車椅子の少女と番剣 作:太陽が嫌い
五年前・・・イギリスのある町
・・・暗い…寒い・・・それが、目を覚まして最初に抱いた感情。
俺は、イギリスのある町のはずれで倒れていた。まあ、正確には孤児院がなくなってしまって逃げてきたのだ。孤児院は物理的になくなっていたのだ。まるで初めからなかったかのように。そして、怖くなって逃げだしたはいいが行く当てもなく死にかけている・・・まあ、目的も当てもなくさ迷っていて10歳の子供には限界が来ただけの話だ。
ただ、幸いだったのは今は、2月で非常に寒く餓死するよりも先に凍死しそうというだけだ。
・・・いや、全然よくない、まだどうしてもやらなければいけないことがあるんだ・・・何で急にあの孤児院がなくなったのか、買い出し当番で外に行っていた・・・その数十分の間に何があったのか、知らないで終わるのは嫌だ。・・・そんなことを思いながら意識が落ちた。
★★★★
「何を黄昏ているのですか?」
車椅子に乗ったメヌエットが話しかけてくる。
「昔のことを思い出していただけだよ」
「そうですか。ですが、そういうのは、仕事が終わってからにしてください。」
「ああ。悪かったとも」
「ハァ~。いいですか、
「だから、困り果てた警察どもが依頼をしてきたんだろ」
「ええ、私の推理だと今までのはすべて本命を気づかせないためのフェイク。これだけ、捕まる可能性を高くしてまで犯行を続ける意味は恐らくそうしないと殺せない人物がターゲットだから・・・「狙いは端っからスコットランド・ヤード」」
恐らく、武偵も出張ってきているそれならば、囮にしてしまえばいいわけだ。どうせメヌエットに頼んだのは保険だろうし、目的が警察と武偵ならば一般人を巻き込む心配もない。
「ええ、その通りです。少しは、推理力もましになってきましたね」
「人を馬鹿みたいに言うな」
「私より下です。それにいいではないですか、私は推理してもそこまでなのですから」
「・・・ハァ~。そのための俺だろ。メヌエットの足が動かないなら俺が動こう、戦う力がないなら、俺が剣になろう。お前は、確かにアリアほど恵まれなかったかもしれないが、アリアにないものがあるし、それに・・・もう二度とメヌエットは一人にさせない。だから、自分を憐れむな。メヌエットは、笑っているほうがいいぞ」
かつて、ある理由でイ・ウーにいたときにホームズの奴に『君は早く帰ったほうがいい』
と言われ、帰ってみると暗い目をしたメヌエットがいた。調べてみると、俺がいなかった間にいじめられていたらしい。そして、いじめていたやつらを『舌の刃』で殺して引きこもってしまったらしい。自分を拾ってくれた命の恩人であり好意を向けている少女をいじめていたやつらに対する怒りよりもそこに居なかった自分への怒りのほうが大きかった。
そして、誓ったのだもうこんなことがないようにメヌエットのそばを離れないと。
敵は、悉く潰して、メヌエットの剣になろうと。
「・・・早く行きなさい。御託は良いのです。細かい指示は電話でします」
少しうれしそうな顔をして、すぐにいつもの顔に戻った。
「了解」
この笑顔を消したくないがために俺は剣をふるうのだ。
★★★★
指示通りに進み現場に着くと、もう犯行が始まっていた。一応、連絡はしたはずなんだけど間に合わなかったようだ。シルエットから見て犯人んは男かな。全員、酷い傷を負っているからよほど恨みがあるのだろう。
「まあ、いいや。とっとと終わらせよう。」
一気に、加速して死に体の警官にとどめを刺そうとしている犯人に肉薄する。腰に差していた刀をすれ違いざまに抜く。相手が距離を取る前に・・・切り付ける。
「遅い!!!」
鮮血が舞う・・・うめき声をあげ、数歩下がってナイフを持ち換えて向かってくる。
「なるほど・・・早いな。けど・・・」
イ・ウーにいた俺にとっては、この動きでは遅すぎた。脳のリミッターを少し降ろした・・・
「終わりだ」
突然、早くなった俺に反応できず、切り裂かれた犯人。
「チェック」
流石というべきか、怒りがそうさせるのか傷だらけで向かってきた。けれど、ただでさえ俺には遅すぎるのに痛みで鈍った動きなんて話にならない。
『八咫烏』
両腕と胴体に計三本、切り傷ができ鮮血が舞った。
「チェックメイト」
犯人が倒れた音と酷い死臭が残っていた。