いつの間にかお気に入り登録者数が百を超えていてビビりました……。
高評価をつけてくださったハチミツたいやき様、バスカヴィルの駄犬様、ありがとうございます!これからも精進致します!
おれ達は廊下を警戒しながら走っていた。
おれの近くにはグレン先生とフィーベルさん、ピカチュウがいて、それぞれが別々の方向に注意を払っている。三人と一匹の足音が廊下に響く。目的はティンジェルさんの救出だ。
最初はグレン先生が一人で行くつもりだったらしいが、おれとフィーベルさんが猛反対した結果、先生が逃げろと言ったら必ず逃げる事を条件についていく事になった。グレン先生
校舎を出て、足元が地面に変わる。そうして少し走っていると、おれ達の目的地である、白亜の建物が見えてきた。転送塔だ。しかし、敵もそう簡単に塔に入れてくれるつもりはないようで、塔の前には敵が召喚したのであろう、数十匹のゴブリンがたむろしている。おれ達は近くにあった茂みに身を潜め、こっそりゴブリン達の様子を伺う。先生が顔を
「どうやらルミアがこの先にいるのは間違いなさそうだが……」
「問題はあのゴブリン達ね……」
「一、ニ、三 …うん、三十匹くらいかな」
「コル、今絶対適当に数えたでしょ……」
茂みの影にしゃがんでひそひそと話し合う。
こうしている今この瞬間にもティンジェルさんが危険な目に遭っているかもしれないのだ。この状況を手っ取り早く解決しないと……。
思考を巡らせていた時、おれの傍にいたピカチュウと目があった。
「…ピカチュウ。あのゴブリン達に『10まんボルト』は効くと思うか?」
ピカチュウは首を傾げて検討するような仕草をした後、問題ないと言うように頷いた。
……よし。
「先生、フィーベルさん」
茂みから頭だけ出してゴブリン達を見ていた二人が振り返る。
「おれとピカチュウでアイツ等をどうにかするので、二人はその
おれの言葉を聞いていた二人は目を見開いた後、先生が真剣な顔で問いかけてきた。
「………やれるのか?」
「やれます」
おれの隣にいるピカチュウが任せろとばかりに自分の胸を叩いた。
「……解った、頼む。タイミングはお前が決めてくれ」
先生はそれだけ言うと、前を向いた。おれ達を信頼してくれているのが分かる。
おれは心配そうにこちらを見つめるフィーベルさんに言った。
「ティンジェルさんは任せたよ」
おれの言葉にハッとしたフィーベルさんは、少しだけ笑って返してきた。
「言われなくてもそのつもりよ。そっちこそ、遅れたら駄目だからね」
「すぐに追いつくさ」
お互いに微笑を交わす。フィーベルさんは、ピカチュウの頭を撫でてから前を向いた。
「おれが『今』と言ったら走って下さい」
二人が頷いたのを確認して、おれは視線をピカチュウに向ける。
「ピカチュウ」
声を掛けると「ピカッ!」と頼もしい声が返ってきた。
「行くよ」
そう言い、おれは茂みから飛び出して走り始めた。すぐ横をピカチュウがついて来る。
おれ達の接近に気がついたゴブリン達が「グギャアッ!」と叫び声を上げ、手に持つ武器を振り回しながら近づいてきた。逃げたくなるのを必死に我慢してそいつ等の方へ走り続ける。ピカチュウだけ行かせるという選択肢はない。できるわけがない。彼はゲームでも、そして今でもおれを助けてくれる、大事な
おれは『10まんボルト』の効果範囲内が分からないのである程度は危険を侵して接近するしかない。接近に気付いていないゴブリンもいる今がチャンスなのだ。少しでも多くのゴブリンを巻き込むため、確実に当てるためだと自分を叱咤してゴブリン達に近づいていく。そしてゴブリン達との距離が丁度良くなったと感じた瞬間 。
「ピカチュウ!『10まんボルト』!」
「ピ〜カ〜……ヂュ〜〜〜〜ッ!!!」
ピカチュウが跳び上がり、その小さな身体から激しい電気を放った。放たれた電撃がおれ達の元に集まりつつあったゴブリン達を纏めて呑み込み、轟音を響かせた。その轟音に負けないように、おれは叫んだ。
