『川神聖杯戦争』   作:勿忘草

26 / 28
連続投稿ですが中編です。
速く後編を書かないといけませんね…


『刀と車輪の舞踏 中編』

俺の拳を避けて斬撃を繰り出してくるセイバー、その速さには舌を巻くしかねえ。

避ければその方向へ即座に繰り出し距離が遠いと見るや突きでこっちを追ってくる、篭手で防ごうにも的確に壊れているヒビの場所を狙ってくるから迂闊に頼るわけにもいかない。

 

「人の事を厄介だって言っていたが自分もそう思われている事に気づいてないのかよ」

 

苦笑いを浮かべてセイバーとの距離を取る、ワン子ちゃんから必要以上に離れられないからあいつからしてみたらヒット&アウェイの戦いをするには格好の的だ。

あいつを掴んでこっちの一撃を直撃させられたら何とかなるんだけどな、どうしたもんかね。

 

「やっぱり行き当たりばったりでやるしかねえな」

 

難しい事は頭の中から放り出してセイバーの動きを目で追っていく、強化の付けが回ってくる事を考えたら速くあいつを掴むなり何なりしないときつい。

 

一気に距離を詰める事でセイバーの懐を狙う、速さで負けていてもぶつかっていくようにいけば距離は確実に縮まっていく、

 

「まるで猪みたいな突っ込み方だな……」

 

セイバーの呟きが風に乗って耳に届く、そりゃあ迂回したりしてたらお前は瞬く間にこっちの攻撃の射程から離れていくだろう、だったら馬鹿にされるような方法でも速く着くのが得策だ。

 

「おらあっ!!」

 

俺は突っ込みざまにセイバーの顔面へ攻撃を放つ、捉えきるためにまずこの一撃を避けられる事を前提として逆の拳に力をこめる。

さて、この攻撃を大きく動いて避けるかそれとも小さい動きで避けるか、どっちだ?

 

「ふっ!!」

 

セイバーが息を吐いて攻撃を回避する、しかし顔を僅かにのけぞらせただけだ。

よし、この距離ならばまだ当たる、俺は強く踏み込み再びセイバーの顔面へ思い切り拳に力を入れた一撃を放っていた。

 

「なっ!?」

 

まさに当たると思ったその瞬間俺の視界からセイバーが消える、視線をずらしていくとそこには懐に下から潜り込んでいたセイバーの姿があった。

こちらの大振りを距離が詰まってから今に至るまで待っていたかのような動き、ずっとこのような瞬間が来る事を狙っていたのか!?

そこからの攻撃も滑らか過ぎて反応が僅かに遅れていく、拳を戻して攻撃に転じる事もできそうにないのは分かっていた。

 

「ようやく一撃だ!!」

 

そう言ってセイバーが刀を横に薙いでいく、俺はこの刀の一撃を回避しようと後ろに下がるがそれ以上に速い剣速が避ける俺の腹を捉えて切り裂いていく。

何とか必死に下がって致命傷は逃れられたが体から痛みによる汗がまるで間欠泉のように噴き出ていた。

 

致命傷を逃れることはできたがそれでも今の一撃で血が多くはないが確かに流れている、このセイバーにとって優勢な状況をひっくり返すために俺は柄にも無く歯を食いしばってセイバーの方向を睨んでいた。

 

「はあっ、うまくやられたな……欲張ったのが悪いかも知れないけどな」

 

嫌な汗をかいたまま俺はそうつぶやいた。

汗をかいているのはばれているだろうが大して問題ではない、今できるのは痛みに耐えてあいつに一撃を叩き込む事だ。

 

「でも苦あれば楽あり、機会到来ってわけだ」

 

その機会を活かす為にも俺は苦笑いから笑顔に変えて痛みを押さえつける。

 

このままセイバーを懐に入れさせたままに俺は戦い続ける事を考える、元よりこっちが懐に入ろうと考えていたのだから、相手から入ってきてくれたこの状況は良い事だ。

 

セイバーの腕を掴めばこっちが攻撃に転じて同じほどのダメージを与える事ができる、そうなれば傷ついた体に鞭打っても大きな見返りにはなるはずだ。

しかしそれをするという事はもしもこのやり方で下手を踏んだ時はセイバーの攻撃次第でこのまま決着が付く場合がある。

 

