王の子も……雄一さんも……その為の兵器として、利用されようとしてる……!!」
「ヴィヴィオと雄一を……!?」
「!! まさか、あなたのその傷は……!?」
「雄一さんは今……クアットロに操られてる……もう、私が、何を呼び掛けても……駄目だった……!!」
「ッ……!!」
ディエチの左腕の傷を見て、ライアは仮面の下で表情を歪めた。自身の親友が、こうして味方だったはずの人物にまで容赦なく刃を向けていたのだ。その事実を知り、ライアはクアットロに対する怒りの感情が静かに湧き上がっていく。
「お願い……あの2人を……聖王の子と、雄一さんを助けて……!! 今更、こんな事……頼める立場じゃないのは、わかってる……けど、このままじゃ……2人は、完全な兵器にされてしまう……だから……!!」
敵同士である以上、そう簡単に信用はされないだろう。それでも、彼等に伝えたかった。彼等だけが最後の希望だった。そんなディエチの必死な願いは……2人の心に、確かに届いていた。
「……大丈夫だよ。元々、そのつもりでここへ来たから」
「こんなボロボロになってまで、よく伝えに来てくれた……感謝する」
「あ……」
ライアとなのはが、ディエチの手を優しく握り返す。信じて貰えないと思っていたのに、2人は少しも疑おうとしなかった。自身の話を、2人は迷わずに信じてくれたのだ。
「……ここだと、またガジェットに襲われるかもしれない。彼女も連れて行こう」
「わかりました……ねぇ。ヴィヴィオと雄一さんのいる部屋まで、道を教えてくれる?」
「……うん……ッ!!」
ライアが優しく抱きかかえ、なのはが優しく語りかける。そんな2人の優しさが嬉しかったのか。ディエチは涙を流しながらも、なのはの問いかけに小さく頷いてみせたのだった。
一方、クラナガンの街中でも既に機動六課とスカリエッティ一味の戦いは始まっていた。フォワード分隊がナンバーズやルーテシア、シグナムとリインがゼストやアギトと対峙している中、ファムとフェイトの2人は……
「シスターシャッハ、大丈夫!?」
『私の事は心配いりません、お二人は先に進んで下さい!!』
「わかりました、お気を付けて!!」
既にスカリエッティの
「フェイト・テスタロッサ執務官に、白鳥のライダーさんも一緒か……なるほど、これは非常に運が良い」
その様子を、スカリエッティは楽しそうにモニターで監視していた。その後ろにはトーレとセッテが構えており、いつでも動けるように戦闘態勢を整えている。
「さて、そろそろ彼女達もここに来るだろう……トーレ、セッテ、彼女達を歓迎してあげたまえ」
「「了解」」
スカリエッティの指示で、トーレとセッテがその場から移動しようとした……その時。
ドガァァァァァァァァァンッ!!!
「「「!?」」」
3人がいた部屋の後方で、突然謎の爆発が発生した。スカリエッティが振り向き、トーレとセッテがすかさず彼を守るように前に出る中……破壊された壁の穴から、“あの男”が姿を現した。スカリエッティは笑い、トーレは忌々しそうな表情でその男を強く睨みつける。
「! おやおや、君もここに来たのか……」
「ッ……貴様……!!」
「はっはぁ……やはりここかぁ、祭りの場所は……!!」
思わぬ乱入者……仮面ライダー王蛇。
彼の参戦により、事態は更に混迷を極めていく。
To be continued……
リリカル龍騎StrikerS!
フェイト「ジェイル・スカリエッティ……あなたを逮捕する!!」
ルーテシア「これ以上、お兄ちゃんに辛い思いはさせたくない……だから!!」
ドゥーエ「そろそろお休みの時間よ♪」
二宮「さっさと沈め、老害共」
戦わなければ生き残れない!