思いついた作品広場   作:The Susano

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明けましておめでとうございます。
正月に関係ないけど投稿。後悔はしてない。

前作であることをお忘れなく。


プリンセスコネクト!炎の歌姫と闇の戦士

薄暗い洞窟を警戒しながら進む一人の青年。壁が光っているために視界はそこまで悪くはないが、曲がり角が多いために敵との鉢合わせしかねないのだ。索敵スキルだけではなく、音を拾い、振動に気を配らなければあっという間に終わりである。

……最も、このダンジョンを狩場にしている青年にとっては慣れたものだが。

 

「……小型3、中型2か」

 

後ろからの振動と音に、振り返りながら剣を抜く。右手の真っ黒の剣を向けた先には宙に浮いた土偶のような物が3体と、どことなくロボットチックな歩いている物が2体現れる。このダンジョンに現れる唯一のモンスター、エンシェントゴーレムである。

小型・中型・大型・ボス型の4種しかいないのだが、いくつか厄介な性質がある。

 

(小型のレベルは7、23、16。中型は39と51)

 

その一つが必ず3体以上で現れること、もう一つがレベルがバラバラになっているのだ。小型は1~30・中型は31~60・大型は61~99となっており、普通一人ではとても戦い辛い相手である。しかもゴーレムを相手にする際の有効武器はハンマーや体を使った打撃系であり、剣による斬撃は相性が悪い。なお、ある程度魔法耐性を持っているので、魔法攻撃は総じて普通である。

 

「さてと、撹乱しますか。『シャドウ・バインド』」

 

足元に闇魔法によるトラップを設置すると、ゴーレムに向けて走っていく。近づいてくる反応を感知してゴーレムがこちらに視線を向けるが、敏捷力よりのステータスによって相手が行動を起こす前に接近する。

 

「フッッッッ!」

 

突進する力をそのままに一番レベルの低い小型ゴーレムの首の隙間を一閃し、左回転しながらそこにいた小型ゴーレムに蹴りを入れ、そのままレベルの高い小型ゴーレムに向き直って腕の関節を切り裂く。すると、レベルの低い小型ゴーレムが消え去り、残りの2体もHPをギリギリにまで落とす。

ようやく行動し始め、青年のいた位置に視線からビームを飛ばす中型ゴーレム。しかし、すでに青年は後ろに回りこんでおり、2体の中型ゴーレムの脚の関節を切り裂く。こちらを向こうとする中型ゴーレムの動きに合わせ、壁を蹴ってゴーレムとの隙間を潜り抜ける。そのまま駆け抜け、自分がトラップを設置した位置から離れた場所に立ち止まる。中型ゴーレムのビームの射程はそこまで広くなく、小型ゴーレムは遠距離攻撃ができないために青年を追いかける。

 

しかし、先ほど青年がいた場所を踏むと、シャドウバインドによる無数の漆黒の手がゴーレム達に纏わりついて行動を阻害する。その隙を逃す青年ではない。

 

「『闇の精よ、その力を集約し、塞がる敵を粉砕せよ。ダークブラスター』」

 

その瞬間、黒いエネルギーの砲撃が青年の手から放たれてゴーレム達に直撃する。そのエネルギーは残りHPの少なかった小型ゴーレムを消し飛ばし、中型ゴーレムのHPの大半を削った。

それと同時にシャドウバインドの効果が切れ、自由を取り戻す2体のゴーレム。しかし、その場から動かずに光輝いたと思った刹那、

 

一気に大爆発を起こし、周囲を吹き飛ばした。

 

「ふいー、毎回冷や冷やするな。この爆発」

 

青年は、目の前に現れたドロップアイテムの画面を消しながら呟く。中型ゴーレムはHPが少なくなると爆発することを知っていた青年は、即座に曲がり角に退避してやり過ごしたのだ。

 

 

 

 

 

さて、すでに気づいている方もいるだろう。この世界は現実(リアル)ではなくVRゲームの中である。

時は2030年代。VRを用いたネットワークデバイス「mimi」の登場によって、世界中にVR技術が普及していた。

とくに、VRネットゲーム「レジェンド・オブ・アストルム」が日本中で大流行しており、多くのプレイヤーが参加していた。なぜなら、このゲームを最初にクリアしたプレイヤーは『どんな願いも叶う』という噂が流れているからだ。

そして「レジェンド・オブ・アストルム」、通称「アストルム」が始まって半年。現在も数多くの攻略者がいるが、未だに願いを叶えたという人は現れてはいない。

 

 

 

 

 

 

ここにいる青年―――レイジもまた、「アストルム」にいる最古参プレイヤーの一人である。だが、本人は願いを叶える気は無く、ただただ面白いから続けているプレイヤーである。

目的のアイテムも手に入れ、そこそこ長い時間ダンジョンにいるので撤収しようとした時だった。

 

 

 

ドガーーン!!

