ロクでなし魔術講師と携帯獣使い   作:ゲームの住人

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 こんにちは、ゲームの住人です。
 本っっっ当に申し訳ありません!
今回でポケモンを出すとか言っていたのに出せませんでした………。
次の話と纏めて出しますのでどうかご容赦を……!


愚者

 結論。

 グレン先生の授業は有益どころではなかった。

 その手腕は今までのだらけきった授業は何だったんだと思える程で、おれ達はグレン先生の説明を一言一句漏らさず聞き、黒板にハイペースで書かれる文字を急いでノートに書き写した。

 

「……それで、ココは〜〜だから(くだん)の法則に従ってだな……」

 

 先生がそこまで説明していた時、授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。それを合図に、授業を行っていた先生の身体が弛緩する。

 

「あー疲れた……じゃ、今日はここまでー」

 

 そう言って、欠伸(あくび)を漏らしながら教室を出て行くグレン先生を見送っていると、フィーベルさんとティンジェルさんの話し声が聞こえてきた。

 

「驚いたわ……。まさかアイツにあんな授業ができたなんて……」

 

「そうだね、私も驚いちゃったよ」

 

 フィーベルさんが若干悔しそうな声で続ける。

 

「これは……認めざるを得ないわね…。アイツは魔術師としては三流だけど、講師としては……」

 

 一流だな。

 

 心の中でフィーベルさんのセリフを引き取る。

 グレン先生の授業は他の先生達とは全く違うものだった。おれが今まで受けてきた授業は、魔術を発動させる呪文を覚えるだけの、まるで「ただ暗記すれば良い」というかのような授業だった。しかし、グレン先生の授業は、その呪文が起こす現象の解説から何故(・・)その現象が起こるのかなど、今までの授業では語られなかった部分を丁寧に説明していく、本物の授業だった。

 

 これまでの授業では得る事が出来なかった知識をこれからは得る事が出来ると確信し、おれは自然と口角が緩むのを感じた。

 

 

 

 

 ダメ講師グレン覚醒事件から、数日が経った。あの日から三日もしないうちに先生の(うわさ)は学院中に知れ渡り、先生の授業を受けようと他のクラスから生徒達が潜り込んでくるようになった。中には立ち見する者もいる。

 

 おれが心配していたグレン先生とフィーベルさんの仲の悪さは、徐々に緩和しつつある。昨日はフィーベルさんとティンジェルさんが先生の荷物を運ぶのを手伝ってあげていた。グレン先生はフィーベルさんの事を『白猫』と勝手に命名したようだ。フィーベルさん本人は「人を動物扱いしないでください!」と怒っていたが、結構良いネーミングセンスだと思う。

 

 おれの周りの環境もちょっと変わった。グレン先生がおれに絡みに来るようになったのだ。なんでも、

 

「同年代の友人と話してるような感覚」

 

 がするらしい。そしてそこにフィーベルさんとティンジェルさんもやってくる。おかげでおれの周りはいつもわちゃわちゃしているが、嫌な感じは全くしない。

 

 もちろん、ゲームの事も忘れてはいない。昼間は学院で皆とわいわい過ごし、夜は家でゲームをする。うむ、完璧だ。

 そんな、充実した異世界学院生活(ハッピーライフ)(魔術を除けばほとんど前世と変わらない)が今日も始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう思っていたのに……!

 

 トイレの出口からこっそり顔を出すおれの視線の先には、教室の扉の前に(たたず)む二人の怪しい男がいた。この学院の講師達は皆支給されたローブを着ていた筈(約一名除外)なので、こいつらが学院側の人間じゃないのはすぐに分かった。

 

 正体が分からない以上、今トイレから出るのは危険だ。

 

 そう判断し、男達が教室の扉を開け、教室に入っていくのを固唾を呑んで見守る。それまでざわめいていた教室が静かになった。突然現れた正体不明の二人組に対する戸惑いがここまで伝わってくる。耳を澄ませていると、フィーベルさんの声が聞こえてきた。教室からトイレまでは遠いし、教室がまだ少しざわついているので何を言っているのかはよく聞こえないが、彼女の事だし、きっと「部外者は立ち入り禁止です、即刻立ち去って下さい」とでも言ってい       

 

 教室の中から紫色の光が(ほとばし)った。

 

「え」

 

