Fate/Medal of Honor   作:A-10教徒

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〈前回のあらすじ〉
生まれ変わってから18年、防衛大学校に採用されたローガン・K・アダムス大尉––––もとい、藤丸立香は、防衛省に呼び出され、陸上自衛隊の並木涼介一等陸佐に、自身に魔術師の才能があると告げられる。


Mission.2『Memory of the Battlefield』

 2015年3月20日 15時30分

 

 東京都 新宿区 東京メトロ 市ヶ谷駅

 

 

「はあ……」

 

 立香はホームの柱に寄りかかりながら、天井に向けてため息を吐いていた。

 

「今日は散々というか何というか……」

 

 今日一日、立香には様々な出来事が起こり過ぎた。

 防衛大学校に採用されたのは良いとして、防衛省にて並木一佐に、自身に魔術師の才能があると言われたのはもう驚くしかなかった。

 だが今は最早、そんな事はどうでも良かった。立香はもっと重要な事を一佐から聞いていたからだ。

 ––––2016年12月31日を以って、人類は絶滅する。

 余りに突拍子も無い、衝撃的な話だ。しかし、並木一佐は事実だと言っていた。

 普通の人間ならありえないと言って全く相手にしないだろう。だが立香には、一佐が嘘を言っているとは到底思えなかった。

 

「……俺が承諾したんだからな。今更一佐の所に戻って、この話を断ろうなんざ甚だ思ってないさ。」

 

 立香は既に、自分が行くと一佐に言ったのだ。これが自身に課せられた責務だと信じて。

 行く必要は無かったのかもしれないが、そんな事は立香の––––ローガンの海兵としてのプライドが許さなかった。

 自身に何かを達成できる力があるのなら、それを行使するのは当然の事だ。少なくともローガンは、そうやって来たのだ。

 

『まもなく 三番線に 埼玉高速鉄道線直通 浦和美園行きが 参ります。

 ご乗車の際は 手荷物をドアに挟まれないように ご注意下さい。』

 

 ホームのスピーカーから、電車の接近を知らせる放送が流れる。

 

「もうそろそろか……」

 

 立香は柱に寄りかかるのをやめると、ホームの黄色いブロックの前に移動した。

 

『市ヶ谷です。

 三番線の電車は 浦和美園行きです。』

 

 放送と共に、電車がホームに到着する。

 平日の昼間という事もあってか、乗客は少なかった。座席もいくつか空いている。

 立香は乗車すると、空いている座席に素早く座った。

 しばらくするとスピーカーから、発車を知らせるメロディーが流れ出す。

 

『ドアが閉まります。手荷物をお引き下さい。』

 

 その放送の直後、空気の抜けるような音と共に、電車のドアは閉じた。

 

 

––––––––––

 

 

 電車が動き出すと、立香はスマホを開き、あるSNSのアプリを開いた。

 

「……あいつ、また親バカ発揮してやがるな。」

 

 一つのアカウントの投稿を見て、立香は苦笑いとも微笑みとも取れるような笑みを浮かべた。

 黒人の幼い少女が笑顔でこちらを向いている画像と、その少女をベタ褒めする文章という、ありふれた投稿だ。しかしそれは、立香にとって極めて特別なものだった。

 理由は至極単純。

 これを投稿したアカウントの主が、彼の部下だからだ。

 彼の目の前で殺されていった部下達。その部下達との思い出を思い返すために、彼はこうして彼等の投稿に目を通しているのだ。

 とはいえ、思い出すのはいい思い出ばかりでは無い。

 

「シンディ……ごめんよ。俺のせいで、あいつを……あいつを……!」

 

 思い出したくもない、けれども思い出すしかない、あの時の忌々しい記憶。

 握っていた手から零れ落ちるように消えていく体温。瞳孔が開いた瞳。傷口から流れ出る血。そして冷たくなり、何も物言わなくなった部下達。

 思わず両手に力が入り、小さく震え出す。

 

「……っ」

 

 左手に小さな痛みを感じた事で、彼はようやく自身が血が滲むほど手を握り締めていた事に気付いた。

 

「……ああ、やっちまった。」

 

 赤い爪の跡が残っている掌を見つめながら、立香はため息を吐いた。

 いつもこうだ。忘れようにも忘れられない。恐らくこの苦しみは、彼がこの人生を終えるまで付き纏うだろう。

 今も彼の胸中には、部下達への申し訳なさが溢れていた。

 

『––––、––––です。』

 

 気付いた時には、既に目的の駅は目前に迫っていた。立香はスマホをポケットにしまうと、座席から立ち上がってドアの前に移動する。

 ドアが開くと同時に、立香は電車から降りて改札口に向かう。

 lCカードを使って改札口から出ると、立香は自宅へと続く道を歩き出した。

 

 

 駅から10分ほど歩くと、平均的な––––アメリカでは小さい方だが––––真新しい雰囲気の一軒家が見えてきた。塀に貼り付けられている表札には『藤丸』と書かれている。

