リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

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はい、第55話です。

今回の戦闘BGMですが、何故か自分は執筆する際、龍騎の曲ではなくオーズや鎧武で流れていたフリー音源の曲を脳内再生しながら書き上げていました。

という訳で今回は特殊ですが、以下の曲を流しながらご覧下さいませ。
フリー音源だし問題はないよね?←












処刑BGM:Covert Coverup(※)

※プトティラコンボがフクロウヤミーを蹂躙するシーン、ゲネシスライダーが戦うシーンなどで流れていた曲








第55話 愛してやる

二宮がクアットロと対峙する同時刻……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

首都クラナガン、どこかの施設。ソファに体を寝かせて安静にしていたドゥーエは今、暗い部屋の中で毛布にくるまったまま、静かに自身の右手を見つめていた。彼女の上半身は服を着ておらず、胸元から傷ついた腹部にかけて包帯が巻かれている。

 

「私は……」

 

その右手で拳を強く握り締め、ドゥーエは自身の目元に右腕を乗せる。その隠れた目元からは涙が流れ落ち、口からは嗚咽の声が零れ出る。

 

「ッ……私は……!!」

 

それは、数日前の事……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ここは』

 

『やっと目を覚ましたか』

 

あの戦いの後、ゼストに負わされた傷を治療されたドゥーエは、事件が解決した翌日に目を覚ました。体を起き上がらせたドゥーエは傷の痛みに表情を歪めながらも、向かいのソファに座っている二宮の存在に気付く。

 

『! 鋭介……』

 

『あれほどの傷だ。常人ならとっくに死んでるだろうが……流石は戦闘機人と言ったところだな』

 

『どうして、私を助けたの……?』

 

『お前が使える人材だからだ』

 

二宮は机の上に置かれているコーヒーカップを手に取り、ブラックコーヒーを口にしてから話を続ける。

 

『お前が持つ能力……ライアーズ・マスクは、スパイが持つ能力としては非常に有用だ。このまま使い捨てにするには勿体ないから回収した。ただそれだけの話だ』

 

『……本当にド直球よね。もっと優しい言葉をかけようとは思わないの?』

 

『逆に聞くが、何故俺がそんな事をしなきゃならん?』

 

『そうだったわね……本当、酷い男』

 

二宮からすれば、彼女がまだ今後も手駒として使えるから助けただけ。そこには人情などない。ドゥーエはその事を理解はしたものの、それでも表情は穏やかな物だった。理由はどうあれ、助けに来ないだろうと思っていた彼が自分の命を救ってくれたのだ。その事を嬉しく思うくらいには、彼女も()なのだ。

 

『むしろ、お前にとって酷い話なら存分に話せるだろうよ』

 

『……どういう事?』

 

『この戦い、スカリエッティ達は敗北した』

 

いきなり過ぎる二宮の発言。ドゥーエは一瞬だけ目が点になったが、すぐに我に返って驚愕の表情を見せる。

 

『負けた……? ドクター達が……?』

 

『スカリエッティとナンバーズ、それから召喚師のガキとユニゾンデバイスは管理局に確保され、斎藤雄一も生きたまま保護された。死亡したのはゼスト・グランガイツと浅倉威。クアットロだけが今も逃走中ってところだ』

 

『そう……負けたのね、私達は……』

 

『……やけに落ち着いている理由は敢えて聞かないとしてだ。俺はこれから、そのクアットロを始末しに向かうつもりだ』

 

『!? 待って、どういう事……!?』

 

クアットロを始末する。その言葉を聞いたドゥーエは傷の痛みに耐えながらも、ソファから立ち上がり移動しようとする二宮の服の袖を掴む。

 

『どうもこうもない。あの女、放っておけば次は何をしでかすかわからんからな。危険要素はできる限り排除するに限る』

 

『ま、待って!? お願い、妹にだけは手を出さないで!! 別に殺さなくても、カードデッキを破壊するだけでも充分なはずよ!! 殺す必要なんて―――』

 

