リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

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はい、第57話です。

今の内に言っておきますと、次回はまた番外編の更新になりそうです。その理由は……それは次回更新した時にでも。

それではどうぞ。

活動報告で実施中のオリジナルライダー募集もよろしければどうぞ。











戦闘挿入歌:Revolution









第57話 帰る場所

≪COPY VENT≫

 

「はぁ!!」

 

「フンッ!!」

 

ミラーワールド、森林内部。コピーベントの効果でアビスセイバーをコピーし、それを装備したライアがアビスと剣を交わし、激しい戦いを繰り広げていた。互いに一歩譲らぬ戦いになるかと思われたが、アビスがライアの胸部に斬撃を命中させてからは、アビスの方が徐々にライアを圧倒し始めた。

 

「ぐ……がはっ!?」

 

「理解に苦しむな。お前の吐く戯言は」

 

≪SWORD VENT≫

 

アビスの振るうアビスセイバーが、ライアの装甲を連続で斬りつける。ライアが怯んでいる隙にアビスは地面にアビスセイバーを突き刺し、アビスバイザーにカードを装填して2本目のアビスセイバーを召喚。2本のアビスセイバーを×字にクロスさせる。

 

「何がお前達をそうまでさせる? お前達がそこまでして、命を懸けてやる義理なんてないだろうに」

 

「ッ……ならばお前は、何故そこまで人を敵視する? お前に守りたいと思える物はないのか……!!」

 

「そんな物、とうの昔に全部壊れちまったよ……今となっては全てが俺の敵だ!!」

 

2本のアビスセイバーが振り下ろされ、ライアが手元のアビスセイバーで受け止める。しかしパワーは僅かにアビスの方が上なのか、力ずくでライアに膝を突かせる。

 

「何が日常を守りたいだ。こんなモンスターだらけの環境下だぞ? 終わらない戦いの中、精神が疲弊し、やがて何もかもかなぐり捨てようとするのがオチだ」

 

「違う……お前はただ、恐れているだけだろう……!!」

 

「何?」

 

ライアが力を振り絞り、アビスの構えるアビスセイバーを押し退けてから自身のアビスセイバーを突きつける。

 

「他人を信用せず、全てを敵と見なそうとする。そうやっていつまでも、自分の殻に籠って周りを寄せ付けまいとしている。お前は裏切られる事を、傷付けられる事を恐れているだけの……ただの臆病者だ!!」

 

「逆に聞くが、臆病である事の何がいけない(・・・・・・・・・・・・・)?」

 

「ッ!?」

 

アビスが振るって来たアビスセイバーを受け止めるライア。しかしアビスが続けて振るって来た2本目のアビスセイバーがライアの構えていたアビスセイバーを勢い良く弾き飛ばし、振るった時の回転を利用してライアを振り向き様に強く斬りつけた。

 

「自分の身を守れるなら良いだろうに。俺からすれば、他人の為に命を懸けるお前達の方が理解不能だな」

 

「二宮、お前……ぐぅ!?」

 

「運命を変えるだと? ならばお前は、その為に自分の命を削られるのか?」

 

「が、ごはっ!?」

 

「そうやってお前は……他人なんぞの為に、自分の命を捨てられるのか!!」

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

2本のアビスセイバーで何度も斬りつけられた後、刃先を強く突き立てられライアが大木に叩きつけられる。地面に落ちたライアが咳き込む中、アビスは右手のアビスセイバーで肩を軽く叩きながら言い放つ。

 

「それでお前が死んでしまえば意味があるまい。それでもお前は、誰かの為に戦うつもりか?」

 

「はぁ、はぁ……お前にはわからないだろう……!!」

 

地面に掌を押しつけ、ライアは無理やり体を起こして立ち上がる。アビスセイバーで斬られたダメージは決して少なくないが、ライアは決して折れる様子は見せなかった。

 

「傷付く事を恐れているのは、お前1人だけの苦しみじゃない……!! 傷付くのが怖いからこそ……人は皆、手を取り合う事で苦しみを和らげる事ができる……!! 俺はこれまで、それをこの目でずっと見て来た……!!」

 