しかしこのままいけば負ける可能性が高いのも分かっている、つまりどちらにせよ今ここで行動を起こさないと意味がないのだ。

 

そう思った俺はすこし笑ってセイバーを見ていた、策を多用していた先入観もあってか真っ向勝負で追い詰められそうになるなんて思わなかったぜ。

でもこの状況は本当の事だ、今から気を引き締めて必死に勢いを戻さないとな。

 

足に力を込めて腹の痛みを堪える為に奥歯を噛み締める、そしてこの距離での戦いを始めるのだった。

 

.

.

 

 

ようやくお互いを通して会心とも言える一撃を叩き込む事ができた、オレが先に叩き込めたのはあいつが僅かに欲張った事も有ったおかげだろう。

 

刀はライダーの脇腹から胴にかけての道を通って切り裂いていく、この手応えからしてライダーは致命傷ではないもののかなりの痛手を負っただろう。

オレはこのまま後ろに下がって優位なこの状況を手放さずにいけばいい、そう思って距離を開けるために後ろに下がろうとした。

 

「はあっ!!」

 

拳を振ってオレに攻撃をしようと反撃を考えているのか、ライダー?

 

あの一撃を頑丈さと気合だけで乗り切ったにしても確実に痛手なはずだ、速度も格段に落ちている今のライダーならば恐れる事は無い、再び後ろに下がっての攻撃を繰り返していって堅実に勝ちの芽を摘んでいくだけだ。

 

拳を振る腕を斬りつけて攻撃を回避しながらも確実に相手の戦力を削ぐ、後ろに下がろうとするがライダーはそれを許そうとしない、次は逆の拳を振って攻撃をしてきたのだ。

 

「ちっ!!」

 

斬りつけずにしゃがんで回避をするがライダーの攻撃は止む気配がない。

左拳の攻撃が終われば右拳、その次は蹴りや頭突きとこの距離を保たせるためにただひたすらにこっちに攻撃を繰り返す。

 

「この……いい加減止まれよ!!」

 

オレは攻撃を避けていき斬りつけていく事で着実にライダーへのダメージを積み重ねていく。しかしライダーは奥歯を噛み締めて痛みを堪えている、そしてそれと同時に疲労の色を見せないようにがんばっているのだろう、いつになればこの我慢が終わるんだろうか。

 

正直避けてはいるがこの距離ならば敏捷性も何もない、いつ当たってもおかしくはない。

 

そして一撃を当てられた場合、ライダーが腕力を上昇させていればこちらの耐久を大幅に超えてしまい、傾いていた状況をひっくり返されてしまう一撃が放たれるだろう。

 

「本当に綱渡りだぜ」

 

一撃が当たれば危ないという事実に精神面も僅かに削られていくこの場面でオレは何とかできないかと考える、足を斬るのも良いがそれで蹴りを出されては元も子もない。

 

「もう一度大振りを狙ってその隙に霊核に攻撃を加えて終わらせる、血を流しすぎたライダーが倒れるという時までこのような事を繰り返すのはごめんだ」

 

とりあえず方向性を固めてライダーのまだ止む事のない攻撃の嵐を刀で受け流し避けていく事にする。

 

「らあっ!!」

 

蹴りが飛んでくるが霊核を防御できる腕が自由になっている為、この攻撃に対しての反撃はしないほうが良い。

拳だけに狙いを定めておいて大振りが来たその時に最大限の攻撃を放つ。

 

「しっ!!」

 

アッパーが顎を狙ってくる、わずかに後ろに上がって回避をする、振り切らずにそのまま構えなおして距離を詰めてくる。

回避の時に大きく下がってもこの距離ならばライダーのスキルで詰められてしまうし、もしその分で硬直する時間があれば隙を無駄に見せる事になってしまう。

 

「……つくづくここが屋内でなくてよかったと思うよ」

 

屋内ならば壁がある、これだけ連続して攻撃されていたら壁まで追い詰められていただろう。そうなれば自由に動けずライダーの攻撃をもっと早くに受けてこのような場面にはなっていなかったかもしれない。

 

「フンッ!!」

 

