高評価をくださった癒しを求めるもの様、ありがとうございます!励みになります!駄文ですが、少しでも書き方が上達するように頑張ります!
靴音が石の壁に反響する。どうやら地上の実況などは聞こえないようになっているようだ。壁のところどころに設置された証明魔道具のおかげで真っ暗ではないが、視界は少し薄暗い。
前世でまだ幼かった頃に連れて行かれた遊園地のお化け屋敷を思い出した。あの時は両親の服の袖を掴んで必死に恐怖に耐えたっけ……。
前世の事を思い出しながら歩いていると、とても不思議な気分になった。おれ、異世界にいるんだなぁ……。
今のところ敵とは遭遇していないが、油断は禁物だ。おれはいつ敵と遭遇してもいいように心の準備をしながら先に進んだ。恐らくトラップの
五分程進むと、少し広い場所に出た。目の前には閉ざされた扉があり、その前には台座のようなものが設置されている。後ろを振り返ったりしながら近づいてよく見ると、九つの石版が入りそうな四角いスペースに八つの石版がはめられている。なんとなく既視感を覚え、その既視感の正体を探るとすぐに分かった。
(ああ、これナゾトキゲームでやった事あるやつだ)
試しに石版の一つを動かそうとすると、思ったより滑らかにスライドする。
(これはスライドパズルだな。それなら………)
かちゃかちゃスライドさせる事三十秒。
台座の上には空を飛んでいるドラゴンの絵が完成した。
同時に、重低音を響かせて目の前の扉が開く。
「おお、開いた」
ささやかな達成感に包まれながら扉の先に進む。直線にしばらく進んでいると、前の方から何かを引きずるような音が微かに聞こえてきた。
「………!」
目を凝らして見ると、かなり先の方で何かが動いている。襲い掛かって来ないのでまだ気付かれていないのだろうが、気付かれるのは時間の問題だ。隠れようにも、この通路は直線なので隠れる場所がない。
(後ろに行ってもさっきの部屋に戻るだけだし………うん、迎撃しよう)
そうと決まれば先手必勝だ。おれは左手を構え、呪文を唱えた。
「《雷精よ》!」
練習したかいもあり、通常よりも少し短い詠唱で発動した【ショック・ボルト】が光の線となって飛翔し、通路の奥の敵に命中する。ガシャガシャッ!という音を最後に、何かを引きずる音はしなくなった。
【ショック・ボルト】一発で倒したとは思えないのでしばらく様子を伺ったが……何も起こらない。慎重に先に進むと、通路の先で人形が倒れているのが見える。さっきの音は人形が倒れた音だったようだ。油断なく左手を向けながらそっと近づく。
倒れている魔道人形はゲームで言うところのリザードマンのような姿をしていて、手に先端が丸まった槍を持っていた。引きずるような音は尻尾が床に当たって出していたのだろう。額に付いている結晶が割れているので、【ショック・ボルト】はきっとこれに当たったのだ。
「ここに当てれば一発で倒せるのか……?」
いかにも弱点っぽいところを発見したが、ここを攻撃すれば一発なのか、別にどこを攻撃しても一発で倒せるのか今のところはよく分からない。おれは立ち上がり、歩き出した。
敵が持っていた槍は持って行くか迷ったが、重いし使い慣れてないので止めた。
それから探索を進めていき、数体の人形を倒して判明したのだが、額の結晶以外のところを攻撃した時と結晶を攻撃した時のダメージの通り方はやはり違うようだ。
辿り着いた部屋のパズル 今度は十五ピースだった をさくさく解いて扉を開き、先に進む。そうして曲がり角をいくつか通り過ぎ、広い場所に出る。その場所はおれが出てきた通路を含めて分かれ道が三つあり、進むとしたら右の通路か左の通路だが、どっちに行こうかと悩んでいると、左の通路から誰かが出てきた。慌てて構えるが、出てきた人物を見て、おれはすぐに構えを解いた。
「あれ?コルじゃないか」
「ライアス……?何でここに?」
現れたのは、数日前に会ったばかりのライアスだった。彼も警戒していたのか拳闘の構えを取っていたが、すぐに構えを解いて歩み寄ってくる。
「何でって……この競技の選手だから?まさかこんな所でコルと会うとはなぁ」
「偶然って怖いな」
「なー」
会話を交わしながら、おれ達は広い空間の中央に集まる。
ライアスが親指で後ろの通路をピッと指差した。
「オレが通ってきた通路は何もなかったぞ」
「こっちも何もなかった。となると……」
二人で同時に右の通路に視線を送る。
「こっちだな」
「ああ」
頷きあう。
「ついでだし、一緒に行こうぜ」
「いいよ」
ライアスの提案に乗り、おれ達は一緒に迷宮を探索する事になった。
通路はおれ達が並んで歩けるぐらいの幅なので、二人で並んで世間話をしながら歩いた。もちろん警戒も忘れない。
しばらく歩いていると、急に通路が下り坂になった。
「うーん……迷宮の最深部って結構下の方にあるみたいだな」
「制限時間二時間で足りると思うか?」
「さあ……」
首をひねりながら歩いていると、突然ライアスが立ち止まった。
「ライアス?」
「…何か聞こえないか?」
耳を澄ませると、遠くからかすかに地響きのような音が聞こえてくる。
「……聞こえる」
「何の音だ…?」
地響きが酷くなるにつれ、振動が伝わってくるようになった。
「なあ、これって……」
ライアスの呟きを聞きながら、おれはゆっくりと後ろを振り返る。
おれ達が通ってきた下り坂を大きな鉄球が転がってくるのが見えた。
おぅまいがー……。
「……………なあ。突然だけどおれ、今凄く走りたい気分なんだよね」
「え?急にどうし……奇遇だなコル。実はオレもそう思っていたんだ」
後ろを見て真剣な表情になったライアスと同時に走り出す。
後ろから近づいてくる地響きに恐怖を感じながら全力疾走していると、下り坂の途中の脇道から魔導人形が飛び出して来た。
「あーもう!こんな時まで出てくんなよ!!コル、オレがやる!」
走る速度を上げながら早口で【ウェポン・エンチャント】の呪文を唱えたライアスの拳が光を纏い、魔導人形の顔面に拳がめり込んだ。
ゴシャアッ!バキバキバキィ!