『殺さなくても充分? 妹達はおろか、スカリエッティすらも切り捨てようとしたあの女をか?』

 

『……え』

 

その言葉にドゥーエは硬直する。クアットロが自分の妹達だけでなく、生みの親であるスカリエッティすらも切り捨てようとした事を知らなかった彼女に、二宮は溜め息をついてから説明していく。

 

『あの女は調子に乗り過ぎたんだよ。戦いに負けた者、自分が興味をなくした者は簡単に切り捨て、自分だけの最強の軍団を作り上げようとした。それはスカリエッティにとっても想定していなかった事態だ。生みの親すらも平気で見殺しにしようとした奴の事を、どうして気にかける必要がある?』

 

『そ、そんな……嘘よ……ッ……あの子が、そんな事を……?』

 

『第一、お前に止める資格なんてないだろう? 裏切り者の分際で』

 

二宮は服の袖を掴んでいるドゥーエの手を無理やり離し、冷徹な目を向けながら言い放つ。

 

『スカリエッティが建てた計画について、何から何までご丁寧に話してくれたのは一体どこのどいつだ?』

 

『!! それは……』

 

『お前が律儀に俺に計画を明かしたせいで、スカリエッティ達の野望は阻止され、そしてこの後クアットロも始末される事になる……全て、お前の警戒のなさが招いた現実だ。初めて出会った時のように、隙あらば俺の首を狙おうとしていた時のお前なら、こんな事態にはさせなかっただろうなぁ』

 

『!? 野望が阻止されたって……あなた、まさか……!!』

 

『俺の方から、少しばかり裏で手を回してやった。おかげで手塚海之と霧島美穂は上手い事、スカリエッティの野望を阻止してくれたよ』

 

『ッ……あなたが……あなたのせいでぇ!!!』

 

ドゥーエが二宮の胸倉に掴みかかる。しかし二宮は動じず、睨みつけて来る彼女を逆に鋭い目で睨み返す。

 

『あなたのせい? 今更お前が言えた義理じゃあるまい。情報を提供したのは他でもないお前だろうに』

 

『違う!! 私はドクターの願いの為に……』

 

『何も違わない。お前は仲間を売ったんだよ』

 

『違う!!!』

 

『お前が認めようが認めないが関係ない。こうなったのは全て……ドゥーエ、お前のせいだ』

 

『違う……私は……!!』

 

『お前にはもう、他に帰る場所などない』

 

『私……私、は……ッ……』

 

ドゥーエが俯くと共に声も少しずつ小さくなり、二宮の胸倉から手を離してその場に崩れ落ちる。二宮は掴まれていた胸倉を整えながら彼女を見下ろす。

 

『……私は……どうすれば良いのよ……?』

 

『その事なんだが……いくつか、お前に選択肢を与えてやる』

 

膝を突いている彼女の腕を二宮が掴み、無理やり立たせてからソファに座らせる。

 

『1つ目は、このまま1人で惨めな人生を送るか。2つ目は、自首してスカリエッティ達のいる牢獄に行くか。そして3つ目は……今後も俺と行動を共にするか』

 

『……!』

 

『どれを選ぼうとお前の自由だ……と言っても、2つ目の選択肢については選んだところで、裏切り者であるお前を奴等が受け入れるかどうかは知らんがな。1つ目を選ぶなら、このまま1人で好きなところに行けば良い。それでお前が満足するんならな。そして3つ目を選ぶのであれば……俺はそれを受け入れよう。俺にとってもそれが一番好ましいところだ』

 

『ッ……』

 

『とにかく、選ぶのはお前自身だ。ある程度、考える時間は与えてやる……その間、俺は俺のやるべき事をやらせて貰うがな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は……ッ!!」

 

自分はスカリエッティによって生み出され、彼の命令のままに様々な任務を遂行してきた。そのスカリエッティが戦いに敗れ、今までの頑張りは全て水の泡となってしまった。二宮と共謀した事が、スカリエッティ達を敗北に導く要因と化してしまった。