 どこにでもあるようなごく普通の家、それが立香の家だった。

 立香は玄関に近づくと、そっとドアに耳をそばだてる。玄関の向こうからは、男女の話す声が聞こえた。

 恐らく両親だ。立香がドアを開けた瞬間にサプライズ、などと考えているのだろう。

 立香はハアとため息を吐くと、ドアノブに手を掛けてドアを開いた。

 

「「大学合格おめでとう、立香!」」

 

 立香の予想通り、二人は玄関の前で待機していたようだ。クラッカーの鳴る音と共に、二人の声が聞こえる。

 クラッカーの音に驚き、立香は思わず腰に手を回して身構えた。腰に手を回してはいるが、勿論今の彼は腰に拳銃など装備していない。

 

「……ビックリしたぁ。」

 

 数秒の静寂の後、立香は少し間の抜けた声でそう言った。

 クラッカーの音は銃の発砲音と酷似している事もあり、立香は警戒してしまったのだ。

 立香の驚いた様子に、二人は嬉しそうな表情を浮かべる。

 

「………………」

 

 二人の顔を見ながら、立香は防衛省で自身が告げられた事を思い出した。

 あと半年も経たない内に、立香はアメリカへ飛ぶ事になる。この世界を救うために。

 不思議と、心はあまり痛まない。薄情な事だとは立香も理解していた。

 だがそれも無理はないのかも知れない。二人はこの体(藤丸立香)の親であって、ローガンの親ではないのだから。

 

「……ただいま。あと、ありがとう。」

 

 立香は目の前の二人に対し、精一杯の笑顔を浮かべた。

 

 その後は至極普通な日常を送った。普通に大学の事を話し、普通に食事をして、普通に風呂に入り、普通の体現のような日常を過ごした。

 

 数時間後の夜の11時。部屋着に着替えた立香は部屋に入ると、ベッドに寝転がった。

 

「……普通っていうのは、こういう事を言うんだろうな。」

 

 藤丸立香という青年は、彼自身が驚くほど普通な人間だ。かつての彼とは比べ物にならないほど、平和で普通だ。

 こういう人生も良かったかも知れない、と彼は思った。

 

「––––ん?」

 

 立香は何か懐かしい気配を感じ、ふと机に目を向ける。机の上には、見覚えのない何かが置いてあった。

 ベッドから立ち上がり、机の上にある何かを確認するために近付く。

 机の上には、認識票––––所謂ドッグタグが置いてあった。

 それを見た立香は不審に思う。彼には、認識票を基地祭で貰ったり購入したりした覚えが無かったのだ。

 

「一体なんでこんな物が––––––なっ⁉︎」

 

 認識票を手に取った立香は刻印されている文字を見て、驚きのあまり目を見張った。

 

「なんで––––」

 

 その認識票には––––

 

「俺の認識票が––––?」

 

 ––––彼の名前が刻印されていた。

 その他にも彼の血液型・社会保障番号・所属(USMC)・ガスマスクサイズ・宗教という、彼に関する様々な情報が刻印されている。

 正真正銘、彼の認識票だった。

 

「……クソ、訳が分からん。何だって俺の認識票がここにあるんだ?」

 

 この認識票は立香が持っているはずのないものだ。それと同時に、ここにあるべきものでもない。

 何故こんな物がここにあるのか、立香には全くもって分からなかった。

 とはいえ、立香にはその認識票を捨てるつもりなど毛頭無い。何故ここにあるのかは不明だが、再び自身の認識票を見ることが出来て彼は嬉しかった。

 立香は認識票を首に掛けると、そのままベッドに戻って行く。ベッドに倒れ込むと、立香は認識票を右手でそっと握り締めた。

 

「……懐かしいな。」

 

 首に感じる金属の感覚は、彼が久しく感じる事の無かった物だった。

 

 しばらくしてから、立香は微睡み始める。そのまま目を閉じると、立香の意識は深い闇の中に沈んでいった。

 

 

––––––––––

 

 

 ––––闇の中から、意識が急浮上し始める。

 それと同時に、周囲から乾いた音や人間の声のようなものが聞こえてきた。

 

 ––––ち––––、––––て––––さ––––

 

 自身を呼ぶ声が聞こえる。それに応えるように、意識がハッキリとしてきた。

 

 そうちょ––、––きて––ださ––!

