リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ   作:ロンギヌス

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はいどうも、7話目の更新です。

今回でようやく、仮面ライダーベルグの正体が判明します。

それではどうぞ。














BGM:パラレルワールド(※例の説教BGMです)








エピソード・ディエンド 7

「おい、逃げるなこの野郎ーッ!!」

 

【チッ……しつこい奴め……!!】

 

ミラーワールド、アルファード家の屋敷。屋敷の外へ飛び出したベルグを追いかけるファムサバイブだったが、追いかけて来る彼女を鬱陶しく感じたベルグは中庭付近まで辿り着いたところで振り返り、取り出した紫色のディエンドライバーに2枚のカードを装填する。

 

【そんなに戦いたいなら……コイツ等の相手でもしているが良い!!】

 

≪KAIJIN RIDE……SAME YUMMY!≫

 

≪KAIJIN RIDE……BAT DOPANT!≫

 

「「シャアッ!!」」

 

「うわ、何だ!?」

 

紫色のディエンドライバーから発射された複数のエネルギー体が、空中で2体の怪人を形成。人間の顔を持つ鮫の怪物―――“サメヤミー”と白い蝙蝠の怪物―――“バット・ドーパント”をファムサバイブにけしかけてから、ベルグは消えたディエンド達を探しに立ち去って行ってしまう。

 

【くそ、奴等め……逃がしてなるものか……!!】

 

「あ、おい!? くそ、邪魔するなよコイツ等……!!」

 

ベルグの後を追いたいファムサバイブだったが、サメヤミーとバット・ドーパントが邪魔して来るせいで追いかける事ができない。止むを得ず怪人達を相手取る事にしたファムサバイブは、ブランシールドからブランセイバーを引き抜き、迫り来るサメヤミーとバット・ドーパントを斬り伏せていく。

 

「グゥ!?」

 

「シャガァッ!?」

 

「めんどくさい、一気に片付ける!!」

 

≪SWORD VENT≫

 

ブランセイバーの装填口にカードを差し込み、ブランセイバーに灼熱の炎が纏われていく。それを見たサメヤミーが潜水するかのように地中へ逃げ込む中、バット・ドーパントが空中を飛行してファムサバイブに突撃し……

 

「はぁっ!!!」

 

「グ……アァァァァァァァァァァァッ!!?」

 

擦れ違い様に振るわれたブランセイバーの斬撃が、バット・ドーパントの胴体を斬り裂いた。悲鳴と共にバット・ドーパントが爆散した後、ファムサバイブはもう1体のサメヤミーを仕留めようと周囲を見渡すが、地面に潜水したサメヤミーはそのまま行方を眩ませてしまっていた。

 

「逃げられた……あぁもう、最悪!!」

 

ディエンドが姿を消し、ベルグに逃げられ、サメヤミーも仕留め損ねた。良いところなしで終わってしまったファムサバイブは苛立ちのあまり近くの壁に拳を打ちつけた後、ブランシールドにブランセイバーを収納してからスッキリしない様子でミラーワールドを後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、とある山奥の廃屋……

 

 

 

 

 

「―――ん」

 

ベルグの攻撃で傷を負い、意識を失ってしまっていた海東。瞼を開いた彼が最初に視界に捉えたのは、罅割れや蜘蛛の巣などが目立つボロボロな天井だった。意識がハッキリしていくにつれて、海東は自分が畳の上に寝かされている事、自分の上半身に布のような物がかけられている事に気付く。

 

「ここは……」

 

「目を覚ましたか」

 

声のした方に海東が目を向けると、そこには胡坐をかいて座っている手塚、そして畳の上で律儀に正座で座っているロザリーの姿があった。2人が座っている近くには開いた救急箱が置いてあり、体を起こした海東の上半身には白い包帯が丁寧に巻かれている。

 

「君達が手当てしたのかい?」

 

「泥棒とはいえ、目の前で死なれると目覚めが悪い。お前に助けられたのもあるしな」

 

手塚とロザリーがベルグに斬られそうになった時、2人を庇ったのは他でもない海東だ。いくら『ノアの結晶』を狙う泥棒とはいえ、命を救って貰った以上は恩を返す義理がある。手塚はそう判断し、わざわざ山の麓に降りてまで薬局へ薬を買いに行ったのだ。

 

「それに、お前を手当てするよう頼んだのは彼女だ」

 

「……海東さん」

 