 

 

 

 

『3つ目を選ぶのであれば……俺はそれを受け入れよう。俺にとってもそれが一番好ましいところだ』

 

 

 

 

今まではスカリエッティの命令に従って動いて来た。逆を言えばそれ以外の……普通の人間らしい生き方を彼女は知らない。そんな彼女に声をかけてきたのが、スカリエッティを敗北に追い込んだ元凶である二宮だった。ドゥーエにとっては憎むべき相手にも等しい……はずなのに。

 

(恨むべき敵なのに……憎いと思ってるはずなのに……どうして……!!)

 

彼女にとって本来、二宮は彼女が一番憎むべき人物である。しかし彼女の心には、死にかけていたところを彼に助けて貰ったという事実も存在していた。その事実から、彼女の心は大きく揺らいでしまっている。

 

「ッ……ごめん、なさい……私は……!!」

 

その謝罪は誰に対する物なのか。

 

今この場に、その意味を察してくれる者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

ミラーワールド、森林内部の湖付近。オルタナティブが木々を薙ぎ倒しながら吹き飛ばされる中、地面を転がる彼女の前にアビスサバイブが跳躍して追いついて来た。その左手にはアビスカリバーを展開したアビスバイザーツバイが握られている。

 

「どうした?」

 

「ぐっ……がぁ!?」

 

起き上がって反撃しようとしたオルタナティブだったが、振り上げようとした右手がアビスカリバーで斬りつけられる。それによりマグニブレードを落としてしまい、アビスサバイブはそのままアビスカリバーの斬撃を連続で炸裂させていく。

 

「この程度か? 大した事ないな」

 

「ッ……調子に乗らないでくれるかしら!!」

 

【ADVENT】

 

『『グァウッ!!』』

 

「おっと」

 

余裕な態度で挑発して来るアビスサバイブに、苛立ったオルタナティブはマグニレェーヴとマグニルナールの2体をけしかける。2体が振り下ろして来た刀剣をかわした後、アビスサバイブが一度距離を離そうとしたところにマグニレェーヴが光弾を放ち、アビスサバイブはそれを右腕で防御する。

 

(かかった……!!)

 

「ぬ……!」

 

「殺せっ!!」

 

『グガァウ!!』

 

オルタナティブは仮面の下で口角を吊り上げる。ゆりかごでの戦いでディエチに対しても披露した、磁力を操作する事で敵を翻弄する戦法だ。これを初見で見破れる者などいない。そう考えたオルタナティブが命令し、マグニレェーヴが磁力を操りアビスサバイブを自身の傍まで一気に引き寄せて刀剣で斬りつけようとした……だが。

 

「ふっ!!」

 

ズバァン!!

 

『グギャウ!?』

 

「!? 何……ッ!!」

 

引き寄せられたアビスサバイブは、マグニレェーヴの目の前まで引き寄せられると同時にアビスカリバーを思いきり突き立て、逆にマグニレェーヴを吹き飛ばしてみせた。アビスカリバーの一撃はマグニレェーヴの振り下ろした刀剣を簡単に叩き折り、吹き飛ばされたマグニレェーヴがマグニルナールを巻き込むように転倒したのを見て、オルタナティブは驚愕の声を漏らす。

 

「馬鹿な!? どうしてわかったの!?」

 

「悪いな。その攻撃はもう見飽きた」

 

これまでに2回だけだが、マグニレェーヴ達が本来契約していたエクシスとの交戦経験があるアビスサバイブ。故にマグニレェーヴ達の能力を知っていた彼は、磁力で手元から離れて行ってしまうであろうアビスバイザーツバイではなく、敢えて自分の右腕で光弾を受ける事で、自ら引き寄せられてマグニレェーヴを攻撃したのだ。

 

「そんな……!!」

 