前蹴りが迫ってくる、後ろに下がっても良いがこの勢いのまま踏み込んでくるだろう、それならば刀で受け流したほうが良い。

 

「かっ!!」

 

刀で受け流して距離を読んでみる、後ろに下がった場合は拳ならば十分だ、蹴りならばその後の動きを悪手にしないように心がけないといけない。

とは言っても今この時間まで延々とこれだけの連続攻撃を仕掛けているのだから、そろそろこっちの希望の攻撃が来てもいいはずだろうとは思う。

 

「オラッ!!」

 

そう思っていたらライダーが顔面を狙うためか、ようやく息が苦しくなってきたのか、こっちが待ち望んでいた一撃を繰り出してくる。

顔面ないし急所を壊すための大振りな一撃、ここを逃したとしてまた待ち続けるわけには行かない、オレは拳を避ける体勢に入った。

 

「はっ!!」

 

首を僅かに動かして迫ってくるライダーの拳を避ける、体を大きく動かしてしまったら防御する時間を相手に与えてしまう事になるからだ。

拳を避けきった分、ライダーの霊核を貫くための場所が無防備に晒されている、あれだけの痛手を負っても倒れないのであればこの場所を破壊する以外にもはや手立ては無い。

 

「ちっ!!」

 

ライダーが舌打ちをするがもう遅い、このまま霊核へ向かって一直線に突きを繰り出す、それでこの戦いが終わる。

そうオレは思い力をこめて一撃を放った。

 

「二回も急所に当てさせるかよ!!」

 

オレが霊核へ突きを放った直後そう言って必死の形相でライダーは体を捻っていく、直線状に放たれた拳は横なぎにオレの顔に襲い掛かってきていた。

オレは当たらないように速く頭を下げて回避していく、手ごたえを僅かに感じながらその拳が通り過ぎるまで頭をかがめておく。

 

オレ自身がこの攻撃を避けていたとしてもライダーへの攻撃が思い通りの箇所へ成功しているかどうかが重要だ、オレは頭を上げると同時にどの箇所に突きが刺さったのかを確かめるのだった。

 

「くそっ……捻ったから逸れてしまったのか」

 

ライダーが捻った分、体の位置が変わり突きは霊核ではなくその前にある肩へと突き刺さっている。

霊核でなかったのは残念だがこのまま上に斬ればライダーの腕は使い物にならなくなる、これでさらに磐石なものにしていけばいいんだ。

 

「…それはさせねえよ、今度はお前が堅実さを捨てたみたいだな

別に霊核を狙わなくても俺の体を斬る事はできたのに突きを使うなんてよ」

 

しかし肩の筋肉が斬ろうとする刀を締め付けているのだろうか、刀がうまく上に上がらない。

 

抜いて体勢を立て直そうとすると腕が握りつぶされるようなほど強い力を感じる、よく見てみるとライダーが真剣な顔に笑みを浮かべながら両手で必死にオレの腕を掴んでいた。

 

片手だけの力は肩に攻撃を加えているから楽なのだが両手となるとやはり辛いものがある。

現に振りほどくことも刀を力任せに引き抜く事もできない、そしてライダーはそのとてつもない力でオレを自分の方へと一気に引き寄せてきたのだ。

 

「なっ!?」

 

あれだけ腹から血が吹き出たし良い手応えまであったのにこんな強い力をまだ出せる、この事実には驚愕を覚えずにはいられない。

正直な所で言えばもう掴むのも困難なほど腹に痛みを感じているんじゃないかという予想をしていたくらいだ。

 

「せっかくお前の刀を封じたんだ、もう離さねえぜ……セイバー」

 

背筋が冷たくなる、今から繰り出されるだろうこいつの一撃をオレは受けきる事ができるだろうか?、オレはこいつの攻撃が終わった時まだ優位な立場でいられるのだろうか?

この状況をどのように対処するのかをオレは頭の中で必死に考えていた。

 

.

.

 

ようやく掴んだこの機会、切り裂かれた脇腹から血が吹き出ている、この機会を逃してもう一度身を斬られては勝ち目がなくなるだろう、速く全力で連続攻撃をするしかない。

 

「オラッ!!」

 

両手を掴み万力のような力で締め付けている、だからセイバーが逃げる事はできない、しかし俺も拳でセイバーを攻撃する事ができない、だったらどうするのか?

