『川神聖杯戦争』   作:勿忘草

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今回もバトル回です。
最終決戦まで残り少しとなってきました。
今回は長いので前後編となっております


『蜘蛛と牙 前編』

朝日を浴びて起き上がり目を擦る、そして顔を洗いにタオルと歯ブラシを持って洗面台に向かっていく。

丹念に歯を磨き、顔を洗い、鏡で自分の髪を整えて口角を上げて一言呟いた。

 

「誰にも安眠を邪魔されずに起きる、これぞ(オレ)の朝に相応しい」

 

あの阿呆のせいで数日の間十分な睡眠をむさぼる事ができなかった、そのせいか朝に弱いはずの(オレ)は速く起きる事に適応していたのだ。

それによって今日は普段ならば決して起きることのできない時間に起きていた、そして何をやるにも暇だから身だしなみを整えていたのである。

 

「今日はどういった予定なんだ?」

 

「アーチャーの奴を倒しにいく、あのうるさい騎兵もいないからな、(オレ)が止まる理由が無い」

 

あれから時間は過ぎて食事を食べている風間から(オレ)に対して質問が浴びせられる。

ちなみに(オレ)は食事を食べずに立ちながら風間の質問に答える、あの狐どもはこの手で倒さねばならん、仮に誰かにやられていても止めはこの(オレ)がさす。

足は完全に癒えてはいないがあいつの実力に対して丁度いい具合に合わされているだろう。

 

「気になったんだがどうしてそこまでアーチャーたちを狙うんだ?」

 

「奴らはこの(オレ)を一度不意打ちとはいえ脅かした

その無礼の代償としてじきじきに罰をくれてやる、それゆえに狙っているのだ、風間よ」

 

続けて問いかけてくる風間の言葉に(オレ)は口角を上げて微笑む、たいした理由など要らない、気にくわないから狙うのだ。

 

「すげえ単純だな、でもその顔を見ると楽しそうじゃねえか」

 

風間がそう言って(オレ)に笑いかけてくる、最初に『楽しむ』事を言ってきたのはお前だろうに、その言葉に応えてやるのもまた王である(オレ)をのつとめというものだ。

 

「そう見えるならそれでいいがな、速く出てアーチャーの場所に行くぞ、(オレ)の記憶が確かならばきっとあの場所だろうからな」

 

そう言って(オレ)は風間と共に歩いてアーチャーを狙いに行く、当然記憶を辿って向かっていく間に注意を払わなければいけない事がある。

 

まず見通しの良い所を基本歩かない、あっても人が多い所に紛れ込んでいく、狙撃を主体をしている奴が相手なのだから不意を突かれないようにするのは当然だ。

あとは急いで動いて体力の無駄な浪費を抑える、これは(オレ)と風間が気をつけることとしては一番のものだ、いきなり息を切らして闘うなどといった無様な姿をさらしたくは無い。

 

そう考えながら歩く事、実に三十分。

(オレ)の記憶に間違いは無くどうやら真っ直ぐにこの場所へとこれたようだ、しかしその道の途中の間で戦いがあったことは一目瞭然だった。

壊れた壁やひびの入った屋根の瓦や道路が目に飛び込んでくる、これだけの破壊力のある攻撃が出来る奴は一人だけ心当たりがある。

それは(オレ)に忠告を促した忌々しい騎兵か、もしくは知らない最後のサーヴァントであるランサーだろう。

 

「こりゃあ酷いぜ、一体何がこの近辺であったんだ?」

 

流石の風間もこの状況に驚いている、こういったものは慣れだからな、出来れば慣れるべきものではない、こういうものに慣れてしまったら少しずつ常識が消えていくからな。

 

「大規模な戦いが起こったか、もしくは逃亡した奴を被害を度外視して追い掛け回したかだ」

 

そうでなければここまでの被害は無い、そしてそんなに流血の跡も無い為後者の方と判断する、それから考えた結論は戦ったサーヴァントはランサーだろう。あの騎兵ならば不用意に女を傷つけたり追い掛け回すような真似はしないはずだ。

 

「そうか、でどうやって相手に宣戦布告をするんだよ、やっぱり『アサシン』らしく後ろから行くのか?」

 

風間がこっちに質問をしてくる、確かにそれが一番やりやすいだろうし相手に攻撃が出来るだろう、しかしここは普通ではない発想で裏をかいてみるのも悪くは無い、だから(オレ)はこう提案するだった。

 

「あえての真正面で驚かせる、まさか『暗殺者』が策も弄さずに真っ向勝負を挑むなど思ってもいないはずだ」

 

奴らの事だから篭城を決め込んでいるだろう、ならば真正面から赴いてやればよい、わざわざ裏口から入ったり窓を壊してなどと言った小細工はもしかすれば前の戦いで警戒されているだろうからな。

 

