今回はサブタイトルの通り、手塚達がある1つの真相に辿り着きます。その時、手塚達が思う事は……?
それではどうぞ。
ちなみに現在、第2回オリジナルライダー募集を実施中です。
詳細は活動報告にて。
※追記:書き忘れていた文章をちょっぴり加筆。
JS事件が解決してから、月日が経過した。
季節は本格的な冬が近付いて来ており、ミッドの街では暖かい服装で出歩く者が少しずつ増え始めている。
そんな中でも機動六課は今まで通り、レリックを始めとしたロストロギアに関連する事件を追っていく任務が続いていた。もちろん、あの事件から行方がわからないクアットロの捜索も続いている。
そんなある日の事……
「ヴィヴィオの面倒を見て貰った件では世話になったな。感謝する」
「いえ。手塚さん達も、無事で本当に良かったです!」
「~♪」
この日、手塚は一時期ヴィヴィオの面倒をラグナに見て貰っていた時の礼を言う為に、グランセニック家の自宅を尋ねているところだった。テーブルでラグナと向かい合うように座る手塚の膝の上では、ヴィヴィオがコップに注がれたジュースをストローで美味しそうに飲んでおり、その様子を見てラグナも笑顔を浮かべている。
「あれから、お兄ちゃんはどうしてますか?」
「傷が完治して退院した。今は武装隊局員資格の再取得に励んでいるらしい」
「そっか……良かった。お兄ちゃん、ちゃんと前に進めてるんだ……」
「……君の方は、もう大丈夫なのか? 健吾の事は」
健吾の名前が出た途端、ラグナの浮かべていた笑顔がほんの少し曇りかけた。それを見て「しまった」と後悔した手塚はすぐに謝ろうと口を開きかけるが、その前にラグナが手で制す。
「手塚さん。私の事なら大丈夫ですよ」
「しかし……」
「良いんです。悲しい気持ちがないと言えば嘘にはなりますけど……いつまでも泣いてたって、あの人が戻って来る訳でもありませんし。だからこそ、泣きながらでも前に進んで行こうって……そう決めましたから」
「……強いんだな、君は」
あんな悲劇が起こってしまった後だというのに。彼女はこうして立ち上がり、悲しみを背負いながらも必死に前を向いて歩こうとしている。罅割れたオレンジ色のマグカップを大事そうに抱えるラグナの姿を見ながら、彼女が持つ芯の強さを知った手塚は穏やかな笑みを浮かべてみせた。
「そういえば、まだ機動六課の活動は続いているんですか?」
「六課の試験運用期間が終了するのは来年の4月だからな。それまで六課の活動は今まで通りに続く。おまけにモンスターがいつどこで現れるかわからない以上、俺達も休んでいられる暇はない」
「あまり、無理はしないで下さいね。手塚さんが死ぬような事があったら、ヴィヴィオちゃんや他の皆も、凄く悲しい思いをする事になりますから……」
「大丈夫だ。昔ならともかく、今は絶対に死ねない理由がある……
「……はい!」
「?」
手塚とラグナが楽しそうに笑い、事情を知らないヴィヴィオはよくわからない様子で首を傾げる。
こうして誰かと楽しく会話をする時間。
そんな当たり前の事が、彼はとても幸せな事のように感じていた。
少なくともそれは、元いた世界ではとても感じる事のできない物だった。
「手塚さん、ヴィヴィオ、お帰りなさい」
「ハラオウン、今戻った」
「あ、フェイトお姉ちゃん!」
その後、六課隊舎に戻って来た手塚とヴィヴィオは、執務官としての仕事を終えたフェイトに隊舎の入り口で出迎えられる形となった。手塚と手を繋いでいたヴィヴィオはすかさずフェイトに抱き着き、フェイトも飛び込んで来たヴィヴィオを笑顔で受け止める。
「ヴィヴィオ、ちゃんと良い子にしてた?」
「うん! ラグナお姉ちゃんにも会って来たよ! 元気になったみたい!」
「そっか。良かったねヴィヴィオ♪」
「えへへ~♪」
フェイトに頭を撫でられ、嬉しそうに笑うヴィヴィオ。もしヴィヴィオが動物だったら子犬のように尻尾を振っているのだろうなと、手塚は少しだけおかしな想像をして小さく笑いかけた後、ヴィヴィオを背中におんぶしてからフェイトと共に通路を歩き始める。
「すみません手塚さん。思ってた以上に仕事が長引いてしまって」
「構わない。俺も子守りには慣れてきたからな……むしろ、そっちの方こそ大丈夫なのか? 色々と忙しい状況のようだが」