1人では変える事ができなかった運命。仲間がいたからこそ変える事ができた運命。異なる世界にやって来て、機動六課の仲間達と共に戦い抜いたからこそ、手塚はそれを確信できていた。1人で戦う事しか知らない二宮では到底理解し得ない物だった。

 

「俺はもう、二度と自分の命を投げ捨てはしない」

 

「何だと……?」

 

「運命を変える為に……この世界で、俺達を信じてくれた彼女達と共に生きる……俺はそう願った!!」

 

「!? くっ……!!」

 

そう言い放ち、ライアはカードデッキからサバイブ・疾風のカードを引き抜いた。ライアを中心に吹き荒れ始めた風にアビスが怯んで後退し、その間にライアはエビルバイザーをエビルバイザーツバイに変化させる。

 

「覚悟しろ二宮……これが俺の覚悟だ……!!」

 

≪SURVIVE≫

 

「ッ……面倒な……!!」

 

サバイブ・疾風のカードがエビルバイザーツバイに装填され、ライアの全身が旋風と共にライアサバイブの姿へと変化する。アビスは小さく舌打ちしながらも、2本のアビスセイバーを正面で×字にクロスさせながら、迎撃体勢を整えてライアサバイブを迎え撃とうとするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『随分やる気のようだな、手塚海之は……』

 

「……海之……」

 

その戦いの様子は、窓ガラスを介して現実世界にいるオーディンもじっくり眺めていた。ライアサバイブがアビスに立ち向かおうと駆け出して行く光景を見て、今まで座り込んでいた夏希もその場から立ち上がり、その左手に構えたカードデッキを力強く握り締める。

 

『! 戦うつもりか、白鳥夏希』

 

「……正直、さっきの話は凄いショックだったよ。二度とお姉ちゃんや真司には会えないってのがさ……おかげで一瞬だけ、大事な事を忘れてしまってた」

 

『ほぉ、何をだ?』

 

「……アタシが、戦おうと思った理由だよ」

 

夏希はカードデッキを窓ガラスに向かって突き出し、ベルトを出現させて腰に装着する。

 

「2人に会いたい気持ちが、ないって言えば嘘にはなるよ……でもそれ以上に、今は六課の皆と一緒に生きていきたいと思ってる。六課の皆と手を取り合って、前を向いて強く歩いて行きたいって思ってる」

 

『……そうか』

 

「だからさ、アタシも戦うよ。償いとかじゃなくてさ……この世界でアタシが見つける事のできた、アタシ自身の願いとして……変身!!」

 

そう告げた後、夏希は変身ポーズと共にカードデッキをベルトに装填。ファムの姿へと変化し、彼女は左腰のホルスターからブランバイザーを引き抜いた。

 

『……意志は固まったようだな』

 

そんな彼女の前に、オーディンが腕を組んだまま静かに立ち塞がる。

 

『ならば証明してみろ。お前の覚悟が本物かどうかを……フンッ!!』

 

「!? うわっと……!?」

 

オーディンが左手をかざした瞬間、金色の羽根と共に強い衝撃波がファムを襲い、ファムの体がミラーワールドへと飛ばされていく。ミラーワールドの森林内部まで飛ばされたファムが地面を転がる中、一瞬で移動して来たオーディンが腕を組んだまま対峙する。

 

「ッ……アタシの相手はアンタって事か……上等!!」

 

ファムはすぐに立ち上がり、カードデッキからサバイブ・烈火のカードを引き抜いた。彼女の周囲で赤い炎が激しく燃え上がっていく中、ファムはブランバイザーから変化したブランバイザーツバイにサバイブ・烈火のカードを差し込み、ブランバイザーツバイからブランセイバーを引き抜く。

 

≪SURVIVE≫

 

『面白い……!』

 

電子音と共に、ファムの姿が炎に包まれファムサバイブに変化。それを見てもなお、オーディンは変わらず腕を組んだ状態で悠然と構えており、一瞬でファムサバイブの真後ろに移動した後、薙ぎ払うかのように左手を振るい裏拳を繰り出した。

 

『さぁ、始めよう』

 

「!? ぐぅっ……!!」

 

裏拳を受けたファムサバイブは地面を転がった後、しゃがんだ体勢からブランセイバーの装填口を開く。そこに1枚のカードを差し込み、装填口を閉じてカードを読み込ませる。

 

