『川神聖杯戦争』   作:勿忘草

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前後編終わりです。
今回でついに最後の対戦カードが決まります。


『暗殺者と刀 後編』

マスター同士の戦いが二転三転している間にじりじりとセイバーが距離をつめてこちらへと近づいていた。

応戦の為に手を前に突き出し(オレ)はセイバーを吹き飛ばす一撃を繰り出し、一気に距離を開かせようと試みる。

 

「とりあえず……(オレ)にそれ以上近寄るな、セイバー!!」

 

(オレ)は衝撃波を放ってセイバーに攻撃を仕掛ける、距離をとる為にできるだけ大きなものを飛ばす、仮に刀で防いできた場合はそれに合わせた対処法も当然考えているぞ。

さあ、どうくるんだ、セイバー?

 

「通用しないのは分かっているはずだ、無駄だぜ!」

 

再び刀で防いでこちらへ接近をしてくるセイバー、そのままこちらにまっすぐに向かってくる。

防ぐのは予想済みだった、その上であのような大声で切羽詰った感じを出したのだ、これで(オレ)は平然とお前の射程距離から逃れられるというわけだ。

 

「防いだその一瞬の間に反動で後ろに下がれるようにすれば問題ない」

 

反動を利用して(オレ)はセイバーから離れる、これでさっきのような状況になる事はもうないだろう。

しかし次の瞬間(オレ)は予想できなかった光景を見ていた。

 

「残念だがこっちの方がお前より速い、向かい風のような衝撃波を一度逃れればこの通りだ」

 

なんという事に目の前にセイバーがいたのだ、なんと言う速度だ。

こちらの速度をはるかに凌駕するというのは流石に予想外だった。

(オレ)が衝撃波で手に入れたアドバンテージが、あまりにもあっさりと逃げていったではないか。

 

「そういえば貴様はあのバーサーカーの時でもかなり速い動きをしていたか

貴様に作戦を立てさせる時間を与えないように距離を抑えたが……

目の前に来るほど速い所を見ると貴様も速度をあの時は抑えていたようだな、しかし(オレ)の次の行動をよく読めたな、セイバー」

 

(オレ)は笑みを浮かべて余裕の表情を装う、ここで顔に出てしまえばこの距離ではセイバーの斬撃を対処するのが難しいというのがばれてしまう。

ここはあえて言葉のやり取りでこちらの危機的状況を知らせないようにしなくてはな。

 

「あの距離からなら衝撃波以外の選択肢はそっちに無い

そしてこれはあくまで予想だったが障壁と衝撃波は同時に使う事はできないと読んだ」

 

予想は当たっている、その通りだ。

(オレ)は障壁と衝撃波を同時展開することはできない、だからこそあそこは飛んで下がったのだ。

 

「あの大博打をきっかけに(オレ)の手を狭めて追い詰めるつもりだったと言うわけか」

 

睨んでセイバーを威嚇する、まさかあの煙幕から今までを一連の流れとしてみていたとはな。

(オレ)は攻撃を次々とやるだけでその様な流れは考えてはいなかった、それがこのような状況を生んだという訳だ。

 

「ああ、その通りだよ、あの無茶がどうにかここまで来る隙をくれた

普通なら障壁に阻まれて懐に潜り込む事もできないだろうからな」

 

確かに普段の状態であったならば(オレ)は堅実に障壁でセイバーの攻撃をやり過ごしていただろう。

だがそれができなくてもこの状況を覆す方法が無いわけではない、あのセイバーの武器さえ破壊してしまえば勝利の天秤は再びこちらに傾くだろう。

 

「だからどうしたというのだ、この(オレ)にお前の攻撃は通らん、そんな刀など圧し折ってくれる!!」

 

そう言って至近距離からセイバーの刀へ向かって(オレ)は衝撃波を繰り出す、しかし次の瞬間(オレ)の目に飛び込んできたのは信じられないものだった。

 

「何だと!?、何故壊れない!!」

 

一撃だけ、しかも遠い場所の衝撃波であればまだ頑丈だと考えられたが次に喰らったのが至近距離であれば異常だと感じ取ってしまう。

セイバーはそんな(オレ)の叫びににやりとした笑みを浮かべて答える、一体どういった仕掛けを施していたのだろうか。

 

「残念だったな、オレの『兗洲虎徹(えんしゅうこてつ)』は何が有っても絶対に壊せないんだよ

そしてこの距離でオレは外さない、喰らえ、アサシン!!」

 