正座で座っていたロザリーが立ち上がって海東の隣まで移動し、長いスカートを手で押さえながら改めて正座で座り直す。海東と合わせているその目は鋭く、彼をまっすぐ捉えていた。

 

「教えて下さい。あなたがそこまで傷付いてでも、『ノアの結晶』を求めている理由を」

 

「……愚問だねぇ。決まっているじゃないか、それが価値のある『お宝』だからさ」

 

かけられていた布を放り捨て、海東がその場から立ち上がる。

 

「世界には、僕等の想像を遥かに超える素晴らしいお宝が眠っている。その価値は計り知れない物……僕はその全てを手に入れてみたいんだ」

 

「……その為なら、手段は選ばないとでも言うつもりか?」

 

どのような動機であろうと、彼のやっている事が泥棒である事には変わりない。わざわざベルグの攻撃から手塚達を庇ってまで、自分が傷を負うほどの理由にはならないはず。そこが手塚にとっては不可解だった。

 

「ならば何故、あの時俺達を庇った? お前がそこまでリスクを背負う理由にはならないはずだ」

 

「言ったはずだよ。僕はただ、掛け替えのないお宝を守ろうと思っただけの話だと。僕はね、お宝の為なら命だって懸けるさ」

 

「? それはどういう―――」

 

「さて、今度は僕からも聞かせて貰おうか」

 

手塚の言葉を遮るように、海東はロザリーにある事を問いかけた。

 

「君は何故……お宝を守るのに積極的じゃないのかな?」

 

「ッ!?」

 

海東に問いかけられた質問。それを聞いた瞬間、ロザリーの表情が一瞬で変わった。

 

「『ノアの結晶』を守り通したいのなら、僕を手当てした後にさっさと管理局に突き出す事はできたはず。それなのに君は、何故か僕の手当てが終わった後もこうして僕をこの場に匿っている」

 

「……!」

 

それは海東だけでなく、手塚も気になっている事だった。本気で『ノアの結晶』を守りたいのなら、手当てを終えた後にでも海東の身柄を管理局に引き渡してしまえば良いはず。なのに彼女は、手当てを終えた後も彼をこの場所に匿う事を手塚に提案していた。

 

「それに、これはあくまで僕の推測なんだが……君が持っているんじゃないのかい? 本物の『ノアの結晶』を」

 

「……」

 

「先程あの鷹のライダーに襲われたのだって、奴が本物の在り処を知っていたから。君が本物を持っていたから奴は君を襲ったと考えれば、あの状況にも説明はつく」

 

「……気付いていたのですね」

 

ロザリーが取り出した小さな箱。その蓋を開けた中には、正真正銘本物の『ノアの結晶』が収められていた。

 

「僕の前で本物を取り出している事は、本気でそれを守ろうとしている君の意思とは矛盾した行動だ。もしかして君は、本気でそれを守りたいとは思ってないんじゃないのかい?」

 

「……そうなのか? ロザリー」

 

「えぇ……あなたの通りですわ」

 

『ノアの結晶』が入った箱の蓋を閉じ、ロザリーは2人の前で白状した。

 

「『ノアの結晶』はこれまで、アルファード家に代々受け継がれて来た家宝……ですが。今の私には、これを守りたいという意志はありません」

 

「……何故なのか、聞いても良いかな?」

 

「……幼い頃、お父様に何度も言い聞かされてきました。何が何でも『ノアの結晶』だけは絶対に守り抜けと……私の気持ちになど、全く見向きもしようとせずに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お父様!』

 

それは、まだロザリーが10歳になるかならないかの頃。彼女は大好きな父の為に、父の似顔絵を描いてあげた事があった。その出来はあくまで子供レベルではあるが、彼女が一生懸命書いたのだとわかる絵で、スーマンを始め使用人達は微笑ましい目で見守っていた。

 

『見て下さい! 私、お父様の絵を描いてみたんです!』

 

今までは、こうして描いた絵を見せては父も嬉しそうに喜んでくれていた。だから今回も、父はきっと自分を褒めてくれる。また笑顔で受け止めてくれるはず。この時まで、ロザリーはそう思い続けていた……しかし。

 

『……ふん』

 

ビリィッ!!