「もう慣れっこですから大丈夫です。確かに仕事は忙しくて大変ですけど……私もなのはも、ヴィヴィオと一緒にいられるだけの時間はちゃんと取れていますから。今までとそんなに変わりませんよ」
「そうか……ハラオウン達にはいつも、感謝しなければならない事ばかりだな」
「お礼ならもう充分です。そう何度も言われると、流石に私達も恥ずかしくなりますから」
「ははは、それはすまないな……だが、本当に感謝の気持ちでいっぱいなのは事実だ。今まで、お前達は俺と夏希の事を迷わずに信じてくれている。このカードの事も……」
ヴィヴィオをおんぶしたまま、手塚が右手で器用に取り出した物……それはサバイブ・疾風のカードだった。
「【赤と青に煌めく金色の翼】……夏希さんがこのカードを持っているのを見た時は驚きましたよ」
「……だがお前達は、俺達に深く追求して来る事はなかった」
あの戦いの後、手塚と夏希が予想していた通り、サバイブのカードについてはやて達は問いかけてきた。それに対して2人は「ある人物から渡された」とは答えたものの、二宮が一般人を排除する危険性を考慮し、それ以上は詳しく話さなかった。何故詳しく話そうとしないのかと問われた際、手塚はただ一言「察して欲しい」と告げた。
それに対するはやての一言目は……
『まぁ、そういう事なら仕方あらへんなぁ』
……あまりに軽過ぎる返事だった。
しかし、なのはとフェイトもはやてと同じような反応を示しており、彼女達がその場でそれ以上2人を問い詰めて来る事はなかった。それを見た手塚と夏希が、呆気に取られたような表情を浮かべてしまったのは記憶に新しい事だろう。
「あんな反応だけで終わったのは、流石の俺も予想外だった」
「どうしてなのか知りたいという気持ちは今でも残っていますよ……でも、あれだけ自分達の過去を正直に明かしてくれた手塚さんと夏希さんが、何の理由もなく黙っているとは思えませんでしたから」
「何故そう思った?」
「あの時、手塚さんは『察して欲しい』って言いましたよね? 少なくとも、あの時の手塚さんの目はとても嘘をついているようには見えませんでした。もし、何か言いたくても言い出せない事情があるんだとしたら……それは恐らく、私達が下手に知ってしまうと、かえって取り返しのつかない事態に陥ってしまう事。違いますか?」
「……あの一言だけでそこまで察したのか」
確かに「察して欲しい」とは言ったが、まさかあの一言だけでフェイトがそこまで察してくれていたとは。手塚は彼女の洞察力の鋭さに感心すると同時に、手塚はある疑問を問いかけてみる事にした。
「……しかし、何故そうも簡単に信じられる? 俺達がお前達を騙しているとは思わなかったのか?」
「思いません」
「……何故そう言い切れる?」
「女の勘です」
フェイトはキッパリ言い切ってみせた。それには流石の手塚も思わず面食らった後、数秒ほど経過してから小さく噴き出した。
「やはり敵わないな……今、改めてそう感じたよ」
「……手塚さんと夏希さんの力になれないのは、私達にとって凄く悔しい事です。でも、いくら悔しがったところで状況は何も変わりません……だから」
「……!」
フェイトはその場に立ち止まってから振り返り、同じく立ち止まった手塚の頬に優しく触れる。頬を通じて、フェイトの温かな手の感触を手塚は感じ取った。
「待っていますから。2人が話してくれるその時を……2人が安心して話せるようになるまで、ずっと」
「……そうか」
すまない。感謝する。
そういった言葉は続かなかった……否、続ける必要がなかった。
フェイトの浮かべている表情が、手塚の思いを汲み取ってくれた事を示していたから。
だからそれ以上、彼が言葉を続ける事はなかった。
(彼女達には本当に、感謝してもし切れない……)
このミッドチルダに来てから、それなりに長い期間は経った。
(初めて出会った時……最初は、疑念の目で見られた事もあった)
それが今では、六課の誰もが自分達の事を心から信じてくれている。かつてのライダー同士の戦いでは、到底考えられないような事だった。
(城戸……秋山……お前達は今、どこで何をしている……?)
