最後まで秒読みとなりました。
聖杯戦争も遂に日数が二桁となっていた、朝日が差し込んで全員の意識が覚めていく。
戦いも大詰め、緊迫していく空気。
外は快晴、景色は朝露が反射して輝いていてとてもまばゆい。
あの時は協力し合っていた者同士が次は敵となって自分の目の前に現れる、まるで示し合わせたかのようにあの日一堂に会した河原に、あるサーヴァントは向かっていた。
一番先に来ていたのは金髪のサーヴァント、傍らにはバンダナをつけたマスターが一緒に歩いていた。
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「来たのは良いが何にもねえし誰もいねえぜ、無駄足だったな、こりゃ」
風間が辺りを見回してそう呟く、確かに草や土だらけで人はいない。
どう考えてもこの行動は失敗だろう、流石の
「流石に戦いに関して何の考えも無しに此処に来ても意味がなかったようだな、いやはや困った困った」
そう思っていたらじゃりじゃりとした音が耳に聞こえてくる、距離は分からないがそう遠くはないはずだ。
「おいおい、困ったと言った直後に足音が聞こえてくるとは運がいいぞ
そして相手も近づいてきているようだ、ここで出会うとはあまりにも出来すぎだがさて…誰が来る?」
衝撃波の射程まではおよそ数瞬もすれば入ってくるはずだ、先にこちらが一撃を入れて主導権を握らせてもらうぞ。
「トゥラトゥラトゥラー!!」
しかし予想とは裏腹に後ろから声が聞こえてくる、前から靴が砂を噛むじゃりじゃりとした音が聞こえているにも関わらずだ、その瞬間
「くそっ、まんまと騙されてしまったか!!」
そう言って
風間は何とか体勢を立て直して不意打ちの攻撃による被害を最小限に食い止めていた、令呪で逃がそうにも完全に不意をつかれて最善の対処ができなかった。
しかし何故相手が後ろからやってきたのか、その答えは少し向こうに見える人影であった。
よく見ると遠くでゴルフクラブで砂遊びに興じている奴がいた、アレが後ろからやってきた声の主のマスターだろう、そして見覚えの有る男が目の前に現れていた。
「貴様だったか、セイバー…」
「浅いみたいだけどその一撃は思った以上に効くぜ」
セイバーは避けさせた事で浅く済んだ風間の傷についていってくる、随分と真剣な眼差しで攻撃した場所へ視線を向けていた。
「なっ、これはっ!?」
傷は浅く済んでいると思っていたのだが風間の足にはその予想よりも深く斬られた傷が残っていた、一体何が起こったのだろうか?
冷静に場面を見て考えられるのはただ一つ、セイバーが今持っている刀であった。
「貴様のその刀…宝具だな、しかも予想するに『人間』に対して攻撃力が上がるやつだ」
「正解、オレの宝具である『
セイバーは宝具の真名を明かす、あの騎兵や射手の様に言葉を言わなくても開放できる代物なのだろう、常時発動でなければ今よりも深い傷を負ってしまう、風間は安全な所にいたほうがよさそうだな。
「なるほど、なかなか厄介な物を最後に隠し持っていたようだな、だがそれでは
ただ一振りの刀では対抗するのは物足りないはずだ、あの花火で目晦ましをしようにも衝撃波では煙は吹き飛ぶ、光も少々では意味がない。
「確かに普通ならそう思うだろうな、オレ自身が遮蔽物の有る所でやろうと思ったぐらいだ
でも冷静に考えたらオレにはこの刀があるからね、これが有れば衝撃波は防げると思った」
随分とあの刀に自信があるようだがおろかな奴よ、所詮は
「その自信を壊して敗北を胸に刻ませてやるぞ、セイバー」
「悪いけど自信じゃなくて事実を述べているだけさ、防げるから防げるといったんだ」
刀が光ってセイバーの顔を照らす、その顔は笑みが無くなって真剣な眼差しでこちらを見ていた。
なるほど、さっきまでと違って気迫が漲っているな、その言葉に偽りはないのだろう。
「そうか、ならば言葉通り防いで見せろ!!」
草木が大きく揺れている、砂埃が舞い上がってセイバーへと襲い掛かっていく。
「こうすればたやすい事だ!!」
刀を盾に突っ込んでくる、なるほどそういう方法か、随分と頑丈な奴のようだが果たしていつまでもつか。
「しかしこれは突破できまい!!」
仮に振り切って攻撃すれば即座に弾き返してそのままカウンターで衝撃波を叩き込む、これはどのように乗り切る気だ、セイバー?
「それならばこっちだ!!」
セイバーがそう言ってポケットから花火を取り出して火を付ける。
煙を巻き上げながら
それに乗じて後ろから
「この程度のちゃちな煙では意味がないぞ、セイバー!!」
障壁を解除して衝撃波で全ての煙と花火を吹き飛ばす、しかしその煙に乗じて後ろに回っていると思った気配は無かった、一体何処に消えたのだ?
