ロクでなし魔術講師と携帯獣使い   作:ゲームの住人

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 こんにちは、ゲームの住人です。
 今回はちょっと急ぎめで書いたので駄文が更に駄文になっているかもしれませんが、暖かい目で読んで下さると嬉しいです。そして前回長めになるとか書いておきながらあまり長くならなかった……。



編入生

 朝。

 

「………っ」

 

 肌寒さを感じて目覚めると、おれは真っ先に違和感に襲われ、すぐに状況を理解した。

 

「…………ああ、ここで寝ちゃったのか」

 

 自然公園にある森の奥。体感的には朝だと思うが、周囲はまだ暗い。ぽっかりと空いた空間を囲むように生えている、背の高い木達。その木の一本に寄りかかり、おれは眠っていたようだ。

 

 普段ならちゃんと家に帰って寝るのだが、昨夜は休憩のつもりで木に寄りかかり、そのまま寝てしまったらしい。

 

「くそ、魔術の改良って難しいな……」

 

 昨日の散々な結果を思い出しながらぼやく。

 

 そう、おれは以前魔術競技祭で思い付いたように、【ゲイル・ブロウ】を回避用に改良する事にしたのだ。

 

 二日前から取り組み始めたばかりなので結果が出ないのは当たり前だが、暴発する度に身体が吹き飛び木にぶつかるので、あちこちが痛い。早くも心が折れそうだ。もう止めようかな……。

 

「……いや、止めないぞ!」

 

 ネガティブな思考を頭に載っていた木の葉と共に払い落とし、立ち上がる。

 そうだ、始めて二日で諦めるなんて早過ぎる!諦めずに頑張れば、絶対結果が出るって誰かが言ってたんだ!…………誰だっけ?まあいいか。

 

 さくさくと落ち葉を踏みながら歩く。木々の数が減るにつれ、周囲が仄かに明るくなってきた。

 

 家に帰ったら少し寝ようかな……うわ、ここ痣できてる……等と思いながら歩いていると、誰かの話し声が聞こえてきた、気がした。

 

「…………?」

 

 耳の後ろに手を当て、耳を澄ます。しばらくそうしていたが、やはり誰かの話し声で間違いない。

 

「こんな早朝に……?」

 

 気になったおれは、進行方向を声がする方へ変更し、そちらに向かって歩み始める。

 

「こんな時間帯に、こんな場所にいる……おれが言うのもなんだけど、怪しいな」 

 

 警戒を強めつつ、慎重に歩を進めていくと、やがて大きなブナの木が生えている空き地に着いた。この場所はポケモンを喚べそうな空き地を探して彷徨っている時に見つけたが、森に入って少し歩けばすぐに到着できるような距離にあったため、人が来るのを恐れて敬遠した場所だ。

 

 そして、そのブナの木のふもとに、おれがよく知る二人がいた。グレン先生とフィーベルさんだ。二人は掛け声を上げながら何やらやっている。距離を詰めると、様子がよく見えるようになった。

 

 拳闘の構えをしたグレン先生が技を繰り出し、隣に並んだフィーベルさんが先生の動きを真似している。フィーベルさんの構えを時々指摘して修正しながら、先生は拳闘の技と型を一通り繰り出した。

 

 どうやら先生は、フィーベルさんに拳闘の技術を教えているようだ。面倒臭がりの先生が自ら進んで教えるとは思えないので、多分フィーベルさんが頼んだのだろう。……折角なら拳闘の技術じゃなくて魔術を教えて貰った方が良いんじゃないか……?

 

 おれが無言で見守る中、二人は両手に革の手袋を嵌めると、模擬戦を始めた。

 

「はっ!やぁっ!」

 

 フィーベルさんがグレン先生に攻撃を仕掛けるが、その全てが虚しく空を切る。先生が攻撃を避けながらフィーベルさんに急接近し、がら空きの胴を軽く小突いた。

 

「くっ……!?」

 

 ぺちぺちされた箇所を庇うようにフィーベルさんが下がろうとするが、先生はぴったりと追随し、ぺちぺちぺちぺち小突きまくる。 

 

 見つかると面倒なので、二人が模擬戦に集中している間に、おれは退散することにした。フィーベルさん、頑張れ。

 

 

 

 

 

 

 家に帰ってシャワーを浴び、布団に入ったと思ったらピカチュウの10まんボルトで叩き起こされた。時計を見ると丁度良い時間になっていたので、名残惜しいが布団から出る。朝食を終えて家を出ると、外はすっかり明るくなっていた。

 

「そういえば、今日は編入生が来るって先生が言ってたな……」

 

 独り言を言いながら歩いていると、丁度視界の端に青い何かが映り込んだ。そちらを見ると、そこには、アルザーノ帝国魔術学院の制服を着た青い髪の少女が立っている。

 

 ……見覚えがあると思っていたら、あの人アレだ。ティンジェルさんが変身してた人だ。

 

 なんとなく眺めていたが、少女は動く気配はなく、その場に静かに佇んでいる。同級生に青い髪の生徒はいなかった気がするので、多分あの人が編入生だろう。ずっとあの場に留まっているが、もしかして道が分からないのか?

