『川神聖杯戦争』   作:勿忘草

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前後編に分けています。
次の回は少し間が空きます。


『動き出す影 前編』

全てのサーヴァントの召喚。

全てのマスターの参加表明。

この二つがなされた事によりようやく『聖杯戦争』が行われる。

 

そしてその闘争が始まって一番先に動いたのは……

アサシンのサーヴァント…霧夜王貴であった。

 

「で……これからどうするのだ?」

 

素朴な疑問を(オレ)は風間に問う。

こいつをマスターと呼ぶなど虫唾が走る、反吐が出る、令呪を使っても言ってやる

ものか。

 

そしてその疑問に対して風間のやつは当然といわんばかりに答えてきた。

 

「とりあえずは島津寮に行く、本拠地に戻って作戦会議だ」

 

それを聞いた瞬間、(オレ)は驚いていた。

その冷静な判断に。

そしてこれ以上ないほどの落胆を覚えた。

 

(オレ)の知る風間翔一はこうではない。

もっと無鉄砲で、もっと馬鹿で、そしてもっと(オレ)を楽しませる。

これでは凡百の塵芥と変わらんではないか。

俺は無意識のうちに歯軋りをしていた。

 

「そして少ししたら奇襲する、篭城だとか難しいことなんざ無し、決めるのは大雑把な作戦だけだ!!」

 

胸を張って笑みを浮かべながら言う。

先ほどとは打って変わって無鉄砲な意見が出たことに驚き(オレ)は指摘していた。

 

「キサマ、一旦戻るといったではないか、そんな事をするならば何故戻る必要が有る?」

 

篭城をするわけでもなく戻って少ししたら奇襲をかけるなど無駄の極みだ。

それならば機会を伺い、確実に倒す為に練りに練るのが道理であろうに。

 

「だって互いに別行動になったら帰れないとヤバイだろ?」

 

俺の意見に対して平然とした顔で言う。

まるでそれが当然だというように。

なるほどな、そういうことか。

それが理由ならば仕方有るまい。

それを聞いて(オレ)は自分の早とちりだった事に気づく。

 

どうやら先ほど感じたものは(オレ)の下らん勘違いだったようだ。

風間翔一は変わってなどいなかったのだ。

 

それを知って何故か頬が緩む。

 

しかしそれは(オレ)のプライドが許さなかった。

変わっていない風間翔一を見ただけでだらしなく頬を緩めるなど。

こいつの目の前で無様をさらすなどあってはならない。

(オレ)は必死に頬を引き締めていた。

 

「しかし一体どの塵芥を狙うのだ、風間?」

 

何とかいつもの顔に戻す事ができた(オレ)は誰を標的にするかを聞く。

 

「当然決まってるだろ、強い奴だ!!」

 

それを聞いて一瞬頭を押さえる。

こいつは一体何を言っているのだろうか。

(オレ)のクラスをちゃんと聞いていたのか?

アサシンだぞ、暗殺者だぞ。

真っ向勝負をしろと……

 

「貴様、いきなり(オレ)に本気を出せというのか?」

 

その質問に風間が頷く。

苛立ちを感じてしまう。

こいつはこの(オレ)を誰だと思っているのだ?

次の瞬間(オレ)は叫んでいた。

 

「つくづく厚顔な男だな、貴様は!!」

 

しかし怒りながらもその言葉に内心笑みを浮かべる。

強い奴と戦っても負けないという確信があるからこそ、この(オレ)に強敵を押し付けるといった真似をするのだ。

その通りだ、奇襲などなくとも(オレ)は勝てる。

クラスなど(オレ)からすれば下らぬ事、粗末なものに過ぎん。

所詮この(オレ)以外は塵芥だ、踏みにじり蹴散らしてくれる。

 

「悪いけど、『こうがん』ってどういう意味だ?」

 

全くこの男は……。

ため息をつくと同時に呆れてしまう。

 

「貴様は知らんで良い事だ、行くのだろう、案内をしろ」

 

説明ももはや面倒となり(オレ)は腕を組んだまま案内をするように言う。

すると風間の奴は唇を尖らせる、教えろという事なのだろう。

知るか、貴様自身の無知さを恨め。

きっと無知という言葉さえもその矮小な脳には詰まっていないだろうがな。

そんな事をやっている時間も惜しいのだというのに気づけ。

 

「ほら、速くしろ、もたもたするな」

 

そう言って(オレ)は風間をせかす。

顔を戻してようやく島津寮とやらに向かって歩き始めた。

どんな作戦が出るのだろうか。

せめて頭を悩ませずに済むようなものが出ることを(オレ)は心から願うのであった。

 

.

.

