久々にあのキャラが出ます。
二騎のサーヴァントが脱落した翌日。
ある場所では標的を誰にするかという会議が始まっていた。
「いい加減動いていくけど狙うのはアサシンだね」
「いや、俺はライダーを狙うほうが良い」
俺は亜巳の意見に反対をする。
アサシンならば別に後々でも良い、それよりあのライダーだ。
今思い出しても気分が悪くなる、よりによって亜巳にナンパをしやがったんだからな。
あの野郎の腕を折るのも良いがそれだけじゃ足りないな、二度とナンパなんてできねえように歯を全部へし折って、さらに動けないように足も折っておけば問題ないしせいせいするだろ。
「確実に勝つには面倒な相手を狙うのが先だ、譲歩できるのはアーチャーぐらいさ」
亜巳は頑として譲らない、しかしこっちも引く気はない、ライダーと言えばライダーだ。
もしくはあの刀を持っている奴だ、薬を盛られた借りは返さないと気が済まねえ。
「面倒な奴らは勝手に消えてくれる、絶対にそれなりに強い奴らの方が優先だぜ
今なら弱っていたっておかしくはないんだからよぉ」
俺の意見を言う、令呪で従わされるならともかく、そうじゃないなら俺の言う事を聞いてもらいたい。
こっちだって三騎士と呼ばれてる『サーヴァント』だ。
『最速』の称号を持つ存在だ、弱いわけがねえ、強いに決まってんだよ。
本来なら積極的にいくつもりが薬を盛られた事により慎重になっていて、川神百代が襲撃してくる事を想定していたのがそれに拍車をかけていた。
これからは前線に出て戦う時だ、それなら少し体をほぐす為の標的としては、私怨を含めてライダーを選ぶのが良いに決まってるだろうがよ。
ほぐすにしても、アサシンだとかキャスターじゃあ流石につまらないからな。
そう思って睨みあっている時に扉が叩かれる、俺は亜巳に言われて不本意ながらその扉を開ける。
するとその扉の向こうに居たのは久しぶりに見るツラだった。
「テメエ……」
「何日ぶりだっけ、ランサー?」
俺の目の前に居たのは闇鍋の時に薬を盛りやがった憎い野郎だった。
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「なんでテメェらがここに来たんだ?
わざわざそっちから殺されにでもきたか?
……もしそうだって言うんならすぐにでも望み通りにしてやるぜ」
歯を軋らせてこちらを睨んでくるランサー、一体何を怒っているんだ?
こっちの策に対して疑う事もしないで平然と食べ物を口に入れたそちらの責任だろうに。
それで恨まれているとしたら完全に逆恨みだ、むしろあの時に脱落させなかった事を感謝して欲しいくらいだね。
「ここはマスターの家なんだ、戻ってくるのは当然の事だろ」
当然そんな事は言いはしない。
それを言って戦う事になったらまず勝てないからな、しかも負傷してる状況だし。
オレは冷静になってきちんとした理由を述べてこの場で争いが起こらないように言葉を選ぶ。
「良い手土産だって有るんだ、アーチャーの武器とライダーのもう一つの宝具
そしてサーヴァントの脱落って言うお話がな」
この行為はライダーに対する裏切りと言ってもいいだろう。
しかしこの交渉は成功させておきたい、その為にはきわどい部分までの情報を与える。
まあ、言うだけ言ってから断られないように慎重に進めないといけないからいきなりペラペラ喋らないけどな。
「へえ、良い話じゃないか、聞かせてもらおうか
で……お前、誰を殺すって言ってたんだい、天に言ってたなら……分かってんだろうね?」
オレ達の話を聞いていたのだろう、ランサーのマスターが顔を出してオレ達を招き入れてくれる。
しかしその後に聞こえた冷たい声に空気が凍り背筋に冷たいものがはしる、きっとランサーのあれが失言だったんだろう。
家族に対して優しい人間は言葉だけでもその発言した相手に敵意を向けるからな。
まあ、オレには関係ないし距離を取っておく。
そして良く考えればオレのマスターの家でもあるんだから、こんな手土産の事なんて言わなくても入れてくれただろうな。
「よーし、話そうぜ」
しかしそんな雰囲気を気にも留めず、マスターは家に入るといきなり大きな音を立てて座る。
そして机を叩いてすぐにでも話し合いを始めようとしていた、流石にいくらなんでもそりゃないだろう。
オレが喋るんだから急かすのはやめてくれ、この情報はせっかく交渉の材料に使うつもりなんだ、それを駆け引きも無しに開示するのは交渉下手か馬鹿のやる事だよ。
「教えてもらおうじゃないか、その有用な情報って奴をね」
向かい合わせに座るオレとランサーのマスター。
教えてもらおうと言葉を発した瞬間、オレは手を前にやって悪い笑みを浮かべる。