「騒がしい音を立てて入っていってやるが良い、そうすれば多少は驚いた顔をこっちに向けてくるであろうよ」

 

(オレ)は風間に対してそう告げる、騒がせるのはこいつの得意分野だ、それに乗じて奴らに手痛い一撃を見舞う、最高の奇襲戦法だろう。

 

「任せろ、全力で楽しんでくるぜ!!」

 

そういいながら風間は勢いよく階段を駆け上がる、家の中の奴が気づいた所でもはや追いつくことは出来ない。

(オレ)はその風間についていく形で同様に駆け上がる、手に気を宿して既に一撃を見舞う準備を済ませておく。

 

「邪魔するぜ、答えは聞いてねえ!!!」

 

風間は豪快に扉を蹴破って入って行く、ちょうつがいが音を立てて扉が歪む、扉は非力さゆえに吹っ飛びはしなかったが壊れていたせいでゆらゆらと不安定にゆれていた。

 

「なっ!?」

 

アーチャー達は不意をついて入ってきた風間に対して驚く、その一瞬の間に(オレ)は逃さないで風間を押しのけて姿を見せる、するとアーチャー達は驚きが重なって一瞬硬直していた、この機会を逃さず一撃を叩き込んでやる、奇襲作戦はおおむね成功と言う所だろう。

 

「敵が入ってきているのに一瞬でもほうけるとはな、愚かな奴らだ!!」

 

そう言って(オレ)は手を前に出す、アーチャーを女ごと一気に吹き飛ばして窓に叩きつける、そのまま窓は割られて地面へと落ちていく、(オレ)はその姿を見た後に降りていき対面した。

 

「くっ、こんな真っ直ぐに来るなんて予想外だぜ」

 

アーチャーが驚きながら言ってくる、どうやらアサシンというクラスにとらわれて(オレ)が不意打ちや暗殺行為で来ると思っていたのだろう、浅はかな予想だ。

 

「貴様と違って(オレ)はそういったものを好まんのでな、それに倒す時は自分の目で相手の苦痛に悶える顔を見ておきたい」

 

(オレ)は口角を上げてアーチャーを見る、後ろからやってしまうと一挙一動に揺らぐ顔は見れないからな。

揺らいだ顔は面白いものだ、強気な奴が歯の根が合わないほどに震えて歯を鳴らす時の恐怖の顔といえばもはや最高の一言である。

 

「そして喋っている暇などは与えんぞ」

 

再び(オレ)は手を前に突き出して衝撃波を放つ。

絶え間なく放たれたこの一撃にアーチャーが苦い顔をする、相殺しようにも満身創痍の外見、更に見えない攻撃、この状況と一撃に対応するのはかなり難しいだろう。

 

「くっ!!」

 

飛び上がって一撃を何とかやり過ごしたみたいだが甘いな、その程度は読んでいるぞ。

無難な方法だがそれは愚策だったな、人は普通ならば空中で動く事ができない。

 

「愚かな奴だ、焦っているとはいえ(オレ)の領域に入ってくるとはな」

 

貴様に残された道はこのまま(オレ)の一撃を無防備に喰らうだけだ、再び地面へ落ちていくがいい、アーチャー。

 

「そのまま無様に墜ちてゆけ、痛みにのた打ち回る姿で(オレ)を満足させてみろ!!!」

 

意地の悪い笑みを浮かべて俺は衝撃波をアーチャーに放つ、防ぎきる事ができずにアーチャーへ衝撃波は直撃する、すると重力落下に加速がついて一気に地面へ叩きつけられそうになる、(オレ)はその姿を見届けていた。

 

「くそっ!!」

 

衝撃が襲う瞬間に受身を取ったか、その動きは少々面白みに欠けるな。

そこはあえて衝撃を利用して飛び上がって反撃ぐらいすればいいものを、それに『気』を用いた攻撃を放っていない。

余裕を出しているつもりなのか、それならば阿呆な奴だ。

 

「既に貴様が『気』の枯渇をし始めているのは見抜いているぞ、アーチャー」

 

あそこまで『気』を使う機会がありながら使わなかったのは違和感を覚える、あの奇襲の時に放ったレーザーを用いれば(オレ)に痛手を負わせることは出来るし、『気』で強化をすれば(オレ)の衝撃波を回避して手数で圧倒することも可能になるだろう。

 

「その無様な姿での消滅はこの(オレ)の考えにはそぐわん、せめて消える場所ぐらいは選ばせてやろう、(オレ)に牙をむいた者への手向けだ」

 

街中で暴れるのは(オレ)は好まない、楽しみながら戦う時に関係の無い人間の顔が悶えていたとしてもそれはただ目障りなだけだ、それならば極限まで邪魔の入らないところで自分が決めた標的の顔だけを見て戦いたい。

 

「ならついてきてもらう、丁度いい場所があるんだ」

 

