ロクでなし魔術講師と携帯獣使い   作:ゲームの住人

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 こんにちは、ゲームの住人です。
 長い間更新できずにいたにも関わらず、お気に入り登録していて下さった方々、本当にありがとうございます!やっと原作二巻を終わらせる事ができました……。
 


閉会式

『おぉーっとぉ!?徐々に成績が下がっていた二組、再び火が点いたのか勢いを盛り返してきて現在三位!優勝が再び射程に入りました!』

 

 二組の指揮にアルベルトさんがついてから、おれ達はティティスさんの『変身』の競技を皮切りに、午前中の勢いを取り戻しつつあった。フィーベルさんが発破を掛けたのも効いているのだろうが、おれが驚いたのはアルベルトさんの的確なアドバイスだ。現に今行われている『グランツィア』の競技でも、二組の選手達にハンドサインで細かく指示を出している。

 

『あっ!一組がアブソリュート・フィールドの構築に入りました!二組が慌ててノーマル・フィールドの構築に取り掛かるが………駄目だ、あっと言う間に一組のディフェンダーに潰されてしまった    ッ!一組、着実にアブソリュート・フィールドの構築を進めていきます!ここに来て二組にピンチ到来だぁーっ!』 

 

「ふははははっ!二組の奴らめ、今まで散々小賢しい真似をしてくれたが、それもここまでッ!この勝利で我々の優勝は確定だ!」  

 

 遠くからバーボン先生の勝ち誇った叫び声が聞こえてきたのと同時に、一組のアブソリュート・フィールドが完成した。そしてこの時、一組の敗北が決定した。

 

「な、何ぃぃぃぃいいッ!?」

 

 一組の赤いフィールドが構築されると同時に、それを大きく取り囲むように黄色の巨大なフィールドが出現したのだ。

 

『こ、これはまさかのどんでん返しだあああああああああッ!?サイレント・フィールド・カウンターですッ!なんと二組、一組のアブソリュート・フィールド構築を条件として予め組み込んでいた    ッ!?』

 

 グランツィアのルール上、囲まれたフィールドは無得点となるので、二組は一組の得点を防ぐのと同時に得点をゲット。正に一石二鳥だ。

 

 一組の選手達はフィールド上いっぱいに拡がった黄色のフィールドに圧倒され、呆然と周囲を見渡している。そんな彼等を見たバーボン先生が我に返った。

 

「お、お前達っ!何をしておるのだ、少しでもいいからそのフィールドを    

 

 その時、競技の終了を告げる笛が鳴り響いた。

 

『おおっと、ここで競技終了!二組、終盤で滅多に見ない高等戦術を見せてくれました!これで二組は現在一位の一組にぐっと追い付きました!これは優勝が分からなくなってきたぞおおおおぉ      ッ!?』

 

 会場に歓声と拍手が響き渡った。クラスメイト達は大騒ぎだ。

 

「やったああああ!」

 

「アルフ、ビックス、シーサー!お前ら最高だああああああ  ッ!」

 

「凄いよ三人とも!お疲れ様ー!」

 

 観客席に戻って来た三人を皆で出迎え、ねぎらう。クラスメイト達のテンションは最早天井知らずだ。

 

 こうしておれ達のクラスは高得点を叩き出し続け、遂に最後の種目の時間になった。

 

『さあ、時間があっと言う間に過ぎ去り、種目も残すところひとつとなりました!本競技祭のメインイベント、「決闘戦」です!出場する生徒の皆さんは係の指示に従って集合して下さい!』 

 

「よし、行ってくるか!」

 

 カッシュが気合いを入れるように膝をばしんと叩き、立ち上がった。

 

「応援してるよ、カッシュ!」

 

「頑張ってね!」

 

「おう!」 

 

 去って行くカッシュを見送ってから、少し離れた席に視線を向ける。先程からフィーベルさんはアルベルトさん達のそばで得点を記録しながら会話していたのだが、丁度会話が終わったらしく、フィーベルさんがアルベルトさん達から離れていくのが見えた。なんとなくそのまま見つめていると、ちらりとこちらを見た彼女と目が合う。拳を握って上に突き上げる動作をすると、フィーベルさんはしばしキョトンとした後、不敵な笑みを浮かべて頷いた。

