リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

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今回は意外と早く書けた為、ちゃっちゃと更新。

最近、何となく指パッチンの練習をしてみたら、ちょっとずつですが音を鳴らせるようになりました。
よし、これでベルデの変身ポーズを真似できるな!←

そんな呟きはさておき、今回のお話をどうぞ。











BGM:クライマックス4










エピソード・ファム 7

「な……どういう事なの……!?」

 

ドゥーエは開いた口が塞がらなかった。彼女が双眼鏡で見据えている先で、成瀬率いる不良集団が夏希を拷問していたかと思えば、そこへ二宮が探していた青年が姿を現し、いきなりモンスターを呼び出して大量殺戮を開始したのだ。想定外過ぎる事態を前に、彼女は思考が追いつかないでいる。

 

(あれって確か、鋭介が探していた城戸真司って奴だったわよね? 人殺しを嫌うお人好しな馬鹿って聞いてたけど、思いっきり真逆の事しちゃってるわよ……!?)

 

彼女が二宮から聞いていた真司の人物像と、双眼鏡を覗いた先で真司が行っている行為は全くと言って良いほど結びつかない。これは一体どういう事なのか。二宮の情報が間違っているのか、それとも自分が情報を聞き間違えただけなのか。その真実を確かめるべく、彼女は急いで通信端末を操作し、二宮に連絡を取る事にした。

 

『ん、ドゥーエか。どうした? そっちで何か動きでもあったか』

 

「それどころじゃないわ。あなたが探してた城戸真司って男、今こっちに現れたわよ」

 

『おいおい。城戸の奴、よりによってそっちの方に現れやがったのか……で、奴は今何をしてる?』

 

「大量虐殺し始めたわよ。あの不良共に対して」

 

『……何だと?』

 

報告を聞いた途端、二宮が発する声のトーンが少しだけ変化した。それによって、自分が今見ている光景は二宮も想定していない事態なのだとドゥーエは把握した。

 

『本当なのか、ドゥーエ』

 

「えぇ。今の時点で何人も殺されてるわ。捕まってる霧島美穂や人質の女の子がいる中でもお構いなしよ」

 

『……やっぱりそう来るか』

 

「やっぱり? どういう事よ」

 

『聞け、ドゥーエ。奴がいなくなるまで、そのままそこで監視を続けろ』

 

「は? ちょっと、ちゃんと説明しなさいよ」

 

『事情は後で話す。とにかく今は奴を監視しろ。絶対に見つかるなよ』

 

「え、ちょっと鋭介!? ……あぁもう」

 

詳しい事情を語らず一方的に命令した後、ドゥーエが了承する前に一方的に通信を切ってしまった二宮。彼の人使いの荒さに頭を抱えたくなったドゥーエは、諦めた様子で再び双眼鏡を覗き込む。

 

(! 西の方角から、魔力が2つ……)

 

しかしその前に、ドゥーエは自分が今いるビルの西方向から2つの魔力が接近して来ている事を察知。恐らく管理局の魔導師だろうと推測した彼女は、身に纏っていたマントのフードを深く被り、マントが有する認識阻害機能を駆使して身を潜めながら監視を続ける事にした。

 

(あ~あ、本当に面倒な仕事。早く来てくれないかしらねぇ鋭介ったら……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……フン」

 

「ッ……!!」

 

暗黒龍ドラグブラッカーが不良達に襲い掛かっている中、この場から逃げ出そうとした成瀬の行く手を阻むように窓ガラスの前に立った漆黒の戦士―――仮面ライダーリュウガ。彼が醸し出している威圧的な雰囲気に、成瀬はカードデッキを構えていた左手をガタガタ震わせながらゆっくり後ずさりしていく。

 

(な、何だよコイツ……本当に人間なのかよ……!?)

