という訳で7話目をどうぞ。今回も無駄に長いです。
戦闘BGM:果てなき希望
ピチョン……ピチョン……
水滴が落ちる音。
「…………ん、ぅ……」
その音が切っ掛けか否か、深い眠りに落ちていた美穂は意識が少しずつ戻ってきたのか、閉じていた目を少しずつ開き始める。彼女の視界にまず入ったのは、どこかもわからない暗い大きな倉庫の中。
「……ッ!?」
その場から立ち上がろうとした美穂だったが、両手が背の後ろで縛られており、起き上がる事はできない。しかし体を寝返りさせる事で、周囲に何があるのかを確認する事はできた。
「やぁ、お目覚めかな? 美穂さん」
「……!」
美穂の視界に入ったのは、大きな木箱の上に座っている人物と、その後ろに控えている黒服の男達。フェイトが着ている物と違い、着ている制服は上着が青色で、ブクブク太った体型をした白髪の男性。両手で杖を突きながら、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべているその人物の顔に、美穂は見覚えがあった。
「ジェームズ・ブライアン……」
「全く、酷いじゃないか美穂さん。せっかく君を手厚く保護してあげようと思ったのに、財布だけ盗んで逃げちゃうんだからさ」
「ッ……逃げるのは当然でしょ……アンタの目が、それを語っちゃいないじゃないか……!!」
「そんな事はないよ? 僕が君を助けてあげようと思ったのは紛れもない善意さ……まぁ、それも少しばかり事情が変わったけどね。おい」
「「はっ」」
青い制服を着た白髪の男性―――“ジェームズ・ブライアン”は指で合図し、後ろに控えていた黒服の男が2人ほど美穂に近付き、彼女の服を弄り始めた。
「な……お、おい、やめろよっ!!」
「うるさい、黙れ」
「大人しくしろ」
(ッ……ちょ、コイツ等、わざと変なところ触って……!!)
美穂が盗んだ財布をどこに隠したのか確認している男達だったが、その口元はニヤニヤしていた。男達はわざと美穂の体をいやらしく触りつつ、コートの内側のポケットに隠されていた財布を発見した。
「少将、ありました!」
「あぁ、ご苦労」
美穂から財布を取り返した男はブライアンに財布を渡し、ブライアンは財布を開けて中身を確認する。彼が取り返したかったのは、財布に入っている何枚もの札束……ではなく、財布その物に細工を施す事で隠していた、掌サイズの小さな紙袋だった。
「いやぁ~危なかった。無事に取り返せて良かったよ」
「ッ……それ、まさか……」
そんな紙袋が巧妙に隠されていた事には、流石の美穂も気付かなかったようだ。ブライアンは安堵した様子で紙袋の中身を確認してから、それを美穂にも見せつける。
「そう、こういう事さ♪」
「……ッ!!」
紙袋を振る際に鳴る、サラサラという音。それを聞いた美穂は、それだけで紙袋の中身が何なのか、理解させられる事になった。
「まさか、こんな事になるとは俺も想定外だったな……」
あの後、手塚は再び逃走した美穂と合流するべく、フェイトの運転する車に乗って捜索を続けていた。手塚はフェイトから渡された資料を見て、先程フェイトに捕らえられ、通報で駆けつけた捜査部の面々に連行された2人組の男達を思い出す。
「麻薬密売組織の一員が、白昼堂々街中を走り回っていたとは……よほど何かに焦っていると見た。だとすれば、急いで見つけ出さなければ彼女が危ない……!」
「組織の一員に追われているとなると、世間に知られてはいけない何らかの情報を知っている可能性があります。まずは、その霧島美穂さんという人を見つけて保護しましょう。組織を逮捕に持っていきたいところですが、今はその人の保護が最優先です」
「……しかし、少し意外だったな」
「え?」
「さっきの連中を捕まえた時、ハラオウンが鋭い目付きで連中を睨んでいるのを見たからな。犯罪者に対しては一切の容赦がないと思っていたが……」
手塚が口にした言葉に対し、フェイトは少し間を空けてから口を開く。
「……確かに、どんな事情があれどスリも立派な犯罪です。ですが、たったそれだけの事で、犯罪者を恨む訳にもいきません」