 

 おれは声を掛けるか少し悩み、結局話し掛ける事にした。

 

 歩み寄ると、人の接近を感じたのか顔を上げた少女と目が合った。眠たげな瞳に「なんか用?」とばかりにじっと見つめられる。謎の眼力に気圧されながらも、おれは言葉を切り出した。

 

「えっと……君、編入生?」  

 

「………ん」

 

 問い掛けてから数秒後、素っ気ない返事が返ってくる。

 

「学院までの道分かる?」

 

 重ねて問うと、少女は少し黙った後にぼそぼそと喋り始める。

 

「………………分からない、けど」

 

 少女は少しだけ顔を上げ、言った。

 

「……………頑張れば、そのうち着く」 

 

 あかん、それ絶対着かんやつや。

 

「そっか。ところで、おれは学院までの道を知ってるんだけど、良ければ一緒に行かない?」 

 

「…………ん」

 

 この子を絶対に学院まで送り届けてみせる、という謎の使命感に突き動かされるままに、青髪の少女にそう提案すると、少女はほんの少し首を縦に動かした。おれが歩き始めると、少し後ろを無言でついてくる。

 

 ゲームのパーティーよろしく一列になって歩いていると、やがて噴水広場が見えてきた。既にフィーベルさんやティンジェルさん、グレン先生が集まっている。

 

「あっ、コル君!おはよう!」

 

「おはよう。今日も遅刻せずにちゃんと来たわね」

 

「おー、おはよーさん」

 

 挨拶してくる先生達に挨拶を返そうとした時、後ろからぼそりと呟き声が聞こえてきた。

 

「……………見つけた」

 

「えっ?」

 

 おれが振り返るのと、青髪の少女がしゃがみ込み、石畳に手をつくのは同時だった。

 

「《万象に希う・我が腕に・剛毅なる刃を》」

 

 流れるような詠唱が終わると辺りに紫電が走り、少女が腕を引き上げる。その腕には、一本の大剣が握られていた。

 

「なっ……………!?」

 

 剣を見たフィーベルさんとティンジェルさん、グレン先生が目を見開いた。

 少女は軽々と大剣を肩に担ぐと、猛然と走り出す。途中で大きく跳躍し、身を固くするフィーベルさん達を飛び越えると     

 

「おわああぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

       グレン先生の脳天目がけ、剣を振り下ろした。

 

「な、な、何しやがんだてめぇえ   ッ!?」

 

 それを見事な真剣白羽取りで止めてみせた先生。ブラボー、拍手を贈ろう!

 

「オイやめろ、呑気に拍手してる暇があったら助けろよ!?」 

 

 先生がなにか喚いているが、拍手の音で聞こえない。拍手を止めると、青髪の少女の喋り声が聞こえてきた。

 

「…………会いたかった、グレン」

 

「会いたかった、じゃねーよ!?さっさと剣を下ろしやがれ!一体なんの真似だ!?」

 

「挨拶」

 

 また随分とアグレッシブな挨拶だな……。グレン先生だから大丈夫だったが、おれだったら上手く受け止められずに死んでいる自信がある。

 

「挨拶だとぉ!?てめぇ、辞書で『挨拶』という言葉を百万回くらい調べてきやがれ!?」 

 

 剣を下ろした少女に吠えかかる先生に、ティンジェルさんが話し掛けた。

 

「えっと……先生。その子って確か、魔術競技祭の時の……」

 

「ん?ああ、覚えていてくれたか。そういえばお前ら。俺が昔、帝国軍の宮廷魔導士団に所属してたってのは話したっけ?」

 

「いえ、初耳です」

 

「私も初耳です。……なんとなく、そうなのかなとは思っていましたけど……」

 

 帝国軍の宮廷魔導士団といえば、魔術の扱いに長けた戦闘のスペシャリスト達が所属するような組織だ。先生がそんなエリート集団の一員だったとは………。

 

「それで、リィエル……こいつは俺の魔導士時代の同僚だ。ルミアは直接会ったし、コルと白猫も顔くらいは知ってるよな?まあ、お前らが見たのはルミアが変身していたやつだが」

 

 先生の言葉を聞くと、フィーベルさんが安堵の溜息をついた。

 

「な……なんだぁ……刺客じゃなかったのね……よ、良かった………」  

 

 ……ああ、そうか。先生の真剣白羽取りに気を取られてたけど、リィエル、さん?の挨拶を見たら誰だって刺客の可能性を考えるよな……。

 ……というか、目の前に凶器が現れたのに、よく呑気に拍手なんか出来たな、おれ。……きっとまだ寝惚けてるんだ、うん。

 別に、剣かっこいいとか思ってそっちに意識が集中していた訳ではない。断じてない。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、おれ達とリィエルさんは流れで一緒に登校する事になった。

 

 リィエルさんはティンジェルさんの護衛として、表向きは編入生という事でおれ達のクラスの一員になるそうだ。

 突然斬り掛かったり護衛対象であるティンジェルさんより先生を守りたいと言ったりと奇行が目立つ彼女だが、彼女も立派な宮廷魔導士団の一員だ。戦闘のスペシャリストが常に側にいるのはとても心強いし、頼りになる。

 

 なるのだが………。

 

「……リィエル=レイフォード。帝国軍が一翼、帝国宮廷魔導士団、特務分室所属。軍階は従騎士長。コードネームは『戦車』、今回の任務は………」

 

「だあああぁぁぁぁぁああ!!うおあああああああああああ    !!」 

 

 大声でレイフォードさんの自己紹介を誤魔化し、彼女を掻っ攫って教室の外へ飛び出して行った先生を見ながら、おれは呟かずにはいられなかった。

 

「……だ、大丈夫なのか……?」

 

 




 感想を貰うと嬉しくてつい長文になってしまいますね……。短い文章を心掛けてはいるんですが……
 ちなみに、コル君は基本女子は苗字呼びなんですが、リィエルに最初に会った時は名前しか分からなかったのでリィエルさん、自己紹介後はレイフォードさんと呼び方を変えています。
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