狐の日記   作:姫戸三角

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今回で小猫目線は終了です。
さらっと狐様がやっていたことは、別目線だとこんな感じになっていました。


05 白猫日記

○月M日

 あの日から兄妹にどう接すればいいのかわかりません。

 二人のことは今でも好ましく思っているのですが、二人からわずかに発するあの香りが・・・・・・あの日の恐怖を呼び起こすのです。

 苦肉の策として休み時間は急いで教室を出て、気配を読んで二人と出会わないようにしていました。

 ですが、何故だかわかりませんが二人は私の行動を先読みしているかのように追ってきます。秘密を知ってしまったからですかね。

 

 話をしようと覚悟を決めて妹ちゃんと向き合ったら、いつものように抱きしめて頭を撫でてきました。

 これは・・・・・・麻薬です。怖くて仕方ないのに、今すぐ逃げてしまいたいのに拒絶することが出来ません。この日溜まりのような匂いと温かさを私は求めてしまっている。一度知ってしまえば、自分の意思ではもうどうすることも出来ない。そんな優しい猛毒です。

 

 結局私は、されるがままに撫でられ続けていました。

 

 ですが、そんな幸せな時間は終わりを迎えました。

 

「小猫ちゃん。あのいつものモフりけ・・・・・・チラシ頂戴!」

 

 あのチラシは願いの代償として対価を要求するものです。もしかしたらその対価の要求が『兄妹に害をくわえる』に値するのではないか? 

 それに気がついてしまった私は、必死にこの状況をどうにかしようと考え続けました。

 ですが、いくら考えようと私には無理なことでした。最初から私にはあの笑顔に逆らうということが出来なかったからです。

 

 

 せめて部長たちの命だけでも助けてもらえるよう命乞いをしましょう。

 

 

 

○月◎日

 行ってしまった。あの家に。

 

 私に出来ることは、必死に部長たちの命を助けてもらうよう懇願することだけでした。

 私の気配を察していたのでしょう。あの女性が出てきました。

 

 怖い怖い怖い怖いコワイコワイコワイコワイ――。

 

 あの声を聞いてしまえば考えることすら出来なくなることを知っていたので、私はあの女性が声を発する前にその場に土下座して、無我夢中で謝罪の言葉を繰り返しました。

 

 気がつけば部屋に通されていました。

 お菓子を与えられましたが味はまったくわからず、ただ口の中にパサパサとしたものがあるという感触だけです。

 女性はあの艶かしく妖艶な微笑を浮かべて、私にチラシの話をするように促しました。

 

 その後、何を話したのかはよく覚えていません。必死で支離滅裂な話になってしまったとは思っているのですが、どうにか生きて帰ることが出来ました。

 帰り際にあの女性は名前を教えてくれました。雨音という名前だそうです。

 

 

 出来ることなら知りたくはありませんでした。

 

 

 

○月▽日

 あれから何度かチラシを使い呼ばれました。

 私以外が行くと命の保障がまったく出来ないため、必ず私が行くようにしています。

 

 今日も呼ばれないと嘆いていた少し前の私を殴り飛ばしたい。

 

 何度か呼ばれるうちに、雨音さんのことが少しだけわかりました。

 傷ついて倒れていた所をお兄さんに助けられ、あの家に住まわせてもらっているそうです。

 

 雨音さんを傷つけることが出来るとか、どこの神話の神様でしょうか?

 

 そして、私たちが知らないことも知っていると言うこと。

 堕天使の件やイッセー先輩のことも知っていました。もうこの人なら何を知っていてもおかしくないです。

 最後に、思っていたよりも恐ろしい人ではないということです。

 いえ、まぁ未だに前に立つと体中が震えますし、妖艶な気配にあの冷たい眼で見るものを魅了し恐怖を植えつけることには変わりませんが、誠心誠意受け答えしていればおそらく理不尽に殺されることは無いようです。

 あと、お菓子も美味しいです。

 

 妹ちゃん被害者の会談義とかすると、思いのほか会話が弾みます。怖いものは怖いですが・・・・・・。

 

 これなら、部長たちが死なないようにやっていけそうです。

 

 

 

○月Ω日

 イッセー先輩とアーシアさん、それにあの兄妹が堕天使に襲われました。

 神器を持っていなかったはずなのに、お兄さんは槍を、妹ちゃんは籠手を出して戦っていたそうです。

 部長たちの興味がまた向いてしまいましたが、それは後回しです。今やるべきことではありません。

 きっと怒り狂っているあの人からみんなで生き残ることを考えないと。

 

 

 

○月α日

 地獄がありました。

 

 まるで、その古びた教会をライトアップするかのように辺り一面を焼き続ける炎。かつてそこで歌われていた聖歌の代わりに響き渡る絶叫と悲鳴。むせ返るほどの臭いを放ち、教会の白を紅に染め上げる血と肉片。

 

 堕天使に協力していたエクソシストらしき人たちが、恐怖で顔を歪め自分を殺してくれと懇願し、空を覆うほどの数の虎に似た赤黒い毛並みを持った巨躯のバケモノたちが、火を吐き雷を放ちながらそれを愉快そうに笑い、千切りながら喰っていました。

 

 まるで地獄がこの場所に降り立ったような光景。私たちは誰も動けず、ただ立ち尽くすことしか出来ませんでした。

 

 

 

私は知っていました。このようなことが出来る存在を。

 

 

 

 バケモノたちは、動けないでいた私たちなど興味すらないかのように血と肉の晩餐を終えると、何処かに飛び去っていきました。

 イッセー先輩たちと一緒に教会に囚われているアーシアさんを探しました。

 教会の地下でアーシアさんは見つかりました。食い荒らされた堕天使のものだったであろう黒い羽根を周りに撒き散らしたそばで。

 アーシアさんはそばに神器が落ちていたので、神器を抜き取られ亡くなっていたようでした。

 食い荒らされたような跡がなかったのが救いでした。きっとバケモノたちが来たときにはもう亡くなっていたのでしょう。

 

 その後、アーシアさんは悪魔として転生させることで生き返りましたが、部長たちはあのバケモノたちを警戒して情報を集めるという方針になりました。

 

 ですが、私は知っていることを話すことが出来ません。うかつに話すとあのバケモノたちが次に向かってくるのは私たちのところですから。

 

 

 

 姉さま・・・・・・会いたいです。

 

 

 




小猫に痛いことをさせる気は微塵もありませんが、ちょっと涙目になってるのは可愛いですよね?
的な気持ちで書いてたら、これガチ泣きしてるやつになってしまいました。
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