刀が勢い良く振りぬかれて(オレ)に迫ってくる、この一撃を喰らえばセイバー側に傾いている主導権が確実に取り戻せなくなる。

ここで(オレ)は距離を取るのではなくひらめいた一か八かの賭けに出る、今までの(オレ)ならば決してこの様な考えを持つことは無かっただろう。

あの無謀なマスターと一緒にいたことでこの様な思想が芽生えたのかもしれない。

もしくはこの真夏の暑さに浮かされたのだろう。

 

「唯で終わると思うなよ、(オレ)が倒れる時は貴様もお終いだ!!」

 

賭けを始める。

伸るか反るかの大勝負、一歩間違えれば脱落もあるかもしれない危険なもの。

(オレ)は手に気を宿らせて、放たれる一撃に備えるのだった。

 

気迫十分に放たれた刀の一撃が描く放物線は顔を跨いで斜めに入ってくる、この一撃に対して(オレ)は手を突き出して迎撃に備える、歯を食いしばり、瞬きをせずセイバーの一撃を切り抜けようと尽力する。

 

「来るがいい、セイバー、この腕をくれてやる!!

その代わり貴様は命をよこせ!!」

 

(オレ)が一撃を食らわせるために生半可な気持ちで手を突き出しているのは無い、言葉通り腕一本くれてやろうではないか、セイバー。

貴様のその一撃の勢いはもはや緩む事はない。

その振りぬいた次の瞬間に貴様へ全力で衝撃波を叩き込んでやる。

 

「もらったぞ、アサシン!!」

 

その罠に一気に食いついてきたセイバー、こうも真っ直ぐにもらっていくのは罠にかけている気がまったくしない、なんだか少し嫌な気分になってしまうな。

しかしそれでも食いついたという事実は良いものだ、傷ならば令呪で治せるのだからわざわざ今この時に気にする必要も無い。

この攻撃の痛みを次の瞬間必死に耐えるのが(オレ)にできる事だ。

 

「ぐあっ……!!」

 

犠牲にした腕と胸を僅かに斬られたがセイバーの腹に衝撃波を食らわせる、その一撃には確かな手ごたえがあった、その証拠にセイバーの奴は後ずさりをしていく。

セイバーと(オレ)との距離がかなり開いていた、(オレ)は微笑んでセイバーの方を見る、(オレ)だけが痛い目にあったという事はなくなった。

始まってからというもの今までセイバーの方へ傾いていた勝敗の天秤はうまく均衡を保つ程度にはなっただろう。

 

「……あの一撃をまさか令呪を使わずに切り抜けるなんて驚きだ」

 

セイバーを追撃できないのは面倒だが仕方あるまい、それに奴も追撃はできないのだ。

顔色一つ変わってはいないが一撃の痛みは体を駆け巡っているだろう、やせ我慢だな。

二人とも痛み分けに終わったというこの結果を受け止める、なんとも締まらない結果となってしまったな。

 

「堅実にいって貴様に勝てるなど都合がいいと思ったのだ

全く無傷でもおかしくないほど博打を打ったというのに…生意気な斬撃をくれたものだな、セイバー」

 

そう言って笑みを浮かべてセイバーを見る、斜めから大きく切り裂かれそうだった所を胸と腕だけで済んだのだから結果としては悪くない。

しかし痛みが体を駆け巡っている事を顔に出さずに乗り切るには強がりな言葉を言わずにはどうしてもいられなかったのだ。

 

.

.

 

「はぁっ……はあ……」

 

俺は息を切らして相手の方を見る、あれからずっとこっちも攻撃を仕掛けてアサシンに近づくように追い込んでいっていた。

 

「ここまで食い下がってくんのかよ……」

 

相手は嫌な顔をしてこっちを見てくる、何回攻撃してもこっちがぜんぜん下がらずに来ているから面倒になってきているんだろう。

こっちは昔にモモ先輩の攻撃をめちゃくちゃ受けているんだ、この程度じゃぜんぜん倒れないぜ。

 

「俺は諦めが悪いぜ、そっちが嫌がるほど食い下がるなんて当たり前じゃねえか」

 

俺は笑いながら相手の方を見る、相手は嫌な顔から呆れ顔に変わってこっちを見てくる。

ゴルフクラブが無くなった後も蹴りとかで俺に怪我を負わせてきている、正直俺の方が相手より傷が多い。

顔もちょっと腫れているし、足とかには痣がちょこちょことある。

 

「こうなったらてめえが気絶するまでぼこぼこにしてやんぜ、オラー!!」

 

そう言って蹴りを繰り出して腹を狙ってくる、腕を交差して受け止めるけど受けた腕が痺れてくる、こんな小さい体のどこにこんな力があるんだろうな?