俺は鼻面めがけて勢いを付けた頭突きをセイバーに繰り出していた、拳や足だけが武器じゃねえ、この石頭だって立派なもんだ。

 

「ぐっ!!」

 

セイバーは首を動かして頭突きの軌道から逃れようとする、迫ってくる俺の石頭に恐れをなしたのか?

 

「でも、それだけでまったくの無傷というわけにはいかないだろ?」

 

よく見ると頬が僅かに切れている、頭の質量と風圧でやられたんだろうな。

俺は続けて前蹴りを腹に向かって放つ、引き寄せながら避けさせない速度で重さもある一撃、いくら頭が避けられるくらい動いても今の状況なら上半身はろくに動かせるわけが無い。

 

「ちっ!!」

 

セイバーが舌打ちをして前に踏み出してくる、こいつ一体どこまで冷静なんだ。

普通に今まで通りに後ろに下がって威力を殺すかと思ったら、前に突っ込んできて威力が乗る前につぶしに来るなんて。

お前と戦っていたら驚きがいっぱいだぜ。

 

「仕返しだ!!」

 

そう言うとセイバーの頭が顔にめり込んできた、こいつやっぱり速いな。

衝撃で一瞬腕の力が緩んでしまう、セイバーの刀が少し抜ける感覚があった、それで一気に意識を戻してセイバーの方を睨みもう一度掴みかかっていく。

 

「片方だけでも十分だ、今度は離さない……」

 

今度は片腕しかつかめなかった、でもこれを離さずに刀を抜かせない、その為にさっきとは違い片腕が自由になっているんだ。

 

「おら!!」

 

片手で引き寄せてもう片方の腕で殴りに行く、顔だろうが腹だろうが確実にダメージを与えていけばいい。

 

「かあっ!!」

 

左の頬に拳が当たる、振りぬかずにもう一発繰り出していく、セイバーはその隙に蹴りを繰り出して俺に攻撃を加えていこうとする。

大方蹴りで俺が飛んでいく勢いを活かして刀を引き抜く気だろう、さっきとは状況は違うが、抜くまでには絶対にお前の肋骨や足を折って痛い目にあわせてやるぜ。

 

「はっ!!」

 

俺は蹴りを使ってセイバーの足を壊しにいく、拳だけの単調な攻めでは蹴りを貰って抜かれてしまう可能性がある、それならば交えていって相手の対応を遅らせていく。

 

「ちっ!!」

 

しかし相手もさるものだ、こっちの蹴りに対しては前進をして勢いを殺すか、足を上げてきちんと防御をしている。

 

「そらっ!!」

 

しかもこっちよりも速い攻撃を繰り出してくる、蹴り以外にも時折刀を奪われる危険を犯しながら拳を突き出してくるし、距離が狭まればさっきのように頭突きを放ってくる。

 

「はぁ!!」

 

攻め合いならば負けられない、俺は持ち前の頑丈さであいつの攻撃を受けていく、そして腕力であいつに着実にプレッシャーとダメージを与えられるように情況を作り出す。

 

俺が今の段階でやれるのはさっきまであいつがやっていた様な事だ、このままこっちの攻撃を延々と受け続けていたらあいつは確実に劣勢になっていく。

そこからダメージを多く与えるために痺れを切らして何処かで防御を疎かにする時が絶対に来るだろう。

 

「しっ!!」

 

顔めがけて拳を突き出す、セイバーの奴にペースを渡すわけにはいかない。

上半身を攻める方がいいのだが、少しでも顔に当てておくかちらつかせて相手を揺さぶっていかなくては勝つ事は難しい。

 

「そんな顔面ばっかりだったら見え見えだぜ!!」

 

また平然と避けて蹴りを繰り出してくる、蹴り同士の相殺も下手をすれば刀が抜けるから防ぐ方へ徹さなくてはいけない。

 

「掴んでも依然気を抜けないっていやなものだな…」

 

冷や汗が伝うとか気持ちを張りつめて我慢比べって言うのはどうも性に合わない、単純に殴りあうとかいう方が俺は好きだ。

 