「ほぉ……何故だ?」
「人は変われます。その人が誰かの助けを必要としているなら……それでその人が変われるのだとしたら……局員である私達が、それを支えてあげなければならない。罪を憎んで人を憎まず……それが私の信じる正義です」
「!」
この時、手塚はフェイトの表情を見て気付いた。今、彼女の表情には熱い物があった。霧島美穂の事を他人事だとは一切思っていない。そんな意志を、彼女の目から確かに感じ取れた。
「……そうか」
手塚は伊達メガネを外し、表情を切り替える。
「ならば、一刻も早く彼女を見つけ出さなければな」
「はい……助けましょう、必ず!!」
その数十分後だった。
キィィィィィン……キィィィィィン……
「「ッ!?」」
2人が思わぬ方法で、霧島美穂を発見する事になったのは。
場所は戻り、どこかの大きな倉庫……
「ねぇ美穂さん。改めて聞かせて貰うけど、僕の下で保護される気はないかい?」
「ッ……誰が……!!」
「そう、残念だよ」
ブライアンは座っていた木箱から立ち上がり、ズボンの尻に付いた汚れを両手で払ってから美穂に近付く。
「だとしたら悪いけど、目撃者は誰1人見逃す訳にはいかないんだよねぇ。ほら、僕も組織が動きやすいに情報操作とかしてる上に、こんな物まで持ってる訳だからね。僕が組織と繋がっている事が公にバレたりすると結構マズいんだよ……ただまぁ」
「ぐ……!?」
黒服の男達は美穂を無理やり立たせ、ブライアンが美穂の首を掴む。
「ただ始末するのも、それはそれで勿体ない……始末するのは、ちょっとばかり楽しんでからかな」
「な、何を……ッ!?」
ブライアンは美穂が着ていた服の胸元を両手で掴み、無理やり左右に開いた。それによりボタンが弾け飛び、服の下に着けていた黒いブラが露わになる。それにより美穂はブライアンがやろうとしている事に気付き、顔が一気に青ざめていく。
「へぇ、なかなかセクシーな下着を着けてるじゃないか」
「お、おい!? やめろ、やめろってば!?」
「あぁちなみに、叫んで助けを呼ぼうとしても無駄だよ。ここの倉庫は今の時間帯なら誰も人は通らない。そもそも民間人は原則立ち入り禁止の区域だからね。それにさぁ……君だって同じ汚い人間だろう?」
「!?」
汚い人間。その言葉を聞いた途端、抵抗していた美穂の動きがピタリと止まる。それを見たブライアンは今まで以上に下卑た笑みを浮かべて話を続ける。
「な、何で……」
「世間を欺いてる身としてね、直感で何となくわかるのさ。君はミッドチルダに来てから何度もスリを働いてきたようだけど……それだけじゃない。過去に何か、もっと大きな罪を犯している」
「……ッ!!」
「その目の動揺……やっぱりね。君も何となく自覚しているはずだ。君みたいな汚れに汚れ切った人間は、この社会で生きていくなんて到底できやしない。更生しようとしたところで、どうせまた同じ事を繰り返す」
「ち、違う……アタシ、は……ッ……」
違う?
何が違うのか。
自分は元いた世界で一体何をしてきた?
元いた世界でも、自分は多くの人達からお金を騙し取ってきた。
この男が言っている通り、取り返しのつかない罪も犯している。
そして死んだ後も、こうしてまた他人からお金を盗んでいる。
それなのに、一体何が違うというのか。
全て事実じゃないか。
道を踏み外した自分に、今更何を否定する権利があるのか。
ここは元いた世界じゃない。
叶えたかった願いも二度と叶えられない。
自分から願いを取ったら……自分にはもう、罪以外に何も残らない。
「ッ……ぅ、う……!!」
美穂の目から涙が流れて落ちていく。それを見たブライアンは確信した。
折れた。
これで彼女を僕の物にできる。
「さて、美穂さん。君のこの美貌を捨てるのが勿体ないと思っているのは本当の事だ。そこで最後にもう1回だけ聞かせて欲しい……僕の下で保護されるつもりはないかな?」
「ッ……アタシ、は……アタシは……」
「そこまでです!!」
「「「「「ッ!?」」」」」
倉庫の入り口が轟音と共に破壊される。ブライアンや黒服の男達は驚愕し、美穂も破壊された入り口の方に視線を向けると、舞い上がる煙の中からバリアジャケットを纏ったフェイトが、バルディッシュを構えて姿を現した。