「いや、ただでやる訳にはいかないんだ、あんたならわかるだろ、世の中そんなに甘くないぜ」
遮ってオレは一言言う、慌てたように食いつかず冷静に聞いて引き出そうとするのはいいんだが、そんな簡単に言うほどこちらも甘くはない。
ここは間を作ってランサーのマスターが話すのを待つ。
「へえ……何か条件でも有るのかい?」
そりゃあそうだとも、こんな重要なものをそう簡単にやるわけがない。
それに条件と言ってもお前らの首をよこせとか本末転倒な事を言うつもりはないから安心して欲しいな。
「条件はアーチャーを倒すのに協力すること、情報だけで嫌ならこちらから交換条件を上乗せしてもいい」
これがオレ達の要求。
単純な戦力の増強である、戦うための前準備というわけだ。
「先ず情報だけで魅力的だけどねえ、気になるから聞くけど一体何を上乗せするのさ?」
どうやら感触の方は良かったみたいだ、今の状況ならもしかするとこの破格の条件を出せば簡単に協力してくれそうだな。
「上乗せする条件は……聖杯だ」
オレは真剣な顔をしてランサーのマスターに言う。
余りにもふざけた条件だ、普通ならばこの時点で自害を言い渡されていただろう。
だって一番の望みをみすみすと手放すということなんだ、喉から手が出るほど欲しいものなのに要らないなんて言えば、それはマスターへの裏切りに直結していると言っても過言ではない。
現にオレのこの条件にランサーとランサーのマスターも驚いている、オレのマスターは顔を変えることもなくこっちの言葉に耳を傾けていた。
「聖杯も譲るしこちらが持っている情報も渡す
その条件としてアーチャーを倒すのに協力して貰おうってわけだ」
もう一度条件を言って畳み掛ける。
ここで気持ちを緩めてしまったら相手に逃げられるだろうからな、これでどうにか思いとどまって欲しい。
「流石にそんな破格な条件を突きつけられたら少し疑っちまうね」
口に手を当てて考え込むランサーのマスター。
流石にこんな破格の条件だったなら裏があると思うだろう、オレだってこんな条件を出されたら真っ先に疑うぜ。
でもこっちの真剣な気持ちを伝えてしまえば嘘ではないとわかるだろう。
「こっちは伊達や酔狂でこの条件を出しているわけじゃない
真剣な場なんだ、それだけは分かってもらうぞ」
これだけの札を切って真剣な態度を見せたんだから流石に警戒心を緩めてもらわないとな。
ここで一押しがないと少し辛いな、オレは少しだけ苦い顔をする。
「亜巳姉に聖杯はやるからさ、うち達と協力してアーチャーの奴を倒してくれよ!!」
そう考えていた時にマスターが頭を下げて頼む、ナイス援護射撃だ。
流石に肉親が頭を下げたのを見るとランサーのマスターも良心が働いたのだろう、口に当てていた手を下げて警戒心を緩めていた。
「こっちは戦力が欲しい、あんたらは聖杯が欲しい
お互いの目的が一致している、悪い話じゃないだろ?」
オレは前を向いてさらに一押しする。
今の俺達がアーチャーと再び戦っても勝てることはない、そのためなら同じ『三騎士』に
協力してもらうしかない。
「はあっ……天までこんなに必死に頼むんなら流石に姉としては断れないよ、一応聞いておくけど本当にくれるんだね?
あとで『やっぱりなし』は私には通用しないよ、天、に嘘ついたら分かってんだろうね」
「当たり前だぜ、そんな事で亜巳姉に嘘つくほどウチも腐ってねえよ」
ため息をつくようにしてランサーのマスターは頷いてこの協力関係を了承した、その横でランサーが顔をしかめているのが印象的だった。
オレのマスターに対して確認を取る。
オレは欲しいものなんてなくてマスターもうんうん言って考えていて決まらなかったのだ。
それなら手に入れた場合は一番うまく使えそうな人に渡せばいいという結論になり、考えた結果がマスターの肉親でもあるランサーのマスターだったのだ。
「もう一つ要求が通るならばオレ達にとどめを刺させてくれないか?」
オレは協力してもらう以外にもう一つの約束を取り付ける、ずうずうしい願いでは有るがこの約束が重要なのだ。
「それくらいならお安いご用さ、こっちはきちんとやるからそっちも失敗しないでおくれよ」
「任せてくれよ、亜巳姉がいれば負ける気がしねえぜ」
ランサーのマスターがオレの追加した条件に二つ返事をしてくれる。
オレが笑みをこぼしているとマスターも満面の笑みでこれなら負けないといった嬉しさを表情で表していた。
一応これでこれで交渉の方は素晴らしい形で成功する事になった、後はあの二人に話して早まらないようにしておかないとな。
ライダーはアーチャーが女性陣を泣かせる原因を作った事、アサシンは前から狙っていたキャスターをアーチャーに横取りされた事が理由で相当怒っていた。
「一段落したけど忘れていないだろうね?