 

本当に女って不思議なもんだぜ、俺はそう考えながらアサシンに近づいていく。

ようやく始めの場所ぐらいまで近づいてきていた、これなら俺の声も届くだろう、この戦いが始まってから使ってなかったこの刺青みたいな奴を使ってみるかな。

 

「この距離まで近づいているしもうあっちの戦いもいい感じだ、使わせてもらうとするかな」

 

俺は手を掲げて力を込める、願うのはこの戦いを終わらせる一撃をアサシンが放つ事。

距離を考えてみると相手とはめちゃくちゃ近い、これなら相手の方だって流石に避けられないだろう。

これで終わらせてまた楽しめる戦いを探そうじゃねえか、行くぜ、アサシン。

 

.

.

 

「令呪によって命じる『最強の一撃で打倒せよ』!!」

 

風間が勝負所を見抜いて令呪を使う、この距離で避ける事はできないだろう、良い場面で使ったな、ここで使わなかったら無能と言って蔑んでやる所だったぞ。

(オレ)はそう心で思い、笑みを浮かべながら足に衝撃波を込めて振りかぶる、

 

「征けよ、『ファング』!!」

 

(オレ)は勢いよく振りかぶっていた足を振りぬいた。

この一撃でセイバーを打倒する為に、この戦いに終止符を打つために全力で振りぬいた。

この距離では例え後ろに飛んでも射程範囲内に捉える事ができるぞ、セイバー。

(オレ)は貴様の一撃を避けたが貴様は(オレ)の一撃を避けられるか?

 

「ちっ、遅れたが……こっちも令呪を使うぜぇ、『その一撃を切り抜けろ』!!」

 

相手のマスターも令呪を使う、お互い初めての使用のはずだが使いどころを心得ている、もはやこれではどちらに勝利の天秤が傾くか分からない。

 

「はあっ!!」

 

セイバーの奴が気迫のこもった声で命令の遂行に力を注ぐ。

ファングの一撃は土を薙いで煙を上げている、セイバーの奴が例え直撃を避けてこの場をうまく切り抜けられたとしても無傷では終われない。

 

「さらに命じる、『この一撃で決めちまえ』!!」

 

予想通り痛ましい傷を負ったままさっきよりも凄まじい一撃をセイバーの奴が繰り出してくる、その一撃に対して(オレ)も対応しようとする。

しかし体が動かない、『ファング』の後に起こってしまう障壁を張る事のできない僅かな時間、それを狙い澄ましたかのようなセイバーの攻撃。

これを避ける事はもはやできないだろう、(オレ)は足に力を込めて刀の攻撃を受ける準備をしていた。

 

「くっ!!、アサシン、『その一撃を避けろ』!!」

 

風間がその一撃を避けるように令呪で命じる、(オレ)は体を捩ってセイバーの一撃を回避するように努めていく。

しかしこの動きはあまりにも致命的な時間の差があったというのを感じる、なぜならばセイバーの攻撃はもうそこまで迫っていたからだ。

 

「甘い、わずかに遅かったぜ!!」

 

セイバーが避ける(オレ)を目で追い僅かに軌道を修正する、その一撃は体を捩っていく(オレ)を正確に追っていき、そしてその一撃は見事に(オレ)を捉えていた。

 

「ぐっ!!」

 

(オレ)は刀の一撃に反応してセイバーの方を見る。

反撃として衝撃波を叩き込む事を試みようとして動こうとする、しかしセイバーの方が早く動いていた。

 

「はっ!!」

 

セイバーは力を込めて刀を一気に引き抜き僅かな隙も見せずに距離を取っていた、見事な動きに笑みを浮かべながらは言葉を発していた。

 

「どうやら令呪を惜しみなく使っていたのが実ったようだな、(オレ)も使ったが僅かに届かなかったのだろう」

 

わずかに風間の令呪の使用がセイバーたちより遅れてしまったのだろう、胸に感じるこの感覚からして(オレ)を捉えた一撃は霊核を貫いているのだろう、まさかこの(オレ)を負かすとはな。

振り下ろす一撃や横に薙ぐ一撃ではなく最速の攻撃でもある突きだったのが一つの要因でもあるだろう。

 

負けていながら笑みを浮かべてこの戦いを反芻する、一つたりとも手は抜かなかった、壊せると思ったから自信を持っていた、それが付け入る隙になったのならば仕方有るまい。

 

「何で負けたのに笑っていられるんだ、悔しくないのか?」

 

セイバーが(オレ)を不思議な顔で見ながらいってくる、確かに傍から見ればおかしなものだろう、しかしきちんとした理由がある。

だからこそ笑顔を浮かべていられるのだ。

 

「負けて何故笑っていられるか?、それは『楽しんでいた』からだ、負けても顔を歪ませたり言い訳をする余地もない戦いをしたのだ、だから満ち足りた顔を(オレ)はしている」