 

 声は次第にハッキリと聞こえるようになってきた。意識が回復し、目を開くと––––

 

「––––曹長!アダムス先任曹長!起きて下さい!」

 

 ––––目の前に見覚えのある黒人がいた。

 

「––––ジャクソン?」

 

 彼は間の抜けた声で口から懐かしい名前を呼ぶ。それは彼の部下で、部隊の機関銃手を務めていた兵士の名前だった。そして彼が思わず発声した声は、懐かしい彼の本来の声だった。

 

「ええそうです!あなたの部下のアレックス・ジャクソン伍長です!ほら、しっかりして下さい曹長!」

 

 ジャクソンに肩を揺らされ、やっと彼は自身が何者なのかを理解した。

 今の彼はローガン・K・アダムス大尉その人だ。理由や原因は不明だが、何故か以前の彼に戻ったのだ。

 

「––––! ジャクソン、状況は⁉︎」

 

 周囲に目を向けて、やっと自身が戦闘の真っ只中にいる事に気付いたローガンは、ジャクソンに現在の状況を尋ねた。

 

「状況は最悪です! 指定された回収地点(ランデブーポイント)への移動中に、クソ野郎共からの待ち伏せ攻撃を受けました! 曹長はRPG(ロケット砲)で吹き飛ばされてましたが––––フェルナンデス曰く大丈夫だそうです!」

「了解した、報告ご苦労!」

「それと、もう一つ報告があります!」

「何だ⁉︎」

「我々を回収する予定だった陸軍のブラックホーク(MH-60M特殊作戦用ヘリ)が撃墜されました!」

「クソッタレ! 最悪なニュースばかりだな!」

 

 あまりの状況にローガンは毒吐いた。空を見上げると、そう遠くない場所から、墜落したヘリのものであろう薄い黒煙が立ち上っている。

 墜落したヘリにも敵が向かっているだろう。ヘリに取り残されている乗員の安否が不明な今、ローガンは一刻も早く彼等の元へ向かいたかった。

 

「敵の人数は⁉︎」

「詳しい数までは分かりませんが、確実に30人はいます!」

「了解した! 作戦司令部には報告したか⁉︎」

「はい! 40分でブラックホークとリトルバード(MH-6汎用ヘリ)がそれぞれ2機ずつ、完全武装で迎えに来てくれるそうです!」

「そいつは上々!」

 

 ローガンは周囲を見て、部隊員達が無事である事を確認すると、大きく息を吸い込んだ。

 

「よし海兵! あと40分でヘリが迎えに来る! それまでに敵の包囲を突破、墜落したヘリの乗員のところへ向かうぞ! いいな⁉︎」

『Sir,Yes sir‼︎』

 

 7人の兵士はローガンの方を向いて一斉に頷いた。

 ローガンは起き上がり、傍らに置いてあったM4A1カービンライフルを手に取る。コッキングレバーを引くと、排莢口から弾丸が排出された。

 遮蔽物となっている壁から顔を少しだけ出し、敵の状態を確認する。それと同時に、ローガンの顔のすぐ側を銃弾が通り過ぎた。

 ローガンが目視で確認出来たのは8人。20m先の角に二人、40m先の通りに放置されているピックアップトラックの後ろに二人、25m先の土嚢等で作られたトーチカのようなバリケードに四人。

 この程度、とローガンは鼻で笑った。

 

「交戦開始!」

 

 M4A1を構え、角から身を乗り出したローガンは、装着されているホロサイトを覗いて敵に照準を合わせ、トリガー(引き金)を引く。

 高圧の燃焼ガスに押されてM4A1から発射された5.56×45mmNATO弾は、角から銃を撃っていた敵に一直線に飛んで行き、左目を撃ち抜き、頭部を貫通した。

 敵は小さく仰け反ると、そのまま糸が切れたように倒れる。

 

「一人やった!」

 

 既に何も物言わぬ肉の塊と化した敵はもう一人に引き摺られ、通りから消えていった。

 ローガンは壁に張り付き、角からトーチカのようになっている銃座に視線を移す。銃座には中国製の80年式機関銃が取り付けられており、ローガン達のいる場所に対して、機銃掃射を加えていた。

 一際大きい銃声が止んだ事に気付いたローガンは、角から顔を出す。敵の射撃が止んでいるのを確認すると、ローガンは銃座に照準を合わせ、機関銃に付いていた敵に二発同時に発砲する。

 銃弾をもろに喰らった敵はそのまま倒れたが、すぐに別の敵が銃座に付き、機銃掃射が再開された。

 

「あの銃座のせいで、我々はここに貼り付けられてるんです!」

「クソッタレ! 早く何とかしないと……」

 

 SMAWを使用しても良いが、割に合わなさ過ぎる。何か手は無いのか。角から少しだけ顔を出し、銃座を観察する。

 どうやらあの銃座には天井のような物が無く、上部からの攻撃に対して何の対策も施していないようだ。

 

「それなら––––」

 

 ローガンはプレートキャリアに付けられていたM67破片手榴弾を手に取り、そのまま安全ピンを抜いた。

 

「グレネード!」

 

 その掛け声と共にローガンは銃座めがけてM67を投擲する。

 放物線を描いて銃座に落下して来たM67を見つけた敵は叫び声を上げ、それとほぼ同時にM67は銃座に着地、爆発した。

 爆発音と共に土煙が上がり、敵が銃座から放り出されるように吹き飛ばされる。

 

「銃座を無力化!」

「了解! やりましたね曹長!」

「よし、この調子で行くぞ!」

 

 銃座に走って向かっている敵を見つけたローガンは、敵に向けて四発発砲する。銃弾は敵の腹部に命中し、敵は短い断末魔を上げて前のめりに倒れた。

 これで銃座は完全に無力化出来ただろう。これの他に脅威になりうるであろう物はRPGのみとなった。

 