「お前の遊びに付き合うつもりはない」

 

自分の戦法が既に把握されているとわかり焦り出すオルタナティブ。それに対し、アビスサバイブは左手に構えたアビスバイザーツバイの後方のグリップを引いた後、開いたスロット部分に1枚のカードを差し込み、グリップを押し込む事で装填を完了する。

 

≪GUARD VENT≫

 

『『グラァッ!!』』

 

マグニレェーヴ達が再び光弾を放つも、電子音と共にアビスサバイブの足元から強力な津波が発生。2体が放射した光弾は簡単に防がれ、同時にオルタナティブ達を纏めて飲み込み押し流してしまう。

 

『『グガァァァァァァッ!?』』

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

津波に流されたオルタナティブ達が岩壁に叩きつけられる中、アビスサバイブはすぐに次のカードを引き抜く。その引き抜いたカードの絵柄を見て、アビスサバイブは気付いた。

 

「! これは……」

 

そのカードの絵柄は、過去の戦い(・・・・・)で見覚えがある物だった。アビスサバイブは仮面の下で少しだけ面白そうに笑みを浮かべた後、アビスバイザーツバイのスロット部分にそのカードを差し込み装填する。

 

≪STRANGE VENT≫

 

装填されたカードが一瞬だけ光った後、閉じたスロット部分が自動で開かれる。そこには最初に装填した時とは違う絵柄のカードが存在しており、アビスサバイブはすぐにグリップを押し込みスロット部分を閉じる。

 

≪FREEZE VENT≫

 

『『!? グ、ガ……ァ……』』

 

「!? な、何……どうしたの……!?」

 

電子音が鳴り響いたその直後。起き上がって反撃に出ようとしていたマグニレェーヴとマグニルナールは、突然動きが鈍り出した後、その体が完全に硬直してしまった。何が起きたかわからないオルタナティブが呼びかけるも、2体はまるで凍りついたかのように(・・・・・・・・・・・・・)ピクリとも動かない。

 

(動きが停止してる!? 馬鹿な、そんな事が……!!)

 

≪SWORD VENT≫

 

「……ッ!?」

 

驚いていられる時間すら、オルタナティブには与えられない。今度はアビスカリバーを展開したアビスサバイブが歩み寄って行き、硬直したまま動かないマグニレェーヴ達に狙いを定めていた。アビスカリバーの刀身にも水流が纏われ、アビスサバイブが振り上げる。

 

「まずはお前達だ」

 

ズバァァァァァァァァァンッ!!!

 

アビスカリバーが横に振るわれ、水の斬撃が2体を纏めて斬りつける。硬直したまま動かないマグニレェーヴとマグニルナールは何もできないまま斬撃を受け、断末魔を上げる事もなくアッサリ爆散。2体が跡形もなく消滅した事で、その影響がオルタナティブにも及ぶ事となる。

 

「そ、そんな……力が、抜け、て……!?」

 

「……次はお前だ」

 

「ひっ!?」

 

アビスサバイブが振り返り、次はオルタナティブにアビスカリバーの刃先を向ける。マグニレェーヴ達をいとも簡単に倒してみせたアビスサバイブの圧倒的な戦闘力を前に、オルタナティブは完全に余裕が消え失せ、恐怖で再び尻餅をつきながら命乞いを始めた。

 

「ま、待って!! わかった、私の負けよ!! あなたの力に見惚れてしまったわ!! だから私、あなたに忠誠を誓おうと思うの!!」

 

「急にどうした? 命が惜しくなったか?」

 

「え、えぇそうよ!! あなたの得になる事なら何でもするわ!! あなたになら私も付いて行く!!」

 

「……なるほどな」

 

オルタナティブの命乞いを受け、アビスサバイブは興味が失せたかのようにアビスカリバーを降ろし、オルタナティブに背を向ける。

 

「モンスターの力を失ったお前にはもう、俺に歯向かう術もないだろうからな……良いだろう。俺からはもう手出しはするまい」

 

「あ、ありがとう、助かるわ……」

 

彼が背を向けたのを見て、オルタナティブは安堵する……と同時に、仮面の下でニヤリと笑う。

 

(馬鹿ね、隙だらけよ!!)