今はいないかつての戦友達に、手塚は自身の思いを告げる。届く事はないとわかっていながら、それでも彼は心の中で告げようと思った。
(俺達は今も、こうして生きている……)
(俺達を信じて待ってくれている人達の為に……俺達は今も、こうして戦い続けている)
(俺達の運命を変えようとしてくれている、そんな人達の為に戦いたいと……心からそう願っている俺がいる)
それこそが、今の手塚が願っている一番の願いだった。
心から信頼できる仲間達に出会えた彼だからこそ、辿り着いた願いだった。
そして……
(そんな人達の為にも……俺達には)
「俺達にはまだ、確かめなければならない事がある」
その為に、手塚は動き出した。
未だ暗躍している者達に、ある真相を確かめる為に。
キィィィィィン……キィィィィィン……
「―――へぇ」
深夜1時、ホテル・アグスタ屋上。モンスターの出現を知らせる金切り音を辿り、アビスはミラーワールドを通じてこの場に辿り着いていた。到着した彼を待っていたのは、ベンチに座り込んだまま腕を組んで待機している手塚の姿。彼がこの場にいる事に、変身を解いた二宮は物珍しそうな表情を浮かべた。
「珍しいじゃないか、手塚。お前の方から俺を呼び出すとは」
「……少しばかり、確かめたい事がある。もうじき夏希も到着するはずだ」
「―――よっと!」
その時、二宮に続くようにファムも窓ガラスから飛び出して来た。変身を解いた夏希は欠伸をした後、この場に二宮もいる事に気付きすぐさま身構えた。
「海之、どうしたんだよこんな夜中に……って、二宮!? 何でお前までここに!!」
「夏希、少し待て……二宮。お前にいくつか聞きたい事がある」
「聞きたい事だと?」
二宮から疑問の目を向けられながらも、手塚はベンチに座ったまま語り始めた。
「スカリエッティが起こしたあの事件……その裏では、いくつか妙な出来事が起きていた」
「妙な出来事……?」
「1つ。あの戦いの中で、レジアス・ゲイズ中将が死亡しているところが発見された。シグナムの話では、そこには見た事のないナンバーズらしき女性が倒れていたそうだが……その女性はその後、レジアス・ゲイズの娘であるオーリス・ゲイズ共々姿を消していた」
「……」
「2つ。シグナムが交戦したというゼスト・グランガイツ。彼はあの戦いの後、首から血を流した状態で死亡しているところが発見された。当初は、彼が自らの首を切って死亡した物と思われていたが……彼が首を切るのに使用したと思われる凶器は何も見つからなかった。彼が使用していたデバイスは既に破損していた上に、破片にも彼の血は一切付着していなかった」
「……」
「3つ。今回の事件が起こる最中、地上本部の有力な幹部達が数名ほど行方不明になっている。スカリエッティが事件を引き起こしている中で、そんな事態が同時に起きたのは偶然とは思えない」
「……それで? 何が言いたいんだ」
「そこで考えてみた……これらの出来事は全て、お前が裏で引き起こした事なんじゃないのか?」
「!? 海之、どういう事だよそれ……!?」
「……何故そう思った」
夏希が驚いているのに対し、二宮は変わらず表情を崩さないでいる。そこで手塚は続けて言い放った。
「二宮、お前は今まで何度か言っていたな。俺達の存在は計画に必要だと……だとしたら、何故あのタイミングで俺達にサバイブのカードを渡してきたのか、それがずっと気になっていた」
サバイブ・疾風のカードを見せながら、手塚は自身の考えている事を順番に説明していく。
もし二宮達が、スカリエッティ達を邪魔な存在として見ていたのだとすれば。
何故、もっと早い段階でスカリエッティを始末しようとしなかったのか?
何故、自分達がスカリエッティ達に負けた後にサバイブのカードを渡したのか?
何故、自分達がスカリエッティ達と戦う前に渡さなかったのか?