 口から無意識のうちに声が漏れる。

 数秒後、クラスメイト達の悲鳴でおれは我に返った。しかし、すぐに悲鳴は止み、教室は完全な沈黙に包まれる。静かな教室の中から先程よりもはっきりと聞き覚えの無い声が聞こえてきた。

 

「次喋ったら殺すから」

 

 ……どうやら誰かが殺された訳ではなさそうだ。

 おれは安堵の息を吐きかけ、安堵出来る状況じゃない事を思い出す。教室の中の音に集中しながら、先程の魔術についても考える。

 

 おれは魔術に関する知識がそう多くないので予測の範囲がある程度限られてくるが、あの電光の色は恐らく【ショック・ボルト】系だろう。でも、クラスメイト達が今更【ショック・ボルト】程度で悲鳴を上げるとは考えにくい。となると、考えられるのは……

 

「軍用魔術【ライトニング・ピアス】か……?」

 

 【ライトニング・ピアス】とは、簡単に言うと【ショック・ボルト】の強化版みたいなやつで、壁に穴を空ける程の貫通力がある恐ろしい魔術だ。この魔術をマトモに喰らったら瀕死は確定だろう。

 

 おれが必死に頭を回転させている間、しばらくはテロリスト達の話し声が聞こえていたが、やがてテロリストの一人がティンジェルさんを連れて教室から出てきて、そのまま何処かへ連れて行ってしまった。追いかけるか迷ったが、あの二人を追いかけるには教室の前を通らなければならない。そして、あの教室にはもう一人のテロリストが残っている。でもこのままだとティンジェルさんが……!

 思考がパニックに(おちい)りかけたその時、もう一人のテロリストがフィーベルさんを連れて教室から出てきた。フィーベルさんは頑張って抵抗しているが、その抵抗も虚しくフィーベルさんも何処かへ連れて行かれてしまった。

 

 ………ん?教室に入っていった二人のうち一人はティンジェルさんを連れて出て行って、もう一人はフィーベルさんを連れて出て行ったって事は……。

 

 おれは急いで、しかしなるべく音を立てずに教室に駆け寄った。教室の中に居たクラスメイト達がおれを見て目を見開く。クラスメイト達は全員【スペル・シール】という魔術で魔術を封じられているようだ。

 

「こ、コル……!?お前今まで何処に……」

 

「トイレに行って戻ろうとしたら怪しい奴らがいたから隠れてたんだ。それより、フィーベルさんとティンジェルさんは何処に連れて行かれたか分かる?」

 

「す、すまん…そこまでは……」

 

 近くにいたカッシュの【スペル・シール】を解呪しながら教室を見渡すと、壁に穴が空いているのを発見する。どうやら【ライトニング・ピアス】で確定のようだ。

 そこまで考えて、今更ながらおれは大事な事に気が付いた。

 

「そういえば、グレン先生は?」

 

「……………」

 

 おれの言葉を聞いたカッシュは、顔をそっと(うつむ)かせた。他の生徒達も同様だ。中には涙さえ浮かべている者もいる。

 ……周りの反応を見れば答えは明らかだった。

 

「……そうか」

 

 取り乱すな。自分にそう言い聞かせ、溢れそうになる感情を押し留める。今は哀しむ時じゃない。精神年齢は皆より上なんだ。おれがしっかりしないと駄目だ!

 

 解呪を終えたカッシュに「他の人も解呪してやって」と言い残し、おれは急いで教室を出た。先生が居ない以上、テロリスト達はおれが何とかするしかない。

 人の気配を探りながら廊下を進む。広い廊下はしんと静まり返っていて、まるで世界におれだけ取り残されたかのようだ。自分の息遣いと制服が擦れる音だけが聞こえる。何か考え続けないと緊張と恐怖でおかしくなりそうだったので、自分の状態をゲーム風に纏めてみる事にした。

 

装備         アイテム

・制服(上)     ・3DS

・制服(下)     ・ハンカチ

・靴         ・財布

           

 

 ………うん、バリバリの初期装備だな。生き残れる気がしない。ハンカチがド○えもんのヒラ○マントだったら凄く助かるのに……。

 

 くだらない事を考えていたおかげか、パニックになりかけていた頭が少しずつ落ち着いていく。その頭でテロリスト対策を考える。

 相手は軍用魔術が使える程の実力者。対しておれはただの学生。真っ向勝負では確実に負ける。勝ち目があるとすれば不意打ち一択だろう。とはいえ、おれには一撃で相手を気絶させる程の威力がある魔術は使えない。どうしようか……。

 

 結局、不意打ちで【ショック・ボルト】を撃ち、敵が(しび)れている間に急いで接近、定期的に【ショック・ボルト】を撃ち込みながら気絶するまで殴り続けるという中々に野蛮な作戦になった。我ながら酷い作戦だと思ったが、こっちだって命が掛かっているから必死なのだ。

 ふと、澄ませていた耳が何かの音を拾った。

 

          ?」

 

 この声は………フィーベルさん?