 

震える左腕を右手で無理やり押さえながら、成瀬は目の前のリュウガに恐怖していた。何も喋らず、ただ1歩1歩近付いて来ているだけのリュウガに対し、彼の心は底知れない恐怖に支配されようとしていた。流石の彼も理解はできていた。

 

このまま立っていたら殺される……という事に。

 

「……ハッ!!」

 

「くっ!?」

 

リュウガの繰り出して来た右フックを前転でかわした成瀬は、立ち上がると同時にカードデッキを窓ガラスに向ける。ベルトを腰に装着した成瀬がしゃがんだ直後、彼の頭上をリュウガの回し蹴りが通過し、素早く後退した成瀬は変身ポーズも取らずにカードデッキをベルトに装填する。

 

「変身ッ!!」

 

成瀬はアスターに変身した後、すぐに駆け出してリュウガに向かって右ストレートを放つ。しかしリュウガは体を少し反らすだけで難なくその一撃を回避し、カウンターとして1発のパンチをアスターの顔面に炸裂させる。

 

「がっ……このぉ!!」

 

「フン!!」

 

「ぐはぁ!?」

 

負けじと繰り出した蹴りも、リュウガの右手で叩き落とされ、直後に左手の拳がアスターの胸部を殴りつける。後ろに数歩下がってから倒れたアスターにリュウガが向かって行く一方、最初に窓ガラスから飛び出してきたスコングナックラーはドラグブラッカーの尻尾で壁に叩きつけられていた。

 

『グオォォォォォン!!』

 

『グゴォ!?』

 

「んん~っ!?」

 

ドラグブラッカーがスコングナックラーを攻撃するたびに、その衝撃でビルが地響きに襲われる。縛られたまま身動きが取れないラグナが丸まりながら悲鳴を上げ、同じく身動きが取れない夏希はラグナを助け出すべく、この状況を打破する方法がないか周囲を探る。

 

(ッ……アレは……!!)

 

そんな夏希の目に映ったのは、少し離れた位置に落ちているファムのカードデッキ。成瀬がリュウガの攻撃を前転でかわした際、その拍子に彼の懐から落ちたのだろう。夏希はスコングナックラーがドラグブラッカーに攻撃されているのを確認し、チャンスと言わんばかりに窓ガラスの方へ視線を向ける。

 

「ブランウイング……頼ん、だ……ッ!!」

 

『ピィィィィィィィッ!!』

 

スコングナックラーの注意が逸れているおかげで、窓ガラスから飛び出す事ができたブランウイング。ブランウイングが素早く通過すると共に、その翼で夏希の両腕を吊り上げていた鎖が切断され、両腕が自由になった彼女は木箱の上からずり落ち、地面に這いつくばった状態でカードデッキに手を伸ばす。

 

(せめて……ラグナちゃん、だけでも……!!)

 

何とかカードデッキを掴み取った夏希は、両足を厳重に縛っている鎖もブランウイングに切断して貰い、這いずりながらラグナの方へと近付いて行く。そんな彼女達を他所に、リュウガと戦闘中だったアスターは窓ガラスの近くまで叩きつけられていた。

 

「ハァ!!」

 

「ぐはあぁっ!?」

 

『グゴォォォォォォッ!?』

 

更にその横では、ドラグブラッカーの突進を受けたスコングナックラーが吹き飛び、そのまま窓ガラスを介してミラーワールドに押し戻されていく。そしてアスターの前方からは、未だ無傷のリュウガが迫り来ようとしていた。

 

(くそ、駄目だ……コイツには勝てない……ッ!!)