その気持ちを感じ取ったからか(オレ)の言葉をアーチャーは受け入れる、こちらから後ろから襲う真似はしないがあのマスターの方に気を付けておかなくてはな。

 

「風間、間違っても先走るなよ、何をしてくるか読めていないのでな」

 

一応風間に釘をさしておく、牽制しておかないと勝手に窮地に飛び込みかねん、そうなったら折角今さっきやった不意打ちは何にも意味を成さないからな。

 

「分かってるぜ、あっちは俺が先に行ったら後ろから殴ってくるような奴らだってのは分かってる」

 

普段の飄々とした顔ではなく真剣そのものといった顔だ、これならばいちいち釘をさす必要もなかったか、この戦いは最高の状態で挑むことが出来そうだ。

 

気を引き締めアーチャーが消えるべき場所へと向かう、辿り着いたのはおよそ一時間後。

その場所は採石場となっていて誰の邪魔も入りそうになく、消えるには最適の場所となっていた。

 

「なるほど、いい場所だ」

 

(オレ)は手を広げ指を曲げ伸ばししながらアーチャーに言う、これだけ広ければ(オレ)も心置きなく衝撃波を放てる。

そして今まで使ってこなかった技を開放する、全てを使って貴様を倒してやるぞ、アーチャー。

 

「……」

 

アーチャーは慎重になっているのか無言でこちらを見ながら行こうかどうかというそぶりを見せる、気が使えなければあの時みたいに活発な動きも出来ないのか、全く詰まらん奴だな。

 

「来ないのか、ならばこちらから歩み寄ってやる」

 

こっちは近距離で衝撃波を浴びせる事を考えていたため、慎重になっているアーチャーにスタスタと近づいていく。

まるで散歩をするように何食わぬ顔でこうするのが当然だといった顔で近づいていく、するとアーチャーは驚きながらも構えてこちらの足の動きを注視し始めた。

 

「ハアッ!!」

 

こちらがアーチャーの間合いに入った瞬間、呼気を吐き出して叫ぶように腹めがけて攻撃を放ってくる、その攻撃には見覚えがあった。

あの阿呆が使っていた技ではないか、そしてそれよりも切れが無く速度も無い、となれば当たるかどうかの結果は火を見るよりも明らかである。

 

「その技で(オレ)をどうかできると思ったか!!」

 

障壁で弾いて一瞬後退した所に衝撃波を放ってやる、無防備な状態で喰らったアーチャーは一気に吹っ飛んでいき地面を何度も跳ねていった、あんなに跳ねたらそれはそれでなかなか爽快なものだな。

 

「がはっ……」

 

起き上がってくるアーチャーは苦しそうな顔を浮かべていた、さすがにアレだけ吹っ飛ばされてしまったら怪我が開くだろうな、だが容赦はしてやらん。

(オレ)は冷たい目と声でアーチャーに向かって一言いってやった。

 

「もしアレが奥の手なら……貴様は目障りだ、散れ」

 

そして(オレ)は深呼吸をしてアーチャーを睨む、あの程度で倒れてくれるなよ、そのおもいあがりの代償として恐怖をその身に刻みつけてやる。

そう思ってアーチャーに向かっていこうとした時、女がいきなり手を掲げだした、一体何をやるつもりなのだろうか、もしさらに興ざめさせるような内容であれば貴様も塵にしてやるぞ。

 

「最後の令呪にて命じる『全てを尽くして戦え』!!」

 

なんと令呪の使用ときたか、傷こそ治っていないが力が漲っていくのが見て取れる、傷を治さなかったと言う事は回復手段をどこかに持っているのだろう。

 

「さて、これから第2ラウンドだよん、そっちのマスターは令呪を使わなくて良いのかな?」

 

女が風間に対して声をかける、(オレ)とアーチャーの戦いに対して邪魔にならないように距離を取っているみたいだな、いい判断だ。

 

「使う時になればアサシンがちゃんと言うんでね、もしくは危ない時でもないと使いませんよ」

 

風間がそう言って女に返答をする、なかなか良い事を言う、(オレ)の判断に身を任せ危機があるときにのみ動く。

それが一番単純で強いやりかただ、お互いの考えが多少分かっておけば使っていい時と悪い時が自然と分かるからな。

 

「そうか、そういうやり方なんだ……、じゃああぶない状況に追い込ませてもらおうかな」

 

女がほくそ笑んで(オレ)達を見る、ずいぶんと大きく出たようだがその傷だらけの体で何処までできるか見せてもらおうではないか。

 

「やれるものならばやって見せろ、その言葉がいかに無謀か思い知らせてやる、貴様らは跪く心の準備をしておくがいい」

 

王《オレ》は笑みを浮かべてアーチャーと女を睨みつけて殺気を送るのだった。

 




まだ次回までこの戦いは続きます。
タイトル名は二人の奥の手をそのまま使わせていただきました。

ご指摘等ありましたらメッセなどでお願いします。
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