第1部ストーリーに終わりが近付く中、何故このタイミングで番外編なんて更新したのか?
……その答えは【龍騎をリアルタイムで見ていた人達】ならたぶんわかると思います。
大急ぎで書いたので内容は短いですが、それではどうぞ。
それは機動六課が、鈴木健吾/仮面ライダーエクシスと直接対面する前のお話……
「七夕?」
それは、いつものように食堂で昼食を取っている最中の会話から始まった。
「そっ! 今日って確か、地球で言う七夕の日でしょ? せっかくだし、皆で願い事でも書いてみない?」
「そうか、もうそんな時期か……しかし、肝心の笹はどうするんだ? 急に用意できる物でもないだろう」
「そこはそれ、事前にはやてに言って用意して貰いました!」
「笹ならここにあるで!」
「ノリが良いな」
なお、短冊を飾る為の笹は既にはやて達が用意しているらしい。食堂の部屋の隅に大きな笹が用意されており、その周囲では夏希やはやてだけでなく、他の局員達まで皆して短冊に願い事を書き始めていた。
「タナバタかぁ。地球にはいろんな文化があるのね……って、いちいち私のを覗こうとするな馬鹿スバル!!」
「えぇ~良いじゃんちょっとくらい~!」
「ヒコボシ様にオリヒメ様だっけ? 年に一度の、七夕の日にしか出会う事ができないなんて……なんてロマンチックなんだろう……!」
(エリオ君がヒコボシ様で、私がオリヒメ様だったら……な、何言ってるんだろう私……!!)
ミッドチルダには七夕の文化は存在しない為、スバル達を始め多くの局員達がこの七夕に興味を示しているようだ。スバルはティアナの短冊を覗き見ようとしたところを拳骨され、エリオは彦星と織姫の伝説にロマンを感じており、キャロは脳内でエリオと自分をそれぞれ彦星と織姫に置き換える妄想に浸ったりと、全員がそれぞれの反応を見せている。
「皆、随分興味津々のようだな」
「ここにいる大半は初めて知る文化だからな。それに最近は皆、自分の仕事で忙しい時期だ。軽い息抜きとしてはちょうど良いくらいだろう」
「そういう物か」
「そういうもんだよ。という訳で海之、せっかくだし何か書いてみたら? はいこれ、海之の分の短冊」
「……お前は随分用意が良いな」
「パパ~♪」
手塚や夏希、シグナム達が話をしていたその時、ヴィヴィオが自分の短冊を持って駆け寄って来た。
「どうした? ヴィヴィオ」
「ヴィヴィオね、ねがいごと書いた!」
「そうか。どんな事を書いたんだ?」
「えっとね……パパとママとおねえちゃん、それにみんなと、ずっとず~っといっしょにいられますようにって!」
(((((……なんて良い子ッ!!)))))
明るい笑顔で自分の願い事を言ったヴィヴィオに、その場にいた大半の局員達は一斉に涙腺が緩み、思わず感動して泣き出しそうになっていた。そんな一同の反応に手塚は苦笑いを浮かべた後、いつも通りの調子でヴィヴィオの頭を撫でる。
「ずっとず~っと一緒に、か。良い願い事だな」
「へへへ~♪」
「だが、それは笹に飾らないと意味がないな。あそこの笹に飾って来ると良い」
「うん!」
手塚に褒められたヴィヴィオはニコニコ笑顔で笹の方へと向かって行く。その様子を眺めてから、手塚は夏希から渡された短冊に視線を移す。
(願い事か……)
自分はこれまで、ライダー同士の戦いを止める為に、破滅に向かおうとしているライダー達の運命を変える為に戦い続けてきた。
しかし冷静に考えてみると、それはあくまでライダーとして戦っている時の願いである。ライダーの戦いと関係のない願い事については、これまでちゃんと考えた事がなかった。
いざ普通の願い事を考えてみると、これが思いつきそうでなかなか思いつかない物である。
「手塚さん、何か書けましたか?」
「! ハラオウンか」
手塚の隣の椅子にフェイトが座り込む。
「まだ何も書けていない……今まで、ライダーの戦いばかりだったからな。ライダーとしてではなく、自分自身の願い事まで考えた事は一度もなかった。それに……」
「それに?」
「……俺にとって……」
手塚は頑張って笑顔を作ろうとしていたが、それでもイマイチ優れない顔をしていた。
1つ目の理由は、先程自分が告げたように自分自身の願い事が思いつきそうで思いつかない事。
そして2つ目の理由は……
「俺にとって、七夕の日は……」
『斎藤雄一は、ライダーにならなかった事を悔やんでいる』
『手塚、しっかりしろ!!』
『2枚あるぜ……どっちが好みだ?』
≪FINAL VENT≫
『手塚を連れて逃げろ!!』
『お前は運命を変えるんだろ……!? 運命に決められた通りに死ぬのかよ!?』
『あの時占った……次に消えるライダーは……本当はお前だった』
『しかし運命は……変わる……』
