ロクでなし魔術講師と携帯獣使い   作:ゲームの住人

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 こんにちは、ゲームの住人です。
 何気なく作品情報を見てみたら、評価バーが赤くなっていて驚愕しました。お気に入り登録してくださる方もじわじわと増えてきて、嬉しさを感じる一方でプレッシャーも感じてしまいますね……。
 今後も頑張って書いていきたいと思います!


戦車

「《雷精の紫電よ》   ッ!」

 

 凛とした声が響くと同時に、空中を一閃の光が走った。

 光は二百メートルほど離れた地面に据えられているブロンズ製ゴーレムに迫り、頭の部分に取り付けられている的に命中、小さな穴を空ける。

 

「やった!」

 

 その光景を見届けたフィーベルさんが嬉しそうな声を上げ、小さくガッツポーズをした。

 

「ろ、六分の六かよ……」

 

「おぉ……流石システィーナ……」

 

「やっぱ、名門のお嬢様は違うわ……」

 

 クラスメイト達から感嘆の声が上がる。

 

 今回の授業では、【ショック・ボルト】の命中精度を測っている。二百メートル離れた場所に設置されているゴーレムには頭、胴、両手両足にそれぞれ一つずつ、合計六つの的が取り付けられていて、【ショック・ボルト】を撃つ回数は六回。つまり、上手い人は全ての的を壊す事が出来るのだ。

 

「ほう、六分の六か。この距離で全弾命中は普通にすげぇぞ、白猫」

 

 グレン先生が感心したような声を上げながら、手元のボードに結果を書き込んでいく。先生の褒め言葉をフィーベルさんは嬉しそうに聞いていた。

 

「くぅううう……ッ!こ、これで勝ったと思わないことですわ!システィーナ!」

 

 ナーブレスさんが悔しそうにハンカチを噛み締めながら、フィーベルさんを睨みつける。

 彼女の成績は六分の五。最初の五回は全て的に当たったのだが、最後の一発を撃つ瞬間にくしゃみをしてしまい、狙いが逸れてしまったのだ。

 

「先生、やり直しを要求します!(わたくし)が本来の実力を出し切れば、システィーナに負けるはずがありませんわッ!」

 

「はいはい、全員終わってからな……ドジっ娘」

 

「きぃいいい    ッ!」

 

 ヒステリーを起こしたナーブレスさんを適当に宥めつつ、先生はフィーベルさんに「もう戻っていいぞ」と声を掛けた。

 

 皆の賞賛の視線と声を背中で受け流しながら、フィーベルさんはティンジェルさんのところへ戻って行く。だが、おれの近くを通り過ぎる直前、チラッとおれの方に顔を向けてきた。

 見事なドヤ顔。今にも何か言いそうな態度だ。

 

「ふふん」

 

 言った。これ以上ないほど得意げだった。

 

 勝ち誇ったような表情で通り過ぎて行くフィーベルさんを見て、おれの中に小さな対抗心が芽生えた。

 

「こうなったら、本気を出すしかあるまいな……」

 

「何を言ってるんだ?」

 

 怪訝そうな目で見てくるギイブルを尻目に戦意に燃えていると、丁度おれの番が回ってきた。ふっふ、見てろよフィーベルさん、ゲームで鍛えた射撃の腕を見せてやる……!

 

 おれは自信満々の笑みを浮かべながら、ブロンズ製ゴーレムに指を向けた。

 

 

 

 

 

 

「えーっと、コルは……六分のニだな。よし、下がって良いぞー」

 

 当たり前だけど、ボタンを押すだけのゲームと現実は全く違いました、はい。 

 ちくしょう、余裕ぶってニヤニヤしていた少し前の自分を殴りたい!

 

「ギイブル……おれの仇を、討ってくれ……!」

 

「君は何と戦っているんだ……」

 

 無様を晒し、両膝を地面に着いて項垂れているおれをギイブルは呆れ顔で見ていたが、順番が回ってきたので去って行き、当然のように全弾命中させて戻って来た。流石。

 

 そうこうしているうちに、呪文を撃っていない人は残すところ一人となった。

 注目の人物、レイフォードさんだ。

 

「さて……リィエルちゃんの実力は如何ほどかな……?」 

 

「あの子、帝国軍入隊を目指してるらしいし、結構やるかもよ?」

 

「お手並み拝見ですわね……」

 

 皆が彼女の実力を見極めようと注目する中、眠たげな目をしたレイフォードさんが前へ出る。彼女はどこかぎくしゃくとした動きで腕を伸ばすと、ぼそぼそと呪文を唱えた。

 

「《雷精よ・紫電の衝撃以て・撃ち倒せ》」

 

 棒読みの詠唱が終わると同時に紫電が空中を駆ける。紫電はゴーレムを大きく外して通り過ぎていった。

 

「……………………」

 

 場に沈黙が降りる。

 

「《雷精よ・紫電の衝撃以て・撃ち倒せ》」

 

 レイフォードさんは淡々と呪文を詠唱し、第二射を放った。今度はゴーレムの左側を通過し、地面を浅く削る。

 途端に、周囲の視線が値踏みするような視線から、小さな子供を見守るような優しい視線になった。

 

「後四回残ってるぞ、頑張れー!」

 

「ちょっと固くなり過ぎですわ。もう少し、腕の力を抜いて……」

 

「リィエルちゃん、リラックスリラックス!」

 

 クラスメイト達の温かい声援をBGM に、レイフォードさんは【ショック・ボルト】を撃ち続ける。しかし、一発も的には当たらず、遂に最後の一射になってしまった。

 一射目を見た時点でなんとなく予想はついていたが、まさかここまで遠距離射撃が下手くそだったとは……。

 

 様子を見ていると、レイフォードさんがほんの微かに眉を寄せた。ここからはよく聞こえないが、先生と何か話している。少しして話し終えたのか、レイフォードさんが再びゴーレムに向き直った。

 

「《万象に希う・我が腕に・剛毅なる刃を》」

 

 そう言葉を紡ぎ、地面に両手をつく。紫電が走ったと思ったら次の瞬間にはもう、今朝も見た大剣が再びレイフォードさんの手に収まっていた。

 

「「「な、なんだぁああ    ッ!?」」」

 

 クラスメイト達が目を見開き、驚愕もあらわに叫んでいる。

 

「お…おい待てリィエル、お前一体何を……?」

 

 頬を引き攣らせた先生がレイフォードさんに話し掛けるが、レイフォードさんは意を介さず、大剣を軽々と待ち上げた。

 

 この距離で剣?うーん、剣からビームが出たりは……流石にしない、よな?剣圧で斬るとか?それはそれで凄いな……。

 

 おれがあれこれ考えている間に大剣を上段に構えたレイフォードさんは、地面を蹴り、気合を放ちながら勢い良く     

 

「いいいいいやぁああああああああ   ッ!」

 

      剣を投げた。

 

 縦回転しながら物凄い速度で飛んでいった大剣は二百メートルの距離を一瞬で飛翔し、ゴーレムを粉々に粉砕した。当然、取り付けられていた六つの的も木っ端微塵だ。

 

「「「…………………」」」

 

「わお……」

 

「………ん。六分の六」

 

 静寂が満ちる中、顔を上げたレイフォードさんは、どこか得意げに呟いた。

 




 つい最近、他の方の作品を読んでいて、その作品の主人公とコル君の名前が微妙に被っている事に気が付いてしまいました。名前を変えるか結構悩んだんですが、とりあえずは『コル』のままでいこうと思います。急に名前を変えることがあるかもしれませんが、その時はあしからず……。

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