狐の日記   作:姫戸三角

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番外編と言うやつです。

小さな大冒険をお楽しみください。



13 きつねとねこ

☆月♪日 (晴れだけど私の顔は雨)

 

 やはり雨音さんは雨音さんです。前世あたりでラスボスやっていて、勇者の心をへし折って楽しんでいた魔王だったと言われても、すんなり受け入れることが出来るでしょう。むしろ『やっぱりですか?』と納得さえしてしまいます。

 

 

 ことの始まりは三日前、いつものように修行をしていたときの雨音さんの一言から始まりました。

 

「化生としての本能が足りない」

 

 その一言に、嫌な予感しかしなかった私は『飼い猫ですから仕方ない』と必死に言い訳をしてみましたが、無駄な足掻きでしたね。

 

 

 そして今朝、雨音さんから地図を渡され、印の付いた場所に置いてある赤い御札を二人で持ち帰れと言い渡されました。

 しかも、戦うとき以外は猫の姿で、九重ちゃんは狐の姿で行けと。

 

 そのときに悟ってしまいました。

 

 ――――これ、絶対に生命の危機があるやつだ・・・・・・と。

 

 九重ちゃんは元気に返事をして、妹ちゃんも『がんばってね!』と応援します。

 お兄さん・・・・・・苦笑いしながら怪我をしないようにと言うくらいわかっているなら、雨音さんを止めてくださいお願いします。

 せめて、九重ちゃんだけでも無事に帰れるようにと覚悟を決めました。

 

 

 いつもより広い道路を歩いて、目的地へと向かいます。しかし、狐と猫の組み合わせで町を歩けば、当然目立ってしまいます。私だって見かけたら気になります。

 小学生くらいの女の子が私たちに気がつき、駆け寄って頭を撫でて来ます。

 分かれた後も、何かと町の人に撫でられたり食べ物をもらったりしました。油揚げと魚の切り身は美味しかったです。

 

 思わぬ所で時間を食ってしまいましたが、やっと目的地に到着しました。

 そこは、人の気配がまったくなく、長い年月雨風を受けてぼろぼろになってしまっていた一階建ての広い和風の屋敷でした。

 

 玄関は鍵がかかっていたのか、それとも壊れていたのかわかりませんが、開けようとしてもびくともしなかったので、二人で他の入り口を探しました。

 五分ほど入れそうな場所を探したところ、壁に小さめの入れるくらいな穴があいているのを見つけることが出来ました。

 しかし、そこから頭だけ入れて覗いてみると、中は所々天井や壁にあいた小さな穴から光が差し込む程度で薄暗く、埃が溜まっていました。夜目が利く私たちなら薄暗いのは問題ないですが、ものすごく・・・・・・入りたくないです。しかし、入らなければ雨音さんがそれはイイ微笑で出迎えてくれるのは目に見えています。

 

 覚悟を決めて中へと入り、さっそく御札を探し始めました。

 

 探し物をするときは二手に分かれるのがいいのでしょうが、おそらく今のこの状況での単独行動は、ホラーゲームなみの死亡フラグが建つ予感がしたので、二人で一緒に探します。

 

 廊下を歩くたびに床に溜まった埃が舞い、それが私たち以外に人が居ないのを伝え、古びて所々穴の開いた壁や床がおどろおどろしい雰囲気をかもしだしていました。

 

 帰りたい。

 

 しばらく探し回っていると、広い部屋の奥にそれはありました。

 

 

 石で作られた武者の鎧。

 

 

 鎧はまるで生きているかのようで、不気味な雰囲気をかもしだしています。

 ですが、その鎧の胴に赤い御札が貼ってあるのを見つけて、私たちは覚悟を決めて御札を剥ぎ取り、走って出口に向かうことにしました。

 

 必死に走って、入ってきた壁の穴へと向かっていましたが、途中から何か違和感のようなものを感じていました。

 そして、辿り着いてからその違和感の正体がわかりました。

 

 ――結界。

 

 外が見えているのに、見えない壁のようなものが私たちを拒み、閉じ込められて外へ出ることが出来ません。

 必死に外へ出ようと、九重ちゃんは火を、私は仙術を使い結界の壁を殴りつけましたがびくともせず、他の出口を探そうとし始めたときにそれは聞こえてきました。

 

