前回の幕引きから察している人もいると思いますが、今回のお話で、ある人物の運命が決まる事となります。
それでは、とくとご覧あれ。
お知らせ:あの挿入歌が流れるまで、あと1話。
追記:とある募集を開始しました。もしよろしければ活動報告の方をどうぞ。
『―――ッ……ここは』
『目覚めたようだな、ヴァイス』
ヴァイスが現場に出る数時間前。聖王病院のとある病室にて、今まで意識を失っていた彼はようやく目を覚ましていた。その隣のベッドでは、彼と同じく頭に包帯を巻いた状態のザフィーラが寝そべっている。それに気付いたヴァイスは、自分がここで寝かされている理由を思い出し、体の痛みに耐えながらも何とか体を起こす。
『旦那……俺、何日寝てました?』
『約1週間だ……ほとんどのメンバーは今、動き出したスカリエッティの迎撃に動いている。手塚と白鳥の2人も一緒にな』
『ッ……ヘリもなしにですかい!? くそ、俺は1週間も何を……!!』
『ヘリなら、今はアルト・クラエッタが代わりに操縦している。そして、お前のデバイスは横の机の上に置いてある』
六課の皆がスカリエッティ一味を迎え撃つ為に動いている事を知り、今までこうしてベッドで寝ていた事に対する情けなさで頭を抱えるヴァイス。ザフィーラはそんな彼に待機状態のストームレイダーがベッドの横の机に置いてある事を教えてから、自身はベッドから降りて病室の扉へと向かっていく。
『旦那、そんな傷でどこに……!?』
『俺も現場に向かう。迎撃に出たメンバーの中には、今も万全じゃない状態で戦っている者だっている……その者が無理してでも戦っているというのに、ここで呑気に寝ている訳にもいかない』
『ッ……』
『それからヴァイス……お前に客が来ているぞ』
そう言って、ザフィーラは扉を開けて病室を後にしていく。彼の言う客とは一体誰の事なのか。そんな疑問を抱くヴァイスだったが、その正体はザフィーラと入れ代わるように病室に入って来た人物を見てすぐに理解する事となった。
『お兄ちゃん……』
『!? ラグナ、どうしてここに……!!』
その人物―――ラグナの姿を見たヴァイスは驚愕した。ザフィーラの説明通りなら、今は街全体に避難勧告が発令されているはずで、この場に一般人であるラグナがいるのはおかしい。そんなヴァイスの疑問には、ラグナが自ら説明をする。
『はやてさんから、お兄ちゃんがここに入院してるって聞いてね。無理言って、避難は後回しにして貰ったの』
『お前……』
『お兄ちゃん……行くつもりなんだよね?』
ラグナは真剣な目でヴァイスを見据え、ヴァイスもそれに応えるように彼女と目線を合わせる。かつてのヴァイスならば過去の一件から彼女と目線を合わせようとしなかっただろう……しかし、今のヴァイスは違う。
『あぁ。俺はもう迷わない……迷ってる間に人が死ぬってんなら、それは二度と繰り返させる訳にはいかねぇ。それにだ。ここで呑気に寝てばかりでいるようじゃ……先に逝った“アイツ”に申し訳ねぇもんな』
『……そっか』
既に、ヴァイスの決意は固まっていた。その目には何の迷いもない。その事がわかり、最初は不安そうだったラグナの表情にも笑顔が戻る。
『良かった……昔のお兄ちゃんが、やっと戻って来てくれたんだね』
『悪ぃな、待たせちまって……俺もちょっくら行って来らぁ』
『お兄ちゃん』
制服の上着、そして待機状態のストームレイダーを手に取り立ち上がったヴァイスが、病室を出ようとした時。横を通りかかった彼の手をラグナが掴み取る。
『……絶対、帰って来てね。絶対だよ』