≪FIRE VENT≫

 

『ピィィィィィィィィィッ!!』

 

『む?』

 

エコーのかかった電子音が鳴り響き、上空からブランウイングがブランフェザーに変化しながら飛来する。ブランフェザーはファムサバイブの真上まで飛んで来た後、翼を大きく羽ばたかせ、オーディン目掛けて炎の羽根を無数に放射した。

 

『なるほど……ハァッ!!』

 

「うわっとと!?」

 

オーディンもすかさず左手をかざし、金色の羽根を無数に放ち炎の羽根を相殺。それにより発生した爆発でファムサバイブが体勢を崩しかける中、オーディンもゴルトバイザーを左手に持ち、開いた装填口に1枚のカードを挿し込み装填する。

 

≪SWORD VENT≫

 

オーディンの左手に、長い刀身を持つ金色の長剣―――“ゴルトセイバー”が飛来する。それを掴み取ったオーディンは一瞬でその場から姿を消し、ファムサバイブの真後ろから斬りかかった。

 

『こっちだ』

 

「!? うぁっ!?」

 

振り返ったファムサバイブが思わずブランセイバーを突き出し、何とかゴルトセイバーの斬撃を防ぐ。しかし防がれる事は想定内だったのか、オーディンはすぐにまたファムサバイブの左真横に転移し、ゴルトセイバーで強く斬りつける。そしてすぐまた転移し、今度は目の前から容赦なく斬りかかる。

 

『どうした? 反応が遅れているぞ』

 

「く、この……うわたっ!?」

 

転移したオーディンがゴルトセイバーを突き立て、そこから連続でファムサバイブを斬りつける。ファムサバイブも負けじとブランセイバーを振るい、何とかオーディンの攻撃を1つ1つ防いでいくが、それでも今一つ反撃の隙が見出せない様子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、機動六課男性寮……

 

 

 

 

「ふみゅう……」

 

「すぅ……すぅ……」

 

「ん……んん……」

 

この日、ヴィヴィオ・なのは・フェイトの3人は同じ部屋でぐっすり眠り込んでいた。ちなみに彼女達が寝ている部屋は手塚が使っている部屋でもあり、ヴィヴィオの「今日は皆で一緒に寝たい!」という願いの下、2人も手塚と同じ部屋で一緒に寝る事になったのである。ちなみにそんなヴィヴィオのお願い事を聞いた際、フェイトは今まで以上に顔を赤らめ、はやてと夏希が面白そうな目で笑っていたのはここだけの話。

 

「ん……ふあぁ……」

 

そんな時、たまたま目が覚めてしまったフェイトがベッドから体を起こし、大きく欠伸をしてから隣で寝ているなのはやヴィヴィオの寝顔を確かめる。2人の幸せそうな寝顔を見てクスリと笑うフェイトだったが、同じベッドで寝ているはずの手塚の姿がない事に気付く。

 

「……あれ?」

 

お手洗いでも済ませているのだろうか。手塚の姿を確認するべくキョロキョロ周囲を見渡したフェイトは、就寝に入る前に閉めたはずの窓のカーテンが開いている事に気付く。

 

「……手塚、さん……?」

 

それを見て、フェイトはすぐに察する事ができた。

 

彼はまた、ミラーワールドへ戦いに出向いているのだと。

 

こんな夜遅くの時間でも、ライダーの戦いは決して彼を満足に休ませてはくれないのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ!!」

 

「ぐっ……!?」

 

ミラーワールド、森林内部。

 

その手塚は……ライアサバイブは今、アビスを相手に善戦しているところだった。アビスが振り下ろして来るアビスセイバーをエビルエッジで受け止め、軽々と弾いては的確にアビスの装甲を斬りつけ、アビスに反撃の隙を全く与えようとしていなかった。

 

「チッ……借り物の力で、よくやるもんだな……!!」

 

「何とでも言え……守りたい物の為なら、この程度は恥にもならない!!」

 

「貴様……ぐはっ!?」

 

エビルエッジで何度も斬りつけられた挙句、アビスセイバーを2本同時に弾き落とされたアビスはライアサバイブの蹴りを受け、地面を転がされる。しかしすぐに体勢を立て直し、次のカードをアビスバイザーに装填する。