 

こうなれば逃げるしかない。そう判断したアスターは横に転がってリュウガの踏みつけをかわし、急いで窓ガラスへと飛び込んで行った。アスターが逃げ去ったのを見たリュウガは数秒だけ窓ガラスを見つめた後、その視線を別方向へと移す。

 

「ひっ!?」

 

「……ッ!!」

 

リュウガが見据える先では、ボロボロながらも何とか力を振り絞って、ラグナの両手を縛っている縄を解こうとしている夏希の姿があった。既に猿轡を取って貰っているラグナは怯えた表情を浮かべ、夏希はラグナを守るように彼女を後ろに下げる。

 

「大丈夫……死なせない、から……!!」

 

そう言ったところで、不良達にズタボロになるまで殴られ続けた今の夏希では、とても変身してまともに戦えるような状態ではない。そしてリュウガの方も、そんな事は知った事ではないと言った様子で夏希達に向かって1歩ずつ接近し始める。

 

「む、無理だよ夏希さん……死んじゃうよ……!!」

 

「大、丈夫、だって……ぐぅ!?」

 

立ち上がろうとしても、体中の傷の痛みがそれをさせてくれない。苦悶の表情を浮かべる夏希に対し、リュウガは右手をゆっくり上げながら夏希に迫って行く。

 

「な、夏希さん……!!」

 

「ッ……!!」

 

その時……

 

 

 

 

 

 

ズキュキュゥンッ!!

 

 

 

 

 

 

「―――ッ!」

 

どこからか飛んできた2発の魔力弾が、猛スピードで飛来しながらリュウガを狙った。直前で気付いたリュウガは右手でそれを防御するが……

 

ズドオォンッ!!!

 

「ヌゥ……!?」

 

その直後に飛んで来た強力な一撃が、リュウガを無理やり押し退けた。それを見た夏希とラグナが振り向いた先には、それぞれのデバイスを構えたバリアジャケット姿のティアナとヴァイス、そしてエビルバイザーツバイを弓のように構えたライアサバイブの姿があった。

 

「ッ……ティア、ナ……?」

 

「お兄ちゃん、手塚さん!!」

 

「2人共、無事か!?」

 

「良かった、やっと見つかった……!!」

 

「って姐さん!? どうしたんだよその傷!!」

 

ティアナとヴァイスが急いで夏希とラグナに駆け寄る中、ライアサバイブはエビルバイザーツバイを構えた状態のままリュウガを睨みつける。3人の射撃を受けたにも関わらず、リュウガはそれでもあまりダメージを受けている様子はなかった。

 

「お前、何者だ? 龍騎とそっくりの姿をしているが……」

 

「……」

 

ライアサバイブに問いかけられても、リュウガは何も喋ろうとせず、今度はライアサバイブに向かって歩みを進めようとする。ライアサバイブはいつでも撃てるようにエビルバイザーツバイを構え、リュウガとライアサバイブの戦いが始まる……かと思われたが。

 

「……!」

 

突如、何かに気付いたリュウガはその場で歩みを止め、自身の右手を見据える。その右手は……少しずつ粒子化が始まろうとしていた。

 

「……時間切れ(・・・・)か」

 

「何?」

 

時間切れ(・・・・)。そう呟くと共にリュウガの右手から全身へと粒子化が広まっていき、リュウガはクルリと背を向け窓ガラスの方へと向かい出す。

 

「待て……くっ!?」

 

『グオォォォンッ!!』

 

後を追いかけようとしたライアサバイブだったが、その足元にドラグブラッカーの黒い炎を放射され、彼の行く道を遮ってしまう。ライアサバイブが足止めされている間、窓ガラスに手を伸ばしたリュウガは吸い込まれるように窓ガラスへと消えて行き、それに続くようにドラグブラッカーも窓ガラスへと飛び込んで行ってしまった。

 

「ッ……あの黒い龍騎……まさか、アレが夏希の言っていた……」

 

「姐さん、しっかりしろ!!」

 

「夏希さん!!」

 

ライアサバイブの後方では、ティアナとヴァイスによって夏希の応急処置が行われている。救援が駆けつけた事で安心したからか、力が抜けて倒れた夏希はヴァイスに抱き止めて貰ったまま動けなくなっていた。

 

「皆……どうして、この場所が……?」

 

ここに連れて行かれるのを見た奴がいた(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)って、手塚の旦那が突き止めたんだよ。その後は途中で俺達が合流した」

