車椅子の少女と番剣 作:太陽が嫌い
「ルツ、あんた私と日本に来なさい」
夕食の後、呼び出され、いきなりの無茶ぶりに驚きながらも反射的に返していた。
「やだ、俺は、ここを離れるつもりなんてさらさらない」
「それは、メヌのためかしら?昔から思ってたけど、あんた、メヌに甘すぎよ!あんたは、自分で自分の可能性を潰してる」
「・・・うるさいな。メヌに何もしてやれなかったくせに!俺がメヌに甘いだと?そうだとして何の問題がある。俺は、自分でこの選択をしたんだ」
「あんたの、メヌに向ける好意の根源は依存よ。好意がないとは言わない。でも、あんたはメヌに依存している。それは、メヌもそう。あんたたちの関係性が、悪いことばかりではないのは分かるわ。メヌは、あんたといると楽しそうだし、一緒にいるのは止める気はない・・・でも度が過ぎている。このままじゃあんたは後悔するわよ。あんたたちは、一回は離れるべきだわ。」
当たっていた。まさにドンピシャだ。推理ではなく、勘という答えに過程というものを持たずにたどり着く反則技。
分かってはいた・・・今のままでは、メヌのためにもならないし、恐らく俺のためにもならない。でも、それは・・・理性的に考えた場合だ。感情的な判断ではない。メヌを、一人にすればまた泣かせてしまうかもしれない。まだ、メヌはあの時の光景を忘れられないのだ。俺は、確かにメヌのことが好きだが・・・依存しているのだろう。メヌエットという存在に。自分の帰る場所であってほしいのだ。孤児院の消えたあの日から、何度も味わってしまった孤独感。俺は感じたくない。道しるべのないまま、知らない世界に放り出されてしまうような恐怖を、思い出したくない。誰といても、消えない孤独感を消してくれるのは、メヌエットだけだったのだ。この関係性が気に入っているのだ・・・・・・でも、きっとここが引き返せる最後のポイント。それに約束のこともある。だから・・・
「・・・アリアの言うことは正しいよ。でも、メヌはどうなる?あの子の、精神は、かなり不安定だぞ」
「そんなの、乗り越えるわよ。なんせあたしの妹だもの」
「ッッッ・・・・・・・・・・・分かった。だけど、説得は、どうするつもりだ?俺は、メヌが断固として、拒否をしたら行かないぞ」
「交渉は、私がするわ。あんたは、今日は、もう寝なさい。」
「・・・分かった」
「ハァ~」
ルツが、出ていくのを見ながら、ため息を吐く。嫌な役目ね~。メヌに恨まれそう。でも後悔は、していない。ルツたちをいったん遠ざけたところで、お互いの依存はなくならないでしょうね。ただ、少し二人ともきちんと考え直すべきだ・・・というかそうしないと後悔することになるとなんとなく思ったから・・・
「よし、メヌの部屋に行くとするわ」
「入るわよメヌ」
部屋に入ると、メヌが車椅子に座っていた。その顔は、いつもの、自信に満ちたものではなく、複雑な顔でこちらを向いていた。
「こんばんは、お姉さま。要件は、推理できていますよ。ですが、ルツは私のものです。
勝手に持っていかれては困ります」
予想通り、反対してきたわ。
「ですから、賭けをしませんか?ポーカーで、私が勝ったら、お姉さまもここに残ってください。私が、負けたらルツの外出を許可します」
「・・・いいわ。やってやるわよ」
「勝負は、いつものやり方で」
「ええ、いいわ。じゃあ、先行はメヌね」
手札を引いて、カードを眺める。そしてなかなか動かない。
「私は、1枚ドローです」
そう言って、1枚交換する。
「じゃあ、あたしね」
そう言って、札を見ると、A-K-Q-J-T (エースハイ)だった。
「・・・あたしは、なくていいわ」
「では、行きますよ」
お互いに手札を出し合った。メヌの手札は、 5-4-3-2-A (ファイブハイ) 、あたしのはA-K-Q-J-T (エースハイ)。互いにストレート。
ストレート同士の場合は、最もランクが高いカードを持つプレイヤーが勝者となる。
エースに限りランクが一番上または一番下のカードとして使用ができる。 最も強いストレートは A-K-Q-J-T (エースハイ)、最も弱いストレートは 5-4-3-2-A (ファイブハイ) 。
つまり、あたしの勝ちだった。あたしの勘だけど、たぶん元からこのカードには仕掛けがしてあった・・・だけど、使わなかった。
「負けてしまいましたか・・・淑女として、約束は守りますよ」
「そう、ならいいわ」
「お姉さま、私寝たいので帰ってもらえますか?」
「いいわ」
部屋を出た後、メヌの言葉を思い出す・・・本当に、不器用な子。