今回でようやくポケモンを出す事ができました……!
これからはポケモンが沢山活躍すると思います。
ここまで長かった……。
グレン先生が部屋に入ってきてから、十分後。
「よし、これでいいだろ。全く、これだから魔術師の捕虜は扱いが厄介なんだ」
おれの目の前には、グレン先生の手によって
グレン先生は自分が生み出した惨状には目もくれず、おれとフィーベルさんの方に向き直った。
「さてと、お前達、大丈夫だったか?コルは大丈夫じゃなさそうだが……」
先生の視線はおれの左肩に向いている。今のおれはブレザーを脱いでシャツ一枚になっているのだが、出血量が思いのほか多く、白いシャツの左側は真っ赤に染まってしまっている。紅白だな。めでたくないけど。
「大丈夫ですよ。もう血は止まっていますし、フィーベルさんに【ライフ・アップ】掛けてもらいましたから」
強いて言うなら、少しフラフラするぐらいだな。
おれの言葉を聞いた先生は辛そうな顔で続けた。
「……すまん。俺がもう少し早く来れば……」
「何で先生が責任感じてるんですか。先生が来てくれたからこれくらいで済んだんですよ?先生は命の恩人です」
「……そうか。キツくなったら言えよ」
そう言うと、今度はフィーベルさんに声を掛ける。
「白猫、お前はどこか怪我とかしてないか?」
少し離れた所でおれのブレザーに腕を通していたフィーベルさんは、ブレザーのボタンを留めながらこちらに歩いてきた。
「私は大丈夫……先生とコルが助けてくれたから」
おれは闇雲に突撃して更なるピンチを招いただけなんだけどな。
「そうか…二人共、よく頑張ったな。怖かっただろうに」
そう言うと、先生は思考を切り替えるように一度長めに目を
「さて、状況を教えろ、白猫、コル。何が起きているんだ?」
おれとフィーベルさんはグレン先生に二人組のテロリストが教室に現れた事や生徒達の中に怪我人はいない事、ティンジェルさんが連れて行かれてしまった事を説明した。といっても、おれよりフィーベルさんの方が説明が上手だったので、途中からは彼女に丸投げしたが。
おれ達(ほぼフィーベルさん)の説明を黙って聞いていた先生は、説明が終わると苦い顔をして腕を組んだ。
「ルミアが連れて行かれた?何故アイツが?」
「……分かりません」
「そうか……」
その時、金属を打ち鳴らしたような音が鳴り響いた。おれが慌てて辺りを見渡していると、グレン先生がズボンのポケットに手を突っ込み、宝石のような物を取り出して耳に当てた。すると、驚いた事にアルフォネア教授の声が聞こえてきた。宝石で電話が出来るなんて、この世界なんでもアリだな……。
先生が耳に当てている宝石は売ったら幾らになるだろうと考えながら眺めていると、フィーベルさんに名前を呼ばれた。
「コル」
「ん?」
「これ……」
振り返ると、フィーベルさんの手の上にはおれの3DSが載っている。一瞬戸惑ったが、ブレザーの内側にある胸ポケットに入れていた事を思い出す。彼女がブレザーを着た時に違和感を感じて気付いたのだろう。
「ごめん、入れっぱなしだった」
謝りながら3DSを受け取るが、フィーベルさんはジッと3DSを見つめながら黙っている。何かを考えているようだ。おれが首を傾げていると、やがてフィーベルさんはこう質問してきた。
「これ、何て名前の道具なの?」
3DSはこの世界からすればイレギュラーだと思ったので今までなるべく人目につかないようにと思っていたが、彼女に誤魔化すのも限界な気がする。というか、そもそも学院に持って行かなければよかったのでは?と今更思うが、手の届くところに無いと落ち着かない性分なので、置いていくという選択肢はなかった。
隠し事は苦手だし、フィーベルさんになら話してもいい気がする。それに、探究心が強そうな彼女に目をつけられてしまったのはおれが教室でゲームをしたからで、完全に自業自得だ。おれは正直に教えた。
「……3DS」
「すりーでぃーえす……」
おれの言葉をたどたどしく繰り返したフィーベルさんが「不思議な名前ね」と呟いた時、それまでは静かにアルフォネア教授と交信していた先生が怒鳴った。
