次が最終回の予定です。
あれからオレはライダーの射程距離から離れて刀を構えなおして、再びこちらに流れを引き寄せるために足へ力を込めていく。
肋骨が折れたせいでちくちくと痛みがはしってくる、マスターは優勢な中こっちは互角ってのはいただけないな。
「お前との勝負にそろそろ決着をつけないといけないな、ライダー」
踏み込む前に決意のようなものを呟いて気合を入れる、痛みを我慢するという事も含めた行動だ。
「こっちも同じ事を考えていたぞ、セイバー」
ライダーは腕を顔の前に持っていって防御の構えを取る、多分これは形だけのものだろう、片手で白刃取りなんてものは普通はできない。
さっきまでの殴り合いから刀以外のものを警戒している場合もあるが、流石にお前の土俵で何度も戦う気は無い。
オレは刀で攻撃をして、お前の間合いに入らないように戦っていく。
そして突き刺す攻撃をやめる、お前にもう掴ませるつもりは無い。
「確実に勝つ為にお前の勝ち目を失くしていくだけだぜ!!」
踏み込んで斬撃を繰り出す、狙うのは突き刺した事であまり動かない肩の方だ。
死角となった場所からの対応はどうがんばっても一拍遅れてしまう、このような戦いではそれは致命的となる。
「はっ!!」
ライダーは息を吐き出し勢いよく体を捻って避ける、追撃をしようにも無茶な動きはこちらにとっても良い事ではない。
「しゃら!!」
捻った勢いを活かしてライダーが頭をめがけて回し蹴りを放ってくる、さっきの斬撃のせいで腕を上げて防ぐ事はできない、頭を屈めて避けるのが精一杯だ。
「ふっ!!」
頭の上を足が通り過ぎていく、速度が乗っていたのか風を切る音が聞こえていた、もし当たっていたら意識を失っていただろう。
掠ったりも無く冷静に対処できてよかった、今居る距離も近接といえるようなものではないからライダーの追撃に注意を払うことは無い、オレは冷静に距離を開いて構えなおした。
「ちっ、避けたか」
舌打ちをしてライダーが言ってくる。
そんな大きな攻撃を何度も食らうほどこっちも間抜けじゃないからな、避けて自分の距離を保つ事に専念する。
二度とお前にペースを掴ませるような真似はしない、お前の攻撃も防御もうまく捌いて何もさせないようにしてやる。
「でも、今のお前さんに素早い動きはできねえ、追い詰める事は難しくないだろ」
血は流れているがあのやり取りで気を持ちなおしたのか、鋭い眼光を放ちながらそう言ってくる
ライダーの言葉に苦笑いで返す。
後で下がってしまうデメリットはあるけれどこいつは強化できる分こちらとの差を多少埋められるからな。
ただ、それを使うにしてもコンディションとしてはあいつの方が悪いだろう、いくら強化をした所で意識が朦朧とし始めている以上完全な効力は発揮できないはずだ、そんな状況でやすやすとオレは捕まえられない。
とは言ってもこっちだって肋骨の痛みで激しく動いたりは難しく、少し深く呼吸をするだけでもちくりとする。
だからこそ油断をせずに戦い続けなくてはいけなかった。
「……」
無言でじりじりと間合いをつめてくるライダー、刀の距離を考えての接近なのだろう、ぎりぎりまで接近してから一気に詰めて殴ってくるはずだ。
「でもその前にこちらが踏み込んだらそれは意味がなくなって痛手を負うけどな」
その踏み込みに合わせて斬撃を放てば良い、今までのやり取りでもあったが相手の攻め気をうまく利用して一層強い攻撃を加える。
それを成功させてきたからこそ今のこの状況が生まれている、とはいっても自分も攻め気をうまく使われて肋骨がやられたのが少し残念ではあるが。
「来れるものなら来いよ、ライダー……」
構えて息を整える、僅かな動きも見逃さないように集中力を高めるのだった。
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「とりあえず攻めてから物事は考えるか」
じりじりと間合いを詰めながらセイバーの策について考える、何も仕掛けないというのも考えられるが警戒はしておくに越したことは無い。
花火による目くらましもまだ手としてあるし、こっちが猪みたいに突っ込んだらまた痛い目を見るだろう。
じりじりと突っ込んでいきギリギリの所でフェイントを仕掛ける、突っ込むと見せかけて刀を振り下ろしきった所にぶち込みにいく。
「うまくいくといいけどな、こういうのより単純な比べ合いの方が楽だ」