『安心しろ。六課の皆もいるんだ、別に俺は1人で戦う訳じゃねぇ』
ヴァイスの手が、ラグナの頭を乱暴に撫で回す。
『生きて帰ってやるよ……だから待ってろ』
『……うん!』
「―――なんて言っちまったのは良いが、ちとマズいよなぁこの状況は……!!」
そんなヴァイスを乗せたヘリは今、クラナガンのあちこちに出没したモンスターガジェットを殲滅する為に空高く飛び上がっていた。ストームレイダーのスコープに入ったハイドラグーンガジェットを片っ端から撃ち落としていく彼だが、あまりにその数が多過ぎるが為に、ヴァイスの狙撃を以てしても地上のスバルやティアナ達をサポートし切れない状況だった。
「悪いなぁアルト、俺の無理に付き合って貰ってよぉ!!」
「問題ありません!! ミッドを守りたい気持ちは、私だって同じですから!! その為なら、最後までとことん付き合います!!」
「はん、そいつは嬉しいこったなぁ!!」
地上ではノーヴェ達を保護したスバルとティアナがモンスターガジェット達を破壊しながら移動しており、別の方角ではキャロとルーテシアがそれぞれ召喚したヴォルテールと白天王が上空のハイドラグーンガジェット達を砲撃で沈めて行っている。
(そうだ……戦ってんのは俺だけじゃねぇ……隊長達も、ガキ共も、手塚の旦那に夏希の姐さんも、必死になって戦ってんだ……だから!!)
「ちったぁ俺も……カッコ良いところ見せなきゃなぁっ!!!」
そう叫びながら、ストームレイダーによる狙撃でまた1機のハイドラグーンガジェットを撃墜する。そこから流れるようにハイドラグーンガジェットを次々と撃墜していくヴァイスの正確な射撃は、ヘリを操縦しながら見ていたアルトの心をも大きく震わせる物だった。
一方で、地上本部のとある一室……
「オーリスは、お前の副官か……?」
「頭が切れる分、我儘でな……子供の頃から変わらんよ」
部屋の入り口を破壊して現れた侵入者―――ゼストを前に、未だ落ち着いた表情で席に座っているレジアス。2人は静かな声で会話を行っているが、部屋の空気は非常に重苦しい物となっており、オーリスはゼストの登場に驚いてからというもの何の言葉も発せずにいた。
「俺から聞きたい事は1つだけだ」
ゼストは懐から2枚の写真を取り出し、それをレジアスの机へと放り出す。1枚目の写真には若き頃のゼストと彼の部下である数人の局員達の姿が写っており、そこにはスバルとギンガの母親である青髪の女性局員―――クイント・ナカジマと、ルーテシアの母親であるメガーヌ・アルピーノの姿もあった。
「8年前、俺と俺の部下達を殺させたのは……お前の指示で間違いないか?」
「……」
レジアスは1枚目の写真をズラし、その下に重なっていた2枚目の写真を見据える。2枚目の写真には、若き頃のゼストとレジアスの姿が写されていた。
「共に語り合った、俺とお前の正義は……今はどうなっている?」
かつて、ゼストとレジアスは地上本部において親友の仲だった。ゼストは魔法面において、レジアスは政治面において才能をフルに発揮し、2人は2人の信じる正義の為に、自分にできるやり方で戦い続けていた。このミッドチルダの平穏を守り続けていく為に。
しかし、現実はとても残酷だった。
優秀な人材は全て本局の次元航行部隊に持っていかれてしまう為に、地上本部の保有する戦力は足りず、そのせいで犯罪者の確保が上手くいかず、ミッドチルダの治安は悪化していく一方だった。その事に憂いを感じていたレジアスは、いつからか最高評議会を介してスカリエッティと接触し、人造魔導師や戦闘機人の技術を戦力として手に入れるべく、彼と結託するようになったのだ。