 

 

 

  

 

 

 フィーベルさん、カッシュ、ギイブルの三人は、対戦相手を次々と下し、順調に決勝まで進んだ。驚いた事に、決勝戦の相手はなんと因縁の一組だ。そして、決勝戦でどちらか勝った方が優勝というなんとも分かりやすい構図となった。

 

 先鋒のカッシュと一組の選手は大接戦の末、相手の攻撃をまともに喰らったカッシュが行動不能に陥り、惜敗に終わった。

 

 現在は中堅、ギイブルと一組の選手が戦っているところだ。ギイブルの召喚【コール・エレメンタル】という呪文で召喚された使い魔が相手の選手を追い詰めていく。

 

 ……3DSを我が家に代々伝わる召喚術の媒体装置だって誤魔化せば、人前でポケモンを呼び出しても怪しまれないだろうか?いや、でもこの世界の使い魔と比べて魔力量半端ないしなぁ……。

 

「ううーむ……」

 

 この世界には『火ネズミ』という魔獣がいるんだし、電気ネズミがいても問題無い気がする。ポケモン達の身体はおれの魔力で構成されているので、魔獣だと言っても嘘にはならないだろう。

 ………たぶん。

 ちなみに、『火ネズミ』はつぶらな瞳が可愛らしい魔獣で、使い魔としてよく使役されている。見た目は完全にネズミだが、名前に『火』という文字がついている通り、燃えるように熱い身体をしている。というか燃えている。

 

 火ネズミも可愛いが、やっぱり一番可愛いのはピカチュウだな。短めで柔らかい毛並みは触り心地抜群で、永遠に撫でていられる。平日は10まんボルトで容赦なく叩き起こしてくるが、休日の朝などは二度寝していると布団の中に潜り込んでくる甘えん坊なところもある。なにより撫でても火傷しない。……まあ、たまに指先が痺れるが。

 

『クライス選手の投了宣言により、ギイブル選手の勝利です!これで1ー1!勝負の行方はそれぞれの大将に託されましたッ!』

 

 他の事を考えている間にギイブルがさらりと勝利していた。流石優等生、眼鏡は伊達じゃないな。

 わあああ、と歓声が上がる。観客席、特に我がクラスは大盛り上がりだ。おれはそろそろ叫びすぎて喉が痛くなってきたんだが、皆は痛くならないのか? 

 座りっぱなしだった身体を伸ばし、首を軽く回していると、貴賓席が視界に入った。首の動きでそのまま視線は外れ    

 

「……んん?」

 

 おれは首を回すのを止め、貴賓席をじっと見つめた。

 女王陛下、女王陛下の護衛の人達、学園長、アルフォネア教授。

 一見すると何もおかしくはないように見えるが、何か違和感を感じる。強いて言えば午前中に見た時には居たメイドっぽい人がいなくなっているくらいか?

 首を捻って少し考えると、違和感はすぐに分かった。

 

 そう、午前中はグレン先生率いるおれ達二組の生徒が他のクラスの優等生達を相手に善戦、もしくは勝利するたびに、周囲のお偉いさん達を全く気にせず爆笑していたアルフォネア教授が、今は大人しく座っているのだ。

 

 一組と二組が見事に張り合っているこの状況を見れば、あの人なら大はしゃぎしていそうだと思ったのだが……。笑いを堪えているだけとか?

 

 なんとなく気になったおれは、こっそり呪文を唱えた。

 

「《彼方は此方へ・鋭利なる我が眼は・万里を見晴るかす》」

 

 発動したのは、黒魔【アキュレイト・スコープ】という魔術だ。この魔術を使えば、まるで望遠鏡を覗いたかのように遠くのものがよく見えるようになる。

 早速教授をガン見するが、教授は笑っていなかった。それどころか、どことなく張り詰めたような表情で黙り込んでいる。女王陛下や護衛の人達も似たり寄ったりの表情だ。観客席とは違い、貴賓席はまるで葬式のような雰囲気を醸し出していた。

 

 なにかがおかしい。

 

 あの(・・)アルフォネア教授が、第七階梯(セプテンデ)に至った大魔術師が張り詰めた顔をする……つまり、それほどの異常事態が起こっている?