「ジャクソン! RPGはどこから飛んできたんだ⁉︎」

 

 ローガンは再び壁に張り付くと、すぐ隣でMK48 Mod0軽機関銃のバイポッド(二脚)を立て、敵に対して連続射撃を行なっていたジャクソンの肩を叩き、そう尋ねた。

 

「あの建物見えますか⁉︎ あそこからです!」

 

 ジャクソンは約30m先のアパートのような建物を指差す。建物の屋上には、いくつかの動く人影が見えた。

 その内の一つ、肩に大きな何かを持った男が、こちらを向いているのにローガンは気付いた。

 

「––––––RPG!」

 

 そう叫んだ瞬間、男が持っていた物から発射炎が生じ、ローガン達のいる方向へRPG-7の弾頭が飛翔する。ローガンはジャクソンの肩を掴み、角の奥へ引っ張った。

 弾頭はローガン達がいた角のすぐ前に命中し、爆発による振動と轟音が響く。大量の土煙が舞い上がり、ローガン達の周辺を覆った。

 

「ゲェホッ、ゴホッ……大丈夫か⁉︎」

 

 手で土煙を払いながら、ローガンは周囲にいる隊員達の安否を確認する。

 

「こちらは無事です!」

「こちらも同じく!」

「こっちも大丈夫です!」

「死傷者はありません! 全員無事です!」

 

 土煙の中から隊員達の声が聞こえる。全員無事という言葉に、ローガンは安堵した。

 

「ロジャーズ! こっちに来い!」

「了解!」

 

 ローガンが怒鳴るように名前を呼ぶと、MK11 Mod0マークスマンライフルを手にした兵士が彼の元に駆け寄ってきた。

 

「あの建物の屋上から奴が顔を出したら、お前の鉛玉をプレゼントしてやれ!」

「分かりました!」

 

 先程、RPG-7が発射された建物を指差すと、ロジャーズは力強く頷いた。

 

「ピックアップの後ろから敵が三人出てきました!」

 

 隊員の一人がそう叫び、ピックアップトラックのある方向を指差した。

 

「了解、射撃開始する!」

 

 ジャクソンはMK48を構え直し、トリガーを引いた。連続で発射され7.62×51mmNATO弾は三名の敵に命中すると、彼等の膝から下の部分を綺麗に吹き飛ばす。

 足を吹き飛ばされてた男達の内、二人はすぐに生き絶えたらしく微動だにしなかったが、もう一人の男は生きていた。男は両足を喪失していながらも、腕を使って這いずるように移動している。

 

「……えげつないな。」

 

 その光景を見たローガンは、軽く顔をしかめながら小さく呟いた。

 直後に、ローガン達のM4A1より一回り大きな銃声が響く。ロジャースが例の建物の屋上から顔を出したRPG射手を狙撃したのだ。

 7.62mm弾を受けたRPG射手の頭部は弾け飛び、頭部を失った射手はそのまま仰け反る。それは彼がRPG-7のトリガーを引こうとしたコンマ1秒前の出来事だった。

 しかし頭部が喪失して、体の動きが止まるという訳ではない。頭部が吹き飛ぶ前に脳から筋肉に向けて発せられた命令は、既に頭部を失った男の指がRPG-7のトリガーを引く事で遂行されたのだ。

 発射されたRPG-7の弾頭はローガン達の方向––––ではなく、屋上の床に命中し、爆発する。爆発は側に置かれていた他の弾頭にも誘爆を起こし、屋上全体が吹き飛ぶほどの大爆発と化した。

 

「やりました曹長!」

「よくやったロジャース! 敵はRPGを喪失! いいぞ、大分有利になった!」

「よっしゃあ! この調子で行くぞ!」

 

 屋上の大爆発を目撃したローガン達は歓声を上げる。だが、その歓声は直後に鳴り響いた重い銃声に掻き消された。

 彼等は何事かと銃声のした方向を見て、驚愕する。

 一両のハンヴィーがこちらに向かって走行して来ていたのだ。

 

What the fuck!(なんてこった!)

「恐らく鹵獲された代物だ! クソッタレ!」

 

 ローガン達はハンヴィーに向けて銃撃するが、既存の装甲キットと敵自ら取り付けたであろう鉄板のせいで、ハンヴィーには全くと言っていいほど効果は無い。手榴弾を投げるも、装甲に阻まれて効果は今一つだった。

 それに加え、ハンヴィーには旧ソ連製のKPV14.5mm重機関銃が装備されており、ローガン達に向けて発射されている。

 

「このままじゃジリ貧だ!」

「何か手は無いのか⁉︎」

 

 重機関銃から発射される銃弾から身を守るために、彼等は壁に張り付いた。だがこのままでは距離を詰められ、全滅するだろう。

 この状況を打破するための方法は、一つだけだった。

 

「––––仕方がない、俺がSMAWを撃つ!」

 