駆け引きとかそんなのはやりたくは無い、ましてや男となんざなおさらだ。
女と心を読んで言葉とか引き出しあったりする方ならやってみたいって思うけどな。
「おらぁ!!」
一気に大きな声と同時に勢い良く振り下ろされていく、僅かに後退をして間合いを取りに行く、この一撃を避ければ懐までは一直線だ。
「しゃあ!!」
避け切った、これでこっちは大きなチャンスを手に入れた事になる、流石にこのシチュエーションならば拳が当たる、そう思って逆の方の脇腹に向かって拳を放ちにいこうとした。
しかし次の瞬間背筋を冷たいものが走り向けていく、俺はその原因であろうセイバーを見て刀の行方を目で追っていく。
すると振り下ろされていたはずの刀が途中で止まっていたのが分かった、そしてその刀を持つ腕が一気に動き始めて、当たるであろう俺の一撃を牽制するようにその一撃は放たれていた。
「ふっ!!」
息を吐き出しながら、鯉が滝を昇るようにまっすぐに上へと俺の喉から頭をを切り裂く斬撃が襲い掛かる。
仰け反る様に回避して難を逃れたがこういった間合いとか考えてのやり取りは、やっぱりこいつの方が一枚上手みたいだな。
「今、確実に刀を振り切ったと思ったのによ……」
正直そう思えたからこっちも攻撃をしたのだ、フェイントに対してフェイントを交えて攻撃をするなんて普通は無いものだと思ってたんだけどな。
「何もしてこない訳が無いと思っていたんだよ、そんなじりじりと動いて間合いに入ってる状態なのに探るようにしてたらばればれだ」
そういってちゃっかりと距離をとって構えるセイバー、少しでも綻ぶような状況があれば勝てるんだろうけどな。
「無いものねだりとかしてる場合じゃねーな」
もう一回攻撃するために俺は構えて相手の間合いに注意深く近づいていくのだった。
しかし次の瞬間目を覆ったのは大きな火花だった、再びセイバーの技術が放たれるのだっ
た。
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「さて、勘が鈍ってたら良いんだが……」
そういってオレは石を拾い上げて今のライダーの勘を試すために投げつけてみる、これで防いだらその時は砂を巻き上げたり、もう一回石を投げるなどして気配を感じ取る集中力をそいでやる。
「ラァッ!!」
拳を突き出して石を割っていくライダー、これで今のライダーの勘を探る事はできた、相変わらず冴え渡っている、面倒なものだ。
「でもこれならどうだ、騒音で足音も探る事ができなくなったら流石のお前でも無理だろ?」
そういってオレは爆竹を取り出して握り締める、さらに拾い上げた石を投げる構えをして俺を感知できないように準備を整える。
オレは足音を聞かれないように、そしてライダーに大きなダメージを与える為に一つの手を打つ、その準備として足に力を込める。
万全を期しておけば攻め気を感じ取られても痛い目を見る可能性は少ない、ましてや今の距
離から考えれば失敗したとしても、こちらは大きな精神的アドバンテージはもらえる。
ライダーがこの方法を警戒して攻めを緩めたら失敗しても十分価値はあるものとなる。
「それっ!!」
そう言って爆竹に火をつけてライダーの足元より手前に滑らせていく、石を顔面付近に投げて爆竹の方に意識をいかせないようにする、そして投げた石がライダーへと迫る瞬間にオレは飛び上がった。
「また石かよ、ふざけ…!?」
怒りをあらわにした声でライダーは石を砕く、だが次の瞬間言い終わるよりも先にけたたましい音が鳴り響いていく、爆竹の音に顔をしかめていくライダー。
三半規管までいかれていたらバランスを崩すんだが、流石にそんな都合のいい事は起こらな
いよな。
「それでもこいつで終わりだ……」
狙うは脳天。
飛び上がっていたオレは落下の勢いをそのままライダーに突き刺しに行く、これが当たればこの戦いは終わる。
しかしここでライダーがここで計算外の行動をし始めていた。
「ふっ!!」
こんな土壇場でまた勘が働いたのだろうか。
ライダーが息を吐き出しながら頭を振って僅かに脳天から軌道がそれる、一目も上を見ずに避けるなんて驚きだ。
鋭い勘があったにしてもことごとくそれが良い方向へ作用するとはどこまで運がいいのか、腹が立ってくる。
しかしどうあってもこのまま落下していくだけだ、そのあとに距離を取って射程から離れれば良い。
「はあっ!!」