「時空管理局執務官のフェイト・T・ハラオウンです、全員その場から動かないで下さい!!」
「ブ、ブライアン少将……すみま、ぜ……ッ……!!」
よく見ると、倉庫の入り口を見張っていたと思われるサングラスの強面男性が、既にボロボロなままバインドで拘束されている姿もあった。それよりも、ブライアンにとってはここの場所がバレていた事に驚きを隠せない。
「ば、馬鹿な!? 何故この場所が分かった!?」
「ッ……あなたは、ジェームズ・ブライアン少将!? 何故あなたがここにいる!! まさか、組織と繋がりを持っていたのは……!!」
「く、くそ!! お前等、あの女を潰せ!!」
「「「「「はっ!!」」」」」
黒服の男達が一斉に銃を構え、フェイト目掛けて一斉に撃ち始める。しかしフェイトは飛んでくる銃弾をヒラリヒラリとかわし、黒服の男達に次々とバインドをかけ拘束していく。
「「「「「ぐわぁっ!?」」」」」
「残るはあなた……いや、お前だけだ!! ジェームズ・ブライアン!!」
「くっ!?」
気付けば部下は全員フェイトに拘束され、残っているのはブライアンただ1人だった。ブライアンの先程までの余裕の表情が一気に崩れる中、フェイトは美穂の方に振り向き、優しい笑顔で呼びかける。
「霧島美穂さんですね? あなたの事は、手塚さんから話は聞いています」
「え……海之が……?」
「安心して下さい。今、
「く、くそ……動くな!!」
「!? あぐっ!?」
ブライアンは美穂を強引に抱き寄せ、懐から取り出した銃を彼女の頭に突きつける。それを見たフェイトは足を止める。
「ッ……卑劣な……!!」
「は、はははははは!! そうか、君かぁ、フェイト・T・ハラオウン……君の事はよく知っているよ!! 過去に大罪を犯した分際で、よくもまぁ偉そうな口調でそんな事が言えるものだね!!」
「え……?」
ブライアンの台詞に、美穂はフェイトの方に視線を向ける。
「良いかい? この女はスリを働いてるんだよ? それどころか、この女は元いた世界でも、多くの罪を犯している事が既にわかっているんだ……!!」
「ッ……」
ブライアンの口汚い言い方に、美穂は再び表情が曇っていく。
「ふざけるな、そんな事で―――」
「もう良い!!」
「―――え?」
突然の美穂の叫び声に、フェイトは意識が美穂の方に向いた。
「もう良いよ!! これは、アタシの問題なんだから!! アタシの事なんか放っといてよ!! アタシには、誰かに助けて貰う資格なんてない……ないんだよ……ッ……!!」
「美穂、さん……」
フェイトのバルディッシュを握る力が少しずつ弱まりかける。それを見たブライアンはクククと笑いかける。
「ほぉら、本人だってこう言ってるぞ? こんな汚れた人間を助けたところで一体何になる? 助けたところで、また同じ罪を重ねるだけ。こういう人間にはもう、まともに生きる道などありは―――」
「貴様如きが知った風な口で語るなぁっ!!!」
「ひぃいっ!?」
「……ッ!?」
フェイトの怒号が倉庫内に響き渡る。ブライアンは思わず怯み、美穂もビクッと怯えた表情を見せる。
「……確かに私は、美穂さんの事はよく知らないし、そもそも今初めて出会ったばかりだ。だから、美穂さんがこれまでにどんな罪を犯してきたのかは、私にわかるはずもない」
「ふ、ふん、それなら何故―――」
「けど、それが何だと言うんだ!!」
「ッ!?」
「確かに人間は、時に間違いを犯す事だってあるかもしれない。かつての私もそうだった……でもそれは、変わる事を諦めて良い理由にはならない!! 人は自分の意志で変わる事ができる!! 1人では無理でも、誰かが支えてくれる!! 諦めない限り、人は運命を変えられるんだ!!!」
「……ッ!!」
「く……こんの、小娘の分際でぇっ!!!」
フェイトの言い放った言葉に、美穂の目から再び涙の粒が零れ落ちていく。それに対し、ブライアンは完全に余裕をなくした様子でフェイトにも銃を向けようとした……が、ブライアンの抵抗はそこまでだった。
バシィンッ!!