 

≪STRIKE VENT≫

 

「図に乗るなよ……これで沈め!!」

 

アビスクローを右腕に装備し、アビスは強力な水流弾を発射する。その強力な一撃はライアサバイブ目掛けて飛んで行こうとしたが……

 

≪ADVENT≫

 

『キュルルルルル……!!』

 

「!? 何……ッ!!」

 

どこからか高速で飛んで来たエビルダイバーが、一瞬でエクソダイバーの姿に変化。そのままライアサバイブの目の前で停止し、アビスクローの水流弾を難なく防ぎ切ってみせた。

 

≪COPY VENT≫

 

「!?」

 

電子音と共に、コピーされて実体化したアビスクローがライアサバイブの右腕に装備される。そのままライアサバイブはアビスクローを構え、アビスもすかさず次のカードを装填する。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……はぁっ!!!」

 

「ッ……マズい!!」

 

≪GUARD VENT≫

 

アビスアーマーを召喚し、右手で装備したアビスは飛んで来た水流弾を受け止めようとした。しかしアビスアーマーで受け止められた水流弾は、アビスを少しずつ後ろへと押し続けていく。

 

「!? 何だと……があぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

遂にはアビスアーマーの防御を押し退け、水流弾がアビスを大きく吹き飛ばしてしまった。大岩に叩きつけられたアビスは地面に転がり落ちた後、アビスクローを放り捨てて再びエビルバイザーツバイを構えているライアサバイブを忌々しげに睨みつける。

 

(コピーした武器まで強化されるのか……やはり、まともに相手取るべきじゃないな……!!)

 

「はっ!!」

 

「ッ……チィ!!」

 

エビルバイザーツバイから発射された矢が、アビスバイザーによる水のエネルギー弾で相殺される。土煙が周囲の砂を舞い上がらせた後、土煙が晴れる頃には既にアビスは姿を消してしまっていた。

 

「! 逃げたか……ッ!?」

 

その時、ライアサバイブがいる場所のすぐ近くで爆発音が響き渡る。何事かと振り向いたライアサバイブは、その爆発音の正体にも何となく勘付いていた。

 

「今のは……まさか、夏希か!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うあぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

その爆発音が響いた場所では、爆風で吹き飛ばされたファムサバイブが地面を転がされていた。その前方からは腕を組んだオーディンがゆっくり近付いて来ている。

 

『どうした、この程度か?』

 

「ッ……反則過ぎるだろ、こいつ……!!」

 

立ち上がったファムサバイブはブランセイバーに炎を纏わせ、そこから強力な斬撃を撃ち放つ。それに対し、オーディンは冷静にゴルトバイザーを構え、1枚のカードを装填口に装填する。

 

≪GUARD VENT≫

 

「はぁ!!」

 

『無駄だ』

 

ファムサバイブが放った斬撃は、オーディンが召喚した金色の盾―――“ゴルトシールド”で防がれる。ファムサバイブはすぐにブランセイバーをブランバイザーツバイに収納し、カードデッキから引き抜いた次のカードを差し込もうとしたが、引き抜いたカードの絵柄を見て思わず二度見してしまう。

 

「え、何このカード……?」

 

≪STRANGE VENT≫

 

初めて見るカードに困惑しながらも、ファムサバイブはそのカードをブランバイザーツバイに装填する。すると装填されたカードが一瞬だけ光った後、すぐに違うカードへと変化して装填口が開いた。

 

「! 変わった……!」

 

≪STEAL VENT≫

 

『! ほぉ……』

 

すぐに装填口を閉じ、変化したカードを読み込ませる。するとオーディンの構えていたゴルトシールドが彼の手元から離れ、ファムサバイブの右手に収まった。

 

「やった、盾もーらいっ!!」

 

『甘い』

 

≪STEAL VENT≫

 

「え……うげっ!?」

 

しかしその直後、オーディンがゴルトバイザーにスチールベントのカードを装填し、ファムサバイブの右手に収まっていたゴルトシールドが一瞬で消えてしまった。武器を奪った意味がなくなってしまった事で焦り出すファムサバイブに対し、一瞬で目の前まで接近したオーディンが左手で薙ぎ払おうとしたが……

 

 

 

 

ズドォンッ!!