「ふざけんな!生徒達の命が掛かってんだぞ!?」
そのまま何か叫ぼうとするが、アルフォネア教授が何か言ったのだろう。「……悪い、冷静じゃなかった」とばつが悪そうに頭を掻いた。そのまま小声で一言二言話した後、先生は宝石をポケットに押し込み、おれ達の方を向く。その表情を見る限り、助けは期待できなさそうだった。フィーベルさんも察したのだろう。深く俯いてしまう。
……ジリ貧だな…………。
「…とりあえず、これからどうするかを考えませんか?」
ズボンのポケットに3DSを押し込み二人に声を掛けると、先生は「そうだな」と頷き、しばらく何かを考えた後、床に転がっているテロリストを指差した。
「コルと白猫はここでコイツを見張っててくれ。ルミアは俺が助けに行…」
先生がそう言いかけた瞬間、突然、部屋の中に魔力の共鳴音が響き渡ったかと思うと、おれ達の周りの空間が歪み始めた。
「なっ………!」
その歪みから、次々と何かが現れる。ところどころひび割れた身体、むき出しになった関節、眼窩に宿る不気味な光 。
「ボーン・ゴーレムだと!?しかもこいつら、竜の牙を元に錬成されてやがる……!というか……」
「………多過ぎません?」
そう、空間の歪みは今もボーン・ゴーレム達を吐き出し続けている。ニ十体を越えた所でおれは数えるのを止めた。その中の一体が剣を掲げて襲いかかってきた。
「おわぁっ!」
大急ぎで飛び退いた床に剣が突き刺さる。あと少し遅かったら真っ二つになるところだった。あ、危な………。
グレン先生がボーン・ゴーレムの頭部に右ストレートを叩き込む。しかし、ゴーレムはぐらりと身体をのけぞらせただけで、あまり効いていないようだ。
「くっそ!こいつら牛乳飲み過ぎだろ!」
そう言いながら先生が飛び退いた所を、一瞬遅れてゴォッ!と音を立てて剣が通過する。その直後、先生の拳が突然光り輝いた。フィーベルさんが【ウェポン・エンチャント】をかけたのだ。「サンキュー、白猫!」と叫んだグレン先生がボーン・ゴーレムに飛びかかり、今度こそ頭部を破壊する。
おれは攻撃してきたボーン・ゴーレムの膝の裏側を膝カックンの要領で強く蹴って転ばせながら、部屋の出口に左手を向ける。上手く腕が上がらないので右手で左腕を支えながら、痛みを無視して呪文を唱える。
「《大いなる風よ》!」
発動した【ゲイル・ブロウ】が部屋の出口を塞いでいたゴーレム達を扉ごと吹き飛ばす。大きな図体の割に意外と軽い事が判明した。骨の中身はスカスカなのかな?スカルだけに。
「うわ、さっむ……!先生、フィーベルさん!今のうちに!」
「ナイスだコル!白猫、走れ!」
「は、はい!」
二人が出口に走り出したのを確認し、おれも後を追う。出口を出たところで振り返り、部屋の中にもう一度【ゲイル・ブロウ】を放ってから、おれは二人に追いつくべく速度を上げた。数秒で追いつくと、二人の走る速度が上がる。どうやらおれが追いつきやすいようにゆっくり走ってくれていたらしい。そんな場合じゃないのに、二人の優しさにじんわりと心が温かくなった。
走りながらフィーベルさんが先生に話しかける。
「先生、あのゴーレム達は先生の
「ならん!」
フィーベルさんの問いに先生が即答する。
「俺の【愚者の世界】は魔術の起動を封じるだけで、既に発動した魔術を止める事は無理だ!それに、今起動したら俺達も魔術が使えなくなっちまうぞ!」
階段を二段飛ばしで駆け上る。
言い忘れていたが、グレン先生の
とにかく、今はあの魔術に頼る事が出来ないので、他の方法を考えなければならない。
そう思っていた矢先、おれ達を先導するように走っていたグレン先生が右に曲がった。
「先生!?その先は行き止まりですよ!?」
フィーベルさんが慌てているが、先生はお構いなしに走っていく。きっと何か考えがあるのだろう。そう思い、困惑気味に立ち止まったフィーベルさんの手を引っ張っておれは先生を追いかける。
「ちょっ、コル!?」