 

『あ……!』

 

ロザリーの想いを、父が受け止めてくれる事はなかった。父はロザリーの目の前で似顔絵を破り、放り捨てられた似顔絵がロザリーの足元に落ちていく。

 

『ゴホン……ロザリー、私は仕事から帰ったばかりで疲れてるんだ。こんな下らない物(・・・・・)を書いてる暇があるなら、部屋に戻って勉強しなさい!』

 

『……ッ!!』

 

その日から、父はロザリーの前で笑顔を見せる事はなくなってしまった。父の誕生日に贈ったプレゼントも、父は彼女の目の前で捨ててしまい、そのたびにロザリーは部屋に籠って泣き続けた。そんな彼女の涙には決して目も暮れないまま、父は彼女に『ノアの結晶』を受け継がせた。

 

『我がアルファード家に代々受け継がれし家宝だ。何が何でも守り抜け。それがお前に課せられた使命だ』

 

何が使命だ。そんな物を守って一体何になるのだ。自分が贈るプレゼントはちっとも守ろうとしない癖に。いつしかロザリーは、父の事を嫌うようになった。かつて一緒に笑ってくれた優しい父は、もういないのだと。彼女は自分にそう言い聞かせてきた。

 

それ故に、父が病死したと知った時も、彼女は一度も涙を流す事はなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――そういう事か」

 

何故ロザリーは『ノアの結晶』を守る事に積極的じゃないのか。その理由がわかり、手塚は納得した。

 

「お父様は、私を愛してはくれませんでした……私はただ、今までのように笑って欲しかっただけなのに……父は最期まで、私の気持ちに気付く事はありませんでした」

 

「……だから父の話題が出た時、君は暗い顔をしていたのか」

 

「私にとっては、こんな物には何の価値も見出せません。こんな物があるせいで、誰かが争い、血を流す事になるのであれば……いっその事、こんな物は失われてしまえば良いのです」

 

「それは良い事を聞いた」

 

ロザリーの手元から『ノアの結晶』が入った箱がひょいっと取り上げられ、箱の中身を見た海東が満足そうに笑みを浮かべる。

 

「それはつまり、僕がこれを貰って行っても文句はないって事で良いんだね?」

 

「海東、お前……ッ! ロザリー……」

 

「良いんです、手塚さん」

 

海東から箱を取り上げようとした手塚を、ロザリーが手で制する。

 

「海東さん。あなたに『ノアの結晶』をお譲りします。そのまま持って行って下さいまし」

 

「じゃあ遠慮なく……って、言いたいところだけど」

 

「?」

 

「僕にはまだ、1つ気になる事があってね」

 

海東は懐から1枚の紙切れを取り出す。それが何なのか、手塚とロザリーにはわからなかった。

 

「それは……?」

 

「偽物が入っていた箱の底に、隠されていたのさ。これによると、あの屋敷にはもっと価値のあるお宝が隠されているみたいなんだ。君の父が大切にしていた、『ノアの結晶』よりも大切なお宝がね」

 

「「は?」」

 

「ロザリー君。せっかくだから、そのお宝も一緒に貰って行っちゃっても構わないよね?」

 

この期に及んで、まだ何かを盗もうと思っているのか。海東の身勝手な物言いには手塚だけでなく、ロザリーも呆れ果てた様子で溜め息をつく。

 

「そのお宝を手に入れる為には、この『ノアの結晶』が鍵となるって事さ」

 

「お前、まだ何かを盗もうと思っているのか……」

 

「はぁ……もう勝手にして下さいませ。そのお宝が何であれ、私にとっては何の意味もない物ですから」

 

「それはどうかな?」

 

しかし、海東の考えはロザリーとは違うようだった。手にしている紙切れを見ている海東の笑みには、先程までとは違う意図が含まれていた。

 

「このお宝は、君にとっても知っておいた方が良い代物だろう」

 

「え……?」

 

()と同じだね……君はまだ、お宝の本当の価値を知らずにいる」

 

それは一体どういう事なのか。その意味をロザリーが問い返そうとした……その時。

 

 

 

 

ザバァン!!