そういった疑問が頭に浮かび上がっていた手塚は……やがて、ある仮説に辿り着いた。
「お前が俺達にサバイブのカードを渡した理由……それは、ある事をする為の時間を稼ぎたかったから」
「……!」
二宮の目付きが変わる。それを察した手塚は更に続けていく。
「俺達と機動六課が、長期間に渡ってスカリエッティ達と戦い続ける事で、お前達はその隙に何かを実行する事ができる……それが先程言った、地上本部の幹部達を始末していく事」
「!? ど、どういう事だよそれ!? 何でそんな事を……」
「霧島の言う通りだ。俺がわざわざそんな事をして何になる? 俺がそれをやったという証拠でもあるのか?」
「……初めて出会った時、お前はこう言っていたな」
『足がつくから民間人を襲わせるのはやめとけって、俺からも何度か忠告はしたんだがなぁ……あの馬鹿、俺が言ったところで全く聞きやしない』
それは初めて手塚達が二宮と対峙した時、二宮が告げていた台詞。自分の忠告を真面目に聞こうとしない湯村に対して二宮が零した愚痴……そこにヒントが隠されている事に、手塚は気付いていたのだ。
「おいおい、まさか覚えていたとはな……」
「
「……」
「他の次元世界に比べ、このミッドにおける犯罪の発生率は非常に高い。犯罪が多ければ多いほど、お前はその裏で隠れて行動しやすくなる。ならば地上本部が機能しなくなれば、地上での犯罪は更に増加する……それを目論んでお前は今までの行動を起こしていた。違うか?」
「……随分とまぁ、頭の回転が速い奴だ」
二宮は小さく溜め息をつき、髪をボリボリ掻き始めた。
「あぁそうさ、手塚海之。お前の推測は大体当たってる。あの眼鏡の女……クアットロだっけ? アイツも用済みとして俺が始末してやったよ」
「!? 二宮、お前……!!」
「もっと詳しく言うなら、レジアス・ゲイズを始末するのにもタイミングが重要だった」
二宮は柵に寄り掛かりながら語り始めた。
「ジェームズ・ブライアンの不祥事、スカリエッティの各次元世界への演説、そして地上本部が頼みの綱としていたアインヘリアルの破壊……それらが全部積み重なる事で、いよいよ地上本部はその立場を失う。市民からの信頼を失ったタイミングで、俺がレジアス・ゲイズを始末してやった。首都防衛のトップを失った地上本部は、これで誰に付いて行けば良いかわからなくなり、今まで以上にその機能を失ってしまう訳だ」
「ッ……お前、自分が隠れて動く為だけに、大勢の人達を犠牲にしたのか!! そんな事の為だけに、ヴィヴィオが辛い目に遭っているのを黙って見てたっていうのかよ!!!」
夏希が怒りの形相で二宮の胸倉を掴み上げる。しかし二宮は全く動じる様子はなく、フンと鼻を鳴らして夏希を睨み返す。
「俺がいなくとも、スカリエッティ達がいる時点で同じような事態にはなっていただろうさ。俺は奴等の計画に便乗させて貰っただけに過ぎない」
「お前……ッ!!」
夏希は二宮の胸倉を掴んだまま、その顔を思いっきり殴ろうとした……が、その手は手塚によって止められる。
「夏希、お前が殴る必要はない」
「!? 離せよ、コイツだけは殴らなきゃ気が―――」
バキィッ!!!