 

先程の津波でたまたま近くに流れて来たのか、先程落としたマグニブレードをコッソリ拾い上げ、アビスサバイブに不意打ちを仕掛けようとするオルタナティブ。アビスサバイブは背を向けている為、オルタナティブがやろうとしている事が見えていない。

 

(死ね!!!)

 

オルタナティブが後ろから斬りかかろうとした……が、彼女は気付いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アビスサバイブが背中を向ける際、さりげなく右手で次のカードを引いていた事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪ADVENT≫

 

『ギャオォォォォォォォォォォンッ!!!』

 

「ッ!?」

 

森林や大地を震わせるほどの咆哮が響き渡る。驚いたオルタナティブが振り向いた先では、飛んで来たアビソドンの姿が鏡のように砕け散り、一瞬でその姿を変化させていた。ボディ各部に金色のラインが存在し、頭部には銀色のフェイスシールドを装備し、赤く鋭い目をギョロつかせている。

 

『ギャオォォォォォォォォッ!!』

 

「な……がぁあっ!?」

 

アビソドンがパワーアップした姿―――“アビスウェイバー”は吼えながら猛スピードで飛来し、アビスサバイブに背後から斬りかかろうとしていたオルタナティブに噛みつき空中に持ち上げた。アビスウェイバーの鋭い歯がオルタナティブのボディに深々と突き刺さり、オルタナティブの悲鳴が上がる。

 

「ど、どうして!? 手出しはしないって……!!」

 

「あぁ、俺からは手出しはしないさ。そいつが牙を剥かない(・・・・・・・・・・)とは言ってないがな」

 

「そ、そんな……があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

アビスウェイバーはオルタナティブを口に咥えたまま、その無数に並んだ鋭い歯でオルタナティブのボディを何度も噛み始めた。オルタナティブが悲鳴を上げようが、アビスウェイバーは噛む事を一切やめようとしない。

 

「痛い!! いたい!! イタイ!! いだい!! やめでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」

 

『ギャオォォォォォォォォン!!』

 

「あががががががががぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

更にはオルタナティブを咥えたまま、彼女の頭部を岩壁に擦りつけるように飛行する。岩壁に押しつけられたオルタナティブの頭部から火花が飛び散り、オルタナティブは悲鳴を上げる事すら上手くできずに悲惨な目に遭い続ける。

 

「もう良い、充分だ」

 

『ギャオッ』

 

「がはっ!? はぁ……はぁ……ッ!!」

 

アビスサバイブが呼びかけ、それに応じたアビスウェイバーが咥えていたオルタナティブを地面に放り捨てる。何度も噛みつかれ、頭部に致命的なダメージを受け続けたオルタナティブは既に瀕死であり、もはや立ち上がる気力も残されてはいなかった。

 

「ど、どうして……どうじでなのよぉ……!?」

 

「お前に1つ教えてやろう。俺がどうして、お前達の計画を細かいところまで知っていると思う?」

 

ここでアビスサバイブは明かす事にした。既に死にかけな彼女を、肉体的な意味だけでなく、精神的な意味でもトドメを刺す為に。

 

「ヒントをやろう。お前達ナンバーズの中で唯一、作戦中は別行動を取っていた女だ。そいつを一番尊敬していたであろうお前なら、わかるんじゃないのか?」

 

「……ッ!?」

 

アビスサバイブが与えたヒント。その内容に心当たりがあったオルタナティブは、その顔に大きな絶望の感情が浮かび上がっていく。

 

「ま、まざか……ドゥーエ姉様、が……?」

 

「正解だ。よくわかったな」

 

「う、嘘よ……そんな……」

 