 

「救急車も呼びましたから、もうじきここに到着するはずです!」

 

「……そっか……」

 

何にせよ、これでラグナは無事に助けられた。そう安堵した瞬間、体中の痛みが先程までよりも更に増した夏希は意識が少しずつ遠のき始めるが、その前にある事を3人に伝えなければならなかった。夏希は痛みでガクガク震える右手で、窓ガラスの方を指差した。

 

「海、之……急い、で、アイツ、追いかけ、て……もう1人、の……ライダー、を……狙ってる、みたいだか、ら……」

 

「!? 何……!!」

 

「このままじゃ、殺される……早、く……アイ、ツ、を……止……め……」

 

「……夏希さん? 夏希さんっ!!!」

 

最後まで言い切る事もできず、とうとう夏希は意識を失ってしまった。力尽きる前に夏希が告げた話。それが真実ならば、急いでリュウガを追いかけなければならない。

 

「俺は奴を追う!! ヴァイス、ランスター、彼女を頼む!!」

 

「は、はい!!」

 

「おう、任せろ!!」

 

夏希の事はひとまずティアナ達に任せ、ライアサバイブは急いで窓ガラスへと飛び込んでミラーワールドに突入していく。そしてティアナ達の方も、救急車が到着するまでの間、迅速かつ的確に応急処置を施していく。

 

「夏希さん!! 死んじゃ嫌だよ、夏希さん!!」

 

「落ち着けラグナ!! 死なせやしねぇよ、俺達が……!!」

 

「はい……この人はまだ、死なせてはいけない……!!」

 

2人から見て、夏希の傷は酷いなんてレベルじゃない。

 

そんなズタボロの状態になってまで、彼女はラグナを守り通そうとしたのだ。

 

そんな優しい人を、こんなところで死なせる訳にはいかない。

 

ティアナとヴァイスは全く同じ想いを胸の中に抱きながら、救急車のサイレンが聞こえて来る廃ビルの外へ、夏希の体を慎重に運び出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(どんどん人が増えてきたわね……気付かれない内にこっそり退散しましょっか)

 

その一部始終を見届けた後、ドゥーエは被っていたフードを更に深く被ってから、マントで身を包みながら1人静かに姿を消す。彼女が密かに監視していたという事実を知っているのは、数分前に彼女と連絡を取り合っていた二宮の1人だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ミラーワールドでは……

 

 

 

 

 

「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ……!!」

 

先にミラーワールドへと逃走したアスターが、必死に走りながら街中へ向かおうとしていた。結構な距離を走った為か、息が荒くなっている彼は道中の大きな交差点で一旦立ち止まり、その場に座って休憩する事で荒くなった息を何とか整えようとする。

 

(最悪だ……アイツのせいで、せっかくの計画が何もかも台無しだ……!!)

 

せっかく捕らえた女ライダーにトドメを刺せなかった。

 

確保していた人質も手離してしまった。

 

従えていた不良達も全員殺されてしまった。

 

彼が立てていた計画は、たった1人のイレギュラーが介入した事で、何もかも失敗に終わってしまったのだ。

 

「……くそぉっ!!!」

 

苛立ったアスターが地面を殴り、その一撃で地面が大きく罅割れる。そんな事をしたところで、アスターの苛立ちが晴れる事はない。

 

(まだだ……まだ終わりじゃない……!!)

 

自分はまだ生きている。少なくとも、無事に奴から逃げ切る事はできたのだ。このまま奴に殺されて終わるだなんて冗談じゃない。

 

「覚えてろ、あの真っ黒な奴……いつの日か、この手で今度こそ始末してやる……!!」

 

実力で敵わないどころか、人質作戦ですら上手く行かなかった。それにも関わらず、アスターは次こそあのリュウガを叩き潰そうと意気込み始めていた。生前から何も変わっていない幼稚で負けず嫌いな精神性。そこに長距離を走った事による体力の消費などの要因も重なり、現在の彼はいつも以上に冷静さを失ってしまっていた。

 

だからこそ、彼は気付けなかった……そんな彼の後方から迫りつつある存在に。

 

 

 

 

 

 

ズバァンッ!!