 

 

 

入り口に近い方向から爆発音が聞こえた。普通なら他のプレイヤーが中型ゴーレムを爆破させたと思うのだが、断続的に聞こえる上に少しずつその音が近づいているのだ。索敵スキルを使ってその方面を見ると、1人のプレイヤーが大型を含んだ10体以上のゴーレムに追われていた。しかも、ゴーレムの速度はかなり遅いはずなのだが、そのプレイヤーとの距離がほとんど離れていない。

初期ステータスが最も低いヒューマンがパラメータ補正無しだったとしても、ある程度レベルがあればその分の素早さの上昇によって少なくとも距離ができるはずなのだ。それがないということは―――、

 

「初心者プレイヤーが迷い込んだのか?」

 

このダンジョンの入り口はかなり分かりづらく、デスペナルティはあってもここのモンスターは倒しても経験値を得ることはできないので(その分レアドロップアイテムが出やすい)、「アストルム」の初心者用の掲示板や先輩プレイヤーから教えられる人が多いため、迷い込む人は滅多にいない。しかも、ここではゲームからのログアウトもできないという仕様なのだから尚更である。

正直、普通のプレイヤーなら放っておいてさっさと逃げるのだが、迷い込んだ初心者プレイヤーを放置するほど心が狭いわけではないので、その方向に向かってみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

そのプレイヤーはとにかく走っていた。一心不乱に後ろからくるゴーレムの群れから逃れるために。

 

知り合いから勧められて始めたのだが、誰もいない指定された場所で待っていると突然足元が光を放ち、驚いて固まっている間にこのダンジョンに来てしまったのだ。幸いにも初期装備のままなので武器はあるのだが、ログアウトも出来ず、まだモンスターとも戦っていないので洞窟の中をモンスターに見つからないように徘徊して出口を探していた。

 

そして、モンスターのいない広い部屋にたどり着いたことで気が緩んでしまった。壁に背を預けた瞬間にその壁が押し込まれ、部屋の中心に現れた魔法陣から竜の頭をした剣と盾を持った騎士のようなモンスターが現れたのだ。自分を見下げるモンスターを見ただけで敵わないことが分かったので、先に続いている通路に入ろうとしてうっかり小石を蹴ってしまった。

 

現在、歩いて追いかけてくる騎士のモンスターの咆哮に集まったモンスターから逃げ続けていた。モンスターの速度が遅いことと、集まったモンスターが騎士のモンスターの後ろにいるために襲われないことが幸運である。

 

(ああもう!こんなゲーム始めなければよかった!)

 

角をでたらめに曲がり、逃げながらそう考えていると、若干足がもつれ、モンスターの攻撃が掠める。レベル1のために一気にHPがぎりぎりになり、攻撃で転んだためにモンスターとの距離が0になる。そこに騎士のモンスターから剣が振り下ろされる。

ゲームとはいえモンスターから刃物が振り下ろされるのは、現実で襲われるのと同じくらいの恐怖がある。そのプレイヤーは目を瞑った次の瞬間、

 

「『ブラック・スモーク』!」

 

若干焦ったような声が響き渡ると、誰かがそのプレイヤーをおんぶして走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(危ねー。もう少しで死ぬところだった。)

 

レイジはプレイヤーをおんぶしながら走っていた。ブラックスモークの煙幕で顔や装備は見ていないが、怖かったのか固まったままである。レベルによる素早さと装備の補正、そしてとあるクエストで身に着けた風属性の魔法によって、ゴーレムから凄まじい速度で遠ざかっていく。しかし、ここのゴーレムはどれだけ逃げても追いかけてくるので、この逃走も時間稼ぎにしかならない。

 