その決意をしたオレは構わずに落下してライダーのこめかみから頬にかけて大きく縦に切り裂いてゆく。
刀に赤い血を纏わせながらオレは着地をして、予定通りそのまま距離を取る為転がっていく。
「があっ!!」
ライダーが叫ぶと同時に、転がった先の横を大砲の弾が通り過ぎたかのような錯覚に見舞われる。
風圧まで感じる所を見るととてつもない蹴りを放ってきたんだろう、もし突っ込む形の斬撃ならば当たっていたかもしれない。
「こっちの攻撃を食らってでも相打ちにしてくるか、流石にいい加減倒れてくれないかな…」
溜息をついてライダーを見ながらこっちは追撃の用意をする、こめかみから流れる血が目に入った瞬間が勝負だ。
息を吸い込み、つま先に力を入れて決定的な隙ができるその瞬間を今か今かと待ち望む。
「……くっ!!」
待っていて、力を入れた足へ靴越しに砂利が食い込んで痛みを覚えた時、ライダーのこめかみから垂れ落ちる血が目に入ろうとしていた。
しかしその次の瞬間、ライダーが拳でその血を拭って目に入るのを防ぐ。
残念ながら目に入りはしなかったものの、その一瞬を見てオレは好機と取り、一気に懐めがけて踏み込んでいく。
オレは踏み込む最中に頭の片隅でマスター達の勝負の事を考えていた、目を向ける事も許されない状況だから尚更どうなっているのかを考えてしまう。
一体どちらが優勢なのだろうか、危ない展開になっていないだろうか。
それがオレにとっては気がかりな事だった。
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「ぐっ……」
私は足を引きずりながらも相手の攻撃を何とかやり過ごしていた、相手は大振りで私に止めを刺そうとしてくるのでそれが私を救ってくれていた。
「くそっ、チョロチョロ逃げてんじゃねえよ!!」
空振ってよろけながらもセイバーのマスターが怒って言葉を放つ、そんな簡単に無防備に喰らうほど私も馬鹿じゃないわよ。
「こっちが攻撃をしないと思ったら大間違いよ!!」
振り子のように大きく体を揺らしてその勢いを活かして攻撃を放つ、自分の体が完全な状態ならこの場面で『大車輪』を放って勝負をかけるが、片足のダメージは深刻なものでそれは難しい。
「だからそんなもんは通用しねえんだよ!!」
セイバーのマスターが薙刀の柄を蹴ってこっちの攻撃を止めてくる、その蹴られた時の威力で押し戻された事を利用してこっちは一つの奥義を繰り出す。
「川神流奥義『蛇屠り』!!」
地を這うような一撃、足を薙刀で払う技だ。
バーサーカーの時にも使った技が久々に火を噴く。
「くそがっ!!」
蹴って流した分、相手の足の動きに遅れが生じているのが分かる、セイバーのマスターの動きを止めないと今の押された状況はどうもできない。
事実、セイバーのマスターに攻撃が当たり足へ大きくダメージを与える事ができた、私のようにヒビや折れたりしているわけではないが多少の機動力は削れただろう。
「もう一発といきたいけど……」
追撃を考えるけども相手の目のぎらつきがこっちに対して危機感を抱かせる、私は一旦止まって冷静に相手を見てみた。
すると次の瞬間飛び上がって頭へとゴルフクラブを振り下ろしてくるセイバーのマスターの姿があった。
「わわっ!!」
私は転がって距離をとって薙刀で再び支えて立ち上がっていた。
深くない傷とはいえあんなにも軽快に動けるなんて、飲んでいた薬の力は凄いみたいね。
「やってくれるじゃねえか、でもそんな状態だったらウチにはかてねえよ」
にやりとして獰猛な笑みで私を見てくる、そういって腕を掲げて令呪を見せてくる、ここで奥の手を使ってくるってわけね。
「このまま、うちもセイバーも両方全部出し尽くして終わらせるだけだぜぇ!!」
セイバーのマスターが息を吸い込んで大きな声で最後の令呪を使う、なぜ最後なのかわかったかといえば明らかに減っているのが見えたからだ。
「令呪によって命じる『己の全てを出し尽くせ』!!」
そういって眩いほどに令呪が光る、セイバーがどうなっているのか私には分からない。
でもこちらも同じ様にやらなくてはいけないというのは肌で感じ取っていた。
「…こっちもやるしかないわ、この勝負が最後だもの、出し惜しみはなし!!」
私も大きな声で令呪を使ってライダーに告げる、この場面で使わなければ負けてしまう事は分かっているからだ。
「ライダー、あなたを令呪で応援するわ!!、『全力で戦い抜いて』!!」