 

 

 

 

 

 

「ぐあっ!?」

 

突如、強烈な痛みがアスターの背中に襲い掛かる。振り向いたアスターが見た近くの地面には、柳葉刀のような形状をした1本の長剣―――“ドラグセイバー”が突き刺さっていた。

 

「ッ……まさか……!!」

 

突き刺さったまま揺れているドラグセイバーを見て、アスターはすかさず振り向いた。振り向いた先では、建物の上からアスターを見下ろしているリュウガの姿があった。

 

「くそ、しつこい……!!」

 

「ハッ」

 

ドラグブラッカーの腹部を模した盾―――“ドラグシールド”を両肩に装備しているリュウガは、建物から飛び降りて地面に着地。その際リュウガの足元がドズンという轟音と共に大きく罅割れ、リュウガは両肩のドラグシールドを取り外してから両手に構え、アスターに向かって歩き始める。

 

「ッ……来るな!!」

 

≪SHOOT VENT≫

 

「!」

 

アスターは1枚のカードをスコングバイザーに装填し、両肩にスコングランチャーを装備し砲弾を発射。リュウガは一旦立ち止まってから両手のドラグシールドで砲弾を防ぎ、その後はすぐに歩みを再開する。その姿を前に、アスターは声が震え出す。

 

「や、やめろ、来るな……来るなぁっ!!」

 

アスターが再び砲弾を放ち、リュウガがドラグシールドで防御する。それを何度も繰り出すアスターだが、リュウガも慌てず冷静に砲弾を防御しては少しずつ接近していく。

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

それを何度も繰り返している内に「相手の砲撃は大した事ない」と判断したリュウガは、遂に歩きながらも普通に砲弾を防ぎ始めた。それを見たアスターは恐怖のあまり大声で叫び出した。

 

(な、何だコイツ……何だよ、何だよ、何なんだよコイツはっ!!!)

 

自身の攻撃を全く受けつけないリュウガに、アスターの中で焦りと恐怖ばかりがどんどん増幅していく。そのせいで彼は冷静な判断ができておらず、ただひたすら砲弾を放つ以外の行動が一切できなくなっていた。

 

「フンッ!!」

 

「あ……ぐげぁっ!?」

 

リュウガとの距離はどんどん縮まっていき、とうとうアスターの目の前まで辿り着いた。懐まで入り込んだリュウガは迷わず右手のドラグシールドでスコングランチャーを打ち上げ、スコングランチャーを失ったアスターを左手のドラグシールドで力強く薙ぎ払う。

 

(ッ……くそ……くそ、くそ、くそくそくそくそくそぉっ!!!)

 

地面を転がされたアスターは、自身に背を向けて立っているリュウガを見据える。倒れている相手に対して背中を向けられるほど、今のリュウガには余裕がある。そんな余裕ができるくらい、リュウガとアスターの実力差はかなり大きい……その事に対する屈辱が、恐怖に怯えたアスターから更に冷静さを奪ってしまっていた。

 

「調子に乗るなぁっ!!!」

 

≪STRIKE VENT≫

 

スコンググローブを装備したアスターが跳躍し、リュウガの背中に向かって殴りかかる。今、リュウガはこちらを見ていない。カードを引き抜いてすらいない今なら、この攻撃は届く。アスターはそう思って攻撃を仕掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それこそが、リュウガの仕掛けた罠だと気付かないまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪ADVENT≫

 

「―――え?」

 

リュウガが突然、ドラゴンの頭部を模した左腕の召喚機―――“暗黒龍召機甲(あんこくりゅうしょうきこう)ブラックドラグバイザー”の装填口を閉じる動きを見せた。その瞬間……

