車椅子の少女と番剣   作:太陽が嫌い

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次は、メヌエットが出ます。


強敵と過去の痕跡

此処だな。

「作戦は、さっき、言った通り犯人の相手はキンジと俺。不知火は、犯人を俺とキンジが抑えている間に人質を。犯人は出来るなら俺とキンジで制圧。」

 

「ちょっと待て、俺はどうするんだ?」

 

「そうそう、武藤はお留守番な」

 

笑いながらキンジが伝える。

 

「マジかよ、何のために来たんだよ俺」

 

ぶつくさ文句を言う武藤。

 

「まあ、冗談だよ。武藤は犯人の退路や足を抑えてほしい。期待してるぜ」

 

「オーケーオーケー、任せとけよ」

 

「了解」

 

「もう、潜入というか作戦というか・・・ルツって意外と脳筋か?」

 

「・・・Sランクが二人もいて、力押しでいかない理由はない。人質もいるんだ、早めに解決すべきだ。」

 

「まあ、少し乱暴だけど、効果的だとは思う」

 

「よし、行くぞ」

 

 

 

 

 

 

遠山は扉を開けてベレッタで天井を発砲。

 

「なんだ、なんだ?」

 

 

犯人達が騒ぎだす。

キンジが合図を送る。そして、俺は愛刀の刀を、不知火はナイフを持って走る。

 

まだ、犯人は動転している。

 

いけるかな。

 

俺達が踏み込んで、

 

「武偵だ!」

 

と叫んだ。

 

動転した犯人は拳銃を取り出すが・・・遅すぎる。剣を抜き

 

「チェックだ」

 

犯人の腕を切りつける。斬られた犯人は痛みで拳銃を落とす。そのまま、剣の柄で殴りつけた。

 

「ぐああああ」

 

二人目の犯人を切り付けたところで、

 

「動くな!!!」

 

人質が、犯人に捕らえられていた。・・・数が合わない。紛れていたのか。人質に・・・

 

「だが、この距離なら、俺のほうが速い」

 

リミッターを降ろす。

 

犯人に、肉薄しようとしたその時、

 

「お前はこっちだ」

 

突然、横から攻撃を受けた。外に弾き飛ばされ、廊下に出る。刀を放してしまった。

 

「くッ」

 

咄嗟に顔を逸らす。

すぐ傍を男の拳が突き抜けていた。

 

こちらが制止を掛ける暇もなく、男の足払いが決まる。

体勢が崩れた俺の腹へと肘うちが迫った。 

 

「このっ!!」

 

左手を床に着き、右足の裏で肘を受け止める。振り抜かれた男の蹴りを右手で掴んだ。脳のリミッターをさらに降ろし、無理な姿勢のままさらに男を引き寄せる。

 

 距離を取らずにこのタイミングでの反撃を予想していなかったのか、男の反応がほんの僅かに鈍った。男の脇腹へ蹴りを叩き込もうとしたが、強引に俺の右手を振り払った男が逆に回し蹴りを放ってくる。それを転がることで辛うじて回避した。背にしていた扉から距離を空ける。

 

しかし、男の追撃からは逃れられなかった。跳躍した男の蹴りが俺へと迫る。

右、左、右、左、右。

一回の跳躍で計5回にも及ぶ蹴りを、後退しながらも男の蹴りと逆の腕で弾いていく。男の着地に合わせるようにして足払いを掛けようとしたが、見事にタイミングをずらされた。というより、男は両足で着地はせずに片足で、それもつま先のみの軽いタッチで再び宙へと舞い上がる。

 

今度は拳だ。

男は怒涛のラッシュを捌いていく。男が俺の頭上を過ぎたタイミングで俺も身体を反転させ、相手に背後を取られないようにする。

 

しかし、その余計な動作のせいで今度は足払いを仕掛けるタイミングを失った。綺麗に着地を決めた男が追撃の拳を放ってくる。それをいなす。いなす、いなす、いなす。

 

この男、やばいな。俺よりも格上だ。

時折混ぜてくる足技を、時に腕で、時に膝で、そして時には足裏で受け止める。拳のラッシュは止まらない。受け流すことで精一杯だ。こちらから攻勢に出ることができない。

 

洗練された動き。

無駄のないその動きは見事の一言に尽きる。だが、恐らく本気ではない。そんな気がする。これまでの事件をほぼ近接戦闘のみで潜り抜けてきた俺の思考が、1つの結論を導き出す。