あんたが知ってる情報を交換条件として教えてもらうよ」
そんな事を考えていたら声をかけられる、そういえば交換条件のことが有ったな。
共闘を約束してくれた事に舞い上がってすっかり忘れていたぜ。
「そうだった、それでは……まず何が聞きたい?」
こちらから必要以上に言う必要は無い、相手が聞きたいものにだけ応対すれば良い。
こちらが調子に乗ってボロを出さないようにする事と必要以上の情報を与えない事が重要だ。
同盟についてボロを出したりしてここでやられても文句は言えないからな。
「聞くんだったらライダーのもうひとつの宝具って奴だろ、それ以外に興味なんざねえよ」
ランサーが首を突っ込んでくる、こいつ……こっちはマスターの方に聞いてるのに面倒な奴だな。
「ならあんたは霊体化でもしときゃ良いじゃないか、こっちが聞きたいのはアーチャーの武器、そして誰が脱落したかだね、ライダーの宝具は一番最後で良い」
ランサーのマスターがランサーに対して冷たい言葉を放つ。
こっちはあくまで従者、主を押しのけてまで聞くのは一番無益に近い部分。
明らかに自分本位なものだったからな、マスターが怒るのも当然だろう、あの反応が普通だ。
「ならまずはアーチャーの武器……と言っても情報が少なくて、明らかなのは『気』による狙撃だな
武神には劣るけどかなりの威力を誇る光線を撃っていた、さらに漁夫の利を得ようとするあざとさも持ち合わせていて厄介だ、そこに気をつけた方がいい」
知っている情報の提供と言ってもアーチャーの攻撃方法から考えられる武器だ。
もしかすればあの光線以外に白兵戦用の武器を持っていてもおかしくはないだろう、警戒する必要が有るな。
オレの勝手な予測で相手に不信感を抱かせてはいけないから、この考えは言わないでおこう。
それに仮にランサーのマスターが聡ければそれ以外の事に気づいているはずだ。
「なるほどね、じゃあ次は誰が脱落したのか教えてくれないかい?」
次の質問については息を整えてからオレは言い始める、ちょっとアーチャーの武器の時に息継ぎ無しで言ってたからな。
「それじゃあ言うけど……脱落したのはバーサーカーとキャスターだ
遠目で見たがキャスターはアーチャーにやられてしまっていた
そしてもう一人の脱落者であるバーサーカーはライダーと戦って脱落した
オレはその戦いを見てた時にライダーのもう一つの宝具を見たんだ
オレは戦いが終わった後に傷だらけの状態になったバーサーカーに近づいていくと目の前で片膝を付いて消えていった
これがオレの知っている脱落の一部始終ってわけだ」
この言葉を聞いて気分を良くしたのか、にやりと音がするほど口角が上がっていた。
そりゃ『最強』と『最弱』の厄介な二人が真っ先に脱落したとなれば喜びも倍増するよな。
オレだってランサーの立場だったら笑みを漏らしていただろう、それだけは断言できる。
「それは大助かりだね、ライダーもなかなかやってくれるじゃないか」
ライダーにランサーのマスターから賞賛の声が上がる、それを聞いているランサーは面白くないといったような顔だ。
自分達が有利になっているというのに、それを感情的なもので打ち消して良い方向に考えないのは馬鹿のやる事だぜ。
「まあ、残りはライダーの宝具なんだけど一体なんなんだい?」
ランサーの我侭を通す為に聞いてくるマスター、面倒くさそうな声なのも無理はない、聞かれた以上は一応この情報も言っておかないとな。
「篭手と具足のワンセットになっていた、効果は耐久力に影響を与えるみたいで頑丈そうなバーサーカーを吹っ飛ばしたり連続で攻撃を叩き込んでいた、オレが見たのはそれだけだ」
これで全ての情報は開示した、ここでオレは一応確認をする事と警戒の意味合いで質問を投げかけてみる。
「で……協力してくれるよな?
仮に協力しないならこちらも実力行使するぜ」
そう言ってオレは刀とロケット花火を取る、一方的に情報だけを貰うようならここでロケット花火を使う。
煙や火花で騒動を起こしてランサーのマスターを人質に取ってこの場をやり過ごす。
「わざわざ天が頼みに来たんだ、他人ならいざ知らず家族相手にそんな酷い真似はしないさ」
笑ってこちらとの約束について言う、それに対してランサーは仕方が無いといった顔だった。
こいつ……ライダーの首狙いすぎだろ、どう考えてもアーチャーの方が危険度が高いのに。
オレはため息をついてアーチャーとの戦いについて考えるのであった。
今回は日常回として久々にランサーが登場しました。
これからきちんと全員を出していけたら良いなと思っています。
何かご指摘などありましたらメッセなどでお願いします。