そしてある時、戦闘機人に関する事件の捜査をやめるようレジアスから圧力をかけられたゼストは、彼の不審な言動を怪しみ、部隊を率いて捜査を急いだ。彼が率いる部隊にはクイントとメガーヌも参加しており、部隊は敵が潜んでいると思われる施設に突入し……戦闘機人との戦いに敗れ、部隊は壊滅した。
ゼストとクイントは死亡し、メガーヌは意識不明の重体に陥った。その後、ゼストの遺体とメガーヌは回収され、ゼストはスカリエッティによって人造魔導師の実験体として蘇生する事となり……そして現在に至る。
全ては、レジアスとゼスト達の間で情報伝達の擦れ違いが生じたが故に、起こってしまった悲劇だった。
「……ゼスト。お前は今も、俺の事を恨んでいるのか?」
レジアスの言葉に、ゼストは首を振ってから自身の思いを告げる。
「俺はお前に問いたかった。俺の事は良い。お前の正義の為なら、殉ずる覚悟があった……だが俺の部下達は、一体何の為に死んでいった」
「ッ……」
「どうして、こんな事になってしまった。俺達が守りたかった世界は……俺達が欲しかった力は……俺とお前が夢見た正義は……いつの間に、こんな姿になってしまったんだ……?」
クイントを始め、死んでいった部隊の仲間達。今も目覚めずにいるメガーヌの姿。今もスカリエッティ一味に利用されている、ルーテシアや雄一の姿。そんな人達の姿を脳裏に浮かべながら、ゼストは静かな口調でレジアスに問い詰める。
「……ゼスト、俺は―――」
レジアスが口を開いた……その直後だった。
ズブシャアッ!!
「―――が、ぁっ!?」
「「ッ!?」」
レジアスの胸部から、3本の鋭利な刃物が突き出て来た。レジアスの口から吐き出された血が写真を赤く染め、ゼストの背後からピンク髪の女性局員がその姿を現した。
「レジアス……ぐぅ!!」
「お父さ……きゃあっ!?」
レジアスに駆け寄ろうとするゼストとオーリスだったが、ゼストはバインドで動きを封じられ、オーリスはピンク髪の女性局員が左手をかざした瞬間に衝撃波で吹き飛ばされ、棚に激突して床に倒れ伏す。ピンク髪の女性局員はフフフと妖艶な笑みを浮かべ、その正体を露わにする。
「お役目ご苦労様です、中将さん♪」
「ッ……貴様は、スカリエッティの……!!」
ピンク髪の女性局員―――ドゥーエはボディスーツ姿に変化した後、レジアスの胸部を貫いていた鋭利な鉤爪―――ピアッシングネイルを引き抜き、その爪に付いている血をペロリと舐め取る。そしてニヤリと笑いながら、死にかけているレジアスを冷たい目で見下ろす。
「ですが、あなたはもうドクターの今後にとって、お邪魔ですもの。ここで大人しく死んで貰いましょうか」
「が、ごふ……ゼスト……俺は……お、れ……はァ……ッ……」
「レジ、アス……ッ!!」
瀕死の致命傷を負いながらも、ゼストに向けて伸ばされるレジアスの右手。しかしその手はゼストに届く事なく机の上に落ち、レジアスは机の上に倒れ込んだまま、いとも呆気ない最期を迎える事となってしまった。レジアスが死ぬ前に伝えようとしていた言葉は……もう二度と、ゼストに伝わる事はない。
「さぁ……これにて、あなたの役目と復讐も終わりです♪」
作戦が上手くいった事で上機嫌なドゥーエは、挑発染みた口調でゼストに言い放つ。しかしゼストは俯いた状態のまま、ドゥーエの言葉など全く耳には入っていなかった。
「……あぁ、いつでもそうだ」
「?」
ドゥーエが首を傾げる中、ゼストは震えていた。
「俺はいつも……遅過ぎるっ!!!」
バキィン!!