 

 不意に、少し前から姿が見えないグレン先生とティンジェルさんの事が頭に浮かんだ。

 先生達が居なくなったのは、女王陛下がティンジェルさんに会いに来てすぐ後のことだった。そして、ティンジェルさんは王家から追放された元・王女であり、異能者。

 二人が居なくなった事と、貴賓席の状況は何か関係があるのか?

 

 気になる事は他にもある。アルベルトさんとリィエルさんだ。二人は先生達とまるで入れ替わるかのように現れ、二組の指揮を執り始めた。驚いた事に、アルベルトさんはまるで生徒達をいつも見ているかのような的確なアドバイスと指示を出してみせた。「グレンから様子を聞いていた」と言っていたが、それだけでここまでの指示が出せるのだろうか?

 

 そして、リィエルさんから手を握られた時に驚いた様子を見せ、その後は何故かアルベルトさんに対して挑戦的な態度を取っていたフィーベルさん。

 

「……なんか読めた気がする」

 

『さあ、いよいよ大将戦!この勝負で全てが決まります!今競技祭の優勝を手にするのは一組か!それとも二組か!これは熱い展開が期待できそうだあぁ   ッ!』

 

 呟き声は、実況者のアナウンスと上がる歓声に掻き消された。

 

「両者、前へ!」

 

 審判の声を合図に舞台に進み出てきたフィーベルさんと一組の選手を見て、観客席が少しずつ静かになる。シン   と静寂が満ちる中、最終戦の開始を告げる声が響いた。

  

「大将戦、始めッ!」

 

 その瞬間、二人が同時に動いた。

 

「《雷精の紫電よ》ッ!」

 

「《災禍霧散せり》ッ!」

 

 一組の選手が放った【ショック・ボルト】を、フィーベルさんが即座に【トライ・バニッシュ】の呪文で打ち消す。二人は弧を描くように横へ駆け出し、互いの呪文をぶつけ合う。

 

 他の試合とは一線を画した名勝負に場は沸き立ち、観客やクラスメイト達の声援にも熱が入る。

 眼前で繰り広げられるレベルの高い魔術戦を見つめながら、思考を重ねる。アルベルトさんとリィエルさんが言っていた台詞が、頭の中をぐるぐると回った。

 

『奴から伝言を預かっている。『優勝してくれ』だそうだ』

 

『お願い……信じて』

 

「ムゥ……」

 

 脳内でリフレインする台詞達を一旦止め、眉間を押さえる。

 恐らくアルベルトさんとリィエルさんの正体は、グレン先生とティンジェルさんだ。変装している訳は分からないが、そうしなければならない理由があったのだろう。

 何が起きているのかは分からないままだが、グレン先生達は変装してまで『優勝してくれ』と言いに来たのだ。いくらロクでなしの先生といえども、バーボン先生との賭けで勝ちたいからという理由だけではここまで大掛かりな事はしないはずだ。………多分。

 

 アルベルトさんを煽っていたのを見る限り、多分フィーベルさんは二人の正体に気付いている。聞きたい事もたくさんあったに違いない。それでも彼女は、ティンジェルさんの『信じて』という言葉を信じ、優勝という目標を達成する為に戦っている。皆の想いを一身に背負って、戦っている。

 

 なら、おれに出来る事はひとつだ。

 

 顔を上げると、一組の選手と今まさに闘っているフィーベルさんが目に入った。魔術の攻防で魔力(マナ)を消耗し、動き回って体力を持っていかれたのか、肩で息をしている。額を拭う動作をしながらも、相手からは視線を外さない。

 

『す……凄い戦いだッ!両者、一歩も引きません!実力は完全に互角です!』

 

「いいぞぉぉぉーっ!」

 

「うおぉぉぉぉ、どっちもやれ   っ!」

 

「負けるなぁぁッ!」

 

「頼む、勝ってくれシスティーナ   ッ!」

 

「ええい、ハインケルッ!負ける事は許さんぞッ!勝てッ!とにかく勝てぇ  ッ!」

 