そういうと令呪が輝いていく、これで二回目の使用だ、私も頑張るからあなたも頑張ってという思いをこめる。
相手が再び攻撃を叩き込むためにゴルフクラブを構えて、睨みつけながらじりじりと近づいてくる。
私は気持ちを落ち着かせて相手を見る、正直相手が重点的に足を攻撃していたらこんなにも粘る事は出来ない。
相手が大振りの攻撃、もしくは頭を懲りずに狙ってきているからそれを避けているだけだ。
「いいからちゃんと頭を打たせろよ!!」
何度目になるかわからない頭部への攻撃を私は回避する。
相手が叫びながらこっちの回避に難癖を付けてくる、気持ちはわかるけど喰らったら負けるのに突っ立っているほど間抜けじゃない。
ただいつまでも避けてばかりじゃ勝てる訳がない、こちらから攻撃を食らわせないといけない。
相手に動揺があればこの状況は変わるかもしれない、しかしそんな簡単に起こるものではないだろう。
もしあるとすればサーヴァント同士の戦いが決着するか、または相手と私のどちらかがこの長期戦で出てくる疲れや緊張感で崩れていくぐらいだ。
そう考えながら相手から手痛い一撃を貰わないように動きに注目して構えるのだった。
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「お互い力が漲ってくるな、セイバー」
俺は大きく構えてにやりとしながら言ってやる、お互いの肉体の損傷による痛みや能力の減退はほとんどなくなったのだろう、完全に近い状態での仕切り直しってわけだ。
押し切る事も不可能ではないんだから、このまま今まで通りやっていけばいい、変に頭を捻ったらセイバーにやられちまうだろうからな。
「ああ、こうなれば決着が着くのも速いだろうさ、ライダー」
そう言ってお互いが駆け出す、かと思ったらセイバーがポケットに手を突っ込んでいた。
花火を取り出そうとするのを感づいて、ポケットから突っ込んでいた手を出した瞬間に蹴り飛ばしていく、まったく油断も隙も有ったもんじゃねえ。
「流石に今の場面でそれをやられたら負けちまうわ」
いくら能力が戻ったり痛みがなくなってきているとしても、今の仕切りなおしたような状況で目晦ましを食らっていきなり斬られたらその時点で主導権を握られて終わってしまう。
こっちとしてもそんなやられ方は嫌なもんだ。
「手が痺れるような蹴りを平然と放ちやがって……」
セイバーが苦い顔をしてこっちを見てくる。
軽い牽制程度の蹴りだったら意地でも取り落とさないだろうからな、確実に落とさせるにはそれくらいきつくしないと駄目だろ。
「小細工無しで斬るか殴られるかって言う単純な構造にしたんだ、付き合えよ」
さっきのように花火で優勢を取られたりしないように釘をさす、相手が刃物を持っているだけでも優位は相手側にある。
今の時点で言っておけば相手も警戒をして、花火を使ってさらに優位な状況に持ち込まれる可能性は格段に減っていく。
その言葉にセイバーも仕方ないと思ったのか構えてこっちの動きを注意深く見ている、自分から攻めてこないあたり慎重だな。
おおよそこっちの怪我が治ってどれだけの力で攻撃してくるかを知りたいんだろう、そしてあわよくばそれを避けてカウンターで切り裂いて流れを掴みに来る算段だ。
「攻めずにカウンターを狙っているなら……お望みどおりやってやるよ!!」
だったらその考えを根っこから壊してしまえば良い、受け止めても飛んでいくような一撃を避けられない速度で放てば目の色も変わって少しは意識が変わるだろ。
腕がうなりを上げて拳はセイバーを捕らえようとする、
「速くても狙いが見え見えなら避けられるもんだぜ、ライダー」
セイバーの奴はこっちの攻撃を読んでいたのだろうか、体勢を低くして拳を避ける。
しかし俺も今回は頭を使ってそこまで読んだ上で次の行動をしていた。
「顔ががら空きだぜ!!」
しかし腹の探りあいや読みあいはやはりセイバーに軍配は上がる。
その蹴りを急ブレーキをかけて止まってやり過ごす、次の瞬間脇腹から胸にかけて切り裂くつもりなのだろう、場所がちょうどそれを思わせるポジションだった。
「シャアッ!!!」
予想通り鋭い軌道を描いてセイバーが攻撃をしてくる、それに対する処理は交代をして浅く済ませるだけだ、無理やりな避け方なら痛い目を見る可能性も十分にある。
「ちっ!!」