 

この土俵では、刀があっても勝てない。そう思わされた。

後退は続く。

それは俺とこの男の力量差を明確に表していた。

 

階段を、男の追撃を受け止めながら後ろ向きに上っていく。当然、男の追撃は段差程度の障害で緩むことは無い。上がる、上がる上がる。階段を上がっていく。

 

「ぐっ」

 

右肩に一発きついのを貰った。

鈍い痛みが走り抜けるが、まだやれる。

 

掌底を跳ね上げる。身体を僅かに右に逸らすことで肘うちを躱す。身体を反転させて膝蹴りを回避する。脇腹を擦った。段差を上る。反転させていた身体を再び正面に戻す。その間にも放たれる拳を腕と足を使って捌いていく。だが、膝に1発貰った。

 

まだ、やれる。まだいける。

拳を避ける、受け流す、跳ね上げる、受け止める。放たれる蹴りから距離を空けるために、受け止めていた拳を押しやった。蹴りは目と鼻の先を突き抜ける。段差を上がる。

そろそろ、バテテきた。ここまでの攻防男は息一つ切れていなかった。

次いで放たれる回し蹴りを払う。男の掌底を両手で受け止めた。が、身体を捻り、回転の力を加えてその脚が俺の頬を打つ。ふらつく足が段差に引っかかる。段差を踏み外し転げ落ちる。

 

「ぐっ!?」

 

 

限界が近かった。体が悲鳴を上げている。ただの、立てこもり犯じゃないはずだ。ここまでの使い手なんてそれこそイ・ウークラスだ。格の違いは、シャーロックを髣髴とする。そして追撃をしてこない男に違和感を覚えた。目的は、俺の足止めか?・・・俺が立てなおしたら

 

第二ラウンドだ・・・というように蹴りを放ってきた。紙一重で躱す。

 

男の身体で死角となっていた位置から腕が振り上がった。肩口に重いのを1発。2発目を鳩尾に払う。

 

男が手だけで着地した。そこを狙おうとする俺をけん制するように、脚が振り上がった。紙一重のタイミングで俺が後方に跳躍する。男の履く靴の先端が顎を擦った。バック転で体勢を整える。その動作で5段分の間が空く。一瞬で1段に戻される。胸と腹に1発ずつ貰う。

 

少しずつ男の拳速が上がってきた。くそ、完全に弄ばれてるな。

 

「ハァハァ、お前は、一体」

 

ニヤリと男は笑って追撃を掛けてくる。

 

払う、払う、払う、受け止める。流す、捌く、防ぐ、取り逃がす。

 

「ぐ、くそっ!!」

 

肩、腕、膝と、順に衝撃が走る。捌き切れなくなってきた。

 

もう一段階リミッターを下げるか。でも、それで勝てなかったら多分負ける。

元から後退させられて時点で押されているのは分かっていたが・・・、ここまで技量に差があるのか。

 

このままじゃジリ貧だぞ。

 

 

時間だけで見れば、ほんの数瞬の出来事だろう。だけど、相当きつい・・・回し蹴りを受け止め、拳を受け流し、肘うちを受け、膝蹴りを払う。

 

舌打ち1つ。

繰り出される拳のラッシュを足も交えて捌きつつ、俺はポケットからナイフを引き抜いた。

 

「む」

 

取り出された物に男が僅かに眉を上げる。回し蹴りを顔に向かって放ったが、案の定腕を使って防御された。しかし、それで視界は遮られる。

 

その一瞬が勝負。

 

手にしていたナイフを上に投擲して、上の電球を割る。振ってきたガラスを避けるため、お互い距離を取った・・・・・

お互い、相手から視線は外さない。パンパンパン。いきなり拍手を男はしだしたのだ。

 

「素晴らしい反応速度だ。」

 

「何者だ、お前・・・」

 

「俺か?俺の名はそうだな求道者(インヴェステター)と呼んでくれ。しかし、流石は、アークライト院の孤児たちだ。計画通りに育ったわけだ」

 

「・・・ッ。何者だ、お前!!!何を知っている」

 

「そう叫ぶなよ。そのうち分かる。それよりもいいのか?お仲間を助けに行かなくて」

 

「・・・くッ・・・」

 

「安心しろ、交戦の意思はない」

 

「クソ・・・」

 

俺は、キンジたちのいる場所に走った。

 

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