フィーベルさんの抗議の声を無視してグレン先生に追いつくと、先生は廊下の途中で立ち止まり、フィーベルさんに言った。
「おれがここでゴーレム達を足止めする。お前は先に奥まで行って…即興で呪文を改変しろ」
「え…!?」
「改変する魔術はお前が得意な【ゲイル・ブロウ】だ。威力を下げて、広範囲になるように、持続性がなるべく長くなるようにしろ。お前は生意気だが、優秀だ。俺の授業をきちんと理解できているならこれくらい出来るようになってる」
「……そこまで言われたら、しない訳にはいかないわね。分かりました、やってみます」
「おう、準備出来たら呼べ、合図する!」
廊下の奥に走っていくフィーベルさんを見送った先生は、その場に佇むおれに向き直る。
「コルは俺の援護を頼む」
「仰せのままに」
「…こんな時でも余裕だな、お前………」
「ふざけてないとパニックになりそうなんですよ、察して下さい」
先生が意外そうに片眉を持ち上げる。
「へぇ、お前見た感じ割と落ち着いてるように見えるんだがな」
「ポーカーフェイスは大事ですから」
軽口を叩きながらゴーレムを待ち受ける。
ゴーレム達との距離が十メートルを切った時、グレン先生が爆ぜるように駆け出した。恐れる事なく骸骨の群れに突っ込んでいく。
「おおおおおおっ!」
先生の雄叫びに、骨が割り砕ける音が重なった。
ボーン・ゴーレム達は近くにいる生命体に攻撃するように命令されているのか、おれには見向きもしない。
おれは左腕を右手で支え、いつでも魔術を撃てるように構えた。
あれから三分が経過した。先生は攻撃を躱したりいなしたりしながら次々とボーン・ゴーレムを破壊していくが、躱しきれなかった攻撃が少しずつ掠めていく。
おれは先生に【ウェポン・エンチャント】を掛け直したり、【ライフ・アップ】で増えていく傷を癒やしたりしている。先生の奮闘でゴーレムの群れは数を減らし、辺り一面骨の残骸が散らばっているが、そろそろ先生もキツそうだ。
そう思った時、廊下の奥からフィーベルさんの声が聞こえた。
「先生、できた!」
それを聞いたグレン先生がぱっと踵を返し、「行くぞ、コル!」と言いながら走っていく。おれも急いで先生の後に走り出した。当然ながらゴーレム達も追いかけてくる。
先生が走りながらフィーベルさんに叫ぶようにして聞いた。
「何節詠唱だ!?」
「三節です!」
「よし、俺が合図する!ブチかませ!」
おれ達とフィーベルさんとの間の距離がどんどん縮まっていく。二十メートル、十五メートル、十メートル 。
「今だ、やれっ!」
グレン先生がゴーサインを出した。同時に、フィーベルさんの呪文詠唱が始まる。
「《拒み阻めよ・ 」
おれ達とフィーベルさんとの間が五メートルを切る。
「 嵐の壁よ・ 」
背後から骸骨達が迫って来る。
「 その下肢に安らぎを》 ッ!」
おれ達がフィーベルさんの隣を転がるように通過したその瞬間、フィーベルさんの魔術が発動し、発生した暴風がゴーレム達の行く手を阻む。しかし、ボーン・ゴーレム達はジリジリと少しずつにじり寄って来る。
「ごめん、先生……!完全には足止め出来ない……!」
フィーベルさんの悲痛な声に、グレン先生は笑って応えた。
「いーや、十分だ。そのまま止めてろ」
そう言うと、ポケットから小さな石を取り出す。その石を握り込んだ左
「《我は神を斬獲せし者・ ……」
先生の左拳を中心に三つの魔法陣が噛み合うように顕現する。
「我は始原の祖と終を知る者・ ……」
「……え?そ、その術は…………」
おれは先生が唱えようとしている呪文が何なのかさっぱりだったが、フィーベルさんには分かったらしい。目を丸くして驚いている。
先生の詠唱は続く。三節を超え、四節を超えるが、詠唱はまだ終わらない。魔法陣が徐々に速度を上げながら回り始める。
先生がフィーベルさんの前に飛び出した。
「 遥かな虚無の果てに》 ッ!」
そう締めくくると、左拳をボーン・ゴーレム達に向け、拳を開く。同時に、左拳を中心に回転していた三つの魔法陣が拡大展開し、輝き出す。