 

 

 

 

「シャアァッ!!」

 

「!? 危ない!!」

 

「きゃあ!?」

 

「ッ……!!」

 

突如、水飛沫と共にサメヤミーが地中から飛び出し、手塚達に飛びかかって来た。手塚はロザリーと共に伏せてサメヤミーの突進を回避し、海東は飛びかかって来たサメヤミーを両手で上手く掴んで投げ飛ばす。

 

「ヤミーか。あの鷹のライダーから送り込まれた差し金、とでも言ったところかな」

 

「! お前、やはり奴の事も……」

 

「あぁ知っているさ。紛い物(・・・)なんかを使って調子に乗ってる、ムカつく奴さ……!」

 

「シャアッ!!」

 

サメヤミーの振るって来た爪を海東がディエンドライバーで受け止め、掴み合いになったまま海東はサメヤミーと共に廃屋の窓を突き破って外に飛び出していく。

 

「海東さん!!」

 

「ロザリー、君はここにいるんだ!!」

 

ロザリーを廃屋の中に待機させ、手塚も外に飛び出して行った海東とサメヤミーを追うように外に飛び出す。手塚が向かった先では、サメヤミーの攻撃を華麗にいなしている海東の姿があった。

 

「図に乗らないで貰いたいね……たかがヤミー如きが、僕に勝とうなんて!!」

 

「シャアァ!!」

 

ディエンドライバーの銃弾を受けたサメヤミーは地面に倒れた後、怒った様子で地中に潜水し、海東の周囲を素早い動きで泳ぎ回る。海東はその場でジッと静止しており、そんな彼の背後からサメヤミーが飛び出し、容赦なく襲い掛かろうとした。

 

「そこだ!!」

 

「シャガァッ!?」

 

(! アイツ、強い……!)

 

しかし、海東は後ろに振り向く事なくディエンドライバーを後ろに向け、サメヤミーの顔面に銃弾を命中させて難なく撃墜してみせた。生身でありながら怪物を圧倒する海東の戦いを、手塚が冷静に観察していた時だった。

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

『キュルルルル!!』

 

「ッ!?」

 

サメヤミーが噴き出す水流によってできた物か。濡れている地面にできていた水溜まりからエビルダイバーが飛び出し、手塚に向かって襲い掛かって来た。手塚は咄嗟にしゃがんで回避するが、エビルダイバーはすぐにUターンして再び迫って来る。

 

「こんな時に……!!」

 

が、エビルダイバーが手塚に迫ろうとしたその直後……

 

「―――ふっ!!」

 

『キュル!?』

 

同じく水溜まりから飛び出して来たアビスが、手塚に襲い掛かろうとしたエビルダイバーを蹴りつけて大きく吹き飛ばした。

 

「!? 二宮……!!」

 

「間一髪だったな、手塚」

 

手塚の方に振り返ったアビスは、カードデッキから引き抜いた1枚のカードを手塚に投げ渡す。手塚が右手で受け止めたそれは、封印(シール)のカードだった。

 

「! これは……」

 

『ッ……キュルルルル……』

 

手塚が封印(シール)のカードを手にした途端、エビルダイバーは諦めた様子で水溜まりに潜り、ミラーワールドに帰還していく。流石のエビルダイバーも、封印されるのだけは御免なようだ。

 

「二宮、何故ここに……?」

 

「お前を探してたのさ。見つけるには、エビルダイバーの後を追うのが手っ取り早いと思ってな」

 

アビスの変身を解除し、二宮は懐から取り出した1枚の写真を手塚に投げ渡す。手塚はそれも左手でキャッチし、写真に写っている物に視線が向いた。

 

「! これは……」

 

「そのカードと写真をお前に渡してくれとさ。尤も、それを頼んだのが誰なのかは俺にもわからないが」

 

「何? 二宮、それはどういう……」

 

手塚が正面を向いた時には、既に二宮は姿を消した後だった。手塚がもう一度写真に目を向ける中、離れた場所では海東がディエンドライバーの銃撃でサメヤミーを撃破しているところだった。

 

「シャアァァァァァァァァァッ!!?」

 

「ふぅ……雑魚の癖に、随分と手こずらせてくれたものだ」

 

「手塚さん、海東さん、大丈夫ですか!?」

 

海東が疲れた様子で髪を掻く中、2人を心配して様子を見に来たロザリーが駆け寄って来た。その間も、手塚は二宮から渡された写真に意識が集中していた。

 

「? 手塚さん、その写真は……?」

 

「あぁ、これは……」

 

「へぇ、面白い」

 

手塚が事情を話そうとした時、手塚が持っていた写真を海東が取り上げる。

 

「いつの間に手に入れたのか知らないけど、この場所(・・・・)は僕にも見覚えがあるね。君も心当たりがあるはずだよ」

 

「! これは……」

 

海東がロザリーに見せた写真。そこに写っている物は、ロザリーにとっても見覚えのある物だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダ、ダーインさん!? 何故そのような所に!?」