「―――ッ!?」
「済まな……って、え?」
夏希が言い切るより前に、手塚は動き出していた。彼の右手拳は正確に二宮の左頬を殴りつけ、殴られた二宮がその場に倒れ込む。
「海之……」
「今の1発は、ヴィヴィオを辛い目に遭わせた分だ。残りは全て、牢屋の中で償って貰う」
「……やってくれたな」
二宮は少量の血をプッと吐き捨てた後、切った唇の血を拭いながら立ち上がる。まさか手塚が自ら殴って来るとは想定していなかったのか、その口元は小さく笑みを浮かべていた。
「お前等にとっては他所の世界の住人だろうに、わざわざご苦労な事だな。元の世界に帰りたいとは思わないのか……いや、俺達にはもう
「……何が言いたい?」
二宮がさりげなく告げた言葉。その言葉の意味が、手塚は一瞬理解ができなかった。そしてもう一度二宮を問い詰めようとしたその時……
『言葉通りの意味だ。手塚海之、白鳥夏希』
「「……ッ!?」」
金色の羽根が無数に舞い上がり、手塚達の前にオーディンが一瞬でその姿を現した。こんな時にまでオーディンが現れるとは思っていなかった手塚と夏希は、思わず警戒して距離を離す。
「何をしに来た……?」
『そう身構えるな。別に取って食らおうと思っている訳ではない』
「信じられる訳ないだろ……どうせお前も二宮とグルな癖に!!」
『全く……少しは落ち着いたらどうだ。二宮が言った言葉の意味を教えてやろうというのに』
「……何?」
それでも手塚と夏希は警戒を解こうとはしない。オーディンは「やれやれ」といった様子で首を振った後、その左手にゴルトバイザーを出現させる。それを見た二宮は表情を歪めた。
「ちょっと待てオーディン、まさかまた……!」
『直接見せてやる他あるまい……そうすれば彼等も納得するだろう。我々がこの世界で、隠れながらでも動かなければならない理由を』
そしてまた……オーディンはあのカードを引き抜き、ゴルトバイザーの装填口に挿し込む。
『手塚海之。お前はかつて知りたがっていたな? ライダー同士の戦いが仕組まれた、真の理由を』
「!」
『これが……その答えだ』
≪TIME VENT≫
ボォォォォォン……ボォォォォォン……
「「「ッ……!!」」」
この世界では、雄一の過去を知る際に発動されたカード。
それが今、再び発動されようとしていた。
「「―――!?」」
壮大なる宇宙。
無数の星が煌めくこの空間の中、手塚と夏希はこの場にポツンと立っている事を自覚した。宇宙なのに呼吸ができる摩訶不思議な空間。自分達が何故ここにいるのか、2人は理解が追いつかない。
「ここは……宇宙か……?」
「!? 海之、あれ!!」
夏希が指差した方向……その先には2人がよく知る、青く大きな地球が存在していた。
「あれは……」
『あれこそ、お前達がよく知る地球だ』
2人の前にオーディンが姿を現す。その後ろでは二宮が退屈そうな表情で腕を組んでいる。
『今回はあくまで、ミッドチルダの時間を一時的に止めただけ……この映像は、私が直接お前達に見せている』
「……意図が読めないな。何故、これを俺達に見せようと思った?」
『言っただろう、お前達にも教えてやると……何故、あのライダー同士の戦いが行われたのか。その真相を』
オーディンが地球に向かって右手をかざす。すると地球がグニャリと歪んでいき、そこには1つの大きな映像が映し出された。そこに映り込んでいたのは……
「!? 神崎優衣……!?」
かつて手塚も出会った事がある少女―――“神崎優衣”の姿だった。
『そう。神崎優衣……全ては、この少女が命を落とした事から始まった』
神崎士郎と神崎優衣。
この2人は元々、普通の兄妹としての人生を送っていた。
しかし、ある事故で両親が亡くなり、2人はそれぞれ別々の人間に引き取られて育つ事となった。
ある時……幼くして、神崎優衣は命を落とした。
当然、神崎士郎は嘆き悲しんだ。何故優衣が死ななければならないのかと。
そんな彼の前に、ある存在が姿を現した。
それこそが……
鏡の世界の神崎優衣は、現実世界の神崎優衣と命を融合させる事で、神崎優衣を蘇生させてみせた。失われた命が戻る事はない……そんな常識を、簡単に覆してみせた。
しかし、その命が長く続いていく事はない。
『消えちゃうよ。20回目の誕生日を迎えたら、消えちゃうよ』
そう……神崎優衣は20歳になると同時に、その命が消滅する運命にあったのだ。
そこで神崎士郎は考えた。どうすれば神崎優衣の消滅を防ぐ事ができるのかを。
ミラーワールドの存在を知り、神崎士郎は辿り着いてみせた……“仮面ライダー”というシステムに。