顔面をひしゃげさせて倒れ込んだ人形の横を駆け抜けた数秒後、後ろでそんな音が聞こえてきた。チラリと振り返ると、魔導人形が鉄球に押し潰されていく光景が目に入った。
いくら死なないとは言っても、これは怖い……!
必死に足を動かす事三十秒。遂に、おれ達と鉄球の鬼ごっこの終着点が見えてきた。下り坂の終わりが見えてきたのだ。安堵するのも
床が無い。
下り坂の最後ら辺の通路の床がきれいに無くなっている。向こう岸まではかなりの幅があり、その先は通路が続いている。
だが、そこに到達するにはあの穴を飛び越えなければならない。
左右に素早く目を走らせるが、通路の壁には鉄球をやり過ごす
おれは走る速度を上げ、半ばヤケクソ気味に叫んだ。
「飛び越えよう!もうそれしかない!」
「くっそぉっ!こんな所でリタイアしてたまるかっ!」
おれは覚悟を決めて最後の数メートルを全力で走り抜き、思いっきり跳んだ。
おれ達が穴を飛び越えて向こう岸の床に倒れ込んだ直後、後ろから迫ってきた鉄球が穴の中に落ちていき、かなり下の方で轟音を
「つ、疲れた………」
「同じく………」
立ち上がる気力も残っていなかったおれ達はしばらく床に転がったまま荒い息を吐いていた。
システィーナ
『おおーっとぉ!?七組のマロー君トラップに掛かってしまい戦闘不能!ここで無念の脱落だー!』
競技場の真ん中にある魔法陣の上に脱落した生徒が次々と転送されてくる。
『残っている選手は五人!盛り上がって参りました!果たしてこの迷宮を攻略出来る選手はいるのか!?』
実況者の楽しそうな声をBGMに、システィーナ達は画面に映るコルをはらはらしながら見守っていた。
今のところコルは敵を危なげなく倒しているし、トラップにも引っかかっていない。周囲に気を配りながら歩いているコルを見ながらグレンが呻くように言った。
「ったくセリカの奴、難しくしすぎだっつーの……コルを選んで正解だったぜ……」
『あっ!ここで一組のジーロ君と六組のフリット君が合流しました!何やら言い争っていますが……あぁーっ!ジーロ君がフリット君を攻撃しました!フリット君避け切れずに直撃ー!……なんと、一組の選手が六組の選手を倒してしまいました!残り四人!これは予想外の展開になってきたぁぁあッ!?』
「えっ!?選手が選手を攻撃するなんて、そんなのアリなんですか!?」
システィーナがグレンに質問する。グレンは苦々しげに答えた。
「ああ、アリだ。ルールには『選手同士の潰し合い禁止』とか無かったからな……」
「でも、それじゃあ……あっ!」
『おおっ!続いて二組のコル君と四組のライアス君が合流しました!この二人も戦闘に突入してしまうのでしょうか!?』
先程の事もあり、システィーナ達二組の生徒と四組の生徒達に緊張が走った。固唾を呑んで画面に映る二人を見守る。
しかしその心配は杞憂だったようで、二人はお互いを認識した途端に構えを解いた。広間の中央に集まり、通路を指差したりしながら会話を交わしている。一緒に行動する事にしたのか、二人は同じ通路に入っていった。
『どうやらニ組の選手と四組の選手は行動を共にするようです!これも意外な展開!さあ、最深部に到達するのは一体誰だッ!?』
生き残っている選手のクラスメイト達は、目の前の画面を食い入るように見つめた。
この競技の話は後一話くらい続きます。競技祭が終わるまではポケモンの出番が減ると思いますが、原作三巻では新しいポケモンを出したいと思いますのでもうしばらくお付き合い下さると嬉しいです!