「てめえのせいで普段まったく使わないもん使わされてるんだぜ、セイバー!!」

 

速く終わらせてこの雰囲気や状況を消し飛ばしたい、そこで俺は一気に力強く踏み込んで顔面に拳を放っていく。

 

これを一気に振りぬいてしまえば威力や衝撃でセイバーの手が離れるから、そうなればこっちはセイバーの攻撃に気を使う必要は無くなる、そしてそのまま終わらせてしまえばいい。

この戦いに終止符が打てるように拳をさらに強く握り締めた。

 

「欲張りは痛い目を見るんだって事を学習しようぜ!!」

 

しかしそうは上手くいくものではなかった、セイバーがそう言うと同時に俺の拳を紙一重でよけてさらに俺の腹に前蹴りが入る、勢いが着いた分をカウンターで返されたからかなりの威力になっていた。

そのせいで俺は地面をこする形で後退していく、まだ確実に優勢といえる状況ではなかったんだから速く終わらせようなんて焦って前に踏み込むものじゃないな。

 

「セイバーの奴のアバラを折るつもりなのに折れてしまいそうだぜ…」

 

俺は痛みを噛み締めながら気を引き締めていく、どうやらさっきの蹴りでまた僅かではあるが刀が抜けたようだ。

俺の体勢もくの字になり気味で決して良くは無い、しかしこんなに劣勢で無防備な姿を晒したのが功を奏したのか、それを見たセイバーが一気に攻勢を強めようと腕を振り上げて勢いをつけようとしていた。

 

「おらあっ!!」

 

雄たけびを上げてセイバーが攻撃を始める、俺は微笑を見えないようにしていた、何故ならばようやくこの瞬間がやってきたからだ。

セイバーの腕は攻撃を始めて下がっていっているとはいえ、未だに無防備に脇腹を晒している。

ただ、やはり計算されている、こっちが首を動かして避ければ刀をもう一度両手で力強く掴んで蹴りを使い引き抜く気だろう。

それをさせない為にもこの重要な機会は喰らっても良いから絶対に逃すわけにはいかない、俺は力を込めて脇腹へ拳を放っていた。

 

「攻撃するのは良いけど……がら空きだぜ!!」

「がっ……!!」

 

俺の拳の一撃に気づいたセイバーは攻撃を止めて防御をしようするが、間に合わずに脇腹に俺の拳が突き刺さる。

セイバーが息を吐き出すと同時に最高の手応えが拳に感じられる、この戦いが始まってからようやく全力でぶち込めた拳だ、喜びもひとしおってもんだぜ。

 

「…いい加減返しやがれ!!」

 

セイバーが痛みで発する呻き声ではなく怒りの声を出して俺を蹴って後退させる、そしてその勢いを活かして一気に刀を引き抜く。

 

刀を奪うために肋骨が犠牲になってしまったのは辛い筈だ、なんせ肋骨の折れた本数が手ごたえから考えて一本や二本とは違う。

もしこれが効いていないのならば、もうセイバーを倒すには霊核にヒビを入れて壊すしかない。

 

「ぐぐっ……」

 

苦しい表情を見せないようにするが無理ってもんだ、肋骨が折れたんだから踏み込んだり腰を捻ったりといった行動に痛みが付きまとってくる、今だって動いたから痛みが体を駆け抜けたはずだ。

 

「おらっ!!」

「くっ…そんなの貰うわけないだろ!!」

 

俺は接近してセイバーの機動力を奪うために足へ蹴りを繰り出す、しかしセイバーの奴は痛みを堪えて蹴りを避けやがった。

まさかあれだけ折られてるのに痛みを押さえつけるってのは恐れ入るぜ。

ここで蹴りが当たっていたらそのまま足を圧し折ってさらに戦力は削ぐ事ができたのに残念だ。

 

「なんとかこれでお前の射程からは逃れたぜ、ライダー」

 

セイバーは俺の蹴りを避けるとそのまま大きく後退をしていき息を荒げてこっちに言葉を発してきた。

刀を構えて迎撃する準備は万端にしている、俺はその姿を見て苦笑いしながらセイバーに向かって一言言ってやる。

 

「まあ、お前の射程からも外れたけどな、セイバー」

 

俺のけりや拳が届かない分、あいつの刀も俺には届かない、結局はまた接近しあって攻撃を繰り出していく事になる。

 

お互いの距離が開き射程から離れて互いに三回目となる次の激突に備えていく、きっと終わりはもうすぐだろう。

 

俺達がこんな戦いをしているがマスター同士の戦いはどうなっているのだろうか、それだけが気がかりだった。

 

.