 周りの声援に掻き消されないように、おれは大きく息を吸い、思いきり叫んだ。

 

「頑張れぇぇぇッ!」

 

 今や、会場は応援の声でいっぱいになっていた。観客も、生徒も、教師も皆何かしら叫んでいる。

 

 会場の熱気は際限なく高まっていき    

 

 

 

 

 

 

    遂に、終わりを迎えた。

 

「《拒み阻めよ・嵐の壁よ・その下肢に安らぎを》   ッ!」

 

「っ!?な、なんだこの魔術は……!?」

 

 フィーベルさんの改変魔術、【ストーム・ウォール】が一組の選手を囲むように展開し、行方を塞いだ。一組の選手は未知の魔術に動揺し、判断が遅れる。

 

「そこっ!《大いなる風よ》   ッ!」

 

「う、うわあぁぁ   っ!?」

 

 フィーベルさんはすかさず【ゲイル・ブロウ】を放ち、一組の選手を吹き飛ばした。

 

『じ、場外   ッ!ハインケル選手、場外負け!システィーナ選手の勝利です!と、いう事は……!優勝は、二組!あの二組が優勝だああぁぁぁぁッ!!』

 

「%:mゃ⊗‰≤p∇±ぬ2&♢ー!!」

 

 クラスメイト達がなにか喚きながら観客席から飛び降り、猛然と走り始めた。おれも皆に混じって飛び降り、走る。向かう先は当然フィーベルさんのところだ。

 

「j&↛≥%ふぉ♡@^a∀$↗↨あー!」

 

「wa#*(5≥‰Ⅳ★ねw@;+∅く♧っ!」

 

「えっ、その、きゃあっ!?」

 

 嬉しすぎて人語を忘れてしまったクラスメイト達にフィーベルさんがあっという間に取り囲まれ、見えなくなる。数秒後、きゃああああ、という悲鳴を響かせながら、空中にフィーベルさんが打ち上げられた。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果から言えば、閉会式の時に騒ぎが起こった。

 女王陛下の前に進み出たアルベルトさんとリィエルさんの姿が変わったと思ったら、女王陛下達を囲むように謎の結界が張られ、護衛の人達が閉め出されてしまったのだ。

 

 やはりというか、アルベルトさん達の正体はグレン先生とティンジェルさんだった。

 

 結界が消滅した後、女王陛下からこの騒動の説明があった。曰く、テロ組織の卑劣な罠に掛かっていたところを、勇敢な講師と生徒の手によって救われたそうだ。

 

 この功績を讃え、グレン先生には後日、勲章が与えられるらしい。

 

 優勝したおれ達は、グレン先生の奢りで店を一軒貸し切り、そこで打ち上げをすることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある路地裏を、一人の女が歩いていた。メイド服に身を包み、かつんかつんと靴音を鳴らす音が響く。

 

「あらあら……失敗してしまいましたか。まあ、成功するとは思っていませんでしたけれども」

 

 クスクスと笑いながら、その女は上機嫌そうに呟く。

 

「それに、中々珍しいものも見られましたし……」

 

 女の脳裏に蘇るのは、一人の少年。少年自体に特に目立つ点は無かったが、女が注目したのはそこではない。

 

「あの魔獣……それに、あの魔道具……」

 

 内に膨大な力を宿した魔獣に、見たこともない魔道具。

 

「……ふふ、面白くなりそうですわ……」

 

 愉快そうに呟く女の前に、二人の人影が姿を現す。

 

「あらあら、見つかってしまいましたわね……」

 

 人影   いつでも攻撃できる態勢のアルベルトとリィエルを見て、女   天の智慧研究会、第二団(アデプタス)地位(オーダー)》が一翼、エレノア=シャーレットは愉しそうに嗤った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー、では、先生達がまだ居ないけど、ひとまず……競技祭、お疲れ様でしたー!乾杯!」

 

「「「かんぱーい!」」」

 

 音頭に合わせ、おれ達は飲み物が入ったコップをぶつけ合う。カチャン、という音が響いた。

 