『俺の占いが……やっと……外れる……』
『なぁ、目を覚ませよ手塚……』
『手塚……手塚ぁ!!』
『手塚ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』
―――七夕の日は、手塚が戦いの中で死んだ日でもあるのだから。
「ッ……すみません、不謹慎な事を……」
「良いんだ。もう過去の話だ」
フェイトから謝罪の言葉を受けるも、手塚はそれにあくまで笑顔で返す。過ぎた話を掘り返したところで、今が変わる事はないのだから。
「それに、今はこの世界に来れて良かったと思っている」
「え?」
「この世界に来てから、六課の皆に会う事ができた。六課の皆は、俺達の過去を知った上で受け入れてくれた」
手塚とフェイトが見据える先では、ティアナの短冊を覗こうとしたスバルと夏希が2人纏めてどつかれ、キャロが顔を赤くしてキャーキャー言っているのを見たエリオが「?」と首を傾げたり、はやての「全員の胸を揉んで更に大きくしたい」なんてふしだら過ぎる願い事の書かれた短冊をヴィータ達が処分しようとしたり、ヴィヴィオとなのはが一緒に短冊を笹に飾って笑い合ったりと、気付かぬ内にかなりのドタバタ騒ぎが発生している。そんな騒がし過ぎるこの光景が、手塚にとってはある意味で安らぎとなりつつあった。
「俺は今まで、ライダー達の破滅の運命を占ってきた。そしていつの日か、俺も死ぬ事になるだろうと……そう思い続けていた」
「手塚さん……」
「……だが今は、少し違う事を考え始めている。こうして皆が馬鹿みたいに騒いでいるところを、いつまでも眺めていたい。ここにいる皆と、ずっと楽しく笑い合っていたい……何となくそう思い始めている」
亡き
でも今は、仲間達と一緒に楽しく過ごしていきたい。
楽しく笑い合っていたいと、次第にそう考えるようになっていた。
それは手塚自身の、紛れもない本心だった。
「……なら、願い事は決まりですね」
「ん?」
「今、自分で言いましたよね? ここにいる皆と、ずっと楽しく笑い合っていたいって。それだけでも立派な願い事じゃないですか」
「そういう、物なのか……?」
「そういう物ですよ。こういう事って、あまり難しく考え過ぎると逆にわからなくなったりしますから……自分の本心に聞いて、自分の本心が答えた気持ち。それがその人の夢に繋がっていくんだと、私はそう思います」
「……そうか」
あまり難しく考える必要はない。
その時の自分が一番望んでいた気持ちを、そのまま願い事に繋げてみれば良いんだと。
そんな当たり前のような事に、手塚は今になって初めて気付かされた。
「なら、俺の願い事は決まったな」
「決まったみたいで良かったです」
「そういえば……逆に聞いてみるが、ハラオウンはどんな願い事を書いたんだ?」
「ふぇっ!? あ、えっと、その……な、内緒です!!」
「?」
手塚に聞かれて慌てて自分の短冊を隠すフェイトだったが、その顔はどこから見ても赤く染まっている。手塚は気付いておらず、ただ首を傾げる事しかできない。
(み、見せられない……どうしよう、今から書き直そうかな……で、でも自分の気持ちに正直になるとしたら、これはこれで……あぁもう、どうすれば良いんだろう……!!)
そんなフェイトの願い事が書かれた短冊。
そこには……
『これからもずっと、手塚さん達と笑って生きられますように』
手塚が抱いた夢と、同じような願い事が書かれていた。
しかし、わざわざ“皆”ではなく“手塚さん達”と1人だけ名前が目立つように書かれているという事は……まぁ、つまりはそういう事なのだろう。
To be continued……?
龍騎がリアルタイムで放送されていた頃、手塚が死亡した第23話はちょうど七夕の日でした。
だからこそ、このタイミングで七夕回を挟んでおきたかったのです。
ちなみに龍騎本編の時系列でも、手塚の死んだ日が実際に七夕の日だったかどうかは不明ですが、今作では一応そういう事にしておいて下さい。
ここで手塚が思いついた願い。これが後々、第56~第57話で二宮やオーディンに言い放った願いへと繋がっていくのです。
なお、笹は後にスカさん一味の襲撃で施設ごと燃えてしまった模様(無慈悲)
ちなみに他のライダー達が願い事を書いたらどうなるか?
(時系列的な意味で)既に死亡済みのライダーも含め、以下の通りになります。
二宮:生きられるなら他はどうだって良い
湯村:マンタ野郎も白鳥女も、歯向かう奴は全員ぶっ潰す!
健吾:ラグナちゃんとお兄さんが仲直りできますように
雄一:ルーテシアちゃんのお母さんが無事に目覚めますように
浅倉:戦 い た い
……はい、いつも通りな奴が大半です←
次回の更新については、またしばしお待ちを。
それでは。