.

 

「川神流奥義『大車輪』!!」

 

ウチが薬を飲んだのにびびったのか相手が攻撃を仕掛けてきやがる、見た感じは薙刀と一緒に回ってこっちに向かってきやがる大技だ。

この場面で使ってくるって事は確かに攻撃そのものは速いし勝つ事ができる技なのかも知れねえ、でも今のウチにはあまりにも遅く感じてしまう、ウチは笑ってその攻撃に対応する事にした。

 

「ウチの目には止まって見えんだよ!!」

 

ゴルフクラブでさっきまでなら受け流してたが今なら完璧に見切ってこいつの攻撃を最低限の動きで避ける事ができる、この状態なら横にちょいと動けばそれだけでおしまいだ、簡単なもんだぜ。

 

迫ってくるが今の間にゴルフクラブを振り上げておく、着地と同時に叩き込んで驚かせてやんよ。

まあ、先にこんな少しの動きで避けられた事に驚いちまうんだろうけどな!

 

「はああああっ!!」

 

雄たけびを上げて着地をしていく、手応えが無いからうちが避けたのは分かっているはずだ。

ここだよ、きょろきょろ見渡してるがお前の真横にいるんだぜ、横を向いたな。

そのまま顔をこっちに向けてみろよ、面白いもんが見れるぜ。

 

「なっ!?」

 

ウチを見つけた相手は驚いて体が一瞬硬直しやがった、本当にこっちの想像通りの反応してくれやがって笑っちまうぜ、笑わせてくれた分きっちりとお返ししねえとな、受け取ってくれや!!

 

「折れちまいなぁ!!」

 

がら空きな足をゴルフクラブで思い切り叩いてやる、そのまま振り切ってマスターの足を壊しながら一気に決めるためにふっ飛ばしていく。

思ったより技が速かったのはびっくりしたがさっきまでのウチでも無かったらそんなもんはあたらねえよ。

 

「これでてめえの足は折れてるはずだ、痛いだろ」

 

ウチは笑顔でマスターにいってやる、ここまでやられたら精神って奴が参っているはずだ、そう思って距離をとりながら顔を覗いてやる。

 

「痛いけど、まだ腱が切れたわけじゃないし薙刀を少し支えにすれば問題ないわ……」

 

すると相手のマスターがまだ負けを認めないって顔でこっちを見ながら、膝を付かずに片足と薙刀で巧い事立ちやがる。

むかつく顔しやがってこうなったら両足をきっちり折ってやるぜ、お前じゃウチには勝てないって事を教えてやんよ。

ウチはゴルフクラブを構えて、にやりと笑ったままどのように相手を壊してやろうかと頭に思い浮かべる。

 

「芋虫みてえに這いずる事しかできねえ様にしてやるか」

 

ウチは相手のマスターに接近する、足はヒビが入ってるんだしこのまま腕と一緒に折っちまえば芋虫みたいになる。

それを好き放題滅多打ちにすればストレス解消にもなるし面白いだろう、そう思って足に力を入れてウチはテンションをあげながら近づいていくのだった。

 

.

.

 

全員の戦いは最終局面が刻一刻と近づいている。

 

セイバーは肋骨が折られる一撃を見舞われた。

ライダーは腹部を大きく切り裂かれて意識が朦朧としてきている。

 

ライダーのマスターは足にヒビが入って戦いに支障をきたしている。

セイバーのマスターはそんなライダーのマスターへ止めを刺すために向かっていく。

 

この戦いの最高潮(クライマックス)まであと僅かだろう。

終わった時に立っているのはいったいどちらの陣営なのだろうか。

聖杯は決着を今か今かと待ちわびるように強く輝きを放っていた。




最後の部分となると文字数が安定してません。
とりあえず早くに後編を書いて戦闘部分を終了させる事にいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。