『川神聖杯戦争』   作:勿忘草

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今回で前後編と続いたバトルは終わりです。



『蜘蛛と牙 後編』

令呪に続いての爆弾発言、あの女の顔を見るに嘘ではなく自信があるようだな、もし奴らが本当に(オレ)を危険な状況にさせる事が出来る秘策があるなら戦いが更に激化していくだろう。

そう(オレ)が考えてアーチャーの攻撃に対して備えようとした時に女が不意に言葉を放ってくる、一体何のつもりだ?

 

「有限実行の為にここで本当の奥の手を出そうか、これを見たらさっきの言葉がどれだけ本気か思い知るよ」

 

女が微笑みながら後ろへ下がっていくと、それに連動するようにアーチャーが後ろへ下がって距離を取る。

するとアーチャーになにやら武器を渡していた、アレが奥の手のようだな、武器を組み立てていき腰に装着させて眩い光を発する。

 

「ほほう、随分と大掛かりな武器の様だが……見合うほどの物なのか?」

 

光が消えて姿が見えたとき目に飛び込んできたのはぴったりとした黒のライダースーツを着て腕に機械の装備を施しているアーチャーの姿だった。

感想として言うならば機械部分だけで十分なのではないかと言う疑問とその格好のどこに意味があるのかと言う呆れが大半であった。

 

「そんなふざけた格好と装備で何が出来ると言うんだ!!、貴様の令呪は今無くなった

そして奥の手はそれだけ、どうあがいても詰んでいるぞ、アーチャー!!」

 

(オレ)はやけになったとも取れる服装を見て笑う、科学に頼って勝とうと思うのは愚かなことだ。

まだ(オレ)も人間が相手であれば多少は生死について考慮するがこういったものには容赦しなくて済む、鉄塊にして終わらせてやるぞ、アーチャー。

 

「それはどうかな?

これは松永と九鬼の共同開発兵器、武神を倒す為の秘策だ、君を倒すにはうってつけだよ」

 

女が自信満々な事をいっているが(オレ)はその言葉に溜息をつく。

元々強い奴に使う物だからそれより弱いと思っている奴にも通用すると感じているならば滑稽すぎる。

その機械の機能に対して(オレ)の技能が相性が悪く噛み合わなければこいつらの思ったような展開にはならず使った意味は無くなるというのに。

 

「そんなにも自信があるならかかって来い、いかに無駄か思い知らせてやる」

 

(オレ)はその言葉に対して受けてたってやると言うように手招きをする、そのしぐさに触発されたのかアーチャーが突っ込んできた、一体どのような攻撃が飛び出すのだろうか。

 

「上等、まずはこいつだ!」

「『スタン』」

 

機械が機能の言葉をいった瞬間電撃が手甲へと集まっていく、なるほど属性を付与させるための補助機能が豊富な武器か。

格好はいただけないが機能だけ考えればなかなか優秀な物だな、だが力を漲らせていても今のあいつが使ったところでたいした意味は無い。

 

「はあああっ!!」

 

雄叫びを上げて(オレ)へ拳を振るう、策も無しに殴りに来るつもりだろうがその一撃を真正面から受け止めて現実を目に入れさせてやる、絶望するのだな、アーチャー。

 

「いくら力を漲らせても負傷している分ぬるいな、障壁で防げるような拳ならば属性をつける意味が皆無だ、無様に舞え」

 

障壁が目の前に展開されてその一撃は完全に止められていた、ヒビすら入らなかったと言う結果にアーチャーが驚いた顔をしていたがこの結果は当然のものである。

(オレ)は感想を述べて衝撃波をアーチャーの顔に見舞う、顔がのけぞった瞬間に腹へと放って再び吹きとばす、さっきの様に跳ねる事は無かったが相当強い衝撃が体を襲っただろう。

こちらも容赦せず一撃だけで済ませず畳み掛ける方向に切り替えていく。

 

「ちっ、今の俺じゃあ攻撃が通らないか……ならこいつしかねえ!!」

「『リカバリー』」

 

傷が直っていき僅かに『気』の充実を感じる、とは言っても元が少ないのか雀の涙程度の回復量だったのが分かった。

 

「ほほう、まさか回復機能を隠し持っていたとはな、思った以上に良い機能が搭載されているみたいだな」

 

構えて次のアーチャーの攻撃に備えておく、さあどのように攻めてくる?