出入り口に近い大広間にたどり着くと、プレイヤーをゆっくり地面に下す。そこで初めて見たのだが、おそらく年下と思われる少女である。咄嗟だったとはいえおんぶしてしまったことに罪悪感を覚えていると、その少女が恐る恐る目を開ける。

 

「……ここは、いったい「出入り口付近の大広間だ」!?」

 

まさか返事が返ってくるとは思わなかったのか、咄嗟に座って後退りしながら視線を向ける。そんな動作を見ながら、ストレージから緑の液体の入ったビンを取り出して投げる。慌てて受け取るのを確認しながら、装備を変更しながら迎撃する準備を整える。投げたビンを不思議そうに見ていたので、ついでに言っておく。

 

「スタミナポーションだ。今のうちにHP回復しないと、またあのゴーレムが来るぞ」

 

「……これだけ離れたら来ないんじゃ」

 

「ここのゴーレムは遅い代わりに追尾能力が高い。おまけに、ゴーレムから追いかけられた状態だと出られない仕様だ。今のままだとここから出られないぞ。」

 

小声の返事に驚きながら、今の状態とここのルールを話すレイジ。その過程でまだ終わっていないことを悟って、プレイヤーの顔が青くなる。

 

「なんでこんなことになるのよ……ただ待ってただけなのに……」

 

「……ちょっと待て。詳しく聞かせろ」

 

真剣な顔をしながら、レイジはプレイヤーにどうやって来たのかを聞く。そして、語られた事情に頭を抱える。

 

「それ、完全な新人殺し(ニュービーキラー)だな。現実で嫌われることなんてしてないか?」

 

「そんな……。あの子がそんなことするはず……」

 

「……ネットゲームも初心者だったか。現実とゲームで人格が変わる人は多い。現実で互いを知ってる人同士が、現実での行動の仕返しをゲームでやる、なんて自体も珍しくない。注意しときな」

 

ショックを受けているプレイヤーを見ながら、レイジはここまで響いてくる音と振動を聞く。

 

「っと、そろそろ来るから話は後だな。えーと、名前は?」

 

「ノ、ノゾミ、です。薬、ありがとうございます。」

 

「俺はレイジだ。じゃあ、ノゾミはこれ持ってそこの隅にいろ。動かれるとゴーレムも移動するからな」

 

そう言ってストレージからペンダントを投げ渡す。

 

「これは?」

 

障壁(バリア)付きのペンダントだ。万が一ゴーレムが来てもいいようにな」

 

そう言ってプレイヤー―――ノゾミを非難させながら、音の響く通路に杖を向けて警戒する。

 

「えっ!?剣士じゃなかったんですか?」

 

「剣士でも魔法は使えるし、魔術師でも武器は使える。ま、威力は半減するけどな」

 

そう言うと、通路からゴーレムが姿を現す。どこかで群れと合流したのか、15体になっていた。しかし、本気になったレイジには敵わない。

 

「『ダークネス・バインド』、『イービル・ウィンド』」

 

シャドウバインドの上位互換魔法と、相手の全能力を下げる闇と風の複合魔法がゴーレム達を襲う。その間に、敵の戦力を確認する。

 

「小型10、中型4、大型1か。よく逃げきれたな」

 

1人なら中型ゴーレムを爆破して一網打尽にできるのだが、ノゾミのステータスだと持たせたペンダントを貫通して死にかねないので、一撃必殺を狙う。

 

「『闇の精よ。我と舞い、我と踊り、我との狂乱に微笑め。それを邪魔せし、遍く障害を破壊しろ。これがこの世の終わりである。ブラック・ホール・イクリプス』」

 

杖から魔法が下に放たれ、ダークネス・バインドと魔法陣が重なる。その瞬間、魔法陣から漆黒の闇が放たれ、洞窟の天井に向かって柱のように伸びる。そして、魔法が止む頃には大型ゴーレムを除いて消滅していた。そのゴーレムも、HPは4割程度に減っていた。それと同時にダークネス・バインドも切れる。

 

騎士の大型ゴーレムはHPが半分を切ると攻撃力と素早さが上がるのだが、行動が単純になるために躱しやすくなる。まだイービル・ウィンドの効果が残っているので、むしろ弱体化しているとも言える。

 

「よし、さっさと終わらせるか」

 

