『川神聖杯戦争』   作:勿忘草

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今回でバーサーカー戦から繋がるこの話も終わりです。
次回はまた作戦とか話し合いの回かな。


『爆ぜて散るは大輪の華』

全員がどうにかやり過ごした時に現れたのは一組の主従だった。

『気』で狙撃した所を見ると『アーチャー』クラスだろう、しかしこのようなタイミングとはな。

 

「楽して四騎脱落だね、こりゃあ美味しいね」

 

女性がそんな事をいっている、今の状況は確かに危ない。

 

「やっちゃってよ、アーチャー」

 

そんな事を考えていたら、女性が声をかけてアーチャーの背中を叩く。

するとアーチャーは構えてこちらに攻撃を仕掛けてきた。

 

「『四神』が一つ、『白虎 虎砲閃』!!」

 

再びレーザーが襲い掛かる、さっきとは違って本数は減ったが直線状に放たれている。

その攻撃はさっきの様に受け止める時間を与えることは無い、全員が避けに徹する。

 

「くっ!!」

 

全員が攻撃を避けるが地面や河原への被害を見ると身震いを起こす。

心の中に敗北や脱落を予感させるほどに状況は悪すぎる。

さっきのバーサーカーとの戦いで俺は肋骨がやられている、セイバーも肋骨がやられている、ライダーは宝具が崩壊していて、アサシンは片足がやられた。

さらに付け加えるなら全員ガス欠が近い、全員が満身創痍になっているのだ。

そこに加えてこの奇襲。

 

ここから導き出す手は……これしかない。

 

「俺が足止めをするか……」

 

誰かが脱落する引き換えに全員を逃がす事。

 

俺が残ってこのような真似をする理由は……今の俺の気力では転移する結界を作る事ができない、仮に作れてもアーチャー達はそんな暇を与えない、確実に足手まといとなってしまう。

それに加えて足が折れていない、疲れそのものも少ない、気力もあまり無い、そんな三拍子揃った俺がこの役目を勤めるのは当然の事だ。

正直まだこいつらと一緒に居たかったがもうそんな悠長な事は言ってられない。

 

「マジすまん……こっちの事は任せてくれ」

 

俺の気持ちを汲み取ったのか、既にライダーが『紅の女王(レッドクイーン)』を出していた。

マスターもマルギッテさん以外の全員が乗り込んでいた、その傍らにはアサシンとセイバーもいる。

 

「貴様……大儀であったぞ!!」

「ありがとう、本当にありがとう」

 

アサシンとセイバーも本能で分かっている、俺がここで脱落する決意をしていることを、二人は一言言って俺の方を見ないように顔を背けた。

 

それでいいんだ、お前らならこれから先どうとでもなる、残るという選択をしなかったお前らにこっちがお礼を言いたい。

俺はあいつらの方を見ることなく親指を立てる。

 

そしてライダーのバイクが一気に加速して全員見えなくなっていく。

ライダーがギリギリとはいえ気力を持っていたのが幸いだったな。

音が聞こえなくなると俺は腕を下ろした。

 

「何で君は令呪で逃げようとしなかったの?」

 

女性が俺に向かってその様な言葉を投げかける。

確かにそいつは正論だ、そうすればわざわざ脱落する可能性を増やさずに済んだだろう。

 

だがそんな理屈で動いている訳じゃない、俺はあいつらを逃がすと決めたのだ。俺の『意思』が俺に命じたのだ。

 

「俺が決めたことだ、その意思を曲げることは無いだろう

それに逃げても結局お前らの狙撃に怯える事になる、それが嫌だ

何でお前らみたいな臆病者に怯えないといけねえんだよ」

 

あいつらに怯える顔は似合わない、あいつらに似合うのは笑った顔や怒った顔だ、それを絶やさない為ならば足止めぐらいどうという事ではない。

俺に叶えたい願いは無くて、ただ胸を張れる戦いをするだけだった。

だからマルギッテさんを傷つけなければそれで俺の役目は十分なのだ。

あいつらにくれてやるならば俺の命なんて安いものだ、聖杯を悪用するような奴らでもなかったしな。

 

「でも言葉も交わしていない奴らの為にそこまでやる義理なんてあるの?

願いも何もかも捨てる価値があいつらに有るの?」

 

女性が再び質問を投げかける、合理的な考えばかりしているからなのだろう、俺の言葉も行動もこの人にとってはおかしな事だと思われているみたいだ。

 

「あるさ、言葉がなくても行動があった、時に行動は千の言葉よりも雄弁だ

価値だってあった、信用してあいつらの為に捨石になっても良かっただけの価値がな」

 

あの戦い一つで俺はあいつらを信用した、単純なのかもしれない。

しかし信じないでいるよりも信じたほうが良い、あいつらが俺を救おうとしてくれたり、俺の言葉を聞いて共に戦ってくれた。

それだけでも、俺にとっては十分な『宝』であり『誇り』なのだから。

 

「どうせ、あんたは『勝算』がどうとかいいたいんだろうが、そんなもんはクソくらえだ、絶対にあいつらに追いつかせはしない、あとは盛大に咲くか散るかってだけだ!」

 

合理的に戦う人間は平然と可能性を口にする、俺にとっては勝てるから戦うとか勝てないから逃げるとかではない。

勝つ為に戦うのだ、『可能性』なんてものより俺の意思がそれで良いというのならば、それに従って戦おう。

 