 ローガンは隊員達に対してそう叫んだ。彼等が保有する火器の中で、あのハンヴィーに対抗できるのはSMAW(肩撃ち式多目的強襲兵器)ロケットランチャーだけだった。

 とはいえこれは相当危険な事だ。彼等とハンヴィーの距離は既に30mを切っている。今飛び出そうものならいい的だ。

 

「危険過ぎます!」

「そんなものは承知の上だ!」

 

 隊員の一人が止めようとするが、ローガンはそう怒鳴ってSMAWにランチャー・チューブを装填する。

 確かに、彼が今行おうとしている事がどれほど危険なのかは目に見えている。だがこれは誰かがやらなければいけない事なのだ。

 

「なら自分が行きます!」

「いいや駄目だ! この中で一番SMAWの扱いに長けてるのは誰だ⁉︎ 言ってみろ!」

「––––曹長です。」

「分かってるのなら止めるな!」

 

 そう言ってローガンはSMAWを肩に担いだ。既に敵のハンヴィーとの距離は、20mを切ろうとしていた。

 

「SMAWを撃つ! バックブラストに注意しろよ!」

 

 ローガンは角に張り付き、顔を覗かせる。ハンヴィーは目の前だ。ここで決めなければ、間違い無くやられるだろう。

 角から飛び出したローガンはハンヴィーに照準を合わせる。突然出て来た兵士にハンヴィーの銃手は驚いたらしく、KPVのトリガーを引くのが一瞬遅れてしまった。

 

「––––発射!」

 

 その声と共に、ローガンはトリガーを引いた。

 強烈なバックブラストと共に、SMAW対人・対装甲両用弾が発射される。発射されたロケット弾はハンヴィーのフロント部分を貫き、車内で爆発した。

 ハンヴィーは穴という穴から火を噴き上げ車内の乗員を焼け焦げたミンチ肉に変え、その爆風と破片はハンヴィーのすぐ側にいた敵を殺傷する。

 

「––––撃破を確認!」

 

 ハンヴィーは撃破した。だがまだ敵は残っている。二人の隊員がローガンを角に引きずり込んだ瞬間、ローガンが先程まで立っていた場所が集中砲火を浴びた。

 

「悪い、助かっ––––」

「曹長! もうこんな馬鹿な事しないで下さい!」

 

 隊員の一人が突然怒鳴った。突然の出来事に、ローガンは固まる。

 

「あなたがいなくなったら、一体誰が我々を率いるんですか⁉︎」

 

 もう一人もそう怒鳴る。

 確かに彼等の言う通りだ。どれほど強力な部隊でも、それを纏める頭部––––指揮官がいなければ烏合の集になってしまう。ローガンもそれは分かっていた。分かってはいたが、それを疎かにしてしまっていたのだ。

 

「––––すまなかった。これじゃあ指揮官失格だな。」

 

 ローガンはそう謝罪すると、立ち上がって彼等

 

「さあ、臨時の反省会はここまでだ! とっとと墜落したヘリに向かうぞ!」

 

 その言葉に、隊員達も立ち上がり始める。その光景を見たローガンは、無言で頷いた。

 

Oo-Rah!(ウーラー!)

Oo-Rah!(ウーラー!)

 

 ローガン達は大声で掛け声を叫び、自分達を鼓舞する。彼等は各々が所持していた銃を構えると、今まで立て籠もっていた角から飛び出した。

 

「ジャクソンとロジャースは後方から援護射撃! その他の連中は俺と共に前方で戦うぞ!」

『了解!』

 

 彼等は遮蔽物へと走り、到着した所で敵に向けて発砲する。敵は数が多いとはいえ、結局は一般人に毛が生えた程度の人間の集まり。射撃の精度も酷いものだ。

 そんな彼等を殲滅する事など、ローガン達からすると、それほど苦になるような事ではなかった。

 ジャクソンがMK48 Mod0の制圧射撃で敵を薙ぎ払い、それで仕留められなかった敵をローガン達が仕留めて行く。

 

「リローディング!」

「了解! カバーする!」

 

 圧倒的だ。だが敵は無謀にも、一歩も引こうとはしなかった。

 

「前方にLMGガンナーだ!」

「確認した! 任せろ!」

 

 一人、また一人と、着実に敵は減っていく。

 そうして最後の敵を射殺した事で、辺りは静寂に包まれた。

 

「周囲の制圧完了しました!」

「よし、このまま墜落現場に向かうぞ!」

「了解!」

 

 そう言って、ローガン達は黒煙が立ち上っている方向へと走り出した。

 

 

–––––––––––

 

 

 5分ほど移動すると、墜落現場である広場に着いた。

 広場には、テイルローターが吹き飛ばされたブラックホークが黒煙を吹き上げながら墜落していた。とはいえ、衝撃があまり無かったからか、機体はそれほど損傷しておらず、原型を留めていた。

 ブラックホークには四人の乗員が乗っているが、幸いにも四人全員が無事だった。彼等はヘリの残骸に身を隠しながら、接近して来る敵を護身用のM4カービンライフルで撃退していた。