 

『グオォォォォォォォォォォォォォンッ!!!』

 

「ぐあぁっ!!?」

 

くぐもった電子音と共に、真上から猛スピードで急降下して来たドラグブラッカーが、リュウガに背後から殴りかかろうとしていたアスターを無理やり地面に叩きつけたのだ。

 

『グオォォォォォォォ……!!』

 

「ぐぅ、う……な、何でだ……ッ!?」

 

カードを引き抜く動作すらなかったのに、一体何故だ。彼はいつカードを装填したのだ。そんな疑問に駆られているアスターを口に咥えたまま、地面を破壊したドラグブラッカーはそのまま地下通路まで移動し、アスターの頭を地下通路の壁へと押しつけながら飛行し始めた。

 

「ぐ、があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

頭を壁に擦りつけられる痛みは、アスターの想像を遥かに上回っていた。そのまま天井を破壊して地上に戻ったドラグブラッカーはアスターを地面に放り捨て、地面を転がされたアスターは地面に倒れ伏す事しかできない。そこに歩いて近付いて来たリュウガは、倒れているアスターを見下ろしながら低い声で問いかける。

 

「……終わりか?」

 

「ぐ、うぅ……ッ……!!」

 

リュウガがいつカードを装填したのか、それがアスターにはわからなかった。ドラグセイバーをこちらに飛ばして来た時から、リュウガは一度もカードデッキからカードを引き抜く動作を見せていないはず。カードを装填する事など到底できないはず。そう考えたところで……アスターは気付いた。

 

(ッ……まさか、最初の時点で(・・・・・・)……!?)

 

リュウガがアスターの背中目掛けて、ドラグセイバーを投げた時。ドラグシールドを装備したリュウガが、建物の上から見下ろしていた時。

 

実はこの時点で、既にリュウガは次のカードをブラックドラグバイザーに差し込んでいた。

 

カードを差し込んだ状態のまま、リュウガは敢えて装填口を閉じていなかった。

 

アスターを罠に陥れる為に、リュウガはまだカードを装填していないフリをしていたのだ。

 

「く、くそ……がはっ!?」

 

しかし、今更それに気付いたところでもう遅い。リュウガは倒れているアスターを更に蹴り転がした後、今度こそアスターの前でカードデッキからカードを引き抜く動作を見せてから、そのカードをブラックドラグバイザーの装填口に差し込んだ。

 

≪FINAL VENT≫

 

くぐもった電子音が示したのは、ライダーに対する死刑宣告。それを聞いたアスターは、体中の痛みに苦しみながら、仮面の下で泣きじゃくりながら、意地でも立ち上がって逃げようとする。

 

「い、嫌だ……嫌だ……死にたくない……ッ!!」

 

二度目の死が、自身に迫ろうとしている。

 

何故だ。

 

何故、自分がこんな目に遭わなければならないのか。

 

自分はただ、平穏に過ごしたかっただけなのに。

 

平穏を求める事の、一体何がいけないというのか。

 

その理由が、彼にはわからなかった。

 

その理由がわからないくらい、彼の精神は屈折していた。

 

屈折し、歪むところまで歪み切ってしまっていた。

 

「ハァァァァァァ……」

 

リュウガがゆっくり宙に浮遊する。その周囲をドラグブラッカーが飛来し、彼の背後に回った瞬間……

 

「……ハァッ!!!」

 

『グオォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!』

 

ドラグブラッカーが放つ黒い炎を纏い、飛び蹴りの体勢に入ったリュウガが飛来する。その際、放たれた黒い炎は逃げようとしているアスターの足元にも飛来し、一瞬で石化しアスターの両足を封じてしまった。

 

「ひぃっ!? い、嫌だ、やめろ!! 助けてくれぇっ!!!」

 

助けを乞うアスターの悲鳴は……もう、誰にも届かない。

 

「ハァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

「ひぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!??」

 

ズドォォォォォォォォォンッ!!!!!