「!? な―――」
ゼストを拘束していたバインドが、力ずくで破壊される。バインドを破られる事までは想定外だったドゥーエが驚愕の表情を浮かべるも、そんな彼女が次に目に入れたのは……自身に向かって振り下ろされようとしている、ゼストの槍型デバイスの鋭利な刃だった。
ドガァァァァァァァァァァンッ!!!
「!! 何事だ……!?」
「旦那!?」
ゼストの後を追い、地上本部内部を移動していたシグナム。彼女は途中でゼストに足止めを任されていたアギトと対峙する事となったが、ゼストの目的を果たさせたいアギトの必死な訴えを聞いたシグナムはその言葉を受け止め、アギトも連れてゼスト達のいる部屋まで向かおうとしていた。
「!? これは……」
そんなシグナム達が辿り着いた部屋では、凄惨な光景が広がっていた。机に倒れたまま絶命しているレジアス。床に倒れたまま意識を失っているオーリス。ガラスの壁に叩きつけられた傷で倒れているドゥーエ。そして槍型デバイスの刃を赤い血に染め、1人棒立ちしているゼストの姿があった。
「ッ……旦那……」
「これは、あなたが……?」
「……そうだ。俺が殺した。俺は弱く……遅過ぎた」
ゼストは悲観的な口調でそう告げながら、クルリと背を向けて部屋を後にしようとする。しかし、そこはシグナムがそうはさせない。
「どちらに向かうつもりで?」
「……ここに用はなくなったが、俺にはまだやるべき事がある。雄一とルーテシアを、スカリエッティの下から救わなければならない」
「雄一……それは、斎藤雄一の事ですね?」
「! 知っているのか……」
「現在、ほとんどの戦闘機人が逮捕され、ルーテシア・アルピーノは私の部下達が保護しました。スカリエッティもいずれは、私の同僚と仲間の仮面ライダーが捕らえる事でしょう。そして斎藤雄一も……手塚海之という男が必ず助け出します」
「……雄一が話していた、彼の友か……そうか。ならばもう、俺がなすべき事は1つだけだな」
「!? 旦那、何を……」
「お前はジッとしていろ」
アギトの制止にも耳を貸さず、ゼストは槍型デバイスを構え直す。それを見たシグナムもレヴァンテインを鞘から引き抜き構えを取る。
「夢を描いて未来を見つめた筈が、いつの間にか道を違えてしまったようだ……本当に守りたい物を守る。ただそれだけの事が、どれほど難しい事か……」
「……参ります」
ゼストとシグナムが睨み合う。その静かな空気の中で、それを見ていたアギトは何も言えないまま2人の勝負の行く末を見届ける事しかできない。そして2人は……同時にその場から駆け出した。
「「―――はぁっ!!!」」
そこから激しい動きで切り結ぶゼストとシグナム。2人はそのまま部屋の壁を破壊して外に飛び出していき、アギトもその戦いを見届ける為に同じく外へと飛び出していく。そして3人が外へ出て行った後の部屋では……数十秒ほど経過した後に、ゆっくり動き出す者がいた。
「ゲホッ……油断、したわ……ッ」
それは彼女、ドゥーエだった。ゼストが振り下ろして来た一撃を、ピアッシングネイルでほんの僅かにその軌道をズラした事で辛うじて即死は免れていたのだ。
「まだ……死ぬ、訳には……!」
しかし重傷である事には変わりなく、ドゥーエは血の流れる腹部を左手で押さえながらも壁伝いにその場から移動しようとする……が、そんな彼女を妨害する者も、その部屋には存在していた。
「―――ッ!? ぐ、ぅぅ……!?」
突如、ドゥーエの背後から何者かが彼女の髪の毛を掴み、後ろに引っ張る事で彼女を床に押し倒した。そして彼女の上に跨るように乗りかかった人物―――オーリスは怒りの形相でドゥーエを睨みつけていた。