 

「おい、陸軍(Army)!」

 

 ローガンはヘリの乗員達に声を掛ける。

 彼等はローガン達の姿を見ると、安心したのか表情を少し和らげた。

 

「––––海兵隊(Marines)か!?」

「おうとも、助けに来たぞ!」

 

 ローガン達は乗員の側に駆け寄った。

 

「アダムス先任曹長だ! 後少しで迎えが来るから、それまで援護してやる!」

「俺はパイロットのジョンソン准尉だ! 救援感謝する!」

 

 ジョンソンと名乗ったパイロットは、ローガンに手を差し出す。

 ローガンはその手を握り、握手をした。

 

「そちらの状況は!?」

「ガンナーの一人が、墜落の衝撃で右足を骨折した! そのせいでこの場から離れられなかったんだ!」

 

 ジョンソンはすぐ隣にいた乗員を指差す。その乗員は、一見すれば大丈夫そうに見えるが、良く見ると右足が歪んでおり、かなりの量の冷や汗を流していた。

 

「フェルナンデス、このガンナーにモルヒネを投与してやれ!」

「了解です曹長!」

 

 隊の衛生兵であるフェルナンデス三等兵曹にローガンがそう指示すると、フェルナンデスはポーチからモルヒネの注射器を出し、ガンナーの太腿に刺す。

 痛みが薄れたおかげか、ガンナーの表情は先程よりも落ち着いたものになっていた。

 

「少しはマシになるだろう。もう少しの辛抱だぞ。」

「ああ……すまない……」

 

 ローガンはジョンソンにマガジンを渡すと、遮蔽物に張り付く。

 

「交戦開始!」

 

 ローガンがそう叫ぶと、隊員達が一斉に射撃を開始した。

 敵の頭部に照準を合わせ、射撃する。倒れたのを確認すると、また別の敵に照準を合わせ、射撃する。

 連続で敵を射撃するが、敵の数は一向に減らなかった。

 

「曹長、このままじゃ埒が明きませんよ!」

 

 あまりの多さに、MK48 Mod0のバイポッドを立てて弾幕を張っていたジャクソンが悲鳴をあげた。

 

「あと10分経てばヘリが来る! それまで何としてでも持ち堪えるんだ!」

 

 ローガンは射撃しながらそう答える。とはいえ、彼もこの数はかなり手厳しいと感じていた。

 敵はローガン達と比べて圧倒的に数が多く、じわじわと距離を詰めて来ていた。このままでは全員殺されてしまうだろう。

 

「こうなったら––––」

 

 ローガンは腰につけているOKC-3S銃剣とククリナイフを見つめた。

 そのままOKC-3Sを鞘から取り出し、M4A1に取り付け、フォアグリップを外した。

 

「敵の後方に回り込んで、挟み撃ちにするぞ! ダミアンとタナカ、アンダーソンは俺と一緒に来い!」

 

 挟み撃ちにする事でヘリに集まるヘイトを分散、そして二方向からの十字砲火(クロスファイア)で敵を撃破する、というものだ。

 敵は相当数密集している。それらに集中砲火を浴びせれば、効果は絶大だろう。

 

「「「了解!」」」

「よし、集まったな––––後方に回り込んだら、四人で一気にグレネードを投げる!爆発したら、一気に射撃を開始しろ!」

 

 ローガンに呼ばれた三人の隊員達が彼の元に集合する。ローガンは隊員達に作戦の詳細を伝えると、そのまま三人を引き連れ広場を飛び出し、敵が集中している場所の裏に回る。

 敵の真横に到着すると、こちらには一切気づいていない敵の姿を確認した。

 

「よし、チャンスだ。グレネードを投げ込んで、爆発した瞬間に制圧射撃を開始する、いいな?」

「了解。」

「連中のケツにぶち込んでやりましょう、曹長。」

 

 隊員の言葉にローガンは無言で頷くと、M67を手に取る。隊員達も同じく、M67を手に取った。

 

「いいか。1、2、3で投げるぞ。」

 

 ローガン達はM67の安全ピンを抜く。

 

「1、2、3––––」

 

 3と言ったところで、彼等は手榴弾の最後の安全装置である安全レバーを外す。

 

「––––投擲!」

 

 その号令と共に、彼等はM67を放り投げた。投げられた四つの手榴弾は、それぞれが敵のグループの足下に落下、その2秒後に爆発する。手榴弾をもろに食らった敵達は吹き飛ばされ、絶命し、あるいは重傷を負った。

 

「射撃開始!」

 

 その瞬間、全員が一斉に射撃を開始する。肉の壁で手榴弾の被害を免れた敵も、十字砲火で次々と薙ぎ倒されていく。生き残った敵は必死になって隠れ、この銃撃が止むのを待った。

 数秒間に及ぶ長い銃声が止み、敵の一人が顔を上げる。

 その瞬間、彼の頭部に銃剣が突き刺さる。銃剣は彼の右目と脳幹を貫き、刺された男は絶命した。

 

