『川神聖杯戦争』   作:勿忘草

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今回は同盟を組む話です。
次回が準備期間の予定です。


『同盟と闇鍋』

あの橋を爆破して逃亡をした翌日。

俺はある男達と一緒に七浜の駐屯地に居た。

 

「お前ら、おはよう」

 

俺は目の前であくびをしている二人に声をかける。

一人は傲岸不遜な態度をしている男。

もう一人はバンダナを付けている男。

 

「貴様、この時間に起こすとは阿呆か?」

「眠すぎるんだけど……もう一回寝ていいか?」

 

二人が不満を俺に漏らす。

どれだけ朝に弱いんだよ。

普通なら十分起きる時間だろうに。

 

俺達『サーヴァント』にとって『食事』と『睡眠』は必要ない。

 

なのにこの傲岸不遜な恩人は眠っていたのだ。

そして起こせば罵倒される。

どうしようもない我侭男である。

 

「とりあえずご飯にしようぜ」

 

そう言って俺は二人を引っ張る。

当然不満を言われたが無視しておいた。

そっちの都合で遅くなったらたまったものではないからな。

 

「で……どうするのだ、『キャスター』?」

 

男の方がクラス名をずばりと言い当ててくる。

まあ、あれだけ派手な真似をすれば看破されるだろう。

しかしこちらも相手のクラスが何なのかはわかっているのだが。

 

「予定はこれから話し合うんだよ、『アサシン』」

 

衝撃波の連打から見て考えられるのは『キャスター』だ。

しかし同クラスはいない。

そこから消去法で考えた場合はおそらくではあるが『アサシン』だ。

当然忍ばずに結界に入ってきた時点で、かなり疑念が浮かんだがもはやそこらへんしか当てはまるものが無かった。

 

「くくっ、この(オレ)のクラスを当てるとは……少しは褒めてやる」

 

眠そうな眼のまま俺を笑う『アサシン』。

 

とりあえず食事にしよう、そう考えて誘ったがアサシンから拒絶の声が聞こえた。

 

「……王たるこの(オレ)に、貴様ら塵芥が食す物を食べろと?

随分と付け上がるでははないか」

 

まあ、それはその通りなんだが……。

それを言うとアサシンは霊体化してしまった。

 

「それなら俺も食わない、サーヴァントは大丈夫だからな」

 

俺もそう言って霊体化をする。

キャップとマルギッテさんの食事が終わるまで俺達は言葉を交わさずに突っ立っていた。

 

「とりあえず食事は終わったようだし本題に入るか」

 

俺がアサシンの方へむいて本題に入ろうとする。

するとアサシンは用心深い視線となってこちらを見ていた。

 

「何を企んでいる?」

「企んでいるとは人聞きが悪いな、『同盟』を組んで欲しいんだ」

 

俺が真剣な顔でそう言うと、アサシンはとてつもなく驚いた顔でこちらに顔を向けて言葉を発する。

 

「貴様、この(オレ)に対等になれというのか?」

 

こいつは一体何を言っているのだろうか。

そういった雰囲気さえも顔で表現している。

 

「あの女に、『バーサーカー』に勝つ為に力を貸して欲しい」

 

俺は頭を下げてアサシンに頼み込む。

しかし次の言葉は氷を連想させるほど冷たいものだった。

 

「勝つためか、下らんな、(オレ)一人で十分だ」

「いや、ここは乗ってもいいんじゃないのか?」

 

冷たく突き放すアサシンの言葉にキャップがすかさず反論をする。

すると次の瞬間アサシンは怒りを露わにしてキャップに突っかかっていった。

 

「風間、(オレ)一人では不服か!?」

 

それは自分の力だけで『バーサーカー』を打倒すると宣言しているようなものだった。

どれほどまで俺と同盟を組みたくないのか。

オレはアサシンにあの時の事を言った。

 

「あの時ってガス欠を起こしたよな、アサシン?」

「ぐぬぬ……」

 