こっちが下がったのを見てセイバーは悔しそうな表情をする、タイミングが良かったのに回避されたのがそんなに嫌だったか。
「今度はそっちが隙だらけだぜ!!」
細かく当ててセイバーに僅かでもダメージを与えていく、刀の一撃で戦況をひっくり返される事を考えれば大振りでもいい。
しかしまだセイバーの刀の位置が振り下ろせる場所にある、そう考えるとさっきまでいいように相手にされている為少し慎重になってしまう。
自分らしくはないが仕方がないとも言えるだろう。
こっちの大振りを見計らっているのが見えてくるほど、セイバーは狙いすましていた。
「大振りしてこないのか……」
細かく当てている中、セイバーが呟く。
確かに大振りでもないとこちらが流れを掴むのは時間がかかるし、セイバーの刀の有利を吹き飛ばせはしない。
「何度も同じ轍を軽々しく踏む気はないぜ」
ただ、相手が痺れを切らしてきたらこっちの行動を無視して躍起になるだろう。
立場を逆転させる事を狙う、もしくは刀を即座に振り下ろせる距離で無くなった時にぶち込んで一気に引き寄せてやる。
「そうか、じゃあ…こういうのはどうだ?」
砂をこっちの目に向けて攻撃を仕掛けてくる際に巻き上げてきた。
セイバーの野郎こんな事までやってくるか、花火じゃなくても十分環境を利用しただけでペース掴めるじゃねえか。
「真正面から来て、やられにでも来たか!」
でもこっちだってそう簡単にやられるつもりは全く無い、俺はセイバーの顔面を狙って拳を勢いよく突き出していた、まともに当たったら流石のお前もやられるだろう。
「そんなわけないだろ、砂のせいで少しのろい攻撃になっているぜ」
胴から横へ真っ二つにするような勢いで斬撃を繰り出していく、こっちの攻撃を先んじて止めて攻撃をしてくるか。
「甘いんだよ、一回避けただけじゃ終わらせねえ、次にやるのは肋骨を砕いた拳より強い足での攻撃だぜ!!」
しかしそう簡単に俺も一撃を貰うつもりは無い。
振りぬいた後に筋力を総動員して強引に体勢を整えると、勢いよく体に回転を加えて相手の斬撃に対して同じ軌道の蹴りを放っていく。
そしてそのまま刀の軌道に合わさった蹴りがこっちの斬撃と衝突を起こす。
セイバーは手が痺れただろう、俺は足に斬り傷をつけて、その威力と勢いのまま後退していく。
「お前は全力の一撃が出せる距離なんじゃないのか?」
「まあ、そうだな…でもお前もだろ?」
お互いに思いがけない形で距離をとる事ができた、この距離から踏み込んでしまえば一気に相手に大きな痛手を負わせる事ができる、相手を倒せる最大のチャンス。
それを互いに感じ取ったのか令呪の恩恵を受けた二人も徐々に傷が付き始めていた、だからこそこの距離で互いは全力を尽くせる攻撃の構えを取る。
戦いの終止符を打つにはふさわしい全力の一撃のぶつけ合い。
俺は拳を握り締めて霊核に狙いを定める。
セイバーはバッティングフォームを彷彿とさせる構え方で俺を睨みつけて目をそらさないようにしていた。
俺はセイバーよりも先に動く為に足に力をこめていく。
そして次の瞬間、足に込めた力を解き放ち、セイバーに向かって弾丸のように飛び出していくのだった。
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「ようやく喰らいやがったな、まあ……頭じゃねえけど」
ウチは相手の足を押さえている姿を見て、やっとさっきまで避けられていた苛立ちを少しを晴らす事ができた。
「くっ……足を狙ってきたのね」
相手も流石に痛めていた足をやられて苦しいんだろう、片膝をつきながら汗を流して歯を食いしばって必死に立ち上がってくる。
「随分とてこずらせやがってこれで終わりだぜ、頭かち割ってやる」
ウチは相手の方に向かって歩いていく、散々逃げ回ってくれた分痛い思いしてもらおうと思ったが一発で終わらせてやる。
「来るなら来なさい、まだ戦えるわ」
相手が生意気な口を聞いてきやがる。
そんなにやられたいならやってやるよ、死んでも文句は抜かすなよ。
そう思って歩いていたら、いきなり気持ち悪さが押し寄せてきて震え始めた。
「なっ、体がうごかねえ……」
体が震えてまともに体が動こうとしない、一体ウチの体に何が起こっちまったんだ!?
目の前が霞んで気持ち悪くなっていた所に、立ち上がった相手がウチにこの状況を言ってきやがった。
「……あれだけ薬を飲んだらそうもなるわよ、簡単に強くなるなんてそんな事ないのよ!!