さっきより威力が上がっているとはいえ生半可だったなら再び弾いて手痛い一撃を浴びせてやる。

 

「もう、余裕かましていられないぜ、今度はこっちだ!!」

「『ファイアー』」

 

腕に炎が宿っている、まさか別の属性まで持っているとは驚きが絶えない装備だ。

しかも使用しているアーチャーの速度もさっきよりも格段に上がっている、障壁を張って万が一に備えてバックステップの準備をする。

 

「ハアッ!!」

 

炎を纏った拳が障壁によって遮られる、しかし先ほどとは威力が高くなっているのが伺える、僅かにきしんだような音を立ててその拳を弾いていく、後ずさりしたアーチャーの拳があった場所にはヒビが大きく入っていた。

 

「属性による一撃も回復機能もなかなかいいものだ、しかしそれでも(オレ)の前には無力だ

そんなものは所詮弱者の足掻きにすぎん、これで確信したぞ

そのようなガラクタなど(オレ)にとっては障害にもならん」

 

(オレ)は自分の中に有る自信をアーチャーに向かって吐き出す、あの程度ならば危険視をするような機能は一つも無い、強いてあげるならば回復機能ぐらいのものだろう。

 

「それに『気』は雀の涙ほどしか回復していないようだな、しかもその機能も多く使える代物では有るまい」

「さすがに見抜かれているか、それは当たっているよ、使えて後一回って所だぜ」

 

感じた事が当たっていた事にも喜べるが、なるほど、それは良い事を聞いた。

それならばその目障りな機能だけでも崩壊させておくか、こちらからすれば厄介なことこの上ない。

 

「その機能を破壊させてもらうか……おまけにいくらか一緒に壊れそうだがな」

 

(オレ)は一気に詰め寄る、手を背中の方へ向けて衝撃波を放ち、それを推進力へと変えていく。

あっという間にアーチャーの手甲にまで迫っていく、これで厄介な回復機能も壊せるはずだ。

 

「なっ!?」

「捕まえた……壊れろ!!」

 

アーチャーもこの速度の変化に反応することは出来なかったのだろう、驚きの顔を浮かべて無防備なまま手甲に衝撃波の一撃を喰らう、この一撃によってきっと多くの機能が損傷したはずだ。

 

「くそっ!!」

 

回復した肉体でアーチャーが蹴りを放つ、至近距離で放てば当たると思ったのだろう、まさか障壁を張れないからいけるとでも思ったのか?

 

「はっ!!」

 

だとすれば甘い、さっきとは別の方法で避けることができる、、阿須手を舌にして衝撃波の反動で空に浮かびそこから立て直して着地する、距離もきちんと完璧にとることができた、最高だな。

 

「まさかアレを避けるなんてな…」

 

アーチャーが睨んで呟いてくる、こういった場面で避けれる技量があるから強いのだ、さてさすがにあの武器の機能もかなり損傷したのだから終わりは近いはずだ、何を仕掛けてくる?

 

「現在使用可能な機能は…『ファイアー』、『スタン』、『フラッシュ』、『フィニッシュ』か」

 

よく装備を見て機能を確かめているようだ、どうやらあの真剣な眼差しを見ると決定打としての機能はまだ残っているようだ、つまりそれは長く感じられたこの戦いにもどうやら終わりが近づいていると言うことだ。

 

「次の一撃に繋ぐ為にこいつだ!!」

「『フラッシュ』」

 

アーチャーが構えて大きな声でこちらに言葉を放って来る、そして次の瞬間に目が光に包まれた視界を失ってしまっていた。

 

「目晦ましか、こしゃくな真似を!」

 

目が見えた時に距離が取られたのが分かる、どうやら予備動作の為にわざわざあのような真似をしたのだろう、どうやら次の一撃で最後にする気だな、そういった雰囲気が採掘場を包んでいる。