 

 

 

 

『ぬぐぅ!?』

 

「……!?」

 

別方向から飛んできた1本の矢が、ファムサバイブを薙ぎ払おうとしたオーディンの体勢を打ち崩した。すぐに腕を組み直して振り返ったオーディンの視線の先には、エビルバイザーツバイを弓のように構えているライアサバイブの姿があった。

 

「海之……!!」

 

「大丈夫か、夏希」

 

『ほぉ、二宮を退けたのか……』

 

オーディンが不敵な笑みを浮かべる中、ライアサバイブとファムサバイブが並び立ち、2人は同時にカードを引き抜いた。

 

「夏希……お前もまた、覚悟を決めて来たか」

 

「まぁね。ここまで来た以上は、アタシも戦う……守りたい人達の為に!!」

 

「そうか……ならば、共に行くぞ……!!」

 

「うん!!」

 

≪FINAL VENT≫

 

≪FINAL VENT≫

 

『キュルルルルル……!!!』

 

『ピィィィィィィィィィィッ!!!』

 

エクソダイバーとブランフェザーが同時に飛来し、ライアサバイブとファムサバイブも同時に跳躍し2体の背中に飛び乗る。2体のモンスターがボディを変形させてバイクモードとなる中、それでもオーディンは慌てず冷静に2人を待ち構えていた。

 

『良いだろう……ならば見せてみろ。お前達の覚悟を』

 

ライアサバイブが乗り込んだエクソダイバー・バイクモード、ファムサバイブが乗り込んだブランフェザー・バイクモードがオーディンに向かって疾走する。そしてオーディンとの距離が縮まって来たところで、2人は一気に加速させた。

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」

 

エクソダイバーが電撃を纏い、ブランフェザーがファムウイングに包まれドリル状に変化する。加速した2人が猛スピードでオーディンに突進を仕掛けたその瞬間―――

 

 

 

 

『ハァッ!!』

 

 

 

 

―――命中する直前でオーディンの体が宙に浮遊し、逆さまになって2人の突進をアッサリかわしてみせた。

 

「!? 何……が、ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

必殺の一撃が空振りに終わった2人がバイクモードを停止させた直後、周囲に舞い上がった無数の金色の羽根が一斉に破裂し、その無数の衝撃が2人に襲い掛かった。とても捌き切れる量の衝撃ではなく、2人は同時に吹き飛ばされサバイブ形態が解除されてしまった。

 

「ぐっ……何て強さだ……!!」

 

「デタラメ過ぎるって、こんなの……ッ!!」

 

『フッフッフ……どうした、もう終わりか?』

 

オーディンが不敵に笑いながら、腕を広げて迫って来ようとする。切り札だったサバイブも解除された事で、ライアとファムは成す術がなくなってしまっていた。

 

「ここまで、かよ……!?」

 

「ッ……」

 

『つまらん……これで終わらせる』

 

再びオーディンの姿が消える。またどこかに転移したのかと、ファムが周囲を見渡してオーディンを見つけようとした……その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そこだっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザシュウッ!!

 

『―――ッ!? ぐ、おぉ……ッ』

 

「ッ!?」

 

ライアの真後ろから攻撃しようとしたオーディンの左手が、ライアを殴る直前で止まった。オーディンが自身の胸部を見下ろすと……そこにはライアの右手に握られたブランバイザーが、勢い良く突き立てられていた。これには今まで余裕の態度だったオーディンも、少しだけ驚いた様子で振り上げていた左手を降ろす。

 

「あ、アタシの武器……!」

 

『ッ……何故だ……何故、私の居場所がわかった?』

 

「……お前が今まで見せた動きを、俺がしっかり見ていないとでも思ったか」

 

ライアは気付いていた。初めて出会った時も、今回の戦いも、オーディンが瞬間移動をする時はいつも相手の背後に回る事が多い(・・・・・・・・・・・・)という事に。そこでライアは今まで歯が立たないフリをして、オーディンが隙を見せるタイミングを待っていたのだ。

 

「お前と俺達が戦うのはこれが2回目だ。だからこそ、お前は油断して今まで通りの戦法で来ると読んでいた」

 

『フッ……なるほど、よく見ているな』

 