 店を貸し切っているので、店内には店員さんとクラスメイト達しかいない。テーブルには沢山の料理が並べられ、どれも美味しそうだ。とりあえず近くにあったパスタを取皿に取り、食べる。美味い。

 

「いやー、すっげぇ楽しかったな!」

 

「あはは、そうだねカッシュ。僕はまだ、優勝したって実感が湧かないよ」

 

「『優勝』…………素晴らしい響きだぜ。なあ、ロッド?あ、そこのピザ取ってくれ」

 

「ああ、そうだなカイ。俺達は頑張った……ほらよ。ついでにソース取ってくれ」 

 

「リン。貴女の変身術、見事なものでしたわ」

 

「本当、びっくりしたわよ!貴女が変身したのって、『時の天使』ラ=ティリカ様でしょ?凄く綺麗だったわ」

 

「あ…ありがとう……二人も、凄かったよ」

 

 優勝した時の興奮が未だに冷めないのだろう、皆の話題はもっぱら競技祭についてだ。

 ワイワイと騒いでいる皆の声をBGMに、料理に舌鼓を打つ。唐揚げを何個か取皿に盛っていると、隅っこの席にひとりで腰掛けているギイブルが目に入った。彼の皿には何も載っていない。

 ……そういえば、ギイブルとはあまり話をした事がなかったな。

 

 皿とコップを持って席を立ち、ギイブルの隣に移動する。怪訝そうな目で見てくるがそれを無視し、おれは席に着いた。

 

「え、唐揚げ食べたいって?しょうがないなー、ひとつあげよう!」

 

「あっ」

 

 返事を聞く前にギイブルの皿に唐揚げをひとつ載せる。

 

「…………」

 

「…………」

 

 横からの視線が顔面に突き刺さるが、気にせずに唐揚げを頬張る。うむ、美味い。 

 黙々と唐揚げの数を減らしていると、騒がしい周りの様子を見てギイブルがポツンと呟いた。

 

「ふん……皆、優勝したくらいでなにはしゃいでるんだ。これぐらい当然の事だろう?」

 

 ごくんと嚥下し、おれも呟く。

 

「全員で出場して掴んだ優勝だから、こんなに喜んでるんじゃない?」

 

「…………」

 

 ギイブルは店内に散らばって楽しそうに騒いでいるクラスメイト達を見渡し、皿の上の唐揚げに視線を落とした。

 

「…………」

 

 ギイブルは無言で唐揚げを口に入れ、もぐもぐと咀嚼する。

 

「こんな空気も、悪くないだろ?」

 

「…………………………まぁ、たまにはね」

 

 ギイブルは静かに席を立ち、少しして戻って来た。その皿には唐揚げが何個か載っている。どうやら気に入ったようだ。

 

 それからしばらくは無言の時間が続いたが、フィーベルさんがやって来たことで無言の時間は終わった。

 

「……珍しい組み合わせね」

 

 微かに目を丸くしたフィーベルさんが、おれ達の前の席に座る。おれは唐揚げを指差して言った。

 

「おれ達は『唐揚げ同盟』を結んだんだ。な?」

 

「いつの間に結んだんだ、僕は覚えがないぞ」

 

「ふふっ、仲良くしてるようでなによりだわ」

 

「これのどこが仲良くしてるように見えるんだ……」

 

 ギイブルが不機嫌そうな声を出すが、フィーベルさんはどこ吹く風と聞き流した。

 

「それにしても、先生とルミア遅いわね………」

 

「事情聴取に時間が掛かってるんじゃない?ほら、勲章の授与についての話とかもあるみたいだったし……」

 

 喋りながら喉の渇きを感じ、コップに手を伸ばす。しかし、中は空になっていた。近くのテーブルに飲み物の瓶が置いてあったので、それを開け、コップに注ぐ。

 

 一気に飲み干すと、葡萄のような味がした。美味かったので、もう一杯飲む。いつの間にかフィーベルさんとギイブルが魔術理論で言い争いを始めていたので、それを眺めながらコップを傾ける。

 

 討論の内容は難しすぎて理解できないが、二人は生き生きとしているように見えた。好きな魔術に関する話をしている時は、うちのクラスメイト達はいつも楽しそうだ。

 

 しかし、なんだか身体がふわふわするぞ。疲れてるのか?

