今回は少し短めです。
相棒
休日。
両親が家を開けていて、かつ暇だったのでおれは自分の家にライアスを招待し、一緒にゲームをしていた。3DSの画面には、緑のとんがり帽子を被った少年がトゲ付き甲羅を背負った怪物を場外に吹き飛ばす光景が映っている。
「うがあああ、負けたー!」
ライアスが悔しそうに叫び、床にゴロンと寝っ転がった。肩に乗ってきたピカチュウを撫でながらこう言い放つ。
「ふっ、おれに勝とうなんて百年早いよライアス」
「くっそぉ、いつかそのドヤ顔を敗北の悔しさで歪めてやる……!」
気炎を吐くライアスの側には、小さな翼をパタパタさせながら彼を見上げる一羽のワシボンがいる。
このワシボンはライアスが召喚したポケモンだ。おれはつい最近知ったのだが、なんとライアスもポケモンを召喚出来るのだ。彼はポケモンのゲームを始めたばかりの頃に3DSからポケモンが飛び出してきて以来、ちょくちょく召喚して仲良く遊んでいるようだった。
ワシボンを優しく抱き上げて膝に乗せながら、ライアスは感慨深げに呟いた。
「しっかし、すげぇよなぁ……。ポケモンに触れる日が来るなんて思いもしなかったぜ」
「そうだなぁ……」
見上げてくるピカチュウの頭を撫でていると、ふとある事が脳裏をよぎった。
「……おれ達の他にも、転生者っているのかな」
ライアスは目を瞬かせ、考え込むように腕を組んだ。
「うーん……いるんじゃないか?オレ等みたいに3DS持ってるかはともかくとして」
伸びをしながら壁掛け時計を見たライアスが「もうこんな時間か」と呟き、立ち上がった。
「そろそろ帰るわ。晩飯作らないと妹にどやされる」
「それは大変だ」
ライアスを玄関まで見送り、おれも夕食の準備に入る。
「転生者、ね……」
手早く作ったパスタをフォークでくるくる巻きながら呟く。
「案外すぐ近くにいたり……しないか」
「ピカ?」
小皿に盛ったパスタを頬張っていたピカチュウが、不思議そうに首を傾げた。
その日の夜、夜中に目を覚ましたおれは動きやすい服に着替え、3DSを携えて家を出た。行き先は公園の空き地だ。
月が出ていて、意外と明るい街中を歩く。公園に近付くにつれ、おれは気分が高揚していくのを感じた。
おれは今日、遂にあいつを召喚するのだ。
結構前から決めていた事だったが、間の悪いことに、ここ数日はずっと雨が降っていたので召喚はしなかった。雨が降っている中召喚されると、嫌だろうと思ったからだ。
無事空き地に着いたおれは、3DSを起動した。浮かび上がる3DSの画面に映るボックスの中から、ある一匹をタップ。
飛び出してきたモンスターボールを空き地の中央に投げると、ポン、と軽い音を立てて一匹のポケモンが現れた。
大きく広げられた、立派な翼。長い尾の先端には炎が燃え盛り、鋭い爪と牙が月光を反射して輝く。朱色の身体がゆっくりとこちらを向き、若草色の瞳にじっと見詰められる。
ポケモンのゲームを初めてプレイした時からの相棒、リザードンがそこにいた。
……やばい、感動して涙が出そうだ。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………グオォ」
見つめ合っていると、リザードンが照れたように目を逸らした。かわいい。
「リザードン……おれが、判るか…?」
問い掛けると、こくんと頷く。そっと近付いて手を伸ばし、お腹を撫でる。リザードンは気持ち良さそうに目を細めた。かわいい。
「グルルルゥ」
しばらくすると、リザードンが満足そうな唸り声を発したので撫でる手を止める。
撫でられて上機嫌になったのか、尻尾がゆらゆらと揺れ、時折地面を叩いている。かわいいいいいいいいえああああああああああああああ!!
……コホン。
おれは飛行タイプのポケモンを喚んだら叶えようと思っていた野望を果たすべく、リザードンに問い掛けた。
「なあリザードン。もし良ければ、おれを乗せて飛んでみてくれないか?」
そう言うと、リザードンは任せろと言わんばかりに翼をはためかせ、おれの襟首をくわえた。ひょいと背中に乗せられ、感動する間もなく翼が動き始める。リザードンはニ、三度軽く羽ばたいた後、地面を強く踏み込み、跳躍。翼を大きく広げて羽ばたき、夜空へ飛び上がった。
「 っ!」
風が耳元でごうごうと鳴り、あっという間に空き地が小さくなる。視界いっぱいに夜空が広がり、数え切れない程の星達が頭上を彩る。
ある程度の高さで上昇を止めると、リザードンは街の上を旋回するようにゆっくりと飛び始めた。
「うわぁ……」
ひとつひとつの建物がとても小さく見える。おれの家なんて米粒のようだ。
深夜なので明かりが付いている家は少ないが、月明かりに照らされるフェジテの街は、とても綺麗だった。
景色を堪能していると、街を見下ろしていたリザードンが顔を上げ、何か言いたげに唸った。
「どうした?」
首辺りを撫でながら聞くと、リザードンは視線を上に向ける。つられて上を見ると、おれ達よりも高い位置にメルガリウスの天空城が浮かんでいるのが見えた。
「ああ、あれね。映画のやつみたいだろ?おれも
リザードンは天空城をじっと見つめている。
「……行ってみるか?」
提案してみると、リザードンは少しだけ慌てたようにふるふると首を横に振った。
「そっか」
実を言うとおれはちょっぴり行ってみたかったりするのだが、乗り気じゃないリザードンを無理に行かせようとは思わない。
しばらく夜景を楽しんだ後、おれとリザードンは空き地に戻り、これからも時々空中散歩をしようと約束した。
次の日から、深夜に街の上空を飛んでいる謎の光を見たという目撃情報がたびたび上がるようになった。学院の生徒達は謎の光の正体をあれこれ議論しているようだが、未だ明らかにはなっていない。
全然分からない。UFOかな?
この話を書きながら、ヒックとドラゴンを思い出しました。3が楽しみ過ぎて……
多分次回は長めになります。