 

「それで…だ、どうゆう方向性で戦う? ワン子ちゃん?」

「んーっと、とりあえず『キャスター』や『アサシン』といった厄介な人たちからいこうと思ってるの」

 

俺の質問にきちんとした意見を述べるワン子ちゃん。

素直な子は良いね。

こういった受け答えが一番重要。

意思疎通が難しい奴と組んだらそこで躓いてしまい必ず『バースト』してしまう。

 

「ほぉ、んじゃ『セイバー』とか『ランサー』はどうする?」

 

俺は『三騎士』と呼ばれるサーヴァント達への対処について聞いてみる。

現状だけではなくこういった未来を見据えた質問をしておくことも必要だ。

ゆっくりのんびりとは言ったが……いずれは無視することが出来ない問題になる

 

 

「そこは『バーサーカー』の事を考えたら後回しなの、消耗させる事もできるし急がなくてもいいかなーって」

 

へぇー……猪突猛進なワン子ちゃんにしては随分まともな意見だな。

『バーサーカー』をどう扱うか、これは悩む。

基本ほっときゃ勝手に魔力が切れてくたばるだろうが、もし倒れなかった時は非

 

常にめんどくさい。

もし俺が優先して三騎士のクラスを倒したとしてもだ、その後の『バーサーカー』への対処をしっかり考えてなきゃ最悪の展開になる。

 

最悪の展開になった場合、俺の他に残ってるサーヴァントはバーサーカーを除けば『キャスター』と『アサシン』。

こうなってしまえば『暗殺者』と『最弱』なんかと手を組んでも意味がない。

三騎士と戦い疲弊している俺とあとの二人は瞬く間に蹂躙され『聖杯』を奪われてしまう。

それだけは避けなければ。

もしバーサーカーと戦うならば万全の状態でなければならない。

 

「良い考えだ。それで、その意見に沿って早速動くか?」

 

俺はワン子ちゃんの方へ振り向き、笑いながら問う。

するとワン子ちゃんは首を振って一言。

 

「今日は一旦自分たちの本拠地に戻りましょ、ねっ」

 

ワン子ちゃんの提案に俺は頷くと同時に心の中で口笛を吹いた。

これも悪くない判断だ、召喚されていきなり闘うのはよろしくない。

しっかり準備して闘うのがベストな選択。

 

俺は『ライダー』だ。

なので『騎乗』のスキルを活かせるような物を手に入れたい。

あと酒と摘みと良い女。

良い女はワン子ちゃんで妥協するとして、後の2つはモチベーションを保つために欲しい。

 

「そうだな、なら行こう。俺は霊体化してだが」

 

一言告げて俺は姿を消す。

理由は至極単純。

ワン子の本拠地と言えば川神院。

川神院が嫌なわけではない、嫌なのは川神百代。

強い奴に所構わず突っかかってくる生きるバーサーカーがあの場所に居る。

 

はっきり言って相手はしてられないので霊体になることで居ない振りをする。

幸い『サーヴァント』は飯も睡眠もいらない。

なら酒と摘みもいらないんじゃないかだって?

それとこれは別問題だ。

 

まぁただ単に隠れるぐらいなら楽なもんだ。

更に言えば川神百代は魑魅魍魎が嫌いだったはずだから、物を頭の上から落とす等の心霊現象を起こせばいい。

そうすりゃビビって向かってくることはなくなるだろう。

考えがまとまり俺は悪い笑みを浮かべながら、ワン子について行った。

 

.

.

 

「体が痛い……」

 

俺は顔をしかめて呟く。

マスターであるマルギッテさんから粛清を受けたのだ。

 

無防備な状態で喰らったのはトンファーキック。

俺は軽く吹き飛んだ。

距離にして考えれば3メートルほど。

どうにか起き上がるが体に少し痛みを残す事になっていた。

 

「されたくなければ次からマナーをきちんとする事と知りなさい」

 

悪びれる様子もなくマルギッテさんは言い放つ。

生憎ながら『この世界』のマルギッテさんには想いはない。

最初こそうろたえたが冷静になれば至極当然だ。

俺が愛してやまない人は『あの世界』のマルギッテさんだ。

決して『マルギッテ・エーベルバッハ』という一括りの人間ではない。

 

「そうですね、今後気をつけます」

 

少し棘のあるように言う。

アレはマナー以前に顔も見えない相手なのだから仕方ないのではないかと思う。

 

「それでは本拠地に向かいます、きちんとついてきなさい」

 

そう言って歩き出すマルギッテさん。

少し歩いて一度こちらに振り向く。

そして俺との距離を見て一言いって来た。

 

「その様な距離を取っていて大丈夫なのですか?」

「はい、数分したら駆けつけます」

 

俺はその言葉に即答する。

確かに今さっき言ったことは嘘ではない。

走った場合数分もあれば追いつける距離だからだ。

只、普通ならばマスターを守るべきである、そんな中で先に行ってくれと言った。

 

そして俺は人知れず下拵えをするために、霊体化をして『変態の橋』の下へと降りる。

するとそこでは余りにも醜悪なものがあった。

 

ホームレスの老人を殴っている男女が居た。

もはや老人はボロボロになっていた。

助けようとする前に老人は血を吐いて息絶えた。

 

罪悪感もなく笑っている中、俺は近づく。

そして頭を掴んで俺は『スキル』を発動した。

すると段々目の前で男女がドロドロに溶けていく。

 

まずは頭の皮が溶ける。

頭蓋が露出していく。

脳には行かずに腕を触る。

腕がどろりとして骨までも白い水のようになっていく。

最後には人同士の境目が無くなりどろりと一つの人のように二人が交わりあっていた。

完全に姿形もなくなる。

気力として吸収したという事だ。

 

俺は手をはたいてその場所から去っていくのだった。




少しグロテスクな部分を書いてみました。
こういうのが嫌いな人には申し訳有りません。
何かしらの指摘がありましたらメッセでお願いします。
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