川神流奥義『大車輪』!!」
相手も驚いた顔をしながらウチが何でこうなったかを言ってくる、そしてウチとの勝負を終わらせる為に攻撃を仕掛けてきた。
薙刀を構えて大きく回転しながら突っ込んでくる、スローモーションに見えていたはずの技も今だったらぼんやりとした輪郭しか見えない。
くそっ、薬を飲んだからウチはこんな事になったのかよ……。
飲まなきゃよかったのかよ、でももう後悔してもこんなに近かったら意味ねえじゃん。
そう思いながら技を食らったウチは地面に体を打ちつける、衝撃が強くて背中にジンジンと痛みが広がっていた。
「ぐぅ……」
その攻撃の痛さと気持ち悪さが混ざってウチはそのまま指を動かす事もできずに目を閉じる事しかできなかった。
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突っ込んできたライダーに狙いを定めてオレは踏み込んで応戦しようとする。
「んっ?」
今足を踏み込む時に僅かな違和感を感じた、ほんの少し痙攣でもしたのかいつもより遅れているのが分かる。
しかし、このまま振り下ろしてこの戦いに終止符を打つ、令呪によってステータスが底上げされているから今、止めを刺すことはできるだろう。
「長かった戦いもこれで終わらせる!!」
そう言って次の瞬間、さっき感じた違和感がオレから勝利の可能性を奪う凶悪なものと変貌して襲い掛かってきた。
「なっ……!?」
オレの体が一瞬固まって僅かに対応が遅れる、ライダーの首をもう少しで取れると思っていた瞬間の硬直。
どうしてなのかはよく分かっていた、あそこに倒れている所から考えてマスターからの供給が一瞬止まってしまった。
それによってこんな大事な場面だというのに。
「俺の勝ちだ、セイバー!!」
そう言ったライダーの拳はオレの左胸を力いっぱいに殴りぬける、勝ち誇った面でそんな事をいうんじゃない、まだ倒れてないんだ、終わっているわけがないだろう。
「ふざけんじゃねえ!!」
オレはそれに一拍遅れる形となって思い切りライダーの胸を切り裂く。
いくら斬撃が放てても威力は魔力供給が途切れたせいで浅くなってしまっている、それに対してライダーの一撃は敗北を感じさせる手応えだった、きっと霊核に大きくひびが入っただろう。
貫かれたわけでもないから痛みを伴う事の無い消滅だ。
「おいおい、手応え有っても斬ってくるのかよ、結構深く切られたぜ、これ」
正直、貫くような考えは持ち合わせていなかったんだろう、ひたすらに殴って勝つという方法を取ろうとしていたのかもしれない。
最後に僅かに体さえ硬直しなかったらまだ刀で防いで長引いただろうし、頭から真っ二つにする斬撃だったから立場は逆になっていた可能性もあった。
「まだ…このまま終わるなんて思うなよ、花火があれ一つで終わりだとオレは言っていないぜ」
ずらりとオレは沢山の花火を服の裏地や袖から出していく、今からでも決して遅くは無い。
花火と刀で最後に玉砕覚悟の戦いをしてライダーに目に物を見せてやる、まだ消えるには時間もある、何より諦められる状況ではない。
たとえ相手が頑丈でも一縷の望みを託すぐらいの価値はある。
「なにっ!?」
ライダーがこの光景を見て驚きの声を上げる。
初めてその飄々とした雰囲気を崩して、常に余裕を持っている顔を青ざめさせたな。
「これだけの花火の量だ、最後の手段を喰らって貰うぜ!!」
そう言ってオレは花火に火をつけて刀を構えてライダーを見据える。
こっちと相手はほとんど零距離だ、そんな中オレは最後の賭けに出る、相手のほうが大きくダメージを負えばこちらより速く消える可能性がある。
そう思ったからこそオレは仕掛けていった。
「ぐっ……」
ライダーが呻いてじりじりと後退をしながらやり過ごそうとしている、しかし花火が発する熱や縦横無尽に飛び交う軌道のせいで思うように動けないのだろう。
現にこちらに拳を振るおうとしたら花火が顔面に当たってしまい、動きが止まってしまっていてこっちの動きへの対処が遅れていた。
「おらっ!!」
ライダーに向かって斬撃を繰り出していく、対処が一瞬遅くなっていた分、完全には避けきる事ができず、こっちに腕を斬られていた。
こっちにダメージがなくて相手にだけ攻撃を加える事が出来た事を、考えると捨て身の特攻としては悪くない展開かもしれない。
「お前の好きにさせるかよ!!」
低い蹴りをこちらに叩き込んできやがるライダー、反応しにくい攻撃だが後ろに踏み込む事でやり過ごす。
「そんな少し下がった程度で止まるわけねぇだろ!!」
蹴り足をそのまま踏み込む足にして再び距離を詰められる、そして拳を突き出している、もう一歩余計に下がらないとこいつの射程からは逃れられないか。
「始めの時を忘れたのか?、むやみに突っ込むものじゃねえぜ」