そうなのだ、アサシンは前回の戦いでガス欠を起こした。

つまり俺もアサシンもあのバーサーカーに単体で勝つのは非常に難しい。

それを覚えているからこそアサシンも少し考えているのだ。

怒りのままに言葉を発してもこのアサシンは聡い。

天秤にかけて本当に重要であるものを選び出す力を持っている。

 

「どうしてもお前が必要なんだ、分かってくれ…本当の気持ちなんだ……」

 

俺は真剣では有るが情けないほどの声で懇願する。

こちらの真剣な顔を見たアサシンはもはや諦めるように息を吐き出した。

そしてとてつもない顔でこちらを見て言葉を放ってきた。

 

「仕方なくだ、本当に仕方なくだぞ

全く持ってこの(オレ)も人生でここまで塵芥に譲歩するなど思ってなかった」

 

自分より下の者と組むという悔しさと怒りで顔は歪んでいる。

今にも地団太を踏みそうだ。

しかしやはりバーサーカーを倒したい気持ちが勝ったのだろう、俺と同盟を組む事を選んだ。

一度逃げおおせた時にどちらが欠けても危なかったのを知っているからそれも考えた上の納得なのだろう。

 

「ちなみに対等な関係ではない、俺が下でアサシンが上だ」

 

それだけはきちんとしておくべき事だ。

あのバーサーカーに対して大きくダメージを与えたのはあくまで『アサシン』。

俺は逃走を手伝っただけ。

それで平等な立場だとぬけぬけと抜かす真似はしない。

 

「ほほう、それなりに分かっていたか、それで良いのだ

貴様如きが(オレ)と対等など有り得ぬ事よ」

 

俺の発言に少しは気をよくしたのかアサシンは椅子に腰掛けいかにも偉そうな態度をとる。

俺は苦笑いを殺して目を真っ直ぐに見てその言葉を決定付ける一言を放った。

 

「それで良い、そういった関係の方が俺たちには合っている」

 

そう言って俺が笑う。

互いにバーサーカーを倒す為に、互いに屈辱を晴らすために。

今此処に不平等な立場では有るが『同盟』が生まれたのだった。

 

.

.

 

昨日あれから逃亡した俺はお兄さんたちの本拠地に居た。

逃げ帰った頃には男女のコンビが帰ってきていた。

そのコンビは活発そうなお嬢ちゃんと腕白そうな少年だった。

 

「この少年の視線……あの時感じたものと似ているねえ」

 

俺は気になっていたことを呟く。

確証がないからどう仕様もねえけどな。

 

その日は夜も遅かったので話し合いも無く全員がぐっすりと寝る。

俺も流石に夜這いするような程、性根は腐ってないので眠りについた。

 

そしてそれから朝方に起きた俺は首をならして伸びをする。

 

話をしようとしたがお兄さんが起きてこない。

お姉さんが居ても独断ではダメだ。

できるだけ速く話し合いをしたかったのだが主従の両方が居ないと意味が無い。

 

「まあ、襲撃がない限りは時間が有るし問題ないのかもね、行動に問題があるけどよ」

 

俺はそう言って霊体化をして時間を過ごす。

だらけていたらいつの間にか夕暮れ時になる。

そしてそんな時間になってからお兄さんが起きてきた。

 

俺は質問しようとするが食事の準備の為に全員がせわしなく動き始めた。

これじゃあ質問なんて出来やしないね。

俺には俺の都合があるように相手にも都合が有るのだ。

 

「で、これはどういう訳?、理由聞かせてくれないかな、サングラスのお兄さん」

 

俺はコンロを持ちながら鍋を持っている兄ちゃんにちょっと聞いてみる事にした。

答えは決まってんだろうけど気になっちゃうもんは仕方ねえ。

すると兄ちゃんは俺の方を向いてこう言ってきた。

 

「わからねえのか、鍋をするんだよ」

 