 

リュウガの放った一撃―――“ドラゴンライダーキック”は、アスターのボディを一撃で貫いた。アスターの断末魔と共に大爆発が起こる中、ゆっくり地面に着地したリュウガは後ろを振り向き、燃え盛る爆炎を数秒間見つめる。

 

「……」

 

数秒間見つめて、それだけだった。リュウガは特に何かを呟く事もなく、少しずつ消えようとしている爆炎に背を向け、どこかに立ち去って行く。爆炎が完全に消え去った後、ライドシューターに乗ったライアサバイブがようやく追いついて来た。

 

「!? アイツ……!!」

 

ライドシューターから降りたライアサバイブは、遠くに見えるリュウガの後ろ姿を追いかけようとした。しかしそんな彼を真横から捕まえ、素早く建物の陰に引っ張り込む者がいた。

 

「ッ……二宮!?」

 

「静かにしろ、奴に気付かれる」

 

ライアサバイブを建物の陰に引っ張り込んだ張本人―――アビスは物陰からゆっくり覗き込み、リュウガの後ろ姿を確認する。リュウガが遠くまで歩き去って行き、姿が見えなくなったところでアビスはようやく緊張の糸が切れたのか、ライアサバイブの方に振り向いた。

 

「ゴリラのライダーを探してるんだろう? 残念ながら、ついさっき奴に殺されちまったよ」

 

「ッ……遅かったか」

 

「そう、遅かった。お前の到着が遅れたせいで奴は死んだ……ライダーの運命を変えるとか言っておきながら、そういうところは相変わらずだよなぁ」

 

アビスが告げる冷淡な言葉に、ライアサバイブは反論する事もできずその場に俯く。そんな彼を見たアビスが溜め息をついてから彼の肩をポンと叩くと、2人の体が少しずつ粒子化し始めた。

 

「……とにかく、まずは俺に付いて来い。お前も知りたいだろう? あの黒い龍騎の正体を」

 

「……あぁ」

 

このままリュウガを追いかけても、時間切れで自分が消滅するだけ。その事を考慮したライアサバイブは、サバイブ形態を解除して通常のライアの姿に戻り、アビスの後に続く形でミラーワールドを後にする。

 

今の彼には、そうする事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

成瀬章/仮面ライダーアスター……死亡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




リュウガの襲撃により、見事ご臨終となってしまいました成瀬君。

キャラの考案者であるルーキさんから送られた設定を見た時、作者はまず最初に以下のように思いました。

「そっかそっか。元いた龍騎の世界では、怪物みたいなライダー(=浅倉)に殺されちゃったんだ。可哀想にねぇ……」

「じゃあ今度は本物の怪物(=リュウガ)に殺されてみよっか♪(ゲス顔)」

自らの行いを省みず、生前と同じ作戦でゴリ押しを続けた結果、今度は本物の怪物に殺される結果となってしまった成瀬君。
早い段階で真司や蓮と出会っていれば、彼も少しは変われただろうか……残念ながらそれは誰にもわかりません。

一方、劇場版のリュウガもvsファム戦で披露していた【相手が見てないところで密かにカードを召喚機に差し込み、時間を置いてからベントインする】戦法。召喚機の形状から見て、これはリュウガだからこそできる戦法……いや、やろうと思えばたぶん龍騎も同じ事ができるでしょうね。
2人の召喚機はパッと見だと、装填口が開いているか閉じているかの判断がなかなか難しいと思います。おまけに今回の場合、リュウガはドラグシールドを使う事で召喚機の装填口を上手く隠していました。これはアスターじゃなくてもすぐには気付けません。初見のライダーなら1回目は確実に引っかかる事でしょう。

さて、今回で仮面ライダーアスターも呆気なく退場。

この後も活動を続けていくリュウガを、夏希達は止める事ができるのか?

それでは次回。
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