『川神聖杯戦争』   作:勿忘草

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今回で一箇所の戦いは終わりです。
次回はもう一つの方をやって行こうと思います。


『王と爆発』

「ハァ……ハァ……」

 

あれから何分経っただろう。

体の節々が痛む。

息をすることさえも辛い。

防御結界を張れば拳で破られて。

こちらの一撃は軽々と受け止められる。

相手はつまらないと言うような顔でこちらを見ていた。

 

「もうお終いかしら?」

 

手を振りながらいってくる女。

速く来いと催促するように。

全部の力を出せというように。

それを完膚なきまで打ちのめしてやるという目をしてる。

 

「うがああああ!!」

 

吼えて進んでいく。

馬鹿の一つ覚えのように。

ただ愚直に、真っ直ぐに踏み込む。

それしかないのだ。

目指すところは懐。

相手の中心。

そこだけ狙う。

例えこの体が朽ちるとして。

例えこれから先戦えなくなるとして。

それだけは決して変わらない。

 

「よく吼えるわ、それこそが弱い証拠よ」

 

再び片手で受け止められる。

そのまま地面に叩きつける。

首が締め付けられる。

 

「もう飽きたわ……」

 

冷たい目で言い放つ女。

ごりごりと音を立てていく。

段々と頚動脈が閉まる。

血の巡りが悪くなり視界が白くなる。

 

「消えなさい」

 

最後に見える景色が青空となるのか。

嫌だと思ってももはや体が動かない。

このまま静かに朽ちるだけだ。

俺は目を閉じて空を見ることをやめた。

 

しかし次の瞬間拘束が緩む。

何故かは分からない。

足音が聞こえる。

その方向へと首を向けるとそこに居たのは二人。

その内の一人は傲岸不遜に微笑む男。

そしてもう一人はバンダナを付けた男……風間翔一だった。

 

.

.

 

風間の奴が橋の所で面白い事が起こっていると言っていた。

その理由は勘などというまったくもってわけのわからないものだった。

しかしこの寛大な(オレ)はその言葉を聞き入れてやった。

これで何も無ければありとあらゆる罵詈雑言をこいつに向かって吐いてやろうと決めていた。

 

しかし着いた時に目の前に映っていたのは言葉通りの場面であった。

ただ(オレ)としては面白みなどなかった。

 

髪の毛が馬の尻尾みたいになった奴が一方的に嬲られている。

見たところ嬲っているやつは(オレ)をとてつもなく不快にさせる女と瓜二つな奴だった。

こういった嬲ったりすることはこの(オレ)の専売特許だ。

 

「貴様ごときがこの(オレ)を差し置き一番首をとろうなどおこがましいわ」

 

(オレ)は手を前にやりその女を吹き飛ばす。

倒れていた男は息も絶え絶えにこちらを見る。

普段ならば慈悲をくれてやる所だが気が変わった。

 

今は目の前の女へ償わせるのが先だ。

あの女と瓜二つというだけでも反吐が出る。

あやつはこの(オレ)が殺さねばならん。

一度の死では生ぬるい。

この(オレ)の怒らせた価値は万死に値する。

 

「塵芥よ!!、この王の力、とくと思い知るが良い!!」

 

そう言って我はただ緩やかに。

威圧感を体に漲らせて女の方へと向かっていく。

 

女はその緩やかな動きに合わせて動く。

当然のごとくすぐに追いついて(オレ)の顔めがけて拳を振るう。

しかし(オレ)は掌を向けて女に向かって気力の衝撃波を出す。

女は吹き飛ばされそうになるのを堪える。

(オレ)としてはその動作で産まれる誤差の分だけあれば十分であった。

 

「先刻の奴と違い反動を有効活用したのだ、それに気づかんとはな!!」

 

衝撃波の反動で女から距離を取る。

攻撃が当たらずに苦い面をする。

愉快なものだ。

おおよそ簡単に勝てると思っていたのだろう、愚かな女だ。

 

あの倒れていた塵芥と(オレ)を一緒にするな。

近接が得意な奴は無茶をする。

 

しかしこの(オレ)は遠距離が得意だ。

無茶などしない。

 

いつも勝利の道を考えて緻密に繰り出す。

その過程で敵の苦痛に歪む顔を見て楽しむ。

そして最後はこちらが満面の笑みで勝利を掴む。

当然その笑みには相手を見下したような視線と苛立たせる雰囲気も加味されている。

 

「くっ!!」

 

相手が怒りをむき出しにこちらへ向かってくる。

愚かな事だ。

そんな足場にも気を使わぬ馬鹿な攻撃、風間でもできるぞ。

 

「跪け、女!!」

 

地面の方へと衝撃波を放つ。

地面にひびが入り女が躓く。

女は丁度片膝を付き(オレ)に傅く形となった。

 

「はあっ!!」

 

(オレ)はその傅いた位置にあった顔に向かって衝撃波を放つ。

睨みつける視線が気に入らぬ。

女が景気よく吹き飛ばされたのを見て笑みがこぼれる。

そして追撃の一撃を放とうとした次の瞬間であった。

 

「むっ?」

 

一瞬体に違和感を感じる。

体が少し重くなったような程度の感覚。

その理由を(オレ)はすぐに解明していた。

 

「いかんな、気の消費が激しすぎた」

 

(オレ)は反動による勢いが無くなってきている事に気づいた。

今まで反動を活かして避けてきたが次は無いだろう。

多分追いつかれて手痛い一撃を見舞うことになる。

後退する際にこの女の速度を考慮して衝撃波を大きくしてきたのだ。

それが知らず知らずのうちに消費する理由になっていたのだろう。

 

どうすれば良い?