「上だ、アサシン!!」
風間が大きな声でこちらに言葉をいって来る、その言葉通り上を見上げると飛び上がった状態で突き刺そうと落下してくるセイバーの姿があった。
「くっ!!」
普通ならば衝撃波を避けられない様になるから選ばない道だが花火と合わせる事であえて挑んできた、だが結局は無意味に終わるな、セイバー。
お前の攻撃をいち早く察知して声をかけるマスターがいる、それだけでお前の攻撃は遮断できるのだ、一筋縄ではいかんと言う所を見せてやるぞ。
「残念だったな、セイバー」
障壁の前で着地をしたセイバーに
「それは間違いだぜ、アサシン」
セイバーは悔しそうな表情を浮かべずに笑みを
お前の攻撃は今さっき全て遮断されてこの様ににらめっこをするしかないはずだ、そうだというのに随分と気丈な振る舞いをするではないか。
「何だと?」
少し首を傾げてこのセイバーの自信の素を考えて見る事にする、遠くを見据え可能性をいくつも考える。
そして一瞬脳裏によぎった事はこの状況において今一番冷や汗をかくことであった。
「ヒャッハー、がら空きだぜぇ!!」
その冷や汗が背中を僅かに伝う瞬間後ろから気配を感じる、まさか自分の攻撃を囮にしていたというのか!?
これでは
「ちっ、マスターが後ろから来てたのかよ!!」
そう言って風間が後ろから向かってきていたセイバーのマスターに蹴りを繰り出す、そのおかげで何とかこの場をやり過ごす事はできた。
まさか上と後ろからの二段構えの攻撃だったとはな、もし風間がいなければ今のやりとりで終わっていたかもしれん。
まったくこの男は油断も隙もあったものではないな。
「小細工をしてくるとはな、少し肝を冷やしたぞ」
こいつならばこちらの弱点を見抜けば的確に狙うほどの技量はあるだろうからな、後ろを取られ続ければこちらも面倒になってくる。
「まあ、マスターから遠ざけたって考えたら最低限の事はやり遂げたって所だな
そりゃあ、欲をいえば倒せればよかったんだけど贅沢はいえないもんだね」
そういうセイバーは刀を構えてじりじりと間合いを詰めてくる、障壁を張るには十分な間合いだがさっきの様な事があれば危険だ。
「どうするんだ、アサシン、もうマスターは近くにいないぞ」
セイバーの奴が間合いをつめながら言葉を投げかけてくる、さっきの時にマスターの援護があって避けられたからそんな事を言うのだろう。
「阿呆が、あいつは貴様のマスターをすぐに倒してこっちに来る
その時に青ざめた顔を晒すのは貴様だぞ、セイバー」
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「オラァ!!」
相手がゴルフクラブを振り回してくる、頭に当たればその時点で俺はぶっ倒れちまうだろう、アサシンの奴から距離を離されているからあいつをサポートする事もできねえ。
「くそ!!」
俺は悪態をつきながら蹴りを繰り出す、相手も喧嘩に慣れているのかひょいひょいと俺の攻撃を避けていく、速さでは負けてないんだろうけどきつい事は変わらない。
「最初の時以外ぜんぜん当たってねえぜぇ!!」
笑いながらこっちに迫ってくる相手、年齢だけ見たら俺たちより年下みたいだがずいぶんと凶暴な女の子だ。
こうなったらこのゴルフクラブを何とかするしかねえ。
「そいっ、真剣白刃取り!!」
俺は振り下ろされるゴルフクラブに狙いを定めてはさんでとりにいく、頑丈なら食らってから掴めばいいんだけどこっちの方がカッコいいだろうからな。
「なっ!?」
相手も俺のいきなりの構えに驚いたのか一瞬速度が落ちる、よっしゃその速度なら挟めるぜ、きやがれ!!
頭に向かって一直線に振り下ろされる、タイミングを間違えたらやばいがもうここまで来たら引き下がれねえぜ!!
「イエー、成功、成功!!」
俺は速度が少し緩んだ瞬間を見逃さずにがっちりと両方の掌で挟んで、ゴルフクラブの攻撃を止めていた。
冷や汗が頭を伝ってくるけど成功して本当に良かったぜ。
そう思うと俺は成功した事に喜びを隠さずに叫んでいた。
「くそが、離しやがれ!!」
相手が振り回して俺の手からゴルフクラブを何とか離させようとするが無駄だ、挟んでいた状態からしっかりと掴んでいる、このまま奪い取って遠くへ放り投げてやるぜ。
「こいつ……離さないつもりならウチにも考えあるぜ!!」
そう言って蹴りを繰り出してくる、ようやく武器を諦めたか?
さっきとは打って変わって優勢になった俺はゴルフクラブを遠くに投げ捨てて応戦を始めるのだった。
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朝の日差しは完全に無くなり昼下がりに差し掛かる時間。
無関係な人々が昼の食事や仕事に勤しむ中に確かにある非日常。
終わるのはきっと夕焼けが川原を覆う頃になるだろう。
その時の勝者がどちらなのかは激闘を繰り広げる四人でさえも知る事は無い。
指摘などありましたらメッセでお願いします。