「よくも……よくもお父さんを!! 許さない……絶対に許さないっ!!!」
「が、ぁ……あ……ッ!?」
今まで落ち着いた雰囲気を醸し出していたオーリスは今、父を殺された憎しみで感情的な表情だった。彼女の両手はドゥーエの首を力強く絞めつけており、重傷を負っているドゥーエは両手に力が入らず、彼女を押し退ける事ができない。
「殺してやる……殺してやるぅ!!!」
「か、は……ァッ……!!」
ドゥーエの意識が飛びそうになる。彼女の目に映っているのは、怒りのままに自身を殺そうとしているオーリスの泣いている顔。その顔すらも、少しずつだが見えなくなっていこうとしていた。
(死ぬ、の……私は、こんな……所……で……)
果たすべき任務を、まだ最後まで完遂していないのに。
自分がまだ出会っていない妹達と、もうじき出会えると思っていたのに。
こんなにも呆気ない形で、自分は死ぬ事になるというのか。
(わた、し……は……)
まだ死にたくない。
まだ生きていたい。
そう思った彼女の脳裏に浮かんだのは……恐らく助けに来る事はないであろう、ある男の後ろ姿。
(たす、け……て……)
(鋭、介……!)
「全く、世話の焼ける女だ」
ドスゥッ!!!
「―――え」
部屋に響き渡る鈍い音。それと共に、ドゥーエの首を絞めていたオーリスの手から力が抜けていき、呼吸ができるようになったドゥーエは視界に映った物……オーリスの胸元を背後から貫いているアビスセイバーの刀身を見て言葉を失った。
「……が、はっ!?」
「ふん」
アビスセイバーが引き抜かれ、オーリスの貫かれた胸元から赤い血が流れ出る。彼女を刺し貫いた張本人―――アビスはそんなオーリスの首元を掴み、ガラスの壁に向けて乱暴に放り投げた。
「餌だ、残すなよ」
『『シャアァッ!!』』
ガラスから上半身だけ飛び出して来たアビスラッシャーとアビスハンマーが、放り投げられて来たオーリスを2体がかりでキャッチし、そのままミラーワールドへと引き摺り込む。それを見届けたアビスはアビスセイバーに付着した血を振り払った後、机に倒れ伏しているレジアスの遺体を見据えた。
「レジアス・ゲイズは死んだようだな。ここまでは予定通りか」
「鋭、介……?」
「……随分と酷いツラしてるじゃないか、ドゥーエ。戦闘機人の癖に情けない」
「……どう、して……ここに……」
「地上本部の有力な幹部を何人か消し終えたんでな。それでこっちの様子も見に来てみたのさ……いくら俺でも、こんな光景が出来上がっているとは思わなかったが」
アビスは呆れたような口調で告げながら、ドゥーエの首元にアビスセイバーの刃先を向ける。
「俺が今からする事は、わかっているな」
「……使え、ない……奴は……殺す、ん……でしょ……?」
「あぁそうだ。使えない奴は沈めるまでさ」
アビスセイバーが高く振り上げられる。そして勢い良く振り下ろされ―――
「……?」
―――その刀身は、ドゥーエの首元ギリギリでピタリと止まっていた。
「……だが、お前は使おうと思えばまだ使えるはずだ。ここで切り捨てるには惜しい」
「鋭、介……」
「戦闘機人なんだろう? だったら、まだここで死んでくれるなよ」
アビスはアビスバイザーの取り外された左手で、左脇に抱きかかえる形でドゥーエの体を持ち上げる。そして周囲に人の目がない事を確認してから、ガラスの壁を介してミラーワールドに突入していく。
「少しばかり急ぐからな。多少の揺れは勘弁してくれよ?」
≪SWING VENT≫
「ははっはぁ!!」
「うわ!?」
「きゃあ!?」
「ぐぅ……ッ!!」
スカリエッティのアジト最深部。王蛇の振り回したエビルウィップがファムとフェイトを薙ぎ払い、オルタナティブ・ネオすらもその一撃で壁に叩きつけられていた。しかし苦悶の声を上げながらも、オルタナティブ・ネオは今の戦況に対して笑いを隠せなかった。