「まずは一人!」

 

 ローガンは死体を足で押し、銃剣付きのM4A1を頭部から引き抜く。

 突然に出来事に、刺された男の隣でへたり込んでいた男は、やっと目の前の男がどうなったのかを理解し、喚き散らしながら銃を手に持つ。だが、トリガーを引く前にローガンがM4A1で彼の頭部を銃撃した。

 

「二人目!」

 

 生き残っていた敵はローガンに向けて小銃を乱射する。とはいえ余りに出鱈目すぎる射撃のせいか、ローガンには全く当たらず、そのままローガンは遮蔽物に一旦隠れた。遮蔽物に次々と銃弾が命中する。

 

「さて、ここからが本番だ––––!」

 

 銃声が止んだのを確認すると、ローガンは遮蔽物から飛び出す。そのまま一番距離の近い敵に銃剣を突き刺し、そのまま銃口を他の敵に向ける。M4A1のセレクターをフルオートに変更してトリガーを引いた。

 発射された銃弾は敵の身体を貫通し、他の敵に命中する。マガジンが空になったところで、ローガンは銃剣を引き抜いた。

 

「リローディング!」

「了解、援護します!」

 

 ローガンが叫ぶと、後ろから近づいていた隊員がそう言って射撃を開始した。

 新しいマガジンを装填し、ボルトストップを押してボルトを前方に戻し、弾薬をチェンバーに装填する。同時にローガンは腰の鞘からククリナイフを引き抜く。

 敵の懐に潜り込むと、左手でククリナイフを突き刺し、ホルスターから引き抜いたM45A1ピストルで右側にいた敵兵二人にそれぞれ四発撃ち込む。そのまま突き刺したククリナイフを、敵の右脇腹を切り裂いて抜いた。

 一人、また一人と敵を殺害していく。ローガンは戦闘狂や快楽殺人者ではないが、このような時はアドレナリンが多く分泌され、半分トリガーハッピーのような状態になってしまうのだ。

 そのせいか、彼は自分の背後に、生き伸びている敵がいるとは気付きもしなかった。

 背後からの銃声と共に、ローガンの左首筋を銃弾が抉った。

 

「あがっ!?」

 

 ローガンは首筋を抑え、苦悶の声を上げる。敵はそのまま彼を仕留めようとするが、すかさず振り返ったローガンはM45A1のトリガーを引いた。

 抉られた傷口から大量の血が流れ出てる。

 頸動脈が損傷したのかもしれない。このままでは不味い。

 そう考えたローガンは武器をしまい、隊員達を呼ぶとヘリの方向へと全速力で走り出した。

 

「曹長、その傷どうしたんですか!?」

 

 ヘリの元に戻ったローガンの傷を見て、衛生兵のフェルナンデスが悲鳴をあげる。

 

「何でも無い、まだ大丈夫だ! 取り敢えず止血剤だけでもよこせ!」

「ダメです、処置します! 動かないで下さい!」

 

 フェルナンデスがローガンの傷口に止血剤の染み込んだコンバットガーゼを傷跡に当てると同時に、無線機が無線を受信する。

 

『ヘルスカル、こちら第160特殊作戦航空連隊(ナイトストーカーズ)、第1大隊、中攻撃ヘリコプター中隊のレイヴン1だ。後3分で到着する。支援攻撃が必要なら、フレアで指示してくれ。オーバー。』

「ヘルスカル了解! 到着次第残っている敵の掃討にも協力して欲しい! オーバー!」

『レイヴン1了解。報酬はビール四本だ。アウト。』

 

 交信を終了すると、ローガンは全員に情報を伝えた。

 

「ヘリは後3分で到着だ! それまで持ち堪えるぞ!」

『了解!!』

 

 その後はローガン抜きでの掃討作戦が開始された。

 隊員がSMAWを敵に撃ち込み、多数の敵を吹き飛ばし、ジャクソンが制圧射撃を行う。敵は数は多いとはいえ、結局は訓練を少し受けただけの素人、総合的にはローガン達の方が上だ。

 ヘリが到着するまであと1分となった所で、どこかからヘリのローター音が聞こえてくる。

 

「ヘリが来るぞ! 敵にフレアを投げろ!」

 

 ローガンがそう指示すると、隊員の一人がフレアを取り出し点火させ、敵に向けて投げる。

 

『こちらデビルレイヴン1、フレアを確認! これよりランデブーポイントの敵を排除する!』

 

 広場上空に二機のリトルバードと一機のブラックホークが飛来する。舞い降りた3機の黒塗りの天使は、広場の敵に向けてM134ガトリングガンとM230機関砲を発射した。

 

 それはまさに、モガディシュの戦闘の再現と言っても過言では無かった。毎秒100発の7.62×51mmNATO弾とハイドラ70ロケット、30×113mm弾が降り注ぎ、敵はミンチか、全身穴だらけとなって行った。

 凄まじい攻撃だ。特に30mmが直接命中した敵は、体の半分以上を吹き飛ばされているだろう。ローガンは思わず身震いした。

 