「正解したご褒美だ。最後はこの一撃で終わらせてやる」

 

≪SHOOT VENT≫

 

『ギャオォォォォォォォォォォン!!!』

 

次のカードがアビスバイザーツバイに装填され、アビスサバイブの後方にアビスウェイバーが移動する。それを見たオルタナティブは這いずるようにその場から逃げようとするも、彼女はアビスサバイブから告げられたドゥーエの裏切りという真実を知り、絶望の感情に染まり切っていた。

 

「嘘、うぞよ……どうじでなの、ドゥーエ姉様……ッ!!」

 

「今、楽に沈めてやる」

 

『ギャオォォォォォォォ……』

 

アビスカリバーが収納された後、アビスサバイブはアビスバイザーツバイを銃のように構え、その後方に構えているアビスウェイバーも自身の口の中に水のエネルギーを収束させていく。その無慈悲な技の矛先は、這いずってでも逃げようとするオルタナティブの背中に向けられた。

 

「はぁ……はぁ……い、いやだ、死にたくない……ッ……しにだぐない……!!」

 

姉の裏切り。

 

死への恐怖。

 

それらの要因が積み重なり、完全に心が折れてしまったオルタナティブに……遂に天罰は下された。

 

「はっ!!」

 

『ギャオォン!!!』

 

「が……ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!??」

 

ドガァァァァァァァァァンッ!!!!!

 

アビスバイザーツバイから放たれた青白いレーザー。アビスウェイバーの口から放たれた強力な水流弾。その2つを同時に背中に受けたオルタナティブは、断末魔と共に呆気なく爆死してしまい、跡形もなくこの世から完全に消滅させられてしまった。

 

「……ふん」

 

爆風が舞う中、空中に飛んだオルタナティブのカードデッキが粉々に砕け散り、アビスサバイブの足元へと落ちていく。アビスサバイブはそれに興味をなくし、振り返る事なくその場から立ち去っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、ミッドチルダを恐怖のどん底に陥れようとしたクアットロは、アビスサバイブによって葬り去られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その死因は奇しくも……かつてオルタナティブに変身していた者達と同じ、仲間の裏切り(・・・・・・)が原因で引き起こされた物だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クアットロ/オルタナティブ……死亡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数分後……

 

 

 

 

 

「……」

 

例の一室にて、毛布にくるまったドゥーエはソファに座り込み、天井を見上げたまま無言で呆けていた。泣き疲れてしまったのだろうか、その目元には涙の流れた跡が僅かに残っており、それも少しずつ渇こうとしている。

 

「何だ、まだここに残っていたのか」

 

そこへ、机のガラスを介してアビスがミラーワールドから帰還する。アビスの変身を解除した二宮は、未だに呆けているドゥーエの姿を見て溜め息をつく。

 

「驚きだな。こんな俺に見切りを付けて、さっさといなくなってしまうもんだと思っていたが」

 

「……誰のせいよ」

 

呆けていたドゥーエがボソリと呟く。

 

「あなたのせいじゃない……あなたのせいで、私は何もかも失ってしまった」

 

「だろうな……それで? 答えは出たのか?」

 

「……どうせ、私には逃げ道なんてないんでしょう?」

 

「あぁ。お前がいたあのアパートも、俺が燃やしておいたからな」

 

「……だったらもう、私のやる事は1つね」

 

ドゥーエがソファから立ち上がり、彼女の身を包んでいた毛布が床に落ちる。二宮を見据えるその目には、既に迷いはなくなっていた。

 

「二宮鋭介……私はあなたに付いて行くわ」

 

「ほぉ。俺が聞くのも何だが、何故そう決めたんだ?」

 

「私はドクター達を裏切って、クアットロを見殺しにした……もう、私はあそこには戻れない。妹達に会う事だってできない。私にはもう、あなた以外に頼れる人が誰もいないの」

 

「……それで、俺に付いて行く事を決めた訳か?」

 