「良い……素晴らしいじゃないか!! これがライダー同士の戦いによってもたらされる興奮か!! もっと楽しみたい……もっと私の気分を高揚させてくれ!!!」
「ゴチャゴチャうるさい奴だ……喋ってないで戦えよ、スカリエッティ……!!」
「あぁ、言われずともさぁっ!!」
【WHEEL VENT】
『グゴォォォォォォォォォォォォッ!!』
1枚のカードがスラッシュバイザーに読み込まれ、培養カプセルを介してサイコローグが出現。オルタナティブ・ネオの後方から走って来たサイコローグは両手を前方に勢い良く突き出し、それを合図にサイコローグのボディがまるでロボットのように次々と変形していく。
「!? スカリエッティのモンスターが……!!」
『グゴォォォォォォォォ……!!』
サイコローグの変形した両腕から、1輪のタイヤが現れる。続いて変形した両足にも1輪のタイヤが現れ、その背中には座る為のシートも形成されていく。そしてサイコローグはバイクの姿をした形態―――“サイコローダー”の姿へと変形したのだ。
「さぁ、もっと楽しもうじゃないか……!!」
【FINAL VENT】
続けてファイナルベントのカードを読み込ませ、オルタナティブ・ネオはその場から後方に宙返りする事で、後ろから走って来ているサイコローダーに乗り込んでみせる。それを見た王蛇も面白そうに笑いながらエビルウィップを投げ捨てる。
「面白い……!!」
≪FINAL VENT≫
『キュルルルル……!!』
「!? アレは、手塚さんの……!?」
王蛇のベノバイザーにもファイナルベントのカードが装填され、培養カプセルからエビルダイバーが猛スピードで飛び出して来た。それを見たフェイトが驚く中、王蛇はエビルダイバーの背中に乗り込み、オルタナティブ・ネオが乗り込んだサイコローダー目掛けて正面から突っ込んでいく。
「フフフフフ……ハァッ!!」
そしてオルタナティブ・ネオもまた、サイコローダーに乗り込んだまま横方向にスピン。そのまま猛スピードでスピンしながら突っ込んで行き……
「「ハァッ!!!」」
ドガァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!
「「うわぁ!?」」
王蛇のハイドベノン、そしてオルタナティブ・ネオの“デッドエンド”が真正面から激突。その衝撃で起きた爆発はファムとフェイトを吹き飛ばし、そして激突した2人も互いに大きく弾き飛ばされる事となり、王蛇とオルタナティブ・ネオがそれぞれ床を転がり込む。
「くっ!?」
「ぐぅ……は、ははははは……!! そうだ、これだよぉ……やっぱり、戦いはライダー同士でなくちゃなぁ……ッ!?」
フラフラながらも立ち上がった王蛇は、仮面の下で狂気の笑みを浮かべながらベノバイザーを構える。そんな彼の背中に、ファムがすかさずブランバイザーで斬りつける。
「お前……!!」
「1対1なんて誰も言ってないだろう……?」
「ふん、言ってくれる……ハァッ!!」
「くっ……がは!?」
王蛇の蹴りがファムの右手に当たり、それによりファムの右手から離れたブランバイザーが離れた位置まで弾き飛ばされてしまう。続けてファムの腹部にパンチを叩き込んだ王蛇は、彼女の首を掴んだまま壁まで押しつけようとしたが、そんな王蛇の右手をフェイトがバインドで拘束する。
「!? お前もか、イライラする……!!」
「……何故ですか?」
「あ?」
「……何故あなたは、そうやって戦いばかりを求めるんですか!? 何故戦いたいが為だけに、大勢の人間を傷つける事ができるんですか!!」