「……は?」
直後、右方向から飛んできた鞭のような何かで、ブライアンの構えていた銃が叩き落とされる。ブライアンは何が起きたのか理解が追いつかず、数秒経過してから銃を叩き落とされた事に気付く。
「な、何が起き……ぐわっ!?」
当然、その隙を見逃すフェイトではなかった。ブライアンの体にもバインドが巻きつけられ、ブライアンは身動きが取れないまま地面に倒れる。
「言ったはずだ……
「!!」
美穂は右に振り向いて、何が起きたのかを理解した。倉庫の壁にドラム缶や木箱と共に置かれている、等身大サイズの割れた鏡……そこにはエビルウィップを構えているライアの姿があったのだ。ライアは鏡の中から飛び出し、変身を解いて手塚の姿に戻ってから、スーツの上着を脱いで美穂に着せる。
「危ないところだったな」
「海之……どうして、ここが……?」
「ここへ来る途中、モンスターの気配を辿ってな」
それは、数十分前……
「手塚さん、あれって……!?」
「あのモンスターは……!!」
『ギシャシャシャシャシャ……!!』
車に乗っていた手塚とフェイトが見つけたのは、建物から建物に移動するように窓ガラスに映っているゼノバイターの姿だった。ゼノバイターは手塚とフェイトの方には見向きもせず、何かを探しているかのようにひたすら移動を続けている。
「ッ……霧島美穂さんは私が探し出します、手塚さんはモンスターの方を……!!」
「いや、待て」
「ッ!?」
「あのモンスター、何かを探している……?」
そこで手塚は思い出した。
ゼノバイターが現れたのは、ギガゼールと戦っているファムに自分が加勢しようとした時だ。
それなら何故、あのタイミングでゼノバイターが現れた?
手塚を襲う為か……否、それは違う。今現在、ゼノバイターは手塚に対して見向きもしていないからだ。
ならば、フェイトが逮捕した2人組の男達か……恐らくそれも違う。現在ゼノバイターが向かっているのは逮捕された男達がいる方角とは真逆だからだ。
……だとすれば、残された可能性は一つ。
「……ハラオウン、あのモンスターの後を追ってくれ!!」
「え!? どうして……」
「モンスターは執念深い!! 一度狙った獲物は、捕食するまでどこまでも追い続ける……あのモンスター、恐らく霧島美穂を狙っている可能性が高い!!」
「!! ……わかりました!!」
手塚の言おうとしている事にフェイトも気付いたのか、ゼノバイターが移動している方角に車を走らせる。こうしてゼノバイターの後を追い続けた結果、今いる立ち入り禁止区域内の倉庫跡地まで辿り着き、無事に美穂を見つける事ができたのだ。
「じゃあ、そのモンスターは……」
「あぁ。俺が鏡の前に陣取っていた事で、迂闊に近付けなかったようだが……どうやら我慢の限界らしい」
キィィィィィン……キィィィィィン……
『ギシャシャシャアッ!!』
「ひ、ひぃ!? 何だこいつは!!」
「「「「「う、うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」」
そして今、先程までライアが陣取っていた鏡の中からゼノバイターが飛び出してきた。ブライアンや部下達がゼノバイターを見て恐怖の悲鳴を上げる中、ゼノバイターは美穂に向かって襲い掛かろうとしたが……
「でやぁっ!!」
『ギシャ!?』
フェイトのハイキックがゼノバイターの顔面に命中し、ゼノバイターは再び鏡の中に押し戻される。そして手塚もカードデッキを取り出し、鏡の前に立つ。
「ハラオウン、彼女を頼む!」
「わかりました、気を付けて!」
手塚はカードデッキを突き出し、ベルトの出現と共に変身の構えに入る。
「変身!」
手塚はライアの姿に変身し、ゼノバイターの後を追ってミラーワールドへと突入。その様子を、その場に座り込んでいた美穂は見ている事しかできなかった。
「どうして……どうして、アタシなんかの為に……」
「……きっと」
そんな美穂に、フェイトはしゃがみ込んで彼女の肩に手を置く。
「手塚さんは言ってました。モンスターから人を守る為に自分は戦っていると……だからこそ、あの人はあなたの事も助けようとしたんだと思います。まぁ、出会ってまだ数日しか経っていない私が言うのも何ですけどね」
「……何だよ、それ……どこまでも、お人好しだな……」
美穂は涙手でを拭った後、自身もカードデッキを取り出し、ライアが突入していったばかりの鏡の方へとその視線を向ける。
その目にはもう、先程までのブレは存在しなかった。
「これ以上は逃がさんぞ……!!」
『ギシャシャシャシャ!!』
ミラーワールド。倉庫の中から飛び出たライアは、ゼノバイターが振り上げて来るブーメランをエビルバイザーで上手く防御しつつ、エビルウィップで的確にゼノバイターを攻撃していた。
『ギギギギギ……ギシャア!!』
ゼノバイターは大きく距離を取り、ライア目掛けてブーメランを投擲する。しかし……
「ッ……はぁ!!」
『!? ギシャッ!?』
ライアは飛んできたブーメランにエビルウィップを巻きつけ、そのまま遠心力を利用して勢い良くゼノバイターに叩きつけた。予想外過ぎる攻撃にゼノバイターはたまらず大ダメージを受け、ライアはゼノバイターはダメージで動けない隙にカードを装填しようとした……その時だ。
『キシャアッ!!』
「ぐぁっ……何!?」
ライアの背中に、ゼノバイターの物ではないブーメランが直撃した。突然のダメージに驚いたライアは、ブーメランの飛んできた方向に振り返ると、そこには赤い体色で女性らしい体つきをしたカミキリムシの怪物―――“テラバイター”の姿があった。
「もう1匹いたのか……ぐっ!?」
『キシシシシッ!!』
『ギシャシャシャシャ!!』
テラバイターまで乱入してきた事で、形成が一気に逆転されてしまった。テラバイターがブーメランで何度も斬りかかり、ライアがそれをエビルバイザーで防ごうとするも、そこに体勢を立て直したゼノバイターがブーメランで斬りつけてくる。
(くっ……反撃の隙が見えない……!!)