 

「さあ、これが最後だ!!」

「『フィニッシュ』」

 

アーチャーが叫ぶように言ってくる、そうか、それが最後の手ならば(オレ)も最大の技で返してやろう、勝利を更に確実なものとする為にな。

 

(オレ)の牙の前に無力を噛み締めよ、塵芥!!」

 

足に『気』を集中させながら(オレ)は助走に十分な距離を取っていく、十分な気がたまったと感じた瞬間に一気に(オレ)は駆け出していく。

この勢いのある速度と思い切りの良さこそが際大の一撃を放つ為に必要なものなのだから。

さあ、いくぞ、ありったけの声を振り絞って叫び歯を食い縛って全力で放って奴を屠る一撃へと昇華させろ。

 

()けよ『ファング』!!」

 

(オレ)は勢いのまま足を振りぬいて大きな一つの形ある衝撃波を作り出す、その一撃は気による圧力と振り上げた速度により風を切り裂いていく。

奴への手向けとしては上々の一撃であろう、それと同時に奴からの攻撃も放たれた。

しかし見えた瞬間光線の弱さに(オレ)は悲しみを感じた、(オレ)の牙に比べるとなんと脆弱な光線か、おおよそ溜めておくべき時より速く使ったのが理由であろう。

その光線は衝突したものの(オレ)の牙の威力を僅かに弱めただけであった。

そのまま牙はアーチャーを飲み込んでいき、地面を数メートル薙いでいった。

 

「奥の手も尽きたな、アーチャー」

 

(オレ)の言葉に反応したのか、倒れていたのにゆらりと亡者のように起き上がるアーチャー、その目には光は無く焦燥していて、勝ちに対する望みは微塵も感じられなかった。

 

「まだ、やれる……ぜ」

 

そう言って放ったアーチャーの余りにも惨めな一撃が(オレ)の頬を打つ、振りぬくことも出来ずに威力は無い。

これならば猫か赤子が叩いたほうがまだましなものだ。

 

「この程度の攻撃なぞ避けるまでも無い、そしてこの(オレ)に触れたこと……」

 

ただ、触れたという事実がこの(オレ)にとっては許しがたい事であり徹底的に息の根を止めさせる理由になっていく。

 

「万死に値する!!!」

 

もう一度避けられない間合いから『ファング』を放つ。

その一撃はアーチャーを容易く飲み込み吹き飛ばして地面に叩きつけて転がしてゆく。

見ていて爽快なものであった、これを見れば(オレ)の苛立ちも晴れるというものだ。

 

「ぐっ……何でこんなにも強い」

 

地面に手を付いて(オレ)に憎しみと悔しさが混じった視線を送ってくるアーチャー、(オレ)がただ強いだけでこれほどの差がついたわけではない。

この状況にはきちんとした理由がある、それは……

 

「貴様の敗因は己の考えを揺るがし詰めを見誤った事だ、アーチャー」

 

痛ましい傷跡が残っているアーチャーを見下ろして(オレ)が言う、きちんと自分のプランを練っていたのであれば一度失敗した時にしつこく追って(オレ)達を一人でも多く減らすべきだった。

それなのに一回篭城しようとした事で居場所が突き止められて己の札を何枚も切らされてしまった、つまり詰めの甘さがこれだけの差を生む原因になってしまったのだ。

 

「なるほど……じゃあ今度はこっちから聞くが何でこっちを狙ってきたんだい、わざわざ遠距離が得意な奴とやりあうメリットなんて無いはずだけど?」

 

確かにその疑問はあるだろう、疲弊している相手であったり近接距離が得意な相手にこの牙を食らわせれば事足りるのだ、それをわざわざ遠距離が得意な相手を優先したのか、その理由は至極単純なものだ。

 

「貴様が(オレ)を脅かしていた、そしてこのようにうろうろされるのが目障りだったのだ、それが理由だ」

 