フェイトの目は、まっすぐ王蛇を睨みつけている。夏希の姉を殺し、手塚の友人を傷つけた彼の事が、フェイトはとても許せなかった。しかし、そんな彼女の怒りなど、王蛇は全く気にも留めていなかった。
「何を言い出すのかと思えば……人間ってのはどいつもこいつも、何か理由を付けては勝手に満足したがる」
「何……!?」
「俺はなぁ、戦いたいんだよ。戦ってる間だけ、頭のイライラがスッキリする……理由なんかそれだけで充分だ」
「ッ……そんな事の為に、あなたは夏希さんのお姉さんを殺したんですか!! それに、斎藤雄一さんを傷つけるような真似まで……あなたは最低です!!!」
「最低、か……そのうるさい口をいい加減閉じろ……!!」
≪ADVENT≫
『グオォォォォォォォォォッ!!』
「!? きゃあっ!!」
右手のバインドを無理やり破った王蛇は、すかさずベノバイザーに次のカードを装填。培養カプセルから飛び出して来たメタルゲラスがフェイトを後ろから突き飛ばし、その様子を見ていた王蛇は両手を大きく広げながら言い放つ。
「俺はなぁ……戦えればそれで良いんだよ!! この感じだけで、戦う価値なんて充分あるんだ……!! 前に俺が殺した奴は、
「「……ッ!?」」
今、この男は何て言った?
前に俺が殺した奴?
死にかけのガキ?
その言葉が頭の中で繰り返され、ファムとフェイトは脳裏にある少年の姿が浮かび上がり、ファムが思わず王蛇に問いかけた。
「ッ……浅倉!! まさか、お前が……お前が健吾を……!?」
「あ?」
「……浅倉ァァァァァァァァァァァッ!!!」
間違いない。健吾に……エクシスにトドメを刺したのはこの男だ。それがわかった途端、ファムは怒りのままに王蛇に向かって殴りかかったが、王蛇はそれを屈んでかわし、逆に彼女の背中を蹴りつけて床に薙ぎ倒す。
「ぐぅ!?」
「全く……訳のわからん問答はたくさんだ」
「夏希さ……ッ!?」
『グオォォォォォォォォォォォッ!!』
ファムの助太刀に入ろうとするフェイトだったが、再び突進して来たメタルゲラスがそれをさせない。その一方で王蛇はベノバイザーを構えてから2枚のカードを引き抜き、床に倒れているファムに見せつける。
「まだ2枚あるぜ……お前はどっちが好みだ?」
「ッ……ふざけるなぁ……!!」
「……フンッ」
コブラとサイ、2枚のファイナルベントのカード。それはかつて元いた世界で、龍騎に対しても与えた事がある選択肢だった。それはファムからも怒りの言葉で一蹴される事となり、その反応に対して王蛇はつまらなさそうに鼻を鳴らしながら、片方のカードをベノバイザーに装填する。
≪FINAL VENT≫
「ハァァァァァァ……ハッ!!」
『シャアァァァァァァァァァァッ!!』
王蛇は左手を前に持っていくポーズを取った後、その場から高く跳躍して宙返りする。その後方からはベノスネーカーが地を這いながら現れる。
「ッ……夏希さん!!」
「くっ……!?」
かつてライダーバトルの中で数々のライダーを、このミッドチルダではエクシスをも葬り去った無慈悲な技。
「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
そんな王蛇の必殺技―――“ベノクラッシュ”が今、ファムに向かって迫り来ようとしていた……!!
To be continued……
リリカル龍騎StrikerS!
浅倉「もっとだ……もっと楽しもうぜぇっ!!」
夏希「アタシの目的は、復讐じゃない……」
雄一「手塚ァ……俺ヲ、止メテ、クレ……ッ!!」
手塚「俺はお前を、友として誇りに思っている……!!」
戦わなければ生き残れない!
≪SURVIVE≫