 

「んん、んんん~ッ!!」

 

一方、アルファード家の屋敷。屋敷の裏側にある倉庫の中から、手足を縛られ口元を布で封じられている庭師の男性がスーマン達によって発見されていた。庭師の男性―――ダーインはギンガ達によってすぐに解放され、ギンガ達に感謝の意を述べていた。

 

「た、助かりました! 見つけて貰えなかったらどうしようかと……!」

 

「い、いえ! ダーインさんもお怪我はないようで何よりです」

 

「それにしても……あの泥棒野郎、まさか庭師に化けていたなんてねぇ」

 

海東がディエンドに変身する際に脱ぎ捨てられた庭師の制服がダーインに返却される中、夏希は近くのベンチに座り込んだまま不機嫌そうな様子で貧乏揺すりを繰り返していた。騒ぎの中で手塚とロザリーがいなくなり、ベルグにも逃げられた事で、スーマンは慌てふためいている。

 

「あぁ、何という事でしょう……これでもし、ロザリーお嬢様の身に何かあったら、私は、私はぁ~!!」

 

「お、落ち着いて下さいスーマンさん! きっと、手塚さんも一緒にいてくれているはずですから!」

 

「でも、どうやって探すのさ。2人がどこに消えたのか、1つも手掛かりがないんだよ? あの鷹のライダーもどこに潜んでるかわからないんだし」

 

「それは……」

 

「手掛かりならここにあるよ」

 

声のした方に一同が振り向く。その先には1枚の写真を持った海東が堂々と姿を現した。

 

「「「海東大樹!?」」」

 

「おっと、落ち着きたまえ。今は君達と争うつもりはない」

 

「黙れ!! 貴様、ロザリーお嬢様をどこにやった!!」

 

「そんな声を荒げなくても、彼女はちゃんと手塚海之と一緒にいるから安心したまえ……今はそれより」

 

ズキュウンッ!!

 

「「「「「!?」」」」」

 

海東はその手に構えたディエンドライバーを迷わず発砲し、その銃弾が夏希達……ではなく、彼女達の後ろに立っていた人物の右手を掠るように通過した。

 

「今その手に隠していた物、ぜひ見せて貰いたいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこの庭師さん……いや、仮面ライダーベルグ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ……!!」

 

右腕に銃弾が掠った人物―――ダーインは表情が一変し、海東を睨みながら銃弾の掠った右腕を押さえる。彼の右手に握られていた物は、海東が使用しているのと全く同じ形状(・・・・・・)をしていた。

 

「!? ダーインさん、それは……!!」

 

「君がその紛い物(・・・)を持っている理由を教えて貰いたいね」

 

「……何故、私だとわかった?」

 

ダーインが右手に持っているそれ―――紫色のディエンドライバーを見てティアナ達が驚く中、ダーインは鋭い目付きで海東を睨みつける。それに怯む事なく、海東は話を続ける。

 

「屋敷に潜入する時。僕は君を気絶させた後、身ぐるみを剥いでから潜入させて貰った……つまり君は、僕に気絶させられた後すぐに目を覚まし、ベルグとなって密かに行動を開始していたんだ」

 

海東に気絶させられ、身ぐるみを剥がされて倉庫に放り込まれた後、ダーインはすぐに目を覚ましてベルグとして密かに行動を再開していた。その間、海東が庭師としてのダーインに化けて活動していた為、ダーインにとっては非常に動きやすい状況になっていたのだ。その後、召喚した怪物達の力を借りれば、解いた手足の縄を縛り直してアリバイを作るのも簡単である。

 

「それにしても、まさか君がベルグだったなんて驚いたよ。僕に気絶させられるような、マヌケな奴が正体だとは思ってもみなかったからさ」

 

「貴様ァ……!!」

 

「し、しかし、何故正体が彼だとわかったのですか? それだけでは犯人が彼だと特定できないのでは……」

 

「正体をハッキリ確定できたのは、この写真が切っ掛けだ」

 

そんなスーマンの疑問に答えるように、海東はその手に持っていた写真を見せつける。そこに写っていたのは……

 

「? 中庭の花壇……?」

 

「その通り」

 

それは、屋敷の中庭に存在する花壇の写真だった。一見すると特に変わりのない花壇に見えがちだが、よく見ると花壇の土の盛り上がり具合が少しおかしくなっている。

 