「えぇ……私の能力をあなたは優秀だと認めてくれた。それだけで、あなたは私に生きる価値を与えてくれる」

 

「なるほど……お前の言いたい事はわかった」

 

二宮はドゥーエの肩に手を置き、彼女をソファに座らせてから彼女の背後に回り込む。そして彼女の左肩に顎を乗せるように顔を近付け、彼女の耳元で囁いた。

 

「良いだろう……お前が俺を裏切らない限り、俺もお前を切り捨てはしない。お前が本当に壊れて使えなくなるその時まで、俺がお前を存分に使ってやる」

 

「……ッ」

 

俺がお前を愛してやる(・・・・・・・・・・)

 

俺がお前を大事にしてやる(・・・・・・・・・・・・)

 

俺がお前を有効活用してやる(・・・・・・・・・・・・・)

 

「お前が望み続ける限り……俺がお前に、生きる価値を与え続けてやる(・・・・・・・・・・・・・)

 

淡々と告げられていく台詞。感情の籠っていない、普通なら誰の心にも響かないであろう彼の言葉は……ドゥーエの心を大きく震わせた。

 

「……ずるいわよ、そんな言い方……疑って良いのか、わからないじゃない……ッ……」

 

渇き切ったはずの涙が、再びドゥーエの目から流れ落ちる。それに気付いた二宮が指で涙を掬い上げ、彼女の頬に手で触れてみせる。

 

「どうする。今ならまだ引き返す事もできるが?」

 

「……本当に……ムカつく人……ッ!!」

 

 

 

 

 

 

彼女中で激しく渦巻いていた、二宮に対する憎悪と愛情。

 

 

 

 

 

 

今この瞬間、彼女の中で憎悪が押し負け、二宮に対する愛情が大きく膨れ上がろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『答えは決まったようだな……』

 

その一部始終は、机のガラスを通じてオーディンも見届けていた。

 

(それにしても……彼女を手駒にする為に、わざわざこんな回りくどい事をするとは)

 

かつて二宮が告げた、用済みとなったスカリエッティを敢えて生かした理由……それはドゥーエを手駒として引き入れる為だった。

 

彼女の胎内にはまだ、スカリエッティのコピー因子が残っている。スカリエッティが死ぬような事があれば、このコピー因子によってドゥーエが第2のスカリエッティとして覚醒してしまう。これがスカリエッティを敢えて生かした理由である。

 

つまり、そのコピー因子さえ取り除いてしまえば……今度こそスカリエッティは用済みとなる。

 

(自分が生きる為なら、たとえ面倒であっても手間を惜しまない……どこまでも冷たい男だ)

 

しかし、ドゥーエの能力がスパイとしては非常に優秀であるのもまた事実。これほどの手駒を引き入れる事に成功した二宮の手腕には、オーディンですら末恐ろしく感じるほどだった。

 

『さて……これで当初の目的は達成された。ここから先は、我々にとっても未知の領域となるだろう。今もまだ、新たなライダー(・・・・・・・)がこの地に舞い降りて来ているのだからな……フフフフフフフフ……!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これから先、このミッドチルダでどのような戦いが待っているのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分達はこれから、どのような道を歩んで行くのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが二宮だけでなく、オーディンですら先のわからない未来である事は、もはや語るまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

 

 

ミラーワールド、とある廃屋。

 

「……」

 

ある1人の仮面ライダーが、オンボロな廃屋の中で立ち尽くしていた。

 

その背後では……

 

 

 

 

 

 

『グルルルルル……!!』

 

 

 

 

 

 

鋭利な爪を生やした白銀のモンスターが、猛獣のように唸り声を上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




リリカル龍騎StrikerS!


手塚「俺達にはまだ、確かめなければならない事がある」

フェイト「待っていますから。2人が話してくれるその時を」

オーディン『お前達にはもう、帰る世界などない』

夏希「アタシは一体、何の為に……ッ……」


戦わなければ生き残れない!
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