ただし煙のせいでこっちの姿が見えてないのか、今回は勘が働かないで僅かに顔から逸れていった。
動いてしまえばこいつの事だから察知しやがるかもしれない。
「忘れちゃいないがそうでもしねえと、警戒心の強いお前はやってこないだろうが」
煙の向こうからライダーの声が聞こえる、おおよそ苦笑いか目を凝らそうとして睨みつけてるだろう。
「お前の攻撃喰らったら刀の分の有利とか吹き飛ばされるからな」
率直な意見を言う、だって肋骨を問答無用でへし折るようなパンチを出す相手にこれ以上不利な間合いで付き合うメリットも理由もない。
「本当につれない奴だな、てめえはよ!!」
ライダーが轟音と同時に煙を吹き飛ばすような一撃を放ってくる、こういう一撃だけ出してくれるなら真正面で避けて斬りつけられる。
初めの時は紙一重でやり過ごしていたけど精神面が磨り減るのならやり易い方が良いに決まっている。
一撃を喰らえば致命傷に普通につながる、だからカウンターの戦法を取りながら花火や砂とか使ってやり過ごしていた。
「意外とそうでもないぜ、今の頭に血を上らせたお前なら真っ向からやれる」
だからこそ今の状態ならば真っ向勝負が出来る。
オレは屈んでその体勢から頭を上げる時に勢いを付けて突きを放っていた。
「お前の懐に潜り込めたぜ、これでお前の一撃の威力は半減したな、ライダー」
突きはライダーに避けられて、距離こそ開いてはいるがまだライダーの全力の攻撃が出来る距離ではない。
「言ってろ、威力は何とかして補うだけだ」
ライダーが構えてお互いの距離が縮んだまま、攻撃が始まった。
頬を掠める拳と引き換えに足を掠める斬撃、もしくは横薙ぎの蹴りに対する上から振り下ろす斬撃。
時々掠めるだけではとどまらず顔や脇腹に当たったり、浅いとはいえ斬り傷が付く場面も互いにあった。
決定打こそ生まれないがきっかけ一つでそれが生まれる、緊迫感が張り詰めるぎりぎりの戦いだった、
オレは消えていく実感を感じながらもライダーを斬りつけていく、お互いに決定的な一撃は生まれなかった。
しかしライダーは時折こっちの斬撃を避ける時に足をもつれさせて、喰らわないように何とか踏みとどまっている状況だった。
こちらはまだライダーの力に溢れた攻撃は刀の腹で受け止めたりする余裕さえあった。
「ずいぶんと疲れてるな、ライダー」
オーバーアクション気味で避けないといけないから無理もない、スキルかなにかしらも使っているだろうし、疲労度は肉体面と精神面共に大きなものとなってのしかかっているだろう。
「人に言える立場じゃねえだろ」
こっちに対してライダーが言ってくる、確かに人に言える立場ではないだろう。
疲労度こそライダーと大きく差はあるが危ない綱渡りをしているため、精神的には焦りが見え隠れしている。
「人に言う前に自分の体の事を頭に入れておきな!!」
笑いながら突っ込んでくる、最後も近いのにそんな簡単に隙を見せるような事をしていいのか?
いや、こいつのスタイルなんだろう。
結局隙を見せて痛い目に何度もあっているのにこの今までの戦いの間、ここぞというときはこのやり方だ。
唯一慎重になったのもオレとのこの最終決戦ぐらいだろう。
「オラァ!!」
拳を乱射してくる、どれも威力が高く捕まえれば何発も叩き込まれそのまま倒されてしまう。
しかしさっきも思ったがそんな大振りでやってて足をおろそかにしていたらバランスを崩す、この攻撃の次は足をもつれさせるはずだ。
「ほらな……ドンピシャだぜ!!」
予感していたとおり躍起になって連続攻撃を仕掛けたせいか、足がもつれてしまいこちらに大きな隙をライダーが見せる。
その瞬間狙い澄ましたようにオレはライダーの右肩から大きく斜めに切り裂くように斬撃を放っていた。
「グアアアッ!!」
右肩に刃が食い込んで手応えが伝わってくる、この一撃から反撃するなんて流石に無理だろう。
しかし次の瞬間、目を疑うような光景と耳を疑うような言葉をライダーは言い放っていた。
「腕が斬りおとされて無いならこのままぶち込んでやるだけだ!!」
こっちの予想を裏切り、ライダーは右肩へ刃が食い込んでいくのもお構い無しでこっちへ攻撃をしてくる。
血はポタポタと絶え間なく落ちていく、血が吹き上がるにはこのまま刀を振りぬかなくてはいけない。
こちらが刀を振りぬくと同時に血を吹き上げたライダーが放っていた拳が、腹に突き刺さり息が一瞬詰まりながら大きく吹っ飛んでいった。
互いが攻撃をもろに受けて吹っ飛ぶ。
オレは拳を腹に叩き込まれていた、ライダーは力一杯の斬撃を右肩に喰らいその勢いのままたたらを踏み、しばらくして背中から倒れこんでいった。
すぐにライダーは立ち上がってこっちへ攻撃を仕掛けてくる、こっちが腹の一撃で動きが鈍くなっているというのにこいつは速さが変わらない。
