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狐様、土産を手にお家に帰る回
△月@日
高天原を出るときに、天照が主たちに微力ながら加護を与えたいと言ってきた。
主たちが拒まないのであればかまわないが、無理やり人外にするような加護は与えるなと言っておいた。あの輝きは、人間という短き時を生きるからこその物だ。その輝きを損ね、無理やり人外にするなど私が許さない。
それと、京都の空に化生が待ち構えていたのは天照のせいだったようで謝罪された。
対極にあたる太陽を司る神だからこそ、結界を張っていたのに陰の存在である私に気がついていたそうだ。結界の腕が鈍ったのかと本気で心配していたが、理由がわかってすっきりした。
攻撃するよう言っていたわけではなかったのだが、私を前にして恐怖に駆られるのは生あるものとして当然だ。気にするなと言っておいた。
せっかく京都まで来たのだから、主たちに土産を持ち帰ることにした。
また九尾に案内させようと思っていたのだが、体がろくに動かないと軟弱なことを言ってきたので、近くにいた九重を連れて行った。九尾がまた何か言っていたが、無視だ無視。
その後は、九重の案内で京都の町並みを見て回った。
私がかつてこの国に来たころによく見られた古い建物がある町並みだったが、当時は気にも留めなかったそれらも、こうしてみると非力な人間がろくな道具も無い時代にこのような物をよく作り上げたと思うと感心した。
天使どもが住んでいる天界や、悪魔と堕天使どもが住んでいる冥界でもこのような見事な町は無い。寿命が長く個としての力は強いが、停滞した時を生きているあやつらと、短い寿命で代を重ね、技術を積み上げ新たな発想を形にし続けてきた人間との明確な違いがでている部分だ。
あやつらは人間を保護や虐げるのではなく、頭を下げ見習うべきだと思う。
人間がその気になれば、私を引きずり押し返すほどの力と技術を持ち合わせていることを知らないのだろう。
土産は何がいいかと考えたが、真っ先に小物を除外したら食べ物しか残らなかった。
どうせ小物を持ち帰っても、主はすぐ何処に置いたか忘れて私が探す羽目になるのだ。本当にいい加減財布くらいは自分で管理して欲しい。
昼になり、九重のお気に入りの店で昼食を取った。九重は狐らしく油揚げが好きなようで、うどんの店だった。確かに美味だったが・・・・・・人間の食べ物は、母上様の料理を除けばやはりハンバーガーこそ至高だ。チーズバーガーならなおよし。
九重に美味いことで有名な饅頭がある店まで案内させ、それを土産にした。
さて帰ろうと言うところで、九尾のやつが使いを出して呼び出してきた。どこまでも間が悪いやつだ。
つまらん用件だったときはまた教育してやろうと思いながら寝床に向かったが、主たちの身分証を発行したので渡しておいてくれとのことだった。教育はまた今度にしてやろう。
主たち四人分の通行証を兼ねている身分証を預かったが・・・・・・私の分がない。遠まわしに『もう二度と来るな』と言って来るとはいい度胸だ。
と、思っていたら、私は顔パスらしい。納得した。
そろそろ夕刻となり、今度こそ帰ろうと思っていたのだが・・・・・・九重が私の尾を離さない。それはもうかなりの力でしがみついている。
あまりにも離れないものだから、結局私が折れて今日も泊まる事になった。
寝る前に九重に何か物語を語って欲しいとせがまれた。大陸のほうで宮廷に潜り込み、酒池肉林を楽しんだ話にするか悩んだが、人間と化生、二匹で一つのバケモノが歩んだ道のりの物語をした。
△月‘日
今度こそは主たちが居る町へ帰る。
だが、案の定九重が私の尾を離さない。どうしたものかと悩んだが、別に狐が二匹になった所で主と家族たちは気にしないだろう。いや、むしろ喜ぶか? このまま帰ろうとしたら九尾のやつが思い留まるよう泣いて頼んできた。
仕方が無いので置いて帰ろうとしたら、
「母様! 私は立派な九尾の狐になって帰ってきます!」
と、九重が力強く宣言し、九尾の心が折れ倒れたので持って帰ることとなった。言っていることは立派だが、私の尾を見る九重の目が、獲物を前にした獣の目だった。少し早まったことをしたのかもしれない。
まだ空を飛べない九重を背に乗せ、主たちの町へと空を駆ける。行きとは違い、さすがに体は小さくしてあるが、久々に母上様の料理が食べることが出来ると思うと足が軽い。そのまま一気に駆け抜けた。
主たちはまだ白音たちと鍛錬に出ていて居なかったが、母上様が出迎えてくれた。予想通り九重を見て早速撫ではじめた。
その夜、帰ってきた父上様を交えて九重のことを話した。狐の化生であること。本人の希望により京都から付いてきたこと。
それを聞き終えて、母上様が
「まだ小さいのに、親御さんから離れて暮らして大丈夫なの?」
と尋ねてきたが、化生の寿命は長く数年くらいは人間で言うと数日程度でしかないことを説明すると、笑顔で九重を膝の上にのせ撫ではじめた。さすが・・・・・・妹様の母上だ。
夜も更け、母上様は九重と一緒に寝ると言い、早めに寝床へと向かっていった。
私は久々に父上様に誘われ、晩酌に付き合うことにした。
いつもと変わらず美味な夕食。しかし、主たちと私が居ないいつもより少し静かなリビング。いつか主たちもこの家を出て、そういう日が来ることは理解していたが、静かな夕食は嬉しさ半分悲しさ半分だったと語った父上様の背中は、物寂しそうに見えた。
主たちは確かに立派に成長したが、まだまだ童だ。あと数日で帰ってくるのでまた賑やかな夕食になると告げて、空になった父上様の杯に酒を注いだ。
人間・・・・・・いや、親というものが少しだけわかったような気がした。
あの童は・・・・・・私が突き放したあの子は今頃どうしているだろうか。
△月{日
母上様と九重が私の尾を狙ってくる。
撫でるのはよいが、顔をうずめるのはよせ。
△月「日
やっと主たちが帰ってきた。白音を連れて。
案の定、九重を見るやいなや妹様が飛びつきモフりはじめた。もはや様式美である。
そして、やはり高校に住み着いている悪魔どもでは鍛錬相手にならなかったらしく、自分たちで模擬戦をし、白音の仙術の鍛錬に付き合っていたそうだ。
それもそうだろう。主は人外めいた速度の立体機動で駆け回り、バケモノどもに対して特効があるあの槍で貫きにかかるのだ。相手をするには力不足過ぎる。
妹様に関しては、近づいただけで黒こげだろう。
白音が言うには、妹様が髪を伸ばし刃に変え、切りかかっていたとのことだ。
妹様はどこへ向かっているのだろうか。
どうせ、『お兄ちゃんが出来るんだから、きっと私も伸ばせるはずだ!』とか言いながらやったに違いない。
籠手のやつ、妹様の無茶振りに応え過ぎだろう・・・・・・。
レーティングゲームとやらは今夜らしいが、これなら問題なく勝利することが出来るだろう。
さて、私もそろそろ準備をするとしよう。
幼女拉致! 極悪非道!
そして、アップを始めた狐様。あの悪魔の運命はいかに!?