オーディンは小さく笑った後、自身の胸部に突き立てられているブランバイザーの刀身を左手で掴む。

 

『お前達の覚悟は伝わって来た……もう充分だな』

 

「!? ぐぁっ!!」

 

「海之!!」

 

ブランバイザーを掴んで降ろさせた後、すぐさまオーディンの平手打ちがライアの顔面に炸裂する。倒れ込んだライアにファムが駆け寄る中、オーディンはいつものように腕を組み直す。

 

『今のお前達なら、この先の戦いも生き延びる事ができるだろう』

 

「何……どういう事だ」

 

『お前達の戦いはこれからも続く。これから先、また多くのライダーがこの世界に舞い降りる事になる』

 

「「ッ!?」」

 

『そうなれば、戦いは更に激しくなるだろう……』

 

「ッ……待て!!」

 

拾い上げたブランバイザーでファムが斬りかかった瞬間、オーディンの姿が一瞬で消えてしまった。ひたすら周囲を見渡すファムとライアの周囲を、無数の金色の羽根が舞い上がる。

 

『戦い続けろ、ライダー達よ……それが今のお前達にできる全てだ……』

 

「ッ……」

 

それだけ告げられた後、オーディンの声は聞こえなくなる。金色の羽根も消滅し、その場にはライアとファムの2人だけが取り残される形となるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――さて」

 

その後。とある施設に戻って来たアビスは変身を解除し、二宮の姿に戻ってからソファに座り込んだ。そんな彼が出入りした机のガラスに、転移して戻って来たオーディンが映り込む。

 

『随分アッサリ撤退したようだな……何故サバイブの力を使わなかった?』

 

「どうせ決着なんて付ける気もなかったんだろう? それなのに自分から手の内を晒す馬鹿がどこにいる」

 

『フッ……それもそうか』

 

「俺からも聞かせて貰おうか……何故奴等に真実を話した? そうする必要があったようには思えないが」

 

『確かめたかったまでの事だ。あの2人が今後も利用できるかどうかを……それを知るには、あぁして戦う覚悟を問いかけるのが手っ取り早い』

 

「あぁそうかい」

 

そんな事の為にわざわざ自分は戦わされたのかと。不満げな目付きでオーディンを睨みつける二宮だったが、当の本人は全く意に介していない。

 

『二宮、お前も存分に傷を癒しておくと良い。この世界で生きていく以上、我々の戦いも長きに渡って続いていくのだからな……』

 

「わかり切った事を言うな、めんどくさい」

 

机のガラスからオーディンの姿が見えなくなる。突然現れては突然消えるオーディンの身勝手さに、二宮は疲れたような表情を浮かべてからソファに背をつけ、そのままゆっくり目を閉じて深い眠りにつこうとしたが……

 

「鋭介……?」

 

「!」

 

横から聞こえて来た声に、二宮は閉じようとしていた目を開く。彼が向いた先には、包帯に身を包んだ上半身に上着を羽織った姿のドゥーエが立ち尽くしていた。

 

「帰って来てたの?」

 

「お前か。今後の計画に備えて、今は休んでろと言ったはず……ッ!?」

 

二宮は閉じかけていた目を大きく見開いた。二宮が最後まで言い切るより前に、駆け寄って来たドゥーエが突然抱き着いて来たからだ。その次に彼女が発した言葉も、二宮にとっては想定外な物だった。

 

「良かった……ちゃんと帰って来てくれた……!」

 

「ッ……いきなり抱き着くな、鬱陶しい。というか勝手に俺を殺すな」

 

「嫌よ、絶対に離さない……!」

 

「お前……」

 

無理やり引き剥がそうにも、普通の人間である二宮より戦闘機人であるドゥーエの方が力は上である事を思い出した二宮は溜め息をつき、彼女を引き剥がそうとするのを諦める。そんな彼の心情を知って知らずか、ドゥーエは二宮に抱き着いたまま離れようとせず、それにより彼女の豊満な胸の膨らみが二宮の体に押しつけられ形を大きく歪めている。

 

「お願い鋭介……これからもずっと、私を傍にいさせて……もう、私を1人にしないで……ッ!」

 

「……全く」

 