「ぶっ飛べ、有象無象!黒魔改【イクスティンクション・レイ】 ッ!」
先生がそう叫んだ、その瞬間。
発生した巨大な光に目を灼かれ、おれはたまらず目を瞑る。破壊音が廊下に轟いた。
やがて、破壊音が収まってから、辺りは一気に静かになった。聞こえてくるのは風が吹く音だけだ。
「…………?」
おかしいな…。確か廊下の窓は全て閉まっていた気がするが……。
目をこすりながらゆっくりと開いていく。
「………………………」
視界に写った景色は、劇的なビフォーアフターを果たしていた。
まず、廊下側の壁が無くなっていて、非常に開放的な空間と化している。見晴らしは良好。フェジテの街並みがよく見える。風が直接吹き込んでくるので、換気もバッチリだ。
次に、天井が無くなっていて、上の階の天井が見える。なるほど、下の階に行くのにわざわざ遠くの階段まで行くのが面倒な生徒達がすぐに下の階に降りられるようにという配慮ということだろう。天井全てが無くなっている訳ではなく、足場も残っているため、移動に支障はなさそうだ。
………やめよう。無理がありすぎる。
おれが現実と向き合い始めた時、フィーベルさんが半ば呆然と呟くように言った。
「す、凄い……先生に、こんな高等魔術が使えたなんて…………」
その言葉を聞いていたおれはハッとして先生の方に向き直り、お礼を言おうとした。一度ならず二度までも助けてもらったのだ。この恩は一生忘れないだろう。
そこで、ようやくおれは異常に気付いた。
「先生……?」
グレン先生は立ってはいるものの、足元がおぼつかない。土気色の頬に冷や汗が浮かび、呼吸も荒く、速い。
明らかに様子がおかしい。
先生が血を吐き、ぐらりと身体を傾かせるのと、おれが駆け寄るのは同時だった。倒れる直前でなんとか支え、壁に背中をつけるようにして座らせる。様子に気付いたフィーベルさんが大慌てで近づいてくる。
「先生、大丈夫ですか!?先生!!」
「これが大丈夫に見えたら病院に行け……」
フィーベルさんの呼びかけに先生は減らず口で応えるが、いつになく元気がない。おれは急いで【ライフ・アップ】の呪文を掛ける。先生の具合を診ていたフィーベルさんが呟いた。
「マナ欠乏症になってる……」
それを聞いたグレン先生が苦しそうに言った。
「まあ、分不相応な魔術を触媒もプラスして無理矢理使っちまったからな……」
その会話を聞いていた時、おれの優秀な耳が靴音を捉えた。同時に、突き刺すような鋭い視線。
「 ッ!?」
バッと後ろを振り返ると、廊下の奥から見覚えのある人影が歩いてくる。ティンジェルさんを連れて行ったダークコートの男だ。
「ったく、次から次へと……」
敵の襲来に気付いたのだろう、ぼやきながら先生が立ち上がる。足元はまだふらついているが、意識はしっかりしているようで、その目はまだ輝きを失っていない。
おれ達を見据えている男は中々強そうで、特に目を引くのはそいつの周囲に浮かぶ五本の剣だ。見るからに中ボスの雰囲気を纏っている。
もうやだこの世界、心が折れそう………。
先生も嫌そうな顔で「浮いてる剣とか嫌な予感しかしないよなぁ……」と呟いている。気が合いますねグレン先生、おれも嫌な予感がします。
五本の剣を携えた男は十メートル程離れた所で歩みを止め、口を開く。低い声が廊下に響いた。
「グレン=レーダス。前調査ではたかが
「あのゴーレム共の主はテメェだな?悪かったな、せっかく高級な素材を使ってたのに消滅させちまって」
グレン先生の軽口を無視し、男は手を軽く掲げる。すると、周囲に浮かんでいた剣が一斉におれ達に切っ先を向けた。
「グレン=レーダス。貴様は魔術の起動を封殺する術を持っているのだろう?中々厄介な術だが、既に起動しているものは封殺出来ないのはボーン・ゴーレムで確認済み。………ならば、最初から起動していれば問題はない。まずは貴様からだ、グレン=レーダス。……行くぞ」
そう言うなり、男がパチンと指を打ち鳴らす。それを合図に、五本の剣たちが一斉にこちらに飛んでくる。狙いはグレン先生だ。