やっぱりそうだよねー。

鍋使って出来るもんなんて限られてるもんな。

ただ問題はそこではない。

見た感じ鍋に何でもかんでもぶち込んでいる。

 

「魚とか肉とかが有るけど野草とかもあるもんな」

 

食べられる野草なんだろうがしゃれにならない。

毒草を食べてリタイアなんて笑い話にされるだけじゃん。

 

「じゃあ電気消すよ~」

「えっ!?」

 

青い髪した背の高い良いお姉さんが間延びした声で言ってくる。

ナイスおっぱい!、ナイスバディ!、こいつは生唾ゴクリだ。

闇鍋なんかじゃなくて、こっちを食べたいなぁ。

 

「じゃあ、食べるか、楽しそうだな」

 

そう言って兄ちゃんは箸を取る。

楽しくないよ、これは危険なもんさ。

そしてそれが合図だというように全員が箸を取っていく。

 

「んっ?」

 

今一瞬見えたあの手は多分少年の手じゃねえのか?

もしかしたらとんでもない事をしてきてるかも知れねえ、気をつけよう。

 

そう思っていたら電気が消える。

本当ならこれに乗じて適当な言葉囁いて、ゴートゥベットなんだがそいつはやめだ。

 

しかし『闇鍋』とか大丈夫なのか?

相手に良い機会を与えるだけじゃねえか。

 

「ワン子ちゃん、掴まず電気つくまで待っときな。ちょっと嫌な予感がする」

 

そして数分後電気がつく。

 

そこには少し顔を(しか)めて震えてたお姉さん達が居た。

やっぱり何か仕込まれていたか。

 

俺の言葉通りワン子ちゃんが何も掴んでいない状態でいた。

ナイスだ、花丸どころか『スーパー○○君人形』をあげようじゃないか。

そう考えていたら箸をこちらに渡してくる少年がいた。

 

「掴んでないなら何かとったらどうだ?」

 

少年が一言真剣な顔で言う。

流石に俺が馬鹿でも痺れるものを食うはずが無い。

ここは上手い事やり過ごそう、これで上手く酔い潰せれば万事解決だ。

俺は川神水の入った瓢箪を向けて一言誘ってみる。

 

「なあ、あんたは飲まないのかい?」

 

そういうと少し飲もうとするが手を引っ込める。何だ下戸か?

そして冷静な顔になって一言言ってきた。

 

「冷めるのはよくないからな、掴んでないにせよ食べれば良い」

 

また、そういうことを言う。

強引なのは良くない、紳士じゃなきゃ嫌われるぜ。

俺は強く断る為にもう一度川神水の瓢箪を突きつけて語気を強めて一言言った。

 

「飲めよ、これは宴会だ」

 

そう言って睨みつける。

こちらが喰いたくないと言っているのだから許容して欲しい。

もし強引に食べさせるのであればこっちは川神水を飲ませてやる、アルハラとか言うなよ?

 

「やめとくよ、あんたもそんなに嫌なら別に良い」

 

そう言って相手の方も箸を渡すのをやめる、これで一応問題は回避したな。

結構強引だった所を見ると何か仕込んでいた可能性が十分ありえるぜ。

 

そう言って相手の方も箸を渡すのをやめる、これで一応問題は回避したな。

結構強引だった所を見ると何か仕込んでいた可能性が十分にありえる。

 

「飯時に悪いと思うがちょっと俺達は外に出るわ

ワン子ちゃん、行くぞ」

 

俺はそう言ってワン子ちゃんの手を引っ張って家から出る。

あの中身に何も盛られていないというのは楽観的に物を考えるのは良くない。

何でもやろうと思えば出来る、なぜなら一緒に逃げたとはいえ相手の本拠地なのだから。

 

「ねえ、あんな事して良かったのかしら?」

 

ワン子ちゃんが申し分けなさそうな顔で俺に言ってくる。

何を言ってるの、最高の行動だよ。

俺はそれを示すように頭を撫でてやっていた。

やべえ、さらさらした髪の毛の手触りって凄いわ。

 