ただ気分を害した、それだけの事。

(オレ)を脅かすなど分不相応な事をやられたという屈辱である、傍が聞けば馬鹿らしいと思うだろう、しかし(オレ)の怒りを買うには十分な理由であった。

 

「なんだ、あのキャスターやライダー達のためかと思ったのに……」

 

理由を聞いた後アーチャーが苦笑いをして呟いてくる。

なんとも的外れな事を言う奴だ。

(オレ)は溜息をつき見下しながら冷たい声でアーチャーへと自分の考えを告げてやる。

 

「くだらんな、奴らの為になどありえない、(オレ)(オレ)の為に動く

常に戦いの勝者は一人だ、今回は例外でこそ有るものの普通であれば絆や思いやりというものは欠片も要らない」

 

力を伝え攻撃するのも地面に手を突き立ち上がるのも己である。

自分だけがいればそれで良いのだ、他人がいなくては戦えないのは弱き者の証拠だ。

(オレ)はその言葉だけを残してアーチャーたちの目の前から去っていった。

 

.

.

.

 

俺は地面に座り込んで痛みを堪えて笑顔を燕姉に向けている。

 

「すまない、負けてしまったよ」

 

素直に謝罪の言葉を述べる、勝てる可能性を見せておきながらあんなにもあっさりと負けてしまったのだ。

 

「流石に限界だったようだね、あのランサー戦で札を切りすぎたのが悪かったようだしこっちも堪えて逃げに徹すればよかったと思う」

 

燕姉は負けた理由を冷静に言ってくる、確かにランサー戦で逃げておけば今回のアサシン戦は勝てただろう、宝具まで使ってランサー一人に躍起になってしまったのがいけなかったな、きちんと全体を見渡して配分をするべきだった。

 

「そうだが……ランサーならあの性格上、速く逃げていたとしたらどこまでも追いかけてきてただろうな」

 

しかし俺は苦笑いをしてその考えを自分で否定した、家に爆撃してくるような奴が常識で計れるわけが無い。

 

「そうだね、あんな相手を計るのは間違いだよ、

そして話は変わるけど負けちゃったから『願い』は叶えられない、これから自分の力で何とかしないとね」

 

苦笑いした俺の気持ちを察してか燕姉もその言葉を肯定する、そして今有る結果を目の前にして落ち込むわけでもなく冷静に分析して自分の中で結論付けていた。

 

「『聖杯』が無くてもやり遂げられそうだな、負けたことを引きずっていないし安心できそうだ」

 

その姿勢を見て俺は苦笑いを微笑みに変える、やはり思っていたようにたくましい人だ。

これならば俺がいなくても、何かに頼る事が無くともやり遂げられるだろう、俺はその確信を胸にいだいていた。

 

「うん、心配なんかしなくてもいいよ、今まで頑張ってくれてありがとう」

 

褒め言葉を受けて俺は微笑んでいた頬を更に緩めて口角を上げる、負けはしたものの報われたのだと言う事、それをはっきりと感じ取れた。

 

「ああ、俺はただ祈る事しかできないが……応援しているよ」

 

俺は微笑を浮かべたまま激励の言葉と共に粒子となっていく。

強い奴らと戦えた事、策を張り巡らせて脱落させた事。

今回の戦いを思い返せば案外悪くない、むしろ楽しい戦いだった。

『次』が有れば今度こそ負けない、その思いを胸に秘めて俺は目を閉じた。

 

.

.

.

 

聖杯戦争……八日目。

落ちたのは『三騎士』の一人でもあるアーチャー。

残りはセイバー、ライダー、アサシンの三人。

策謀を得意とする者と猪突猛進な者が残った。

知略で力を絡めとり聖杯をその手に掴むか。

力で知略の網を破って聖杯をその手に掴むか。

遂にこの戦争にも終わりが近づいてくるのであった。




書き終わると同時に残りの面子が少なくなってきたので最後が近くなっている事がよくわかります。

今回でアーチャーが脱落しました、このような形の脱落で申し訳ありません。

今回コラボに協力してくださったユニバースさんにはこの場で感謝申し上げたいと思います
ユニバースさん、本当に有難うございました!!
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