 

全部を出し切り楽しんでいた、何も残さないほど尽くしていた。

言い訳をして自分の全力を偽る気にはならない、それをしてしまえばこの戦いの時間も無に帰ってしまう。

 

「そういうものか、オレは必死にやってたからそんな感じはわからないな」

 

まあ、これ自体は今すぐに分かる必要のないものだからな、充足感に満たされている時にきっとお前は今の(オレ)と同じような感覚を覚えるだろう。

さて……あと少しだけ言っておく事があるから言わなければな。

 

「セイバー……あの騎兵に勝って聖杯を手に入れるがいい、(オレ)に勝ったのだからやれるはずだ」

 

(オレ)は笑みを浮かべてセイバーに言葉を放つ、多少は重圧を感じるかもしれないが貴様なら不可能ではないはずだ。

まあ、(オレ)なりの激励という事にしておくがいい、セイバー。

 

「わざわざどうしてそんな事を言うんだ?」

 

肩で息をしながらも首を傾げるセイバー、そのような事を言う理由など簡単ではないか。

まあ、きちんと言っておいた方がいいな、お互いが息も絶え絶えの状態では聞こえにくいだろうし頭が上手く働かないだろうからな。

 

「何故こんな言葉をお前にかけるか?

さっきもいったが貴様が(オレ)に勝ったからだ、だからあの騎兵に勝てると率直な気持ちで言っている

セイバー、まかり間違っても無様な姿で負けるなよ」

 

そう言って(オレ)はセイバーの前から立ち去っていく、無様な姿を見られたまま消えていくなど|王(オレ)は嫌だったのだ。

立ち去る時に空を見上げると美しいほど輝く夕焼けが(オレ)ではなくてセイバーを照らしているのがわかる、それを見た瞬間負けるのもやむなしと思えていた。

 

.

.

 

「お疲れさんだったな、うちも手の奴二回も使っちまったぜ」

 

マスターは切り札である令呪を二画も使用していた、豪快な使い方ではあるが今回に限っては決して間違った決断ではない。

もしあそこで渋っていたらアサシンと立場は逆転していたかもしれないからな。

 

「ああ……疲れる勝負だった」

 

オレは息を吐き出して呟く、令呪を使用して全力を尽くした戦い。

相手は最後まで微笑を絶やさずに凛とした格好であった、勝ったはずなのに負けた気分になってしまう。

 

「まあ、とりあえずは聖杯に王手だ、それだけは素直に喜んでおこう」

 

刀を鞘に収めて深呼吸をする、最後の相手は既に分かりきっている事だ。

だからこそその相手に対して最大限の敬意をはらって全力で戦ってやる。

オレは心に強く思いを込めるのだった。

 

.

.

 

「やっぱりもう行くのか?」

 

風間が残っていた令呪を使い傷を癒し次の命令で(オレ)との契約を破棄する。

霊核の傷は治らないが深い傷ではないから消えるまでの時間に余裕はある、最後ぐらいは自分の思う侭に動こうと思ったからこそ契約を断ち切ったのだ。

 

「ああ、最後まで楽しめたが別れの時だ、風間」

 

まあ、この様な事をしてもどうせ一日もしない間に消えるだろう、しかしこいつの目の前で無様な姿をさらして消える事はセイバーに見られるよりも嫌なものだ。

だからこそその姿を見せぬために(オレ)は最後の散歩に出る事にしたのだった。

 

「なかなかにいい時間であった、全ての事柄に楽しみを見出すのも悪くは無かった、ではな」

 

王《オレ》はそう言って歩き始める、風間の気配を感じぬように早足で振り切るようにして夕焼けに溶け込むように(オレ)は消えていくのだった。

 

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聖杯戦争……十日目

 

遂に最後の戦いへ進む者が決まった。

 

令呪という切り札を使ったが、不滅の宝具を持つセイバー。

宝具を破壊されたが、令呪という切り札を温存しているライダー。

 

肉体は互いに満身創痍。

 

条件を総合すればどちらにも勝つ可能性は十分にある。

 

どちらが勝ってこの戦争が終わるのか、それは次の夜の(とばり)が落ちる時に分かる。

朝日が昇れば最後の戦いの日となり眺める景色も全て最後に眼に焼き付ける景色となるだろう。




何かご指摘などがありましたらメッセなどでお願いします。

そして今回で五人目の脱落者が出ました、アサシンです。
このような形の脱落で申し訳ありません。

今回コラボに協力してくださった兵隊さんにはこの場で感謝申し上げたいと思います
兵隊さん、本当に有難うございました!!
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