ロクでなし魔術講師と携帯獣使い   作:ゲームの住人

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 こんにちは、ゲームの住人です。
 少し遅れましたが、あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!
 そして、お気に入り登録してくださった方の人数が300人突破しました!やったー!
 


遠征学修

 

 

 

 レイフォードさんが編入してきてから、数日が経った。

 

 あれからレイフォードさんはフィーベルさん達と一緒に過ごすようになり、三人で談笑している姿をよく見かけるようになった。クラスの皆とも交流できているようで、彼女はクラスに馴染みつつある。

 

 今は放課後のホームルーム前なのだが、三人で仲良く席に着いて勉強をしているようだった。

 

「いい? リィエル。ここの問題はこの法則を当て嵌めて考えるの。そしてこの言葉をさっきの魔術式に組み込んで……」

 

「……むぅ……難し…、……すぅ……すぅ……」

 

「あっ、駄目だよリィエル! ほら、起きて? せっかくシスティが教えてくれてるんだし、もう少しだけ頑張ろう? ね?」

 

 教科書を手に解説しているフィーベルさん、途中までは真面目に聞いていたものの、次第にうつらうつらし始めたレイフォードさん、肩に寄り掛かってきたレイフォードさんを優しく揺すって起こそうとするティンジェルさん。

 

 ………癒やされる。

 

 微笑ましい光景に心を浄化されていると、賑やかな教室の扉を開けて、気だるげな顔のグレン先生が入って来た。先生はフィーベルさん達に囲まれて勉強しているレイフォードさんをチラリと見て、ほんの一瞬、ふっと微かに表情を綻ばせる。しかしすぐにもとの気だるそうな表情に戻ると、教壇に上がってパンパンと手を叩いてクラスメイト達の注目を集めた。

 

「えー、お前らも心待ちにしてたんだろうが、明日から遠征学修が始まる。場所は以前言った通り、『白金魔導研究所』だ。必要な物は……あー、しおりを読め。集合時間は……しおりを読め。とりあえず、なんかあったらしおりを読め。いいな? じゃ、解散」

 

「ちょっと先生、真面目にやってください!」

 

 やる気ゼロの先生にフィーベルさんの叱責が飛ぶ。すると、面倒くさそうにしていた先生が突然ハッとした。

 

「あっぶねぇ、一番大事な事を忘れてた! お前のお陰で思い出せたわ、サンキュー白猫!」

 

「は、はぁ……」 

 

 先生は真剣な顔つきで教卓に両手を置くと、厳かに告げた。

 

「女子は絶対水着を持ってこい」

 

 直後、フィーベルさんが投擲した教科書が先生の顔面にめり込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………眠れん」

 

 おれは布団の中で呟いた。

 

 時刻は深夜。

 布団に入ってからかれこれ一時間は経過しているが、眠りの妖精さんは未だにやって来ない。マジで早く来て、お願い。

 

 もう何回目かも分からない寝返りをうつが、目は完全に冴えてしまっている。自分ではあまり意識していないつもりだったが、そんなに明日の遠征学修が楽しみだったのか……?

 

 …………。

 

 …………………。

 

 …………………………………。

 

「………………起きよう」

 

 おれは寝るのを諦め、布団から出た。タンスから動きやすい服を出して着替える。

 今日は大人しく寝て明日に備えるつもりだったのだが、どうせこのまま布団に入っていても寝付けないに違いないのだ。夜風でも浴びれば気分転換になるだろう。

 

 家を出て程なくしていつもの空き地に到着し、おれは3DSを起動した。

 

 今日は星が綺麗な夜なので、リザードンと空を飛ぶのも良いかもしれないな……。

 

「出ておいで〜」

 

 呟きながら画面をタップし、画面から飛び出してきたマスターボール(・・・・・・・)を地面に放る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………ん?

 今……何投げた?

 

 思考が停止すると同時に、前方からズズンという地響きが聞こえてきた。

 そして感じる強い視線。

 

「……………………」

 

 突然だが、おれは伝説のポケモンを捕まえる際、なるべくマスターボールを使うようにしている。特に意味は無いが、強いて言えばそのほうが特別感が出るからだ。

 つまり、今召喚したのは……………。

 

 体中から冷や汗が流れる。

 存在感を放つ生物が、おれを見つめているのが分かる。視線はおれを捉え続け、小揺るぎもしない。

 おれは俯かせていた顔をゆっくりと上げた。

 

「ギャアァァ」

 

 ほんの数センチ先にある、真紅の瞳と目が合う。

 

「………………」

 

「ゴガアァァァ」

 

 灰色の身体に、金色の甲殻。漆黒の翼には三本ずつ赤い棘が生え、翼は揺らめく影のように形を変える。六本の足がしっかりと地面を踏みしめ、体重を支えている。

 