「『今』ッッッ!!」
横を二人分の足音が駆け抜けていくのを耳にしながら、おれは倒れて痙攣しているゴブリンの傍に落ちていた剣を拾い、ピカチュウに指示を出す。ピカチュウの尻尾が鋼鉄に変わっていくのを視界の端で捉えながら、『10まんボルト』をかろうじて喰らわなかった十匹程のゴブリンに向き直り、剣を構える。
「ピカチュウ、おれがヤバくなったら助けてね」
「ピカッ!」
うわ、この子頼もし過ぎる……。
我ながら情けないと思いながら、おれは襲い掛かってきたゴブリンの剣を受け止めた。
「行ってきます」
まだ
両親は出張なので、起こしてくれる人は誰もいない。それなのにこんなに早く起きたのには理由がある。おれはあくびを漏らしながらゆっくりと歩きだした。
あれから数日が経った。あの後、ゴブリン達をなんとか全員倒し、ピカチュウと急いで塔に向かうと、気絶しているグレン先生を膝枕しているティンジェルさんとその側で倒れているヒューイ先生、ヒューイ先生に魔術拘束を施しているフィーベルさんという中々にカオスな場面が展開していた。どうやら今回のテロ事件の黒幕はヒューイ先生だったようだ。聞いた時は本当に驚いた。
すっかり忘れていたが、フィーベルさんを襲おうとしていた男は味方である筈のボーン・ゴーレムに殺されたようで、死体で発見された。敵とはいえ人が死んだ事に後味の悪さを感じたが、今まで何人もの人をふざけて殺してきたような男に相応しい末路とも思えた。
その出来事の中でも最も驚いた事がある。クラスメイトのティンジェルさんが、なんと三年前に病死したと言われていたエルミアナ王女だったのだ。
事件の後、おれとグレン先生、フィーベルさんは帝国のお偉いさんがうじゃうじゃいるところに呼び出され、ティンジェルさんの素性を聞かされた。その内容も凄かった。
彼女は帝国の中では悪魔の生まれ変わりと言われ、忌み嫌われている『異能者』だった。そんな彼女は様々な政治的事情によって、帝国王室から捨てられてしまい、色々あってフィーベルさんの家の子になったらしい。
真実を知ったおれ達は事情を知る数少ない人間として、ティンジェルさんを守る事を要請された。こうしておれは、帝国の秘密を知る重要人物になってしまったのだ。
歩きながら本日四回目のあくびを漏らす。
ティンジェルさんの情報と交換という訳ではないが、おれもついこの間学院の学院長室へ呼び出された。休日に呼び出される程の事と言ったらひとつしか思い当たらなかったので、話す内容を整頓しながら学院に向かった。部屋の中にはアルフォネア教授とグレン先生がいたが、予想外だったのがフィーベルさんとティンジェルさんもいたということだ。談笑していたのであろう四人の視線が一斉におれに集中して、思わず扉を閉めてしまった。皆が慌てて扉を開かなければそのまま帰っていたかもしれない。アルフォネア教授が慌てる姿を見たのはあの日が初めてだ。
わざわざ休日に学院長室に呼び出したのは部外者に聞かれる可能性を無くすためだったらしい。
話の内容はやはりというか、3DSの事だった。おれは事件があった日の夜中に公園で一通り試したのでポケモンの
こうしておれは自分が他の世界から転生してきた事を話さざるをえなくなってしまった。最初は先祖代々伝わるモノだと言ってごまかそうかと思っていたのだが、隠し通すのも限界だと諦め、正直に全てを話した。
街角を曲がると、噴水がある広場が見えてくる。噴水の傍にグレン先生が立っていたので、近づいて声を掛けた。
「おはようございます、先生」
「……んぉ?ああ、コルか。おはようさん」
おれよりも眠そうにしている先生の姿に苦笑し、おれは噴水の縁に腰掛ける。五回目のあくびをすると、つられるように先生もあくびをした。
おれは自分の前世の事を話している時、この学院生活もこれまでかな……と思っていた。こんなおかしな奴、気味悪がられて避けられるようになっても仕方がないと諦めていた。