「くそっ、生徒を逃がす隙もくれねぇか!コル、白猫、下がれッ!」
「は、はいっ!」
先生の指示に従って、おれとフィーベルさんは慌てて廊下の奥に向かう。しかし、廊下の先は行き止まりになっているので、それ以上下がる事は出来ない。唯一他の場所に続く廊下の先には敵さんが立っていて、そちらに行こうとした瞬間に剣でみじん切りにされてしまうだろう。
おれ達の眼前ではグレン先生がボロボロの身体に鞭打って戦っている。おれ達を守る為に傷だらけの拳で戦ってくれている。しかし、剣は少しずつ先生の身体を刻んでいく。剣が先生の身体を掠め、ぱっと血が飛び散った。フィーベルさんが小さく悲鳴を上げる。
このままじゃ、先生が
その時、ポケットの中の3DSが
「「 ッ!?」」
戦っていたグレン先生がぎょっとした顔でこちらを見つめ、ダークコートの男が瞬時に距離を取る。フィーベルさんは何がなんだか分からないという顔をしていたが、少しして何かに気付いたらしく、おれの顔を目を真ん丸にして見つめてくる。おれは何故注目されているのか分からなかったが、遅れてその理由を
3DSから魔力が漏れ出ている。それも、大量に。
ポケットから3DSを取り出して見ると、3DSが
「貴様が持っているその道具……どうやらただの魔道具ではないようだな。貴様……何者だ」
「えっ?いや、これはただの……」
ダークコートの男に問われるが、当然ながらこの現象に見覚えは無い。おれが戸惑っている間も、3DSが発する光は徐々に強まっていく。ダークコートの男が警戒するように数歩下がった。グレン先生が目を細めて3DSを凝視する。フィーベルさんが息を潜めてこの現象を見つめる。
3DSがおれの手からふわりと浮かび上がり、ひとりでに開いた。上画面は真っ暗だったが、下画面には何か映っている。それは、おれにとってはよく見慣れたものだった。
(ボックス……?)
下画面には、ゲームでお馴染みのポケモン達を預けるボックスが映っていた。ボックスの中にはおれが時間をかけて大切に育てたポケモン達が入っている。だが、おれは3DSの電源は切っていたはずなので、画面がつくはずが無い。
(何でボックスが……?)
不思議に思いながら、なんとなく手を伸ばす。伸ばした手が画面に触れた途端、下画面が一瞬白く光った。そして 。
ポンッという音と共に、下画面から何かが飛び出してきた。床に落ちる前に慌ててキャッチし、手の中のモノを見て、おれは間抜けな声を上げてしまった。
「………は?」
その球体は半分が赤い色をしていて、もう半分は白い色をしている。そして中央にボタンがついていた。
どう見てもモンスターボールじゃないか……。
おれが余りにも非常識な事態に混乱していると、ダークコートの男が突然動いた。
「教師から
そう言いながら、掲げた手を振り下ろす。五本の剣が凄い速さでおれを目がけて飛翔する。
「「コル!!」」
先生とフィーベルさんが同時に叫んだ。先生がおれの前に飛び出し、フィーベルさんが前方に【ゲイル・ブロウ】を放つ。しかし、向かい風に晒されても剣達は速度を落とすこと無くおれ達を斬り刻まんと迫ってくる。
その時、手の中に包み込んでいたボールが激しく揺れた。投げろと言われている気がして、おれは咄嗟にボールを投げる。先生の頭上を通り過ぎた直後、ボールがひとりでに開き、中から何かが飛び出してきた。ソイツは迫る剣達を一瞬で弾き飛ばし、おれ達の前にすとんと着地した。
黄色い体毛に包まれた小さな身体。先端が黒い耳が揺れる。鋼色に輝いていたギザギザの尻尾がもとの黄色に戻っていくのを見ながら、おれは半ば呆然とソイツの名前を呼んだ。
「ピカチュウ……?」
「ピカッ!ピカチュー!」
声に反応して、ソイツが振り返る。ゲームにしか登場しないはずの生き物 ピカチュウはおれ達に向かって、小さな手でサムズアップしてみせた。
最初に出すポケモンは大分迷ったんですけど、場所が廊下なので大きいポケモンは無理かなーと思い、今回はポケモンで代表的なピカチュウにしました。