このままではいずれ手痛い一撃を喰らう。

そうなれば機能が大きく低下するのは免れない。

 

そんな事を頭の中でぐるぐると考える。

すると倒れていた男が立ち上がり(オレ)のそばに歩み寄っていた。

そして(オレ)の前で屈辱的な言葉を一つ呟いたのであった。

 

.

.

 

「流石に逃げた方がいいんじゃないのか?」

 

俺はそう提案する。

理由はとても単純だ。

俺もこの男も限界が近い。

 

本来ならば一緒に逃げるメリットなんてものは無い。

しかし俺は助けてもらった。

脱落しそうな所を、まさに危機一髪の状況から助けられた。

この男からすればただの気まぐれだったかもしれない。

しかし一度そういう事をして貰ったということは返さなくてはいけない。

 

ただ、その提案をしたときの男の顔は凄まじいものだった。

正直背筋に冷たいものが走り抜ける。

 

自分のプライドとこの状況の危険度を天秤にかけている。

そして一拍置いた後に男は俺にこういってきた。

 

「貴様の言うとおり逃げるのではない、その逆だ

奴を逃がしてやろうではないか、寛大な処置をするのもまた(オレ)の素晴らしい所よ」

 

とりあえずここから退却するってことで良いんだな。

 

「じゃあ…やるか、せっかく作ったのに一日経たずに壊すってなんか嫌だけどな」

 

俺は詠唱を始める。

結界に一気に気力を送り始める。

結界の要領が越え始めているのを感じ取る。

これで準備は完了した。

後はあいつに追いつかれないように橋の出口に向かうだけ。

 

「さて……追いつかれるなよ」

「誰に向かって言っている、貴様ごときに心配される(オレ)ではないわ!!」

 

お互いに言葉を言い合って男と俺は走り始める。

相手の気配がじわりと大きくなってくるのを肌で感じる。

生死を賭けた追いかけっこが始まる。

 

「許さないわ、叩き潰してあげる!!」

 

怨嗟と怒りの入り混じった声で追ってくる。

速いのは認めるが……

 

「この状況で俺たちに向かって一直線に突っ切ってみろよ!!」

 

俺はそう言って指を鳴らす。

すると大気がうねる。

結界が光り次の瞬間……

 

「ぐわっ!!」

 

爆発を起こす。

炎と爆風で更に距離が開く。

それに振り向くことなく何度も何度も爆発させる。

延々と走り続けて出口に辿り着く頃には煙がもうもうと立ち上っていた。

 

「最後に大きな花火だぜ!!」

 

そう言って指を鳴らす。

すると出口を除いた橋全体が光り始める。

次の瞬間、橋を結界にしていた術式が発動して大爆発を起こした。

 

橋は壊れずに済むがとてつもなく気力を食う大技だ。

せっかく今まで食べてきた奴の分までお釈迦になってしまった。

 

俺は速くしなくてはいけないと思い橋の出口で男を抱える。

キャップとマルギッテさんもそこには居た。

マルギッテさんは今からする事が分かったのかうなづく。

キャップもその顔を見て微笑んでいた。

 

「今から二人とも俺たちの本拠地に来てくれ」

「なっ、貴様!! この(オレ)に気安く触るでないわ!!」

 

その反論も効かずに俺は本拠地へと転移する。

もはや男もここまできたら抵抗もしなかった。

最後だけ女の睨む視線が見える。

俺と男はざまあみろという顔でその顔を見返していた。

そして僅かに感じた視線の方向に向かって睨み返すのであった。

 

.

.

 

誰かに見られた感覚はあるがさっきの大爆発を思い出す。

 

「あんなの有りかよ……」

 

あの橋全体を結界にして爆発させる。

規模がでかすぎる。

あれに巻き込まれたら俺では勝てる気がまるでしない。

 

しかし後ろを振り向くと燕姉はなにかしら淡々とノートに書いていた。

 

「あの大規模な爆発から考えて結界と予測

つまりあのポニーテールのサーヴァントは『キャスター』と仮定する

そして途中乱入していた少年はきっと消去法から『アサシン』でしょ」

 

燕姉は対戦相手の情報を逐一まとめていた。

その速さにはやはり感心してしまう。

 

「しかしこれで大概相手の情報が割れたね

そして主な攻撃についても分かった

キャスターが『八極拳』

アサシンが『衝撃波』だ」

「そしてそれを相手取れるのはきっと『バーサーカー』だね」

 

俺が戦い方について言うと燕姉があの煙に包まれたサーヴァントを推理する。

これで今日一日だけで俺達は自分たちを含んだ四騎のサーヴァントの情報を手に入れた。

 

戦って肌で感じるのも良い。

でもこうやって作戦を立てて自分たちの戦い方を良く知った上で相手を選ぶのも決して悪くはない。

勝ちたければいかにずるく、賢く、強く見せるかだ。

相手を油断させた所で首を取るのもこの戦いでは正当化されるのだから。

 

「次からは弱点ついてこずるく楽しくやっていくよん!!」

 

燕姉が窓から見える月に向けて呟いていたのだった。




次回もしつこいですがバトル回です。
傍観決め込むのも戦法のうちという事でどうかお一つ……
何かご指摘などありましたらメッセでお願いします。
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