しかし、おれの話を聞いた後でも、アルフォネア教授をはじめグレン先生やフィーベルさん、ティンジェルさんの態度は変わらなかった。気味が悪くないのかと聞いてみると、「前世の記憶があっても、コルはコルでしょ」とフィーベルさんから返ってきた。心が暖かくなったのを覚えている。
その時の事を思い出してほっこりしていると、大通りの方から二人の少女が歩いてくるのが目に入った。向こうもおれ達を見つけたのか駆け寄ってくる。おれはあくびを噛み殺し、二人に挨拶した。
「おはようフィーベルさん、ティンジェルさん」
「おはよう、コル君、先生」
「二人共凄く眠そうね……おはよう」
「おー、おはようさん」
挨拶を交わし、四人で歩き出す。
テロ事件以来、おれ達はこうして集まって学院に通うようになっていた。グレン先生は認めようとしないが、恐らくティンジェルさんの護衛のためだろう。ちなみに、おれがこのパーティーに加わる事になったのは、たまたま早起きして学院に向かっていた時に三人とバッタリ出くわして、流れで一緒に学院に行く事になったからだ。
歩き始めてしばらくは女子二人が会話に花を咲かせていたが、不意にティンジェルさんがグレン先生に話しかけた。先生は眠そうにしながらもきちんと答える。先生の言葉を聞いて、ティンジェルさんがクスクスと笑う。やけに嬉しそうなティンジェルさんの様子を後ろを歩きながら見ていたおれはピンときた。
「………ほほう」
「………ふぅーん」
呟き声が
おれ達は二人を見守るように、しかしあまり離れすぎると怪しまれるので微妙に距離をとる。
歩きながら二人のやり取りをしばらく眺めていると、フィーベルさんが思い出したように言った。
「ねぇ、この間から気になってたんだけど」
「んー?」
「貴方っていくつなの?」
普通に十五歳と答えそうになるが、彼女が聞いているのはきっと精神年齢だろう。そうでなければわざわざ聞いたりしない。
ティンジェルさん達の観察を中断し、考える。
「えーと、それは
前世は確か十六歳で死んだから……。
「………!?」
嘘だろ……気がついたらアラサーだった……。
ショックを受けているおれを見てフィーベルさんがキョトンとしている。
「どうしたの?」
「いや……合計したら三十一歳になってたからびっくりしただけ……」
「てことは……ええっ!?貴方十六歳で死んじゃったの!?」
「え?そうだけど……」
驚くところが違う気がする。
フィーベルさんは驚いたようにおれを見つめていたが、やがて落ち着いたようで、小声で謝ってきた。
「……ごめんなさい。聞いていい事じゃなかったわね」
「いや、気にしてないよ。というか、フィーベルさんは嫌じゃないの?クラスメイトが三十歳越えてるなんて」
すると、フィーベルさんは呆れたように首を振った。
「それは単純に年を足しただけでしょ?私が聞きたかったのは前の年と今の年を引いた年の数だったんだけど」
「ああ、そういう事ね……。一歳かな」
そう言うと、フィーベルさんは「一歳…」と呟き、こう続けた。
「じゃあ貴方は私より一歳年上なのね」
「へ?」
「だってそうでしょ?貴方はその……上手く言えないんだけど、前の年齢を上書きする形で成長しているから、精神的には十六歳のままだろうし」
「そう…なのかな」
彼女の言いたい事がなんとなく分かった気がする。良かった、まだおっさんじゃなかった……!
「システィ、コル君、置いてくよー?」
遠くからティンジェルさんの声が聞こえる。フィーベルさんが「ごめんルミア、今行くー!」と叫んだ。そのまま走り出そうとして、振り返ったフィーベルさんが笑顔で言った。
「ほら、行くわよコル!」
銀髪を
ようやく原作の一巻が終了致しました……。
ここまで長かった気がするなぁ……。
原作二巻に行く前に3DSの機能の補足をしたいと思いますので本編は次の次になりますが、頑張って書いていきますのでお付き合いしてくださると嬉しいです!