俺は駆け出す、相手は三騎士が一人『アーチャー』。

やるべき事はこいつを通さない事、そしてあいつらが勝てるように弱らせておく事。

 

「令呪によって命じます、『六感を研ぎ済ませなさい』

重ねて命じます、『倒れてはいけません』

最後に命じます、『全てを尽くしなさい』」

 

駆け出した俺にマルギッテさんが令呪の三画全てを使って命令する。

閃きが頭の中で駆け巡り、心の中に諦めない気持ちの火が付き、体に力も漲ってくる。

 

「はっ!!」

 

一歩踏み出して攻撃を仕掛ける、するとアーチャーが気を開放してこちらの攻撃を迎え撃とうとしていた。

 

「『四神』が一つ『玄武 羅生門』!!」

 

『気』を使って自分への攻撃を軽減しようとしているようだが……八極拳が恐ろしいものだという事をその目に、その心に教えてやる!!

 

「門を打ち開くが八極の理念なり、破ッ!!」

 

散らしていこうとするアーチャーに一撃を放つ。

強化された八極拳は相手の想像以上の威力を生み出しているのだ、その一撃は軽減することを許さずアーチャーに後ずさりをさせる。

 

「マジかよ、やるなぁ!」

「隠し玉が多いようだな、驚いた」

 

後ずさりをしたアーチャーは笑いながら再び気を放出する、少しずつ性質が変わっていき、少しするとバチバチと火花のような音を立てた電気がアーチャーの体から出ていた。

 

「じゃあこれはどうだ!、『四神』が一つ、『青龍』!!」

 

電気を纏うアーチャー、それが体の中に入り込んでいく、つまり電気信号を活発にして身体能力を強化しているのだろう。

 

「まだまだいくぞ!!」

 

速い。

身体能力が上がっているとはいえこれは凄すぎる。

気づいた時には懐へ飛び込まれていた。

 

「くっ!!」

「もう既に『(くさび)』は打ち込んだ」

 

攻撃を何とか受け流して距離を取る、速さも重さもかなりのものだ、しかし今言った楔とは一体なんなのだろうか?

 

「奥義『麒麟』!!」

 

距離が一瞬で詰められてしまう、一体何が起こったのだろうか?

しかしそんな事を考える暇もなく俺は踏み込んでいた。

 

「『鉄山靠』!!」

 

アーチャーの拳とオレの背中が激突する、ぶつかり合った所を中心にクレーターができて、お互いが後退をして距離を取る。

 

「粘らないとダメなのに…熱くなる!!」

「折角の初陣なんだ……倒させてもらう!!!!」

 

俺は構えて歯を食い縛る、熱くなっていた自分に喝を入れて戦い方を変えていく。

少しでも多くの時間を稼がないといけないのに何をやっているんだ、俺は頬を叩きアーチャーを睨んで誘導するのだった。

 

.

.

 

そしてあれからどれ程の時間がたっただろうか。

何秒?

何分?

何時間?

 

己の全てを、死力を尽くした。

もはや何も残されていない、普通ならそこまでやれば報われる。

 

「ハァ……ハア……」

 

しかし、現実は無情なものだった。

強化をされていたからこそ粘る事が出来たし力を削ぎ落とす事もできた。

だがそれでもアーチャーの首を取るには至らなかった。

 

「まさか貯蔵していた分の半分も使わされるとは……しんどいなぁ」

「呆れるほどの粘り強さだったね」

 

肩で息をしているアーチャーに驚きの顔を浮かべているマスター、まさかここまでに長期戦にもつれ込むとは思わなかったのだろう。

 

「これ以上は付き合ってられないし、仮に『ランサー』に見付かったらきついし帰るよ、アーチャー」

 

女性はこれ以上のリスクを冒すのは良くないと感じたのだろう、そう言ってアーチャーに霊体化をさせる。

 

「行ったか、怪我は無かったようだな、マルギッテさん」

 

アーチャー達が去って行った後、俺はマルギッテさんに話しかける、表情を変えずに凛とした姿で俺を見ていた。

 

「ええ、しかしお嬢様に聖杯は渡せませんでした」

 

怪我の無い自分を見るが同時に果たす事のできなかった任務に顔を顰める、普段ならば任務の遂行がゆうにできる存在なのだ、悔しさもひとしおだろう。

 

「ですがこれで良かったのでしょう、誰かを見捨ててまで手に入れたものをお嬢様に渡すわけにもいきません」

 

一拍置いて俺の行動について誇らしげに笑みを浮かべるマルギッテさん。

確かに義理を重んじるお嬢様に不義理な事で産まれた聖杯を渡しても返されそうだな。

 

「それもそうですね、そしてどうやらそろそろ別れのようだ……」

 

本当に楽しかった、これであいつらの役に少しでも立てただろうか。

あいつらの中の一人に聖杯が渡る事をひたすらに願おう、あいつらに幸有ることをただ願おう。

最後に笑みを浮かべたまま俺は意識を彼方へと放つのであった。

 

.

.

 

聖杯戦争五日目……

 

遂に脱落者が出る。

それは『最強』のサーヴァントと『最弱』のサーヴァント。

残りは五騎。

ようやくこの戦いに火が付きはじめるのであった。




今回で私のところのキャスターを脱落させました。
作者としてここまで生き残ったのは満足ですね。

これから先は人数も少なくなりますが楽しく書ければいいと思っています。
何かご指摘が有ればメッセでお願いします。
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