 

 瓶が空になってしまったので同じ物を注文し、コップに注ぐ。

 

「……あっ、それは!」

 

 討論していたギイブルが急に慌て声を出し、椅子から腰を浮かせた。つられてこっちを見たフィーベルさんがぎょっとした顔でおれを見つめる。正確には    おれが持っている瓶を。

 

「こ、コル!?それお酒じゃない!?」

 

「……………んぉ?」

 

 瓶のラベルを良く見る。

 

「あぁ〜?……ほんとーだぁー」

 

「……これはもう手遅れだ」

 

 視界の端で、ギイブルが諦めたように首を振るのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 グレンとルミアは、すっかり暗くなった街の中を歩いていた。事情聴取と勲章授与式の日程調整がやっと終わったのだ。

 

「あ、先生!お店が見えてきましたよ!」

 

「ああ、あそこで打ち上げしてるんだったな。……でも、流石にもう帰ったんじゃねーか?」

 

「まあまあ、一応覗いてみましょうよ。まだいるかもしれませんよ?」

 

「それもそうか」

 

 グレン達は店の扉を開け、中に入る。店内に足を踏み入れた瞬間、聞き慣れない大きな笑い声がグレン達の耳に届いた。

 

「あはははは!あはははははははは!」 

 

 見れば、賑やかな店内の奥の方で、ひとりの男子生徒   コルがまるでタガが外れたように笑っている。普段の彼は他の男子達と比べると比較的静かな部類に入るので、こんなコルは珍しかった。 

 

「あ、二人共!お先にやってまーす!」

 

「お、おう。……なあ、コルのやつ一体どうしたんだ?アイツあんなキャラじゃなかっただろ」

 

 片手を上げて挨拶してきたカッシュにグレンが問うと、カッシュは苦笑を浮かべた。

 

「あー……それがっすね……」 

 

「あっ、二人共!やっと来たのね!」

 

 カッシュが何か言い終わる前に、グレン達のもとへ困り果てたような表情のシスティーナがやって来た。

 

「ちょっと先生、助けてください!コルが間違えてお酒を飲んじゃって………!」

 

「なるほど、それでああなってんのか……………おい、ちょっと待て。アイツが持ってるの、くっそ高い酒じゃね?」

 

「あ、あはは……本当だ……」 

 

 コルの手に握られている酒瓶のラベルを見て、グレンが顔を青くし、ルミアが苦笑いした。

 

「あはははは、次のやつ持って来ぉーい!」

 

「ちょっ、止めろ!これ以上注文すんな!?」

 

「あはははははははは!」

 

「人を指差して笑ってんじゃねぇよ!?ああもう、この笑い上戸が……!」

 

 けらけらと笑いながら、コルがどこかへ移動しようとした。しかし、その足取りは覚束ないもので、放っておけばすぐにでも転んでしまいそうだ。見かねたシスティーナがコルの腕を掴み、近くのソファに誘導する。

 

「ほら、こっちよ」

 

「ん〜?」

 

 ふらふらしながらソファまで辿り着いたコルは、システィーナを見上げてふにゃりと笑みを浮かべ、「ありがと〜」と気の抜けた言葉を発した。ルミアが持って来たコップを受け取り、中の水をちびちびと飲み始める。

 

「全く、世話が焼けるんだから……」

 

 文句を言いつつも、穏やかな目でコルの様子を見るシスティーナを見て、ルミアがくすりと笑みを溢し、グレンに囁きかけてきた。

 

「システィ、なんだかコル君のお姉さんみたいですね」 

 

「はは、説教臭い姉貴だな」

 

「もう、先生ったら」

 

 酔っ払いはシスティーナに任せて、グレン達はそれぞれ好きな料理を皿に取り、少し遅めの夕食を摂り始めるのだった。

 

 

 

 

 

 次の日、コルは頭痛で学院を休んだ。

 

 

 




 かなり詰め込んだので長くなってしまいましたが、次回はもう少し短くなると思います。そして、次回からはとあるポケモンが活躍します。楽しみにしていて下さると嬉しいです。
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