 負傷者回収用のブラックホークにジョンソン以外のヘリの乗員が乗り込み、そのままヘリは上昇する。墜落したヘリは、ローガン達がC4爆薬で爆破した。

 

『こちらレイヴン1、これより回収に移る。』

「ヘルスカル了解。それにしても––––えげつない攻撃だったな、レイヴン1。」

 

 辺りの様子を見回して、ローガンはそう言う。

 

『煙が散らないで良かったなヘルスカル––––まあ、うちのカミさんのビンタの方がよっぽどヤバいんだけどな。』

「……………………」

『……………………』

「『……プッ、ハハハハハハハ!』」

 

 その冗談に、ローガンとレイヴン1のパイロットは一緒になって笑った。

 

「ハハハ……アンタのカミさんのためにも早く帰らないとな。感謝する、早く回収してくれ。」

『ハハ……了解、すぐに降下する。』

 

 そう言ってレイヴン1は高度を下げ始め、着陸する。ローガンは首に巻かれた包帯にそっと触れた。

 幸いにも血はすぐに止まった。ローガンは自身の化け物じみた生命力に心の中で感謝する。

 着陸したヘリに隊員達は次々と乗り込み、ジョンソンとローガンの番が回って来た。

 

「感謝する、アダムス先任曹長。お前達が来なければ、我々は死んでいただろう。」

「そう硬くならないでくれ、ジョンソン准尉。我々はやるべき事をやっただけだ。」

「––––そうだな。ありがとう。」

 

 ジョンソンはこちらに手を差し出した。ローガンはその手を掴み、がっしりと握手する。

 そしてジョンソンがヘリに乗り込み––––

 

「––––ジョンソンッ!」

 

 乾いた音と共に、ジョンソンは撃たれた。

 ローガン即座に振り返ってM4を構える。あの攻撃を生き残った敵が銃撃したのだ。このままではジョンソンが死んでしまう。

 撃った敵はすぐ見つかった。だが、ローガンはトリガーを引くのを一瞬躊躇してしまう。

 

 

 子供だったのだ。

 

 まだ10代半ばのような子供が、憎しみに顔を歪ませながらローガン達にに照準を合わせている。

 ローガンに残された時間は僅かしか無かった。

 

 

 奴は敵だ。撃たなければならない。

 

 だが子供だ。撃つなどいうのは人間として失格だ。

 

 このままではジョンソンは死ぬ。撃たなければ。

 

 どんな事があっても正当化できるものでは無い。撃ってはダメだ。

 

 撃つんだ。

 

 撃つんじゃ無い。

 

 撃て

 

 撃つな

 

 撃て

 

 撃つな

 

 撃て

 

 撃て

 

 撃て

 

「俺は––––––」

 

 ローガンは––––トリガーを引いた。

 

 銃弾はそのまま少年の頭を貫通し、少年はそのまま倒れる。その反動は、途轍も無く大きく感じた。

 銃の反動も、銃弾の軌道も、倒れる少年の姿も、全てがスローモーションの様になっていた。

 

「……ア……ダ……ムス……」

 

 苦しそうに息を吐きなから、ジョンソンはローガンに声をかけた。

 その声にローガンはハッとする。

 

「……すまん、気にするなジョンソン。」

 

 ローガンはジョンソンをヘリのキャビンに横たわらせ、自身もキャビンに座った。

 

 

 その後、ローガン達はその功績を称えられ銀星章を、ローガンとジョンソンは戦闘での負傷によりパープルハート章を授与された。

 もちろん、ローガンはそれを名誉な事だと思っている。その時も、そして現在も。その気持ちが変わる事は一切無いだろう。

 祖国に、アメリカに与えられた責務なら、彼はどんな事でも遂行する。例えそれがどれほど道理からかけ離れたものだろうとしてもだ。

 それが彼の義務(Duty)であり、なのだ。

 

 ローガン・K・アダムスは、海兵隊なのだ。これまでも、そしてこれからも。

 

 

––––––––––

 

 

 雀の鳴き声が聞こえる。立香が目を覚ますと、既に朝になっていた。

 

「……夢、だったのか。」

 

 立香は首筋に触れるが、傷跡など全く無かったが、寝る前に身に付けた認識票は、今も彼の首にあった。

 あの夢は、2007年のイラクで彼が実際に体験した事だ。

 時々、彼はこのような夢を見るのだ。

 

「……そうだな。俺は、海兵だ。」

 

 あの夢は、彼が海兵だという事を自覚させ続ける為のものなのだろう。

 

「海兵なら––––義務は、必ず果たすべきだ。」

 

 そう言って、立香は立ち上がり、自室を出た。

 

 出発まであと五ヶ月。

 覚悟は、既に出来ていた。




らっきょイベ復刻だぁぁ!(歓喜)
剣式のためなら破産出来る(錯乱)

という訳で、第3話いかがでしたでしょうか?

戦闘シーンは自信作です。ご指摘等があればコメント等でお知らせ下さい。
それではまた、第4話で。
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