 声を頼りに廊下を進んでいく。突き当たりで左右に別れている廊下の角で立ち止まり、曲がり角の先をそうっと覗く。誰も居ないことを確認してから歩き出す。その間にも声は聞こえてくる。

 

「ふざけ   私は      

 

「へぇ、   も、関係        

 

 フィーベルさんと何やら言い争っているのは、フィーベルさんを連れて行った奴で間違いなさそうだ。おれは警戒を強め、先程考えた作戦を脳内で何度も反復する。

 それにしても、二人は一体何を話しているのだろう?

 二人の声は段々大きくなってくる。おれが二人のいる場所に近づいてきているのだ。男の声が聞こえてくる。笑っているようだ。

 

「な、何が  の!?」

 

 フィーベルさんの心なしか怯えたような声が聞こえてくる。男が何かを喋っているが、声が低いので何と言っているのか聞き取りにくい。声は廊下の左側にある魔術実験室から聞こえてくる。扉まではまだ距離があるが、おれは神経を張り詰めながら、音を立てないように静かに扉へ向かう。

 

 その時、おれの頭にふっと嫌な予感がよぎった。もしかして、これって……。

 

「…めて……助けて……お父様…お母様ぁ……誰か………」

 

「けけけ、お前最高!そんじゃ、頂きまーす」

 

「嫌、嫌ぁああああああああ  ッ!誰かぁああ   ッ!!」

 

 その声が聞こえた瞬間、おれは目前まで接近していた扉に飛びつき、勢い良く扉を開けた。同時に部屋の中心に倒れているフィーベルさんと、彼女の上に跨ろうとしていた男が視界に入る。男がこちらを振り返るよりも速くおれはそいつに駆け寄り、勢いを乗せた拳で思いっきり殴り飛ばした。

 

「げふぁぁあああっ!」

 

 潰れたカエルのような声をあげながら倒れ込んだ男を油断なく見据えながらおれは後ろに倒れているフィーベルさんに声を掛ける。

 

「遅れてごめん」

 

       コル……?」

 

 後ろから聞こえてくる弱々しい声に胸が痛くなるが、今はこの男を無力化しなければいけない。

 おれは左手をテロリストに向け、先に殴ってしまったので当初の作戦とは順序が逆だが【ショック・ボルト】の呪文を唱える。

 

「《雷精のしで   

 

「《霧散せり》」

 

 パァンッ!

 

 だが、唱えようとした呪文は男が唱えた対抗呪文(カウンタースペル)によって打ち消されてしまう。更に  

 

「《ズドン》」

 

 男がこちらに指を向け、無造作に放った言葉で発動した【ライトニング・ピアス】が、おれの左肩を貫通した。

 

「がぁっ………!」

 

「コル!!」

 

 左肩に走る激痛に耐えきれず、思わず床に膝を着いてしまう。床に血が飛び散った。後ろから「コル!大丈夫!?コル!!」とフィーベルさんの泣きそうな声が聞こえてくるが、答えている余裕などない。目の前では、おれが与えたダメージから回復した敵が起き上がりつつあるからだ。

 

「おいおい、これからお楽しみって時に邪魔しやがってよ〜……」

 

チンピラのような軽い口調とは裏腹に、その瞳は氷のように冷たい光を(たた)えている。

 ……正直に言おう。おれはテロリスト達をナメていた。まさか、こんなに切り詰めた呪文を使えるなんて……。

 

 状況は最悪だ。敵は一人だが、極限まで切り詰めた呪文を使える程の実力者。対してこちらは二人だが、一人は魔術を封印され、ロープで身体を縛られている。もう一人、つまりおれは魔術を使用するのに必要な左腕をやられてしまった。不意打ちのチャンスを逃したのは仕方がない。あの時飛び出さなければフィーベルさんを助ける事はできなかったのだから。