この時、ミラーワールドには多くのモンスターが発生していた。
モンスターは元々、あの神崎優衣が幼い頃に描いていた絵が実体化した物。
モンスターには命などない。命を欲するが故に、モンスターは人を襲い、命のエネルギーを奪う。
自分達を守ってくれる存在として描かれたモンスター……それを神崎士郎はライダーの一部としてシステムの中に組み込んだ。
ライダー同士が戦い、最後の1人が勝ち残った時……ライダーは
だからこそ、神崎士郎はこの私を……仮面ライダーオーディンという存在を生み出した。
戦いに勝ち残った最後の1人……それをこの私が倒す事で、私が手に入れた
しかし、神崎優衣は
そこで神崎士郎は、私が持つこの力―――タイムベントの力を使い、時間を巻き戻す事でライダー同士の戦いを何度も繰り返し続けた。神崎優衣が
しかし、何度戦いを繰り返しても、神崎優衣は受け入れようとしなかった。何度
何故ならその戦いには、どれだけ繰り返そうとも、どれだけ運命を操ろうとも……必ず戦いに介入して来る人物が、その世界には存在していたからだ。
その人物こそが……あの男、城戸真司だ。
どれだけ戦いを繰り返そうとも、あの男は必ずと言って良いくらい戦いに介入してきていた。どれだけ戦いを繰り返そうとも、あの男の「戦いを止めたい」という意志は決して変わる事はなかった。
時には、そんな彼の力を神崎士郎が利用しようと考えた事もあったが……まぁ、それはまたの機会に話すとしよう。
その城戸真司の介入により、神崎優衣は必ずどこかで真相に気付き、そのたびに
神崎士郎は何度も失敗し、何度も戦いを繰り返した。
最終的に、最後まで生き残れたライダーは1人もいなかった。
そして繰り返され続けた戦いの果てに……遂に、神崎士郎の方から折れた。
神崎士郎は孤独だった。
両親を失い、妹を失い、全てを失った神崎士郎にとって、神崎優衣の存在だけが1つの希望だった。
しかし神崎優衣は、そんな兄の思いを受け止めた。
今度こそ、その兄妹は2人一緒になった。
そして2人は作り替えたのだ。
ミラーワールドの存在しない……ライダー同士の戦いが存在しない、新しい世界を。
『―――ここまでが、あの戦いの大まかな経緯となる』
「……どうして……?」
夏希がボソリと呟いた。
「……どうしてだよ!! どうして神崎士郎はアタシ達をライダーに選んだ!? あの戦いに勝ち残れば、叶えたい願いが叶えられるんじゃなかったのかよ!?」
『誰かの命を犠牲にしてでも叶えたい願いがある……そんな人間を神崎士郎はライダーに選んだまでだ。ライダー同士の戦いを効率良く進める為にな。勝ち残った最後の1人が願いを叶えられる……それは所詮、神崎士郎がお前達を釣る為の餌でしかない』
「……そん、な……ッ……嘘だろ……?」
「ッ……夏希!!」
夏希がその場に崩れかけ、手塚がそれを支える。しかし彼が支えようと踏ん張っても、夏希はその場から立ち上がれなかった。
「アタシは一体、何の為に……ッ……何の為に、戦ってきたんだよ……」
姉を生き返らせたいが為に、心を鬼にしてまで戦い続けて来た夏希。
そんな彼女にとって、オーディンが告げた内容の一部始終は到底受け入れ難い、残酷過ぎる真実だった。
全てを否定されたような気分だった。
彼女の今までの戦いは全て、無駄な頑張りでしかなかったというのだから。
『お前はどうだ、手塚海之。ここまで話せば、お前も気付けるだろう? お前達はこれまでに、いくつもの謎に対面してきたはずだ』
「……確かにな。これでいくつかの謎は腑に落ちた」
座り込んだまま立ち上がれない夏希から手を離し、手塚は振り返る。これまでの戦いの中で、自分達が対面してきたいくつもの謎を。
「あのインペラーというライダー……俺達は奴を知らないのに、奴は俺達を知っていた。何故なら、奴がいた時間の俺達は奴と出会っていたから。恐らく健吾も、別の時間からやって来た存在なんだろう?」
『そうだ』
「浅倉も、俺と同じようにエビルダイバーを従えていた……という事はつまり、奴は俺がいた時間とは別の時間から飛んで来たという事だ。奴がいた時間の俺が倒され、残されたエビルダイバーと契約したというのなら説明がつく」
『うむ』
「それから、夏希が神崎士郎から聞いたタイムリミット……それは神崎優衣の命が消滅するまでの期限。恐らくだがそれは、タイムベントの力を以てしても、神崎優衣が命を落とす前の時間には戻れないという事だ」
『その通り』
「そして、戦いで死んだはずの俺達が、こうしてこの世界にやって来た理由……それは」
そして手塚は辿り着いた。
何故自分達がここにいるのか。