『『シャアッ!!』』
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
更には2体の繰り出したキックが命中し、吹き飛ばされたライアは電柱に叩きつけられてしまう。そこへテラバイターが甲高い鳴き声を上げながら容赦なくブーメランを振り下ろし、ライアはエビルバイザーで何とか防御するものの、テラバイターの力が強く、上手く立ち上がれない。
(このままでは……!!)
その時。
ドシュッ!!
『キシャァッ!?』
「!?」
テラバイターの胴体を、どこからか飛んできたブランバイザーの刃が貫いた。胴体を貫かれたテラバイターが苦痛で怯んだ際、ライアはその隙に素早く起き上がると共に、テラバイターの胴体に刺さっているブランバイザーの持ち手を右手で掴み勢い良く切り裂いた。
「これは……」
「海之!」
「!」
その時、倉庫の屋根から飛び降りてきたファムが、背中のマント広げてライアの隣に華麗に着地した。ライアは彼女が駆けつけてきた事に驚く。
「霧島!? 何故……」
「……アタシを守って欲しいって、アンタに頼んだでしょ? アンタはその約束を守ろうとしてくれた。これはそのお礼」
「……律儀な奴だ」
『ギシャァァァァァ……!!』
『キシシシシシ……!!』
そうしている間に、テラバイターとゼノバイターが再びブーメランを構え直していた。それを見たライアはブランバイザーをファムに差し渡す。
「ならば霧島、俺と共に戦って欲しい。モンスターから人間を守る為に」
「うん、良いよ……それから、アタシの事は美穂って呼んで」
「……わかった。行くぞ、美穂」
「うん!」
『『シャアッ!!』』
ライアとファムも構えを取り、それぞれテラバイターとゼノバイターを相手取る。ライアはエビルバイザーでテラバイターの攻撃を受け止め、ファムはブランバイザーでゼノバイターのブーメランを叩き落とし、ゼノバイターにブランバイザーを突き立て大きく吹き飛ばす。
『ギシャシャア!?』
「海之!! トドメはアタシが刺すから、少しの間だけ引きつけて!!」
「わかった!!」
≪ADVENT≫
『『ギシャアッ!?』』
ライアが召喚したエビルダイバーがゼノバイターを薙ぎ倒し、ライアはゼノバイターが落としたブーメランを拾い上げてテラバイターを斬りつける。斬られたテラバイターがゼノバイターを巻き込む形で吹き飛ぶ中、ファムはブランバイザーにカードを装填し、トドメの体勢に入った。
≪FINAL VENT≫
『ピィィィィィィィィィィィィッ!!』
ファムの手にウイングスラッシャーが出現し、更にブランウイングが飛んで来たのを確認したライアは素早くその場から離脱。そしてブランウイングが羽ばたくと共に突風が起こり、テラバイターとゼノバイターを纏めてファムのいる方向へ吹き飛ばし……
「はぁあっ!!!」
『『シャアァァァァァァァァァッ!!?』』
ファムが勢い良く振り回したウイングスラッシャーで、テラバイターとゼノバイターは2体纏めて胴体を切り裂かれて呆気なく爆死。爆風の中から現れたエネルギー体はエビルダイバーとブランウイングが摂取し、2体はそのままどこかに飛び去って行った。
「ふぅ……」
「美穂」
一息ついていたファムに、ライアが問いかける。
「お前なら、モンスターを利用して奴等を襲わせる事だってできたはず。しかしお前はそれをしなかった……それは何故だ?」
「……思ったんだよ」
ファムがライアの方に振り返る。
「ブランウイングに人を襲わせるなんて……そんな事だけは、絶対にやっちゃいけないって」
『あぁ、それからさ! もうやめような、ライダー同士の戦いは』
『……うん! 考えとく』
「そんな事したら、ライダーの力で人を殺した事になるから……“アイツ”との約束を、破ってしまうような……そんな気がしたから」