大方スキルか何かで衰えないようにしているんだろう、とはいっても腕や足自体からは血が流れている、いくら痛みを消したり運動機能を上げたところでその血は戻らない。
さっきのように殴り飛ばせる威力の攻撃を放つなんて左腕でしかできないだろう、そこをくぐればこっちの勝ちだ。
「シッ!!」
蹴りを放ってくるライダー。
いきなり拳で仕掛けてはこないだろうが、これも危ない一撃だ。
「ふっ!!」
蹴りを避けて刀の射程距離を保つ、ライダーは蹴りの連射で勢いを緩めることも無くこっちの一撃を遮断しようとする。
だがこの蹴りが止んだ時が一番隙が出来て切り裂く機会がやってくる。
「これには対応できねえだろ!!」
攻撃をやって終わらせられると思った矢先、砂が目に入って動きが止まる。
さっきやられた事をやり返してきやがったか、突っ込んでくるだけじゃなくてこんなマネをしてくるのは驚きだぜ。
そう感じた瞬間風を切る音が聞こえる、砂を払ってみると視界に入ったのはライダーの拳が唸りを上げて脇腹に向かってきていた。
この箇所はさっき肋骨をあらかた折られた場所の反対側、やられたら呼吸さえも辛くなるコースだった。
「もう一回折れていやがれ!!」
もう避けられないと悟った以上じたばたはできない、それならばライダーにとてつもない深手を負わせる斬撃を全力を込めて放つだけだろう。
「舐めるな!!」
大きな声で脇腹に拳が突き刺さると同時に胴から横に真っ二つにするような渾身の一撃をオレは放っていた。
脇腹に喰らって横に殴り飛ばされる、また肋骨が折れる鈍い感覚が広がっていた。
ライダーも血しぶきを上げるほどの大きな斬撃を喰らって下がっていき、オレの間合いから外れた場所で、今度こそ立ち上がれないように前のめりに倒れていった。
そしてようやくすべての煙が晴れていく。
お互いがこの数分の間のやりとりでどれほどのダメージを受けたのかがわかる。
オレは体中が火薬の火傷でダメージを負っていて刀を取り落としていた。
ライダーも渾身の斬撃を何度も受けていたからか、血を多く流しておりかなりのダメージを負っているのが分かる。
こっちに対して虚ろな目を向けたまま、膝をついた状態に体勢を変えて荒い息をついていた。
オレはごそごそと服やポケットに止めを刺せる分の花火が残っていないか探る、全てを使い切っていたのがしばらくして分かった。
その事実を受け止めてオレは苦笑いを浮かべる、もはや奥の手も何もかも尽きてしまった。
「……あの状況を最後まで耐えたか、ライダー」
血を俺より多く流しているライダーに対して言う、霊核にもう一押しとはいけなかったのが原因なのか。
意識は令呪を使う前のように朦朧とはしているがまだあと一押しの分のこちらに叩き込めるような力が残っているだろう。
「…流石に危なかったぜ、あんな奥の手を隠した状態だったなんてな…」
ライダーが言葉を絞り出してこちらの声にこたえる。
こんな姿を見ると惜しかったという実感がふつふつとわいてくる、出し惜しみをする事もなくもう少し早くにこの奥の手を使った方が良かったのかもしれない。
そうすればこの感じから考えるに結果は逆になっていただろう。
ただ何故か晴れ晴れとした爽快感が残っている、その時オレはアサシンが最後に残した言葉を思い返してみる。
この勝負は全てを出し切った上の敗北だった、もう花火もなければ刀もろくに握れやしない。
少し心残りさえあるがそれでもこれだけ派手に最後にやらかしたんだと思うと、オレは微笑を浮かべてこの二週間の戦いの思いを空に向かってつぶやいていた。
「この二週間は慌しかったけど本当に楽しい時間だった
赤の他人と化け物退治やったり、痺れ薬盛ったり頭使って大物取ったりとか普段じゃ出来ない事もできた
まあ、最後にお前に勝てたら言う事無しだったんだけどな
じゃあな…ライダー、お前の勝ちだよ」
そう言ってオレは光の粒となって消えていく。
消失に痛みはなく安らかな気持ちで。
眠りに付くようにオレは手を下げて目を瞑るのだった。
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こうして二週間近くにわたる戦いが終わった。
戦いの結果としては願いを持たなかった騎兵が勝者となった。
聖杯に願いを掲げるにはすべてのサーヴァントの消失を必要とする。
つまり今この瞬間、勝者が決まると同時にライダーとの別れの時間が訪れるのだった。
今回で全ての戦いが終わりました。
次回最終回ですが皆さんの協力なくしてはここまで書く事はできなかったでしょう。
今この場を借りて感謝の言葉を述べたいと思います。
youkeyさん
兵隊さん
りせっとさん
ユニバースさん
炎狼さん
うなぎパイさん
ありがとうございました。