杖を仕舞って刀を取り出すと、一気に大型ゴーレムとの距離を詰める。ゴーレムの剣をすれすれで躱すと、そこに風属性の剣を叩き込む。

 

「『ストーム・ソード』」

 

刹那、高速回転しながら大型ゴーレムを切り裂いていく。風属性の補正は弱いが、剣技スキルの補正によってHPをガリガリと削っていく。

そして、ストーム・ソードが終わる頃には大型ゴーレムのHPは無くなって消えかけていた。

 

ちょっとオーバーキルだったなと思いながらノゾミの安否を確認しに行くと、色々と技が派手だったせいか完全に呆然としていた。目の前で手を振ると、ハッと元に戻る。

 

「あ、ありがとうございます。巻き込んでしまってすみません。」

 

「気にすんな。というか、初心者がどうにかできるレベル超えてるだろ―――」

 

そう言うと、ふとこの後どうなるかを考える。ノゾミを嵌めた相手にとってこの結果は好ましくなく、この嫌がらせはまだ続くだろう。自分にとっては全く関係ない話だが、このゲームを楽しむプレイヤーとしては嫌わないで欲しいと思ってしまう。

唐突に言葉を切って考え込んだレイジに、ノゾミが心配そうに見つめていた。

 

「……なあ。散々な始まり方になったが、ノゾミはこのゲームを楽しいと思うか」

 

「ふぇ……?」

 

いきなり話が飛んだので少々混乱したノゾミだが、少し考え込んで答え始める。

 

「……いきなり洞窟に移動させられたし、モンスターに追いかけられたし、最初はやらなきゃよかったって思った。でも、戦ってるところをみて、自分もあんな風になれるじゃないかって思えた」

 

だから、と立ち上がりながら言葉を繋げる。

 

「このゲームが楽しいかどうかなんて関係ない。自分がいる状況を思いっ切り楽しみたい」

 

その言葉に、自然と笑みが零れるレイジ。まるで、ゲームをする自分を見ているように感じたのだ。それと同時に、このまま終わるのは面白くないと思い始める。どんな恨みがあるかは知らないが、初心者にPKを行うのは明らかに悪質である。ならば―――

 

「なあ、ノゾミ。身近にアストルムを教えてくれる人はいるか?」

 

「進めてくれた人が教えてくれる予定だったんですが……」

 

そこで言葉が止まるということは、その人以外にやっている人を知らないのだろう。確かに、自分を嵌めた人から教わろうとは思わないだろう。

 

「なら、俺が教えてやる」

 

「えっ、いいんですか!?」

 

「なーに、俺も巻き込まれたんだ。ノゾミが強くなって見返せば、俺としては満足だ。……自分で誘って言うのも何だが、俺が教えていいのかとも思ってるが」

 

ちょっと調子に乗ったと思ってるのだが、そんなレイジを見て今度はノゾミが笑い始める。

 

「ホントに自分で誘って、ですね。でも、あなたは悪い人じゃないって信じたいです」

 

「……なら、期待には応えないとな。まだログアウトする時間じゃないよな?色々レクチャーしてやるさ」

 

「大丈夫です。よろしくお願いします!」

 

その言葉を聞くと、レイジは洞窟の出口に歩いていく。ノゾミはその後ろをついていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

レイジとノゾミの邂逅。それはこの物語の始まりに過ぎず、後にアストルムでの大波乱にも関わっていくのだが、それはまだ先の話である。

 




なお、場所はガラキシア遺跡がベースです。また、ノゾミはまだアイドルの人気が出る前となってます。


一応、主人公のステータスと文章前半の装備です。

名前:レイジ Lv.70
年齢:19
属性:闇、風(後付け)
装備:常闇シリーズ(コート・ズボン・ブーツ)
   ダークホースの角剣
   風鳴のイヤリング
武器スキル:剣技
装備スキル:闇属性武器強化
      闇属性詠唱簡略化(弱)
      移動速度アップ(弱)
      索敵
      クリティカル率アップ(中)

完全オリジナルかつ適当ですが、こんな感じです。


前作だとゲームをプレイする際のスタミナをスタミナポーションで回復していたので、ここではHP回復にしました。
武器スキルが無くても武器も魔法も使えますが、威力に影響が出ます。
属性技は動作で、魔法は詠唱で発動します。
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