死んだはずの自分達が、どうして今もこうして生きているのか……その答えに。
「それはあの兄妹によって、世界が一から作り直されたからだ」
『正解だ。よく辿り着いた、手塚海之』
オーディンが再び右手をかざす。すると地球に映り込んでいた映像が切り替わり、そこには新たな映像が映し出された。そこには……手塚達のよく知る、あの男の姿も映り込んでいた。
【―――おはようございまーす!! 城戸真司、ただいま出社しましたー!!】
「!? 城戸……!!」
「ッ……真司……!?」
それは2人がよく知る男―――城戸真司だった。ライダーの戦いなど何も知るはずのない、馬鹿で騒がしい城戸真司の姿がそこにはあった。
【あ、真司君おはよー♪】
【真司ィィィィィィィィィッ!! 何がおはようございますだ!! 遅刻なんだよお前は!!】
【ぐえぇ!? ちょ、編集長ギブギブ……ッ!!】
編集長である男性に遅刻を咎められ、後ろから首絞められる形でお仕置きを喰らう真司。それはライダー同士の戦いは一切関係のない、ごく普通の当たり前な日常だった。
『あの兄妹の力で、戦いのない世界が一から新しく作り直された。新しい世界という事は当然……その世界には既に、
それはオーディンの言葉通りだった。次に映像に映り込んだのは、スクーターを押していた真司が自転車に乗っていた青年とぶつかっている場面。
【うわぁ!?】
【あいったぁ!?】
【あぁ、ごめんね! ……大丈夫だよね?】
【ん? あぁーッ!?】
ぶつかった青年は自転車を起こし、そのまま自転車で去って行く。その一方、スクーターが倒れているのを見て悲鳴を上げる真司の前には……あの男がその姿を見せた。
【アンタ、今日の運勢は最悪だな】
【へ、占い? ていうか誰?】
「!? これは……俺、なのか……?」
真司の前に現れた男……それは他でもない、手塚海之その人だった。映像に映り込んだ手塚は、スクーターを起こした真司の手相を占い始める。そしてその最中、たまたま通りかかった1人の男が、目の前にあるスクーターを蹴り倒してしまった。
【邪魔だ】
「!? 浅倉……!?」
【え……あぁーッ!?】
【イライラさせるな……】
【フッ……俺の占いは当たる】
その男―――浅倉威はスクーターを蹴り倒してから去って行き、真司が再び悲鳴を上げ、その様子を見た手塚が面白そうに笑う。そんな光景を目の前で見せつけられ、手塚は唖然とさせられていた。
『あれは
「……その並行世界の1つが……」
『そう。このミッドチルダだ』
オーディンが更に右手を振るう。すると今度は別の映像が映し出され、そこにはある姉妹の姿が映り込んだ。
【夏希~、早くしないと置いてくよ~?】
【もぉ~待ってよお姉ちゃ~ん♪】
「!? あれは……」
「……お姉、ちゃん……?」
それは大好きな姉と共に、買い物を楽しんでいる夏希の姿。嬉しそうな笑顔で姉に抱き着く夏希の姿は、まさに彼女が一番取り戻したいと思っていた光景だった。
『城戸真司、手塚海之、白鳥夏希、二宮鋭介、浅倉威……今あの世界にいるお前達は、再生を経て一から生み出された存在……今となっては別人でしかない』
「……フン」
更に映像が切り替わり、今度はサラリーマン姿の二宮が映り込む。眼帯を着けておらず、平穏な日常を送っている彼の姿は、今の二宮にとっては大して興味のない物だった。
『これでわかっただろう? 元いた世界では、あの兄妹の力があったからこそ戦いは終わった……しかしこのミッドチルダでは、戦いを終わらせる方法など存在しない』
オーディンが指を鳴らし、映像がそこで消滅する。同時に周囲の宇宙だった空間も鏡のように砕け散り……気付けば手塚達は、またホテル・アグスタの屋上に戻って来ていた。
『この世界にライダーとしてやって来てしまった以上、その戦いに終わりはない。かと言って、元の世界に戻ろうにも既にお前達の居場所は存在しない……お前達にはもう、帰る世界などない』
「そん、な……じゃあ、もう二度と……お姉ちゃんにも……真司にも、会えないって事……?」
「……」
夏希は絶望の表情をしたまま立ち上がれず、手塚は無言のまま何も言葉を発せない。やはり真相を話せば、彼等が絶望してしまうのも無理のない話か。オーディンがそう思い込んだ時……手塚が口を開いた。
「……1つ聞きたい」
『何だ?』
「……あの戦いの……一番最後に行われた戦いは、どの時間の中だ?」
『
何故そんな事を聞いたのか。イマイチ意図が読めないオーディンだったが……その返事を返した後、オーディンは手塚の表情を見て気付いた。
(……笑っている……?)