「もしやと思ってね。ここへ来る前に、2人に実際に掘り起こして貰う事にしたのさ」

 

「そしたら、こんな物が見つかった」

 

海東の言葉に続くように、手塚とロザリーが彼の後ろから姿を現した。手塚の手には、僅かに土の付いた小さな箱が握られている。

 

「海之、ロザリー!?」

 

「手塚さん、それは一体……?」

 

「そこの庭師が犯人だと確定できる証拠だ。ランスター、お前ならわかるはずだ」

 

手塚がその小さな箱を開け、中身を一同に見せつける。その中身を見て、ティアナはすぐに気付いた。

 

「あ、博物館から盗まれた化石!?」

 

「「え!?」」

 

「なんと!?」

 

それは先日、ミッドチルダ国立博物館から盗まれたという古代生物の爪の化石だった。海東が博物館に潜入するより前に、既にダーインがベルグに変身して盗み出していたのだ。

 

「ッ……貴様等、いつの間に……!!」

 

「お前は『ノアの結晶』を盗み出す為に、早い段階から庭師として屋敷に潜り込み、しばらくこの屋敷で騒ぎを起こそうとはしなかった。潜入してすぐに盗めば、まるで盗む為に屋敷にやって来たんだと、真っ先に疑われてしまうからな」

 

だからこそ、ダーインは屋敷に潜入してからもしばらく屋敷内では行動を起こさなかった。時期を見て、確実に盗み出せるタイミングを待ち続ける為に。

 

「しかし、長期間も潜伏していて我慢できなかったお前は、この屋敷ではなく別の場所で盗みを働き始めた。この数日間で起き続けた盗難事件も、海東ではなくお前が引き起こした物だ……違うか?」

 

「ダーインさん……どうして、あなたがこんな事を……!」

 

信頼していた人間が犯人だったとわかり、ロザリーは信じられないといった表情でダーインに問い詰める。そんな彼女に対し……ダーインは俯いた後、低い声で笑い始めた。

 

「ククククク……ハハハハハハハハハハハハハハハハ!! なるほどなぁ、バレたんじゃあ仕方ない……!!」

 

「ッ……認めたんですね、自分が犯人だと……!!」

 

「何故ですか、何故ライダーの力で盗みなんかを……!!」

 

「何故かだって? 楽しいからに決まっているだろぉ、ヒッヒッヒッ……!!」

 

即座に身構えたギンガとティアナからの問いにも、ダーインは悪びれない様子で答えてのける。その間も彼の下品な笑いは収まらない。

 

「私はねぇ、楽しくて仕方ないんだよ。盗みに入られた人間が慌てふためく姿を見るとなぁ、ついつい笑いが止まらなくなってしまうのさ……!!」

 

「なら、お前が持っているカードデッキは……」

 

「あぁそうとも。たまたま仮面ライダーの力を持っている人間を見つけたもんでねぇ……そいつを殺して、そいつが持っていたカードデッキを奪ってやったのさ。コイツは非常に便利な力だよ、ミラーワールドを通れば簡単に盗みに入れるからなぁ……!!」

 

「ふぅん……つまり、その紛い物(・・・)もそうやって手に入れたって訳だ」

 

「よくわかってるじゃないか……そう、コイツもおかしな格好をした奴が大事そうにスーツケースに収めていたもんだからなぁ。ラプターウイングの餌にした後、盗みの道具として使わせて貰ってる訳さ……!!」

 

(……ん?)

 

ゲラゲラ笑いながら、紫色のディエンドライバーを盗んだ経緯について律儀に語るダーイン。そんな彼のディエンドライバーを握っている右手から、ほんの僅かに紫色の瘴気のような物が噴き出るが、手塚以外はダーインの語る内容に集中していてその事に気付かない。

 

「コイツも便利で助かるよ。妙な化け物をたくさん呼び出せるからなぁ……だが、少し計算外な奴等も現れてしまってねぇ。それがお前達だよ」

 

下品に笑っていたダーインは表情が一変し、忌々しげな表情で手塚、夏希、そして海東の順に指差す。

 

「私と同じライダーで、しかも1人は私と同じ武器を持っていると来た!! そうなれば、何としてでも私の障害になりそうな貴様等を排除するしかない。だからこそ私は、怪物共を呼び出して貴様等の実力の程を試させて貰ったのさ……!!」

 