 私たち以外誰も居ないはずの屋敷に物音が響きます。

 ぎしり、ぎしりと何か重いものが、まるで廊下を歩いてくるような音――。

 

 私たちは動くことが出来ず、音がする方へと頭を向けます。

 

 それは居ました。

 

 黒い靄を全身から発し、石で出来た刀を抜き、隙間から見える何かが蠢く無数の丸く小さな赤い光。

 

 ――――石の鎧武者。

 

 それを見て、私たちは走りました。今にも力が抜けそうな足を必死に動かし、この広い屋敷からの出口を探すために走りました。

 ですが、その時に聞こえてきました。・・・・・・小さな子の泣き声が。

 泣き声がする方へ向かうと、先ほどの頭を撫でてくれた小さな女の子がうずくまって泣いていました。私たちを追いかけて、ここへ来てしまったようです。

 そんな中、先ほどの足音が段々とこちらへ近づいてきます。

 

 逃げなくちゃ。・・・・・・でも何処へ?

 

 恐怖で足がすくみ、どうすればいいのか分からなくなってしまいました。

 

 そんな時です。頭の中に二つの影がよぎりました。槍を持った男の人と、雷を纏った女の人。

 

 

「怖いときに怖いと思っては駄目だ。心が挫けてしまうから」

 

 強くて優しい、そして温かいあの男の人の言葉。

 私がここで挫けてしまうと、後ろの二人もやられてしまいます。それだけは嫌です!

 

 私は人型になり、仙術を使い気を練り上げます。

 

 鎧武者が視界に入るのと同時に、私は気を纏った拳を叩きつけます。

 

 ――硬い。

 

 かろうじてヒビは入りましたが、砕くことは出来ません。

 ですが、それで止まることは出来ません。何度もぎりぎりで刀を避け続け、拳を叩きつけ続けますが、有効打を与えられません。

 そんな中、刀が私を捉え腕を切り落とそうとしたその時、炎が鎧武者に当たり、一瞬ひるませて避けることができました。人型になった九重ちゃんです。

 九重ちゃんの援護を受けて、状況を押し返し始めましたが、鎧武者から石で出来た鋭い蛇のようなものが何本かはえてきて、私の左腕に噛み付きました。すると、私の左腕は噛み付かれた所から次第に石になり始めました。

 

 怖い。

 

 だけど、私も負けるわけにはいかないのです。仙術で気の流れを操作して、石化を遅らせます。

 そして、限界まで気を纏わせたその石になった左腕で鎧武者を殴りつけ、鎧を砕くことが出来ました。

 

 私は倒せたことに安心して、その場に座り込んでしまいました。仙術の使いすぎでもう動くことが出来ません。意識も遠くなってきました。

 

 ですが、まだ終わっていませんでした。

 砕けた鎧武者から、四階建てのビルくらいの大きさで、二つの頭を持つ巨大なムカデが飛び出してきたのです。

 私は、後ろの二人に謝りながら力なく倒れこみました。

 

 守ることが出来なくて本当にごめんなさい。

 

 薄れ行く意識の中、結界を切り裂き、壁を破って駆ける様に飛び込んできた二つの影を見ました。

 

 私は安心して意識を失いました。

 

 

 目を覚ましたら、お兄さんに背負われていました。

 夕日が優しく照らす中、二人は『よくがんばった』と褒めてくれました。九重ちゃんと女の子も『かっこよかった』と言ってくれました。

 本当は動けるくらいに回復していましたが・・・・・・今日くらいはこの背中に甘えてもいいですよね?

 

 

 どこかに居る姉さま。

 私、友達が出来ました。優しく撫でてくれる人と、姉さまみたいに抱きしめてくれる人、そして私より小さな相棒です。

 いつの日か、また姉さまに会うことが出来たら、一番に紹介しますね。

 

 

 

 

 

 

 わかってはいましたが、雨音さんが全て仕組んだことでした。鎧武者も雨音さんが作ったそうです。

 ですが、女の子は想定外だったらしく、お兄さんと妹ちゃんにやりすぎだと、あの雨音さんがおとなしく説教されていました。どうやら最強だったのはあの二人だと言うのがわかりました。

 

 

 




戦闘描写がここまで難しいものとは・・・・・・。
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