「ギゴガゴーゴー……」

 

「ギャアァァ?」

 

 呟くと、つぶらな瞳の持ち主    ギラティナは、大きな頭を斜めに傾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日の朝、油断すると閉じそうになる目を擦りながら集合場所である学院の中庭に向かうと、集合時間より三十分前にも関わらず、そこには既にほとんどのクラスメイト達が集まっていた。それぞれ旅行かばんを持ち、どこかそわそわしている。

 

「おう、おはよう!」

 

「おはようコル」

 

「おはよー……」

 

 元気に挨拶してきたカッシュとセシルに挨拶を返す。

 

「ふっ、いよいよだぜ……なんかテンション上がってきたーっ!」

 

 カッシュが両手を突き上げて叫ぶと、近くに居たギイブルが呆れたように首を振った。

 

「やれやれ……君は相変わらずだね、カッシュ。僕らは遊びに行く訳じゃないんだけど?」

 

「お前も相変わらずつまんねー奴だな、ギイブル……」 

 

「セシル、おれ達って同じ馬車だよな?」 

 

「うん、確か寝る部屋も一緒だったよ」

 

「そっか、よろしく」

 

「うん、こちらこそよろしくね」

 

 わいわいしている間にグレン先生がやって来て点呼を取り始め、先生の引率で馬車に乗り込む。馬車は二列に並んでいて、隣の馬車にフィーベルさん達が乗り込むのが見えた。

 

 間もなく馬車は動き出し、朝靄漂うフェジテを出発した。

 

「ふぅ……」

 

 椅子の背もたれに寄りかかり、窓の桟に肘を置いて一息つく。

 あの後、ギラティナと少し遊んでから家に帰ったのだが余計に目が冴えて寝付けず、何かしていればそのうち眠くなるだろうと思ってゲームを始めたが、ますます目が冴えてしまい、ほとんど寝ることが出来なかった。

 おかげでゲームがめっちゃ(はかど)った。……何してんだろおれ……。 

 

 とりあえず、今度からポケモンを喚ぶ時は画面をよく見て、喚び間違いがないように気を付けないとな……。あれはびっくりした。ギラティナが大人しくしてくれていたから助かったけど。

 ……ああくそ、眠い。景色を見たいのに勝手に瞼が落ちてくる。抗っても抗ってもきりがない。

 

 まあ、昨日寝てない分の眠気が今まさにやって来ている訳でして……。

 

 落ちてくる瞼を持ち上げる事が出来ずに、おれの意識はあっという間に暗闇に沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    システィーナ   

 

 システィーナは窓の外の景色を眺めていた。見渡す限り続く放牧地では、毛刈り前のもこもこ羊達が草をのんびりと食んでいる。

 

 その光景をしばらく眺めてから、システィーナはちらりと反対側の窓に目を向けた。

 窓の向こうからは隣を並走する馬車が見え、その馬車の窓に肘を置いて居眠りしているコルの姿がある。目元には微かに隈が浮かび、少しの揺れでは身じろぎもしない。

 

(疲れてるのかしら……?)

 

 視線を感じて振り返ると、こちらをニコニコしながら見つめるルミアと目が合った。なんとなく気恥ずかしくなり、システィーナはぶっきらぼうに話し掛ける。

 

「………なによ」

 

「ううん、別にー?」

 

 早くも眠りについたリィエルの頭を撫でながらこちらを微笑ましそうに見つめてくるルミアを見ていると、システィーナの中にいたずら心が芽生えた。

 

「そういえば、最近どうなの? 進展あった?」

 

「進展?」

 

「進展」

 

「……? ………………。………………っ!

ぐ、グレン先生とは別になにも……!」

 

 数秒キョトンとした後、途端に顔を赤くして慌て始めたルミアに追い打ちを掛けるべく、言葉を続ける。

 

「あれ〜? 私別に、先生の事だとは言ってないんだけど?」

 

「あうぅぅ……」

 

 顔を林檎のように真っ赤に染めたルミアを見て、システィーナはささやかな逆襲が成功したことを悟る。慌てふためくルミアを見ているともっとからかいたくなってくるが、これ以上は可哀想なのでからかうのは止めておいた。

 

「白金魔導研究所では、どんな研究を見学させてもらえるのかしら……」

 

 話を逸らすと、どこかほっとしたような表情でルミアも呟いた。

 

「楽しみだね、システィ」

 

「ええ」

 

 システィーナは、まだ見ぬサイネリア島と白金魔導研究所に思いを馳せた。

 遠征学修は、始まったばかりだ。

 

 




 はい、今回から伝説ポケモン『ギラティナ』参戦です!ギラティナには盛り上げ役としてこれから大いに動いてもらいます!

 

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