「! ……そうか」
ライアはすぐにわかった。ファムの言う“アイツ”が、誰の事を指しているのか。その“アイツ”は彼女だけでなく、自身にも影響を与えてくれた人物なのだから。
「美穂。やはり……お前の中にはまだ、人の優しさが残っているんじゃないのか……?」
「……どうしてそう思うのさ?」
「人の優しさがなければ……あの時、俺を助けるようなマネはしないはずだ。それに……」
「それに?」
「……占いの結果に出たからな。俺の占いは当たる」
「……ぷっ! 何だよそれ、変なの」
それから数分後。
2人はミラーワールドから帰還し、フェイトと合流した。当然、ブライアンとその部下達は全員、フェイトが呼んだ武装隊によって逮捕・連行されていく事となった。
「それでは、霧島美穂さん……あなたの身柄は機動六課で預かる事になります」
「……うん、わかってる」
しかし事情があったとはいえ、美穂がスリを働いた以上、フェイトもそれを見逃す訳にはいかない。美穂の両手もバインドで縛られる事になったが、美穂はそれに対して一切抵抗はしなかった。
「安心して下さい。事情が事情なので、美穂さんへの措置はそれほど重い物にはさせません」
「うん……あ、あのさ!」
「はい?」
「……正直、心の整理がまだ完全には付いてなくてさ……元の世界で、アタシが犯した罪……それを話すのは、今はまだ少し待って欲しいっていうか……も、もちろん、いつかちゃんと話すからさ! だから、その……」
「……ふふ♪ 大丈夫ですよ。その事は、美穂さんの気持ちに整理が付いてからでも構いません」
「うん……ありがとう」
「今の美穂さんは一人じゃありません。もし一人で変わるのが無理なら……誰かの支えが必要なら……その時は、いつでも私達を頼って下さい」
フェイトは美穂の頭を優しく撫でる。
「美穂さん、あなたの運命だって変えられます。あなたはもう、一人じゃないから」
「うん……ありがとう……ッ……ありが、と……う……!!」
俯いた美穂の顔から、再び雫が流れ落ちていく。それに気付いたフェイトは彼女を抱き寄せ、まるで母親のように彼女の頭を優しく撫で続ける。手塚はそんな様子を見て静かに微笑み、手に持っていたコインを指で軽く弾いて宙に浮かせるのだった。
その日の深夜……
「くそ……絶対許さんぞ、あの小娘共が……!!」
逮捕されたジェームズ・ブライアンはと言うと、現在は時空管理局地上本部まで連行され、待機を命じられているところだった。少将という高い地位の人間である関係上、下手に逮捕されたという事実を世間に公表すれば、時空管理局に対する世間の信用が失われかねない。そう判断した管理局上層部の判断による物だ。
(だが見ているが良い……“あの方々”は僕の事を重用してくれている、すぐに罪は揉み消される……管理局がこの世に存在する限り、誰も僕を裁く事なんかできやしない……!!)
フェイトや美穂に逆恨みしていた彼は、これから先の事を考えてクククと小さく笑う。
しかし、その時が訪れる事は永遠になかった。
キィィィィィン……キィィィィィン……
「……ん?」
ブライアンが座っている椅子、その背後にある窓ガラス。その窓ガラスがグニャリと歪み始めた。
「な、何だ……!?」
その数秒後、部屋からはブライアンの断末魔が響き渡った。警備員が駆けつけた頃には、既にブライアンは部屋からその姿を消してしまっていたという……
「餌は与えてやった。今日の分はこれで満足する事だな……」
『『グルルルルルルル……』』
To be continued……
リリカル龍騎StrikerS!
美穂「霧島美穂、これからよろしく」
はやて「フォワード分隊、出動の時や!!」
???「飛ばすぜ、しっかり掴まってな!!」
手塚「コイツ等、何故レリックを狙っている……?」
キャロ「エリオ君ッ!!!」
戦わなければ生き残れない!