 おれは痛みを(こら)え、ゆっくりと立ち上がる。

 

「お?ボク、まだやる気なの〜?頑張るね〜」

 

「駄目!逃げて!貴方じゃそいつには……!」

 

「…………」

 

 こうなったら、最初の作戦とは少し異なるが、敵の呪文をどうにかして回避し、接近して呪文を撃つ暇を与えずに無力化するしかない。捨て身の作戦だが、おれの頭じゃそれ以上に良い策なんて思い浮かばない。

 意を決して男の方に駆け出そうとした、その時。

 

 がちゃ。

 

 おれが勢いよく開けた反動で閉まっていた扉が間抜けな音を立てて開いた。入ってきたのは   

 

「ぐ、グレン先生…………!?」

 

「あれ?コル、お前なんでここに居るんだ?」

 

 呑気なことを言いながら部屋を何気なく見渡した先生の表情が、段々苦々しいものに変わっていく。

 

「……あー、そういう事ね。完全に理解した」

 

「て、テメェ何者だ!?」

 

 テロリストが放った言葉に先生は面倒くさそうに答えた。

 

「グレン=レーダス。非常勤講師だ」

 

「グレン=レーダスだとぉっ!?まさか、キャレルの奴が敗れたっていうのか!?アイツ程の魔術師が……!?」

 

 そうだ、大事な事を忘れていた……!

 しかし、おれが言おうとした事をフィーベルさんが先に言ってくれた。

 

「先生、気をつけて下さい!その男は呪文詠唱を極限まで切り詰めていま  

 

 しかし、フィーベルさんが言い終わるよりも早く、男が動いた。

 

「もう遅えよ!《ズドン》ッ!」

 

 しかし、男の呪文がグレン先生を貫く事は無かった。

 

「な、何……?《ズドン》ッ!《ズドン》ッ!」

 

 男が戸惑ったような顔をして、おれを見る。……いや、なんでおれを見るの?何もしてないよ?

 

 そこで先生に視線を向けると、先生が手に何か持っていた。あれは……カード、かな?

 男もそれに気付いたらしく、先生のカードを見て眉をひそめている。

 

「愚者の……アルカナ・タロー?何だよそれは」

 

「これは俺特性の魔道具だ」

 

 先生はカードをヒラヒラさせながら続けた。

 

「ま、詳しい事は面倒だから省くが、俺はコイツをチラッと見るだけで俺を中心とした一定効果領域内における魔術起動を完全封殺出来る。名前は……【愚者の世界】」

 

 な、何だって……!?それってもしかしなくても……。

 

「チートじゃん……」

 

「ちーと?」

 

 思わず呟いた言葉が聞こえたのか、フィーベルさんが首を傾げている気配がする。その声にハッとして、おれは急いで振り返り、フィーベルさんに声を掛ける。

 

「待ってて、すぐに解呪するから」

 

「で、でも、今は先生の固有魔術(オリジナル)で魔術が使えないんじゃ……」

 

 そうでした。

 

 心なしか呆れたような視線が飛んでくる。やめて!もうおれのライフはゼロよ!

 フィーベルさんの視線から逃れようと下を向くと、フィーベルさんの制服の前が切り裂かれているのが目に入ってしまった。光の速さで目を逸らし、着ていたブレザーを脱いでフィーベルさんに掛ける。ブレザーを脱ぐ時に左肩が酷く痛んだが、そんな事を気にしている場合ではない。

 

「ごめんこれ血が付いてるけど多分無いよりはマシだと思う」

 

 いつもより大分早口になってしまった。フィーベルさんは自分の格好を今頃意識したようで、若干恥ずかしそうな声で「あ……ありがと」とお礼を言ってくるが、それには答えず、おれはグレン先生とテロリストの戦いに意識を向けた。

 

 




本当はシスティーナが襲われてるところでポケモンを出そうと思っていたんですけど、そうするとグレン先生の出番が無くなっちゃうのでレイク辺りで出そうと思います。
あと、カウンタースペルの《霧散せり》について補足を。原作の一巻では《霧散せよ》になっていたのでそっちにしようと思ったんですが、八巻では《霧散せり》になっていたので《霧散せり》のほうを使う事にします。
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