二宮は呆れたような表情を浮かべ、声が震えているドゥーエの頭を優しく撫でるように触れる。これほどの美人に抱き着かれようとも、二宮の意志は決して揺らぐ事はない。

 

(1人にしないで、か……)

 

 

 

 

 

 

『俺達にはもう帰る世界はないかもしれない……だが、帰る場所なら存在している』

 

 

 

 

 

 

『俺達を信じてくれた彼女達と共に生きる……俺はそう願った!!』

 

 

 

 

 

 

(……何が帰る場所(・・・・)だ、下らない)

 

彼の脳裏に浮かび上がるは、かつて家族を失った幼き頃の過去。

 

誰も味方してくれる者はおらず、全ての人間が敵なんだと認識するようになった時の記憶。

 

その時から彼は、誰に対しても心を開く事はなくなった。

 

誰に対しても、決して背中を許そうとはしなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

『お前は裏切られる事を、傷付けられる事を恐れているだけの……ただの臆病者だ!!』

 

 

 

 

 

 

(……生きられるならそれで良いだろう。臆病者の何が悪い)

 

自分が生きられるのならそれで良い。

 

臆病者と罵られようが知った事ではない。

 

(生きられるのであれば、俺は何だって利用してやる……オーディンも、そしてこの女も……!!)

 

誰も信じるつもりはない。

 

たとえ天地が引っ繰り返ったとしても、その意志は決して揺るがない。

 

それこそが二宮鋭介の……臆病者である事を受け入れてしまった男(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)だけが持つ事のできる、冷徹な覚悟だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、機動六課男性寮では……

 

 

 

 

「ッ……はぁ、はぁ……」

 

途中で夏希と別れ、自身の部屋に戻って来た手塚。ライアの変身を解除した彼だったが、戦いで受けたダメージは決して軽い物ではない。ヴィヴィオ達が眠るベッドまで辿り着く前に一度床に倒れかけるも、近くの机に手をかける事で何とか倒れずに済んだ。ベッドでは未だ、ヴィヴィオとなのはが気持ち良さそうに眠っている。

 

(攻撃を受け過ぎたか……思うように、体が動かん……)

 

死に至るほどのダメージではないが、それでも人が体を上手く動かせなくなるのには充分過ぎた。いっそ、このまま床に倒れて眠ってしまおうかとも思えるぐらいに、手塚はフラフラな状態だった。

 

(マズい……意識、が……ッ……)

 

ダメージだけでなく、疲労も相当溜まっている。一瞬の眩暈と共に、手塚の体が床へと倒れ込もうとした時……

 

「……?」

 

手塚の体が、床に倒れる事はなかった。

 

彼が倒れる前に、彼の体を正面から支えてくれる者がいた。

 

「お疲れ様です、手塚さん」

 

「……ハラオウン……?」

 

手塚の目に映ったのは、彼が無事に帰って来た事に安堵した様子のフェイト。正面から彼女に抱き止めて貰う事で感じ取れた温もりが、失いかけていた手塚の意識をギリギリのところで引き留めてみせた。

 

「ずっと、起きていたのか……?」

 

「手塚さんの姿がなかったので、きっとまたミラーワールドに向かったんだろうなって……きっとまた、無理してでも戦っているんだろうなって」

 

「そうか……すまない、心配かけてしまったな」

 

「けど、ちゃんと無事に戻って来てくれました……お帰りなさい」

 

「……あぁ、ただいま」

 

 

 

 

 

 

どれだけ戦おうとも。

 

 

 

 

 

 

どれだけ傷付こうとも。

 

 

 

 

 

 

彼女のかけてくれた言葉が、傷付いた手塚の心に癒しを与えてくれる。

 

 

 

 

 

 

彼女の言葉が、手塚の心に温かさを感じさせてくれる。

 

 

 

 

 

 

たったそれだけの小さな事が……今の手塚にとっては、何よりも大きな救いとなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手塚の告げた“帰る場所”は、そこには確かに存在していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




リリカル龍騎StrikerS!


はやて「長いような、短いような……そんな1年間でした」

手塚「共に戦ってくれた皆に、感謝の言葉を送りたいと思う」

フェイト「手塚さん……もし、手塚さんさえ良ければ……!」


戦わなければ、生き残れない……





手塚「感謝する……本当に、ありがとう」





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