□月^日
探していた者が、放った黒炎数匹を退けたようだ。これであれば、私が望んでいる働きを十分こなしてくれるだろう。仲間も居るようなので、そちらも何かに使えるかもしれない。
まだ予定しているもう片方が力不足なので、急ぐ必要も無い。
強くなってもらうため、向かわせている黒炎を毎日一匹ずつ増やしていくことにする。
捕らえた頃には、何匹相手に出来るようになっているか楽しみだ。
□月¥日
そろそろコカビエルが動き出す頃だろう。
訪ねてみると、コカビエルのほかに人間が二匹いた。
コカビエルは、その人間が強ければ戦うだけだと言っていた。まあ、戦うのであれば私は問題ない。
私は二匹の人間に問いかけた。何故このようなことをしていると。
老いた人間は完成した聖剣が見たいそうだ。牧師の格好をした人間は楽しいことがしたいと。
つまらぬ。
老いた人間はどうでもよいが、牧師の方が気にいらない。心に復讐という憎悪を秘めているのに、それを行わないのが気にいらない。
この人間どもでは、私が求めている答えを出してくれそうもない。
私は知りたいのだ。あの戦いでの不可解に思っていることの答えを。
槍が導き、槍の使い手が化生と人間を繋いだ。それは今の私であればわかる。主と妹様を見てきた今なら。
だが、それでもどうしても未だにわからないことがある。あの時、この国の人間たちの恐れが大幅に薄まった。町を破壊し、恐怖を喰らう私を見れば誰もが思っただろう。太陽のような存在の槍の使い手が居たとはいえ、たかが人間と化生の二匹がどう足掻こうが無駄であると。
私はどの化生よりも人間を理解していた。それなのに、何故直接槍と関わってすらいない人間の恐れまで薄まったのかがわからない。私はそれが知りたいのだ。答えを得るまで、きっと私は人間を見続けるだろう。
明日、悪魔どもに仕掛けるらしい。もうここに用はない。
□月|日
槍だ。
槍だ槍だ槍だ槍だやりだ槍だやりだ怖いやりだやりだ槍だ槍だやりだやりだやりだやりだやりだ憎いやりだやりだやりだやりだ・・・・・・。
獣の槍イイイィィイイィィ
□月;日
昨日はこの世界に生まれ、初めて我を忘れた。
しかし、笑いが止まらない。
獣の槍とは、炉に人身御供を捧げ、私に対する憎しみの炎で打ち鍛えられ、私を滅ぼすためだけに造られた怨念の霊槍だ。
槍を振るえば振るうほど使い手は槍に命を削り取られ続け、いずれ獣になる。そして獣が行き着く成れの果てが・・・・・・私の模造品。つまり、憎くて憎くて仕方がなかった私への憎悪をもって、白面の者へと成り果てる。
私に恐怖という感情を植え付けた獣の槍が憎くて憎くて生み出した、私の八本目の槍に酷似した鋼の刃の尾。その憎しみが込められた尾の一部を使い、私が鍛えた主の槍。
名を与えられ、主が振るい続けたあの槍が行き着く先は、一つしかなかったのだ。
――――獣の槍。
そして、獣の槍に呼応するように目覚めた槍の獣・・・・・・字伏。
私に向かい何かが突き進んでくるのに気がつき、結界を張り人里離れた遠くの地へ移動していてよかった。家族を巻き込むことは避けることが出来た。
暴走した主と妹様が私を滅ぼしに来たのだ。槍が・・・・・・籠手が私を滅ぼせと主たちを乗っ取ったのだろう。
槍を見た私も、あの槍を破壊したい衝動に駆られ戦いとなった。
戦いの余波で山がいくつか消し飛んだが、意識がなく憎悪のみで戦っていた主たちを止めることは出来た。主たちが完全な獣へとならなかったのは天照の加護のおかげだろう。
主たちは、その時の記憶が無いようだ。家族を危険に晒したなどと知らないほうがいいだろう。
しかし、まさかこの私が獣の槍を作り出してしまうなどとは思わなかった。昔あれほど下種な生き物と見下していた人間と無意識でまったく同じことをしてしまうとは・・・・・・。やはり私も化生どもと同じく、完全な生き物ではなかったということだ。そう思うと笑いが止まらない。
□月+日
私と九重、白音の毛を編み込み、槍の力を抑え封じる布とした。さすがに赤ではなく、白と金の布となった。槍の力は強大すぎて、今の主では扱いきれないため、この布を結び力を抑えることにしたのだ。
妹様は、籠手に対して私が力の限り脅しておいたので、おそらく大丈夫だろう。
少しヒビが入ったが、首だけになっても戦い続けたあの化生の化身だ。問題は無いだろう。
主たちは、もう私の手はいらないだろう。きっとあの槍が導いていくこととなる。私はそんな主たちを近くから眺めていければそれでいい。まあ、鍛錬は続けるが。
それと、白音も薄いとはいえ結界を使えていた。このまま九重と組ませて成長させれば、もしかしたら世界に名をはせる者にまで行き着くかもしれない。そうなれば主たちの助けにもなるだろう。明日から鍛錬の量を増やすとする。
そういえば、コカビエルは主たちとの戦いから答えを得たようだ。二人に負けて、竜の臭いがする白い悪魔に捕らえられ連れて行かれたが、私にかかれば何処に捕らえられていようと問題は無い。気まぐれに相手をしに行くのもいいかもしれない。
やはり主たちは・・・・・・私の願いを叶えてくれるのかもしれない。
狐様が、人間に対して何故温めの行動をとっていたのかが少し明かされました。
今後の狐様も温かく見守ってあげてください。