「ッ……怪物達を街で暴れさせていたのは、俺達を誘き寄せる為か……!!」

 

「ふざけるなよ……そんな事の為に、ロザリー達や関係のない人達まで巻き込んだのかよ!!」

 

「許せる所業ではありませんね……ダーインさん、あなたはここで逮捕させて貰います」

 

「抵抗は無駄です……!!」

 

盗みを働く為だけに、多くの人間を巻き込んで来たダーインの悪事。彼の行いに怒りを抱いた夏希、ギンガやティアナ達がダーインを包囲するが、ダーインは余裕の表情を崩さない。

 

「ふん、馬鹿な奴等め……私が何の対策もしてないと思ったか!!」

 

「ギシャアァッ!!!」

 

「「「ッ!?」」」

 

ダーインが指を鳴らした瞬間、彼の頭上から落ちて来たコオロギのような怪物―――“グリラスワーム”が着地し、ギンガ達に向かって襲い掛かって来た。グリラスワームが彼女達に攻撃を仕掛けている間、ダーインは屋敷の窓に向けてカードデッキを構え、出現したベルトを腰に装着する。

 

「『ノアの結晶』は私が手に入れる、貴様等を殺してでも……変身!!」

 

ダーインは構えた右手を上に伸ばし、ゆっくり下に降ろしてからカードデッキをベルトに装填。いくつもの鏡像が重なってダーインの姿を仮面ライダーベルグの物に変化させ、ベルグは右手に持ったラプトバイザーを手塚とロザリーに向ける。

 

「さぁ、『ノアの結晶』はどこにある? 渡して貰おうか……!!」

 

「お、お嬢様、お逃げ下さい!!」

 

「ロザリー、下がれ!!」

 

ロザリーを後ろに下がらせ、彼女を守ろうとする手塚とスーマン。そんな2人に用のないベルグが、彼等をラプトバイザーで薙ぎ払おうとした時だった。

 

 

 

 

ズガガガガァンッ!!

 

 

 

 

「ぐぉっ!?」

 

2人を薙ぎ払おうとしたベルグに、何発もの銃弾が命中した。ベルグが振り返った先には、ディエンドライバーを構えている海東の姿があった。

 

「残念だけど、君の言う事は間違っているよ」

 

「貴様ァ……!!」

 

「この世界のお宝も、僕が手に入れる……!」

 

≪KAMEN RIDE……≫

 

「変身!!」

 

≪DI・END!≫

 

「!? チィ……ッ!!」

 

カードの装填されたディエンドライバーをベルグに向け、海東は躊躇なく引き鉄を引いた。発射された複数の青いプレートがベルグを押し退けた後、アーマーの形成されたディエンドに青いプレートが突き刺さり、変身が完了される。

 

「ふん、何が間違っているだ……貴様も所詮、私と同じコソ泥に過ぎんだろう……!!」

 

「少なくとも、君よりはお宝の価値を理解しているつもりさ」

 

「何……?」

 

「人それぞれ、お宝の価値は違う。彼女はまだ、彼女にとってのお宝がどんな物なのかを知らないままだ……そのお宝は、決して失われてはならない」

 

「海東さん……」

 

「海東……お前は、一体……?」

 

何故ここまでしてくれるのか。そこまでしてくれる彼は一体何者なのか。手塚のそんな問いかけに対し、ディエンドはディエンドライバーの銃口をベルグに向けながら、それに答えるべく堂々と言い放ってみせた。

 

「敢えて名乗るとしよう。僕は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておきたまえ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決戦の火蓋は、切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




はい、仮面ライダーベルグの正体は『海東に気絶させられていた庭師さん』の方でした。盗んだ化石を花壇に埋め終えた直後に気絶させられる辺り、割とマヌケな人です。

さて、今回召喚された怪人まとめ。
『仮面ライダーOOO』からサメヤミー、『仮面ライダーW』からバット・ドーパント、そして『仮面ライダーカブト』からグリラスワームの3体です。それぞれアビス、ナイト、オルタナティブ系と同じ生物がモチーフになっています。
次回の決戦シーンにおいても、また何体か別の怪人を召喚予定。

『ノアの結晶』を巡って繰り広げられる今回の戦い。
その中で、海東が狙いを定めた“本当のお宝”とは?
その真意はまた次回以降で。

ちなみに海東が言っていた“彼”……ディエンドの経歴を見てきた人なら、たぶん誰の事かすぐにわかると思います。
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