そう考えていたら家の扉が開いて一つの人影が出てきた。

それはさっきまで俺たちに食事を勧めていた少年だった。

 

ゆっくりとこっちの方へ歩いてきて少年は一言呟いた。

 

「勘が良いのか、用心深いのか、良く回避したな……」

 

やっぱりそういう事だったか。

少々おかしいとは思っていたが大胆な真似をする奴だねえ。

いきなりそういった事をするのは予想外だったもんな。

 

「用心するのが普通だろぉ、しかしまさか下戸なんてな」

 

俺はきちんと後者の意味の方で伝える。

勘がいいならもう少し上手くするっての。

そして俺は意外だといわんばかりに少年に向かって言う。

 

「お互いが牽制し合っているとは驚きだ」

 

少年の方がそう言って俺を見る。

こちらとしてはそんな考えは無くて、本当に飲まないのかどうか聞いたつもりだったんだけどな。

 

「で……今日の起きてこなかった事について、もしかして気づいてたりする?」

「オレだって気づいてた、あんたなら尚更気づいてたはずだろ」

 

少年に質問をする。

いつもの俺とは違って至極真剣な顔だ。

やるときゃやる、そうじゃなきゃ俺はただの屑だ。

 

「そりゃ分かっていたさ、あのお姉さんとお兄さんが(ねんご)ろになってたのはな、どういう経緯でそういうのになったかはわからねえけどよ」

 

起きてきた時の顔を見たらそういう行為に至っていたというのは分かる。

別にそれは悪いことじゃねえ。

いい女が居るんだ、獣になっちまう男がいねえとも限らねえ。

でも俺達はそういう事をするべきじゃない。

あのお兄さんだって気づいているはずだ。

 

「いつか必ず別れが来ちまうものなのにな……」

 

幾ら戦いに残っていても最後にはそうなる、そうしなくては願いが叶わないのだ。

マスターに願いがない場合は最後の一人になれば良いがそんな酔狂な人はいないだろう。

俺達はいくら想い合っていても必ず別れなければいけない運命を背負っている。

それをお兄さんは快楽というもので一時的に忘れようとしている。

一番重要な事を後回しにするなんて絶対にしてはならないことだ、現実を直視するべきだろう。

 

「そう考えりゃ女々しい男よりはあんたの方が良いねえ」

 

そう考えた時、俺はお兄さんへの興味を失っていた。

当初組む予定だったお兄さんよりこちらの方が良いと思えた。

一服盛る度胸があるというのも良いし、頭もよさそうだ。

 

.

.

 

オレを真っ直ぐ見てくるサーヴァントに良い笑顔と答えを返す。

 

「オレも警戒心の有る男の方が組んでみたい」

 

あんな簡単に食って引っかかるような奴より、用心深いこちらの方と一緒に行動した方がよっぽど有意義だ。

 

その言葉に気を良くしたのか満面の笑みで手を差し出してくる。

オレもその手を握り返す。

 

「俺は『ライダー』のサーヴァントだ、お前さんは?」

 

既に知っているクラスを明かしてくる男に対してこちらは何も言わずにこの場から離れようとする。

しかしそれは出来なかった。

とてつもない力でオレが動けないようにしていた。

 

「つれないことはやめようぜ……なっ」

 

こいつ、まさか『ランサー』の時に使っていたスキルをこんな所でやっているのか?

オレは諦めて仕方なくクラスを明かす事にした。

 

「オレは『セイバー』のサーヴァントだ、宜しくな」

 

自分の口からはあまり言いたくないがあの状態では無理も無かった。

ようやく力が抜けて手が離れた。

とりあえず強力な戦力が手に入ったというのは理解できた。

オレはもう一度あの場所へ踵を返すのであった。




次回が終われば再びバトル回を入れようと思います。
何がご指摘などございましたらメッセなどでお願いします。
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