その口元は、笑っていた。
何故彼は笑っている?
オーディンの疑問に答えるように、手塚が言葉を続ける。
「そうか……あの時の戦いは……運命を変えられた事は、無駄じゃなかったんだな」
手塚の脳裏に浮かび上がる。
かつて自分が死ぬ事になった戦い。
その戦いで、自分は真司を浅倉の攻撃から庇い命を落とした。
真司の運命を、ほんの僅かにだが変える事ができた。
そして手塚は知る事ができたのだ。
自分の変えた運命が、更に大きな運命を変えてみせたという事に。
「雄一……お前が俺の運命を変えた事は、やはり間違いじゃなかった」
それを信じて背負い続けた自身の正義。
それが正しいとか、間違っているとかではない。
自分達の信じた思いは、決して無駄ではなかったのだと……手塚はそれを確かめる事ができた。
「……オーディン。お前の言った事は、1つ間違っている」
『何?』
「ッ……!」
未だ座り込んでいる夏希の肩に手を置きながら、手塚はオーディンに向かって言い放つ。オーディンが告げた、1つの間違いを正す為に。
「確かに、俺達にはもう帰る世界はないかもしれない……だが、帰る場所なら存在している。それを与えてくれたのは他でもない……機動六課の仲間達だ」
「! 海之……」
「罪を背負った俺達を、彼女達は受け入れてくれた。戦いで傷付いた俺達の為に、俺達が安心して過ごせる日常を守りたいと言ってくれた……ならば俺達は、そんな彼女達が笑って生きられるこの世界を守り抜く。俺達の運命を変えてくれた、彼女達の為に」
『ほぉ……』
「だからこそ、俺はこの世界でも戦い続けると決めたんだ……お前達のような悪意がもたらす破滅の運命を、この手で変えていく為に」
手塚の目にブレはなかった。ある1つの覚悟を決めた男の目は、この世界の悪意であるオーディンや二宮に対してまっすぐ向けられていた。それを直に感じ取り、オーディンはほんの僅かに笑みを零す。
『フフフ……言ってくれるじゃないか。ならばその覚悟が本物かどうか……確かめさせて貰うとしよう』
「……チッ」
オーディンの告げる言葉と共に、二宮は面倒臭そうに小さく舌打ちしてからアビスのカードデッキを取り出す。それに対し、手塚もライアのカードデッキを取り出してから、手塚と二宮は階段への出入り口がある扉の窓ガラスにそれぞれカードデッキを突き出した。
「変身!」
「変身」
出現したベルトにカードデッキを装填し、手塚はライアに、二宮はアビスの姿に変身。2人は互いを一瞬だけ睨みつけた後、すぐに窓ガラスを通じてミラーワールドへと突入していく。
『さて……お前はどうする? 白鳥夏希』
「……アタシは……」
その場に残されたオーディンと夏希。ずっとその場に座り込んだまま動けなかった夏希は、その場にしばらく俯いた後……その顔を上げ、焔の点いた目を向けてみせた。
≪SWORD VENT≫
≪SWING VENT≫
ミラーワールド、ホテル・アグスタ付近の森林内部。アビスはアビスセイバーを、ライアはエビルウィップをその手に構え、静かに対峙していた。
「どうしても、俺達に歯向かうつもりか?」
「撤回するつもりはない……俺は俺の意志を貫き通す」
「……フンッ!!」
「はぁっ!!」
2人は同時に駆け出していく。アビスセイバーの斬撃とエビルウィップの一撃が衝突し、その衝撃音を合図に彼等の戦いは開始されたのだった……
To be continued……
リリカル龍騎StrikerS!
オーディン『見せてみろ。お前達の覚悟を』
二宮「他人なんぞの為に、自分の命を捨てられるのか!!」
手塚「彼女達と共に生きる……俺はそう願った!!」
夏希「アタシも戦